『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第92話

夏の高校野球選手権の西東京地区大会の準決勝。

 

青道高校と稲城実業の試合の9回の裏。

 

俺と成宮の投げ合いは無失点で来ていたんだけど、一也がサヨナラホームランを打った。

 

ホームベース付近で青道の皆が、一也を祝福するべく待ち構えている。

 

一也がホームインすると、皆が一也に祝福の紅葉を作り始めた。

 

「御幸!余計な事をしおってからに!俺がサヨナラホームランを打つ予定やったんやぞ!」

 

そう言いながらも東さんは、笑顔で一也の頭を脇に抱え込んでいる。

 

「いや~、すいません東さん。狙っていたんですけど打てちゃいました。」

 

そんな感じで一也を祝福していたんだけど、主審さんに促されたので終わりの挨拶をする。

 

「1ー0で青道高校の勝利です!礼!」

「「「ありがとうございました!」」」

 

挨拶が終わって帰り仕度をしていると…。

 

ピロンッ♪

 

頭の中に機械音が響いた。

 

俺は能力を確認する。

 

 

※金特殊能力の『怪物』を取得しました。

 

※上記能力を取得した事で、最高球速の成長限界が155kmに変更されました。

 

※上記能力を取得した影響で、制球がSからAに下がりました。

 

※上記能力を取得した事でボーナスポイントを獲得しました。

 

※上記能力を取得した事で一部特殊能力が取得不可になりました。

 

 

うおっ!?

 

金特殊能力を取得!?

 

俺は能力画面を何度も見直す。

 

 

『怪物』

 

・フォーシームのノビがもの凄く良くなる特殊能力である。

・『ノビ5』よりも体感速度が上がる効果がある。

・『怪物』取得後は『重い球』の最上位能力である『剛腕』は取得出来ない。

 

 

(最高球速の成長限界が下がるのは、今までの『ノビ』系統の能力取得時の

 特徴だからわかるけど、制球が下がったのはキツイなぁ…。)

 

俺は変化した感覚を確認してみる為に、いつもショルダーバッグに入れてある

硬式球を左手に持ってみる。

 

(うわっ!?ボールを持ってみただけで感覚が全然違う!全国大会が始まるまでに、

 この感覚に慣れられるか?)

 

決勝戦の相手である市大三高に勝たないと甲子園には行けないのだが、

なんか丹波さんがいつも以上に気合いが入ってるんだよね。

 

だから、決勝戦の事はあまり心配していないのだ。

 

そんな事を考えながら左手でボールを弄っていると、一也が俺に声を掛けてきた。

 

「パワプロ、約束通りにジュースの奢りは無しな。」

 

一也が笑顔でそう言いながらも右手を上げる。

 

なので俺は右手で一也とハイタッチをした。

 

イエーイ♪

 

「ところで、ボールを持ってどうしたんだ?」

「ん?なんか試合が終わってから感覚が違うなぁって思ってね。」

 

俺がそう言うと、一也は真剣な表情で俺を見てくる。

 

「ケガでもしたのか?」

「いや、どこも痛い所は無いよ。」

 

俺がそう返事をしても、一也は真剣な表情のままだ。

 

「どうした、葉輪、御幸。」

 

俺と一也が話をしている所に、片岡さんがやって来た。

 

「監督、パワプロの奴が感覚が違うって言っています。念のためにケガをしていないか、

 病院で検査を受けさせた方がいいと思います。」

 

一也がそう言うと、片岡さんもジッと俺の事を見てくる。

 

いやいや、俺はケガしてないよ!

 

「高島先生に話をしておく。御幸、葉輪の荷物を纏めておけ。」

 

片岡さんはそう言うと、足早に去っていった。

 

え?ホントにケガしてないよ?

 

まさかの事態に俺は軽く混乱してしまう。

 

俺が軽く混乱している中で、一也が手際良く俺の荷物を纏めていく。

 

そして、一也が俺の荷物を纏め終わった頃…。

 

「フーくん、大丈夫?」

 

貴子ちゃんが心配そうな表情で俺達の所にやって来た。

 

「高島先生が車を準備してくれているから一緒に行こう。御幸くん、

 フーくんの荷物は私が預かるわね。」

「お願いします、藤原先輩。」

 

あれよあれよと事態が進んでいき、俺は貴子ちゃんに連れられて

礼ちゃんの車に乗り込むのだった。

 

 

 

 

「すまない、成宮。」

 

パワプロが病院に連行されていた頃、稲城の原田は成宮に謝罪をしていた。

 

「どうしたの、マサさん?」

「最後のホームランは、俺が御幸を左バッターだからと甘く見たせいだ。

 それに、俺は4番バッターでありながら葉輪から一本も打つ事が出来なかった。」

 

頭を下げている原田を見た成宮は、頭を掻きながらため息を吐いた。

 

「最後のホームランはマサさんのせいじゃなくて俺のせいだよ。」

「いや、あれは俺が…。」

「チームの勝敗を背負う。それがエースってもんでしょ?」

 

成宮の言葉に、原田は顔を上げて目を見開く。

 

「パワプロと投げ合えば1点勝負になるのはわかってた。

 だから負けたのは一也に打たれた俺のせいだよ、マサさん。」

「成宮…。」

「それに、次は俺が投げ勝つから気にしないでいいよ。」

 

最後に成宮は茶化す様に言うと笑顔を見せる。

 

原田は数秒程目を閉じて黙想をすると、強い意思を込めて目を開いた。

 

「秋は俺達が勝つ。」

「うん、俺がマサさんを甲子園に連れて行ってあげるよ。」

 

原田は成宮と握手をすると、成宮にフッと微笑んでから去っていった。

 

「ほんと…、世話が焼けるよ。」

 

原田が去った後、成宮はため息を吐く。

 

「まぁ、これもエースの役割ってね。」

 

そう言うと成宮は上を向く。

 

そして帽子で顔を隠すと涙を流したのだった。




本日は5話投稿します

次の投稿は9:00の予定です

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