絢の軌跡Ⅲ   作:ゆーゆ

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四月二十二日 前兆

 

 絶対に足を止めるな。何度も声に出さず呟きながら、二刀小太刀『絶佳』を逆手に構えて走り回る。

 大蜘蛛の魔獣は目に見えて衰えていた。無数に浮かんだ裂傷はどれも浅いけれど、体液が流れ出るに連れて動きが鈍りつつある。頃合だ。

 

(背と腹の間―――)

 

 背後へ回り込むと同時に跳躍し、くびれた部分目掛けて体重と共に絶佳を突き立てた。即座に距離を取って身構えていると、大蜘蛛はぴくぴくと痙攣した後、やがて息絶えた。セピスの欠片が地面に散らばって、私は安堵の溜め息を付いた。

 

「敵性魔獣の沈黙を確認……ふう。私が最後だったみたいですね」

 

 振り返ると、既に大蜘蛛の群れは消えていた。私が内の一体と対峙している間、各々が私よりも先に討ったのだろう。

 このイストミア大森林に足を踏み入れたのは、今から一時間ほど前。セントアーク大聖堂の大司教様の依頼で、『エリン』と呼ばれるラベンダーの採取地を目指した私達は、ちょうど目的地に辿り着いてすぐ、大蜘蛛の魔獣に囲まれてしまったのだ。

 魔獣による両翼包囲に手こずりはしたけれど、目立った負傷もなく殲滅できたのは、この演習におけるひとつの成果と言えるかもしれない。私自身、自分に及第点を与えたい。

 

「上出来だ、シーダ。小太刀の扱いにも、大分慣れてきたみたいだな。君を見ているとフィーを思い出すよ」

「手応えは感じています。……でも、まだ思うようにいかないことの方が多いです」

「フィーなら俺よりも適切な助言をくれると思うんだが……覚えてるか?フィーのこと」

「はい。内戦中にお会いした方ですよね」

 

 旧Ⅶ組の面々とは、一通り挨拶を交わしたことがある。フィーさんはとりわけ印象に残った女性の一人だ。背丈は私と同程度で、双剣銃という一風変わった武具の使い手だったと記憶している。

 言われてみれば、体格や得物に共通点が多いかもしれない。もしも今後会う機会があったら、是非とも指南して欲しい。

 

「よし。時間もないし、早速採取に当たろう。手分けして付近を探索してくれ」

「「はい」」

 

 採取籠を組み立てて、背中に背負う。私はユウナさんとペアを組んで、辺り一帯に点在するエリンの花の採取を始めた。

 探索を開始して間もなく、嗅覚を頼りに周辺を見渡していると、ユウナさんが頭上を見上げながら、考え込むような素振りを取っていた。

 

「ユウナさん、どうかしましたか?」

「ん……何処となく、似てるなって思って」

「似てる?」

「ほら、上位属性が働いているっていう、この奇妙な雰囲気。『ベルライン』の近くでも、同じような感覚があったような気がするのよね」

 

 上位属性。大森林に足を踏み入れた直後に、リィンさんも言及した点だ。

 通常の四属性とは異なる、空、時、幻の上位三属性。遺跡や霊脈が集う霊的な場では、例外的に上位属性が働いて、異様な空間を生み出す場合があるそうだ。このイストミア大森林もそのひとつであり、私自身奇怪極まりない風の流れに、戸惑いを覚えていた。

 しかし、ベルラインと来たか。いい機会だから、詳しい話を聞いておいた方がいいかもしれない。

 

「ベルライン……私も耳にしたことはありますけど、一体クロスベルで何が起きたんですか?」

「そうねー。何から話せばいいのやら……。ノーザンブリア異変に匹敵する、史上稀にみる自然現象だって言われてるわ」

 

 クロスベル異変。昨年一月に発生した一連の現象は、故郷であるノルドにまで伝わっている。大まかな事実を把握はしていたけれど、まるで理解に及ばないものだった。

 

「一年半ぐらい前になるわね。ちょうどクロスベルが、帝国に……年が明けた頃に、大きな地震が起きたの。同時にクロスベルの東部に大きな亀裂が走って、そこから『光の障壁』のような物が生まれたのよ。見た目としては、銀色の虹っぽい感じかしら」

「銀色の……虹のような壁、ですか?」

「そうとしか例えようがないのよね。とにかく銀色に輝く光が、クロスベル州を二分しちゃったの。一時からその壁が、ベルラインって呼ばれるようになったのよ。当時は帝国軍と共和国軍の衝突もあってかなり物々しかったけど、もうそれどころじゃない大騒ぎになったわ」

 

 無理もない。得体の知れない障壁が、物理的に州を二分したのだ。両国にとっても予想だにしない天変地異に慌てふためき、一時停戦を余儀なくされ、事態の把握と収拾に当たり始めたらしい。

 現象の規模が大き過ぎて、当時の状況が想像できない。今現在は落ち着きを取り戻しているのだろうか。

 

「でも列車は、今でも行き来しているんですよね?」

「亀裂は鉄道付近に生じなかったのよ。それでもあの時は全列車が運行停止になって、物や人の流れが完全に止まっちゃってね。まさに大混乱」

「完全に……飛空艇とかもですか?」

「こらこら二人共。今は採取に専念してくれ」

 

 リィンさんの声で、手と足が止まっていたことに気付く。

 ベルライン。大いに興味を惹かれる謎ではある。しかし今は後回しにする他なさそうだ。この演習が終わって落ち着いてから、改めて話を聞いてみよう。

 作業を再開してほどなく、採取籠の七分目程度にまでエリンの花は集まっていた。既定量は満たしているし、こういった採取地での採り過ぎは控えた方がいい。

 

「リィン教官、これぐらいで十分ですよね?」

「ああ。長居は無用だ、早速―――」

 

 言い掛けて、リィンさんが振り返る。リィンさんは胸元の辺りに右手をやりながら再度私達の方を向いて、声の音色を変えた。

 

「今そこに、誰かいたか?」

「「??」」

 

 質問の意図が分からず、答えに窮した。当たり前だけれど、私達五人以外の人影は、何処にも見当たらなかった。

 

___________________

 

 

 一台の導力車がサザーラント州北の街道を駆け抜ける。助手席にはリィン、後部座席にクルトにアルティナ、シーダの三人。そして運転席では鼻歌交じりにハンドルを握るユウナが、上機嫌で導力車を走らせていた。

 

「うんうん、思っていた以上に順調よね。セントアーク方面の要請は、午前中に片が付くかも」

「シーダさんの貢献度が高いと考えます。迷い猫と川魚の確保はお見事な手並みでした」

「わ、私は別に、そんな」

「……少なくとも、僕らには真似できそうにないさ」

 

 事実として、シーダの独特な感性はとりわけ良い方向に働いていた。

 迷い猫の捜索時には、まるで猫が猫を追うかの如く瞬く間に対象を見付け出し、飼い主が到着するよりも前に手懐けてしまった。「集落から逃げ出した羊を追い掛けるようなものです」というシーダの語りに、リィン達は半笑いで耳を傾けていた。

 川魚についても同様だった。釣り上げたのはリィンだったが、「あの辺りに大きいのがいます!」という野性味溢れる勘所により、釣り糸を垂らして三分後に依頼を達成するに至っていた。

 更には移動手段としてレンタカー店の利用をユウナが提案、リィンが悩みつつも許可を出したことで、最短ルートに近い道筋でセントアーク方面の要請をクリアーしていた。

 

「クルト、位置座標を確認してくれ。魔獣の目撃情報があったのは、この辺りだな?」

「はい。あと二セルジュぐらい先の、大岩に囲まれた地点です」

 

 そうして最後に辿り着いた先が、北サザーラント街道上。機械のような魔獣を目撃したという証言が正しければ、付近に件の魔獣が潜んでいてもおかしくはない。

 やがてリィンの指示でユウナが車を止め、車内で装備品の確認を始めた。

 

「総員、クオーツ設定を戦闘特化型に変更。それとユウナ、実弾の使用を許可する。準備してくれ」

「っ……はい。了解です」

「装備が整い次第、哨戒を開始しよう」

 

 リィンの言葉少ない指示が、徒ならぬ空気を生んだ。自然と口が噤まれ、ユウナが銃弾を装填する音だけが鳴り続ける。段々と緊張感が張り詰めていく。

 装備確認を終え、全員が車外に出た頃になって、クルトはずっと抱いていた疑念をリィンに投げ掛けた。

 

「シュバルツァー教官。アルティナもそうですが、魔獣に心当たりがあるんですか?」

「待て」

 

 リィンが手をかざしてクルトの声を遮ると、辺りに一陣の風が吹いた。リィンは周囲をぐるりと見回して、左手で太刀の鞘に触れた。

 経験と勘が感じ取った気配。リィンは草木が生い茂る前方を見据えたまま、シーダに声を掛けた。

 

「シーダ。何か聞こえるか?」

「か、微かにですけど……前方から、何か来ます!」

 

 先んじて何者かの接近を感知したシーダの声で、全員が得物を手に取り、身構える。

 金属が擦れるような音と、重量感のある走行音。遥か遠方から滲み寄る脅威が段々と明確になっていき、地面から伝わってくる振動が強みを増す。リィンは声を張った。

 

「君達も一度は耳にしているはずだ。結社『身喰らう蛇』が所有する、自律兵器……人形兵器だ!」

「そ、それって、クロスベルにも持ち込まれたっていう、あの!?」

「内戦時に暗躍していた謎の組織か……!」

「……蛇?」

 

 ―――蛇にだけは関わるな。故郷を離れた長男と文通を続ける中にあったやり取り。ノルドの外に躍り出る上での、ひとつの決めごと。

 触れてはならない世界があると、何度も念を押された。姉の左目を奪ったのが、蛇の毒牙なのだとも。

 

「来るぞ!総員、戦闘準備!」

「力を貸して、お兄ちゃん、お姉ちゃん……!」

 

 ごめんなさい。私はこれから、約束を破ります。覚悟を決めて、シーダは絶佳を抜いた。

 やがて全貌を現したのは、三体の人形兵器だった。アルティナが即座にクラウ=ソラスのサーチモードを起動させると、呼応するようにリィンはARCUSⅡを手に取った。

 

「解析完了。ファランクスJ9シリーズ、中量級の量産型攻撃機です」

「ブレイブオーダー、起動!」

 

 ARCUSⅡの新たなる領域。リィンの思考と情報が、戦術リンクを介して四人へと伝わっていく。

 防御陣『鉄心』。守りを固めた陣形にシフト。

 敵火力規模。直撃は致命傷に繋がる。

 短期決戦。人形兵器に体力の概念がない以上、長丁場は絶対に回避。

 確固撃破。機を突いた一転攻勢。

 脚部関節と頭部センサー系統の破壊。取っ掛かりは―――アルティナ。

 

「クラウ=ソラス!」

 

 ファランクスJ9が数発の誘導弾を頭上に撃ち出した刹那、クラウ=ソラスが障壁を展開させた。着弾と同時に火と黒煙が視界を阻む中、アルティナを除く四人は、真っ直ぐに標的目掛けて地を駆った。

 

「二の型、疾風!!」

 

 リィンが放った連撃がファランクスJ9の脚部を砕くと、クルトとユウナの追撃がセンサー系統を力任せに破壊した。攻撃に特化した機体に自己修復機能は搭載されておらず、攻撃の手段を失ったファランクスJ9は、翼を捥がれた鳥のように地面へと崩れた。

 

「鬼さん、こちら!」

 

 シーダは陽動に徹した。接近するやいなや一気に後方へと飛び退いて、残り二体の注意を引く。

 たとえ誘導弾が飛来しても、アルティナが応じてくれる。その隙を三人が無駄にはしない。戦術リンクによる連携と、それとは無関係の信頼感が、シーダの果敢な陽動を支えていた。

 

「っ……!?」

 

 もう一体が制御不能となった時点で、シーダは『とある異変』を察した。

 おかしい。遥か遠方から、似たような金属音が聞こえる。いや、それだけではない。今この場における戦闘音とは別の同種の音が、紛れ込んでくる。

 人形兵器との戦闘行為?自分達とは別の誰かが?一体、何が起きている?

 

「せぇいやああ!!」

 

 ユウナの打撃が最後の一体を仕留めると、辺りに静けさが広がった。

 しかし一人として武装を解こうとはしなかった。全員が得物を手にしたまま、乱れた呼吸を意識して整えつつ、リィンの指示が下るのを待ち構えていた。

 

「り、リィン教官」

「分かってる」

 

 戦術リンクによる意思の疎通。ブレイブオーダーによる副次的効果は、シーダからリィンに、そしてリィンから残り四人へと及んでいた。

 ややあって。ファランクスJ9の残骸が完全に動きを止めた頃、前方から一人の屈強な男性が歩み寄って来る。

 

「動くな!」

 

 リィンが太刀の切っ先を男に向けて警告を発すると、男は不服そうにゆっくりとした動作で両手を上げた。

 

「おいおい、いきなり得物を向けないでくれよ。随分と物騒な兄ちゃんだな」

「申し訳ございません。無礼を承知の上で、お願いがあります」

 

 リィンは一転して柔らかな笑みを浮かべて、男に応じた。 

 

「俺達はトールズ士官学院第Ⅱ分校の者です。俺が教官で、彼らは俺の生徒に当たります」

「ほう、トールズの学生さんか。そういや、地方演習に来てるって話を市内で聞いたっけな」

「そうなんです。今は実戦訓練中でして……少しの間だけで構いません。訓練にご協力頂けませんか?」

「……成程な。大方察しは付いたぜ」

 

 男は感心したような様子で人形兵器の成れの果てを一瞥した後、リィンの提案に対して視線と身振りで承諾の意を示した。

 

「ありがとうございます。……アルティナとシーダは周囲を警戒、ユウナとクルトで彼に対応してくれ」

「「了解」」

 

 実戦を想定した迅速な判断と対応。もしも戦地で予期せず不審者と遭遇してしまったら、という前提の下、四人の生徒らはすぐさま行動に移った。

 アルティナとシーダは陽動や罠の可能性を考慮し、周辺を哨戒して備える。そしてユウナが男に銃口を向けて、クルトが身なりの確認を始めた。

 

「クク、おっかねえな。間違えても撃たないでくれよ、嬢ちゃん」

「あはは、できるだけそうします。……クルト君」

「ああ」

 

 革製の丈夫そうなベストの中身を、念入りに調べていく。

 私物と思しき数点を除いて、目立った所持品はワイヤー、ナイフ、小型の工具と鉄製の杭。武装と呼べる類は、強いて上げればナイフぐらいのもの。

 不審な点は見られない。だが単独で街道を移動中の身にしては、軽装が過ぎるという見方もある。

 

「失礼ですが、ご職業は?」

「狩人ってやつが一番近いだろうよ。たまに仲間連中と手配魔獣を討伐したりはするがな」

「この街道にも、狩りが目的で?」

「まあな。……なあ教官さんよ、ちょいといいか?」

 

 男は両手を後頭部に添えたまま、後方から一連のやり取りを見守っていたリィンに声を掛けた。

 

「どうかしましたか?」

「いやなに、実戦訓練だって話だからな。俺からもひとつ提案だ」

「……提案?」

「おらよ」

 

 それはまるで、無から生じた有。突然クルトとユウナの足元に、鈍い音を立てて何かが転がった。

 黒色の握り拳大。その正体を察したリィンは、あらん限りの声を捻り出した。

 

「スタングレネードだ!!」

「「!?」」

 

 男の余裕そうな笑みを最後に、周囲に光が溢れた。間一髪で視覚と聴覚を遮断していたリィンは、すぐさま復帰して辺りの状況を確認し始める。

 閃光音響弾を屋外で使用すれば、本来の効果は薄まってしまう。至近距離と言えど、対処法さえ間違わなければ被害は最小限に抑えられる。

 

「総員、無事か!?」

 

 リィンの問いに、四人の声が応じた。リィンと同じく寸でのところで目と耳を防護できていたのは、日頃の訓練の賜物と言えた。

 

「アルティナとシーダは上空、ユウナは導力車を回せ!」

「了解!」

「シーダさん、飛びます」

「は、はい!」

 

 ユウナが導力車に駆け込み、キーを回してエンジンを吹かした。アルティナとシーダはクラウ=ソラスと共に高度を上げ、上空から周囲を見下ろした。

 たったの十数秒で逃げ果せるはずがない。何処かに潜んでいるはずだ。

 

「っ……だ、駄目です。見当たりません」

「ですが死角は数箇所あります。範囲一セルジュ以内に計四箇所確認できます」

 

 一見して人影は見当たらない。しかし上空からでも目が届かない死角が存在した。

 予断と深追いは禁物。だが見過ごす訳にもいかない。リィンは両者を天秤に掛けながら、ユウナとクルトに指示を下した。

 

「ユウナはいつでも出れるよう車内で待機。導力車は無事だな?」

「はい、損傷はありません」

「クルト、俺と一緒に来い」

「了解です」

 

 周囲を警戒しながら、四箇所の死角をひとつずつクリアリングしていく。最後の一箇所に足を運ぶと、そこに男の姿はなく、代わりに驚愕の光景が広がっていた。

 山積りにされた残骸の数々。シーダが聞き取った戦闘音の出処。先ほど五人掛かりで迎撃したファランクスJ9シリーズの機体が、見るも無残な姿へと変貌していた。

 

「これは……これを全て、あの男が?」

「ああ。だろうな」

「ば、馬鹿な。たった一人で、こんな数を無力化したって言うんですか!?」

 

 丸腰も同然の身で、十数体の人形兵器を苦もなく退ける。真っ先に連想されたのは、人の域を超えた使い手達。表舞台にも、そして裏の世界にも、数える程度しか存在しない。

 

「アルティナ、演習地と連絡を取れるか?」

「……繋がりません。恐らく距離的な問題です」

 

 駄目か。取り急ぎの行動を思案していると、逆にリィンのARCUSⅡの着信音が鳴った。ディスプレイ上には、ちょうど今日になって登録したばかりの番号が表示されていた。

 

『もしもしリィン君?ヴィヴィだけど、今話せる?』

「ああ、大丈夫だ。どうかしたのか?」

 

 セントアークで一ヶ月半振りの再会を果たした同窓生。帝国時報社の社員でもあるヴィヴィの報せに、リィンは益々表情を歪めた。

 

『リィン君達、色々と調べて回っていたでしょ?だから何か関係があるのかなって思って。どうかな?』

「……情報提供、ありがとう。俺達もこれからセントアークに戻るよ」

 

 落石による列車の脱線事故。何故こうも立て続けに負が連鎖をする。結社の人形兵器に、得体の知れない男の出現。早合点をするつもりはなくとも、穏やかではない何かが起きていると考える方が自然だ。

 

「シュバルツァー教官、何かあったんですか?」

「移動しながら話すよ。警戒レベルBを維持したまま、セントアークに戻ろう」

 

 太刀を鞘に納めて、リィンは肩の力を抜いた。同様に武装を解いた四人を見渡しながら、リィンは柔らかな声で言った。

 

「四人共、いい動きだった。日頃の訓練の成果が出ているな」

 

 あの状況下でも冷静さを失わず、指示通りに的確な行動を取ってくれた。生徒達の頼もしさが何より誇らしく、嬉しかった。

 

「な、何ですか急に。気味が悪いわね」

「まあ、今は素直に受け取ってもいいんじゃないか」

「シーダさんはもう少しクラウ=ソラスに慣れて下さい。上空でフラフラされては困ります」

「だ、だって急に高く飛ぶんだもん」

 

 それがひとつの過ちを生む結果に繋がるとは、考えてもいなかった。

 

 

 

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