学級委員編前編です……まさか二話かかるとは。
後編は九時に投稿します。
Q:オールマイトの授業はどうですか?
僕の
Q:あ、あれ? あの、オールマイトの授業はどんなかんじですか?
だって僕が雄英生じゃなかったらやっぱり続報に期待するもん。いや、でも雄英に来てなかったらそもそも生きてなかったかもしれないな。あの時誘われなかったら、もう諦めてたと思うし。
Q:おーい……
あ、他の皆がなんて答えてるのか気になるし、もしかしたら対応に
Q:行っちゃった……えー、気をとりなおしまして……あ、そこの君! 平和の象徴が教鞭をとることについて……
教室に入って、自分の席につく。昨日とほぼ同じ面子だけど、瀬呂君の代わりに飯田君がいた。
「おはよう」
「やあ、おはよう緑谷君!」
快活に挨拶を返してくる飯田くんに、黙って指を立てる常闇君、そして今日は口田君が無言だけど軽く頭を下げて挨拶を返してくれた。轟君はチラッとこっちを見たきりボーッとしてる。八百万さんは……なんか熱心に百科辞典らしきものを眺めてるな。
「緑谷君」
「ん?」
席から立った飯田君が真っ直ぐ僕に向かって歩いてきた。
「腕は、リカバリーガールに治してもらえなかったのか?」
「いや、今日は実技無いから明日までかけてゆっくり治すんだって」
「そうか。それならいいんだが」
そういえば左腕、三角巾で吊ってたんだった。別に動かないわけじゃないんだけど、動かすと治療に触るからギブスで圧迫固定してるらしい。ここ数年は怪我をしてもすぐ治してたから、その不便さをすごく久しぶりに思い出した。
まあ、痛いのだけはごまかしてるからすぐうっかり忘れるんだけど。
「その、緑谷君」
「うん?」
「俺は君を信じる」
飯田君の腕がズバッと空を切る。
「君を信じて全力でぶつかっていく。君も、手加減は無用だ」
「……手加減、ね」
「こんなもんだよ? 僕の全力なんて」
「別に、腕力だけでヒーローになれるわけじゃないだろう。ぼ、お……僕の得意分野は足技だぞ?」
「僕?」
「僕だ」
……なるほど。
「わかった。じゃあよろしくね。飯田君」
「ああ、お互い頑張ろう緑谷くん」
飯田君、すごい真面目なんだな。元から真面目そうだとは思ってたけど、想像以上だ。がっちり握り合った手をほどいて、僕らは自分の席につく。信じる……信じるか。信じられるなりの物を返したいよな、そう言われると。
返せる当てなんて無いんだけど。
「おはよう常闇君、
「今日も早いな緑谷」
「オハヨ!」
隣の席の二人に挨拶すると、常闇君はチラッと僕の腕を見た。
「緑谷、お前の
「う、うん。ありがとう」
腕の話じゃないのか。まあ、飯田君との話が聞こえてたんだろうな。いや、そう言えば昨日マフラーを三角巾代わりにしてたな。そっちのことか?
「常闇君のも似合ってたよ」
「そこは格好いいと言うところではないかと思うが……まあいい。素直に受けさせてもらおう」
「……」
「……」
「あ、結構遠慮なくやっちゃったけど」
「お互い様だ。最後はかなり危なかった……しかしどうしても一つ解せないんだが」
「なに?」
「最後テープを切ったのはどうやったんだ?」
「あああれ……あれね」
テンション上がってたのか、つい勢いで
「き、聞きたい?」
「ああ」
「……爪を割って、その断面で擦り切ったんだよ」
見学中にマフラー下の柄に全力でデコピンして爪が割れるか検証したり、その爪でテープが切れるか試したりもした。完璧な言い訳だ。問題は聞いててかなり気持ち悪いこと。
「そ、そうか」
「イタタタタ……」
うん。常闇君が若干引いてるし、黒影君は涙目だ。自分で言ってても背筋ぞわぞわするからね。申し訳ない。
ちなみにその爪はすぐにリカバリーガールに治療してもらった。流石に利き手だしね。
「あー……ごめん」
「構わんが……壮絶だな」
「テンション上がっちゃってて……つい」
「それが
「うーん、気をつけてみるよ」
「それでは足りませんわ」
おっと、突然八百万さんが話に入ってきた。
「おはようございます緑谷さん、常闇さん。お話中失礼しますわ」
「お、おはよう八百万さん」
「構わんが、足りぬとは何の話だ?」
パタンと机の上の辞典のような物を閉じ、腕と足を組みながらこちらを向く八百万さん……峰田君が喜びそうなポーズだ。
表情は真剣……というよりなんか余裕無い気がする。妙に敵視されてるというか、僕に勝ちたがってるような。その場で道具を出せるというのと、あらかじめ準備している点の違いはあれど、素の身体能力と道具、それと発想勝負なところがあるから僕に対抗意識でも燃やしてるとか? まさかね。
「失礼ながら緑谷さん、痛みに鈍くていらっしゃいますか?」
「い、いやいや、別にそんなことは無いと思うけど……」
「ですが、痛くても我慢すれば良いと思っていらっしゃるでしょう」
「そりゃまあ……そうかも」
「それが甘いと言っていますの」
思わず常闇君の顔を見る。意味が分からないよね……そう思って同意を求めたのだけど、常闇君は深く考え込むような動作をしていた。え、八百万さんが何を言いたいのか常闇君にはわかってるの?
「緑谷、俺があのときテープを構えたのは、多少のダメージではお前はひるまないと思ったからだ」
「緑谷さんのほうも、多少の痛みなら構わないと思って無茶な飛び込み方をしたのでしょう?」
そ、そこまで考えてたかな……まあ、痛いのは我慢すれば良いと思ってるのは確かだけど。あ、でもそうか。
「ダメージを気にしない……その結果確保されかかった」
「もしあれが……そうですね、麗日さんであれば触られた時点でほぼ無力化されてしまうでしょう。もちろん常闇さんの能力を把握しきったと判断したからこそでしょうが、結果が確保証明テープです。ダメージを耐えれば良いと思っているからこそ、相手の奥の手などに対する警戒心が薄いのですわ」
そう言われてみると、そんな気もするかもしれない。
「あえて左腕を使った尾白さんへの対処、芦戸さんの溶解液への飛び込み、そもそも常闇さんとの殴り合い……訓練の成績としては評価しましたが、実際は
八百万さんが組んでいた腕をとくと、胸の前で両手をあわせてゆっくり開く。その手には……スタンガン?
「何より私相手にそのような甘えは通じないと思ってくださいな」
「う、うん……」
向けられたスタンガンがバチバチと音を立てる。やっぱりなんか敵意を向けられてる気がするけど、その割に塩を送ってくれてるような? 昨日の講評の時も僕に一票入れてくれたし。ちらっと隣を見てみると、常闇君と黒影君は若干引いているようだった。そりゃいきなりスタンガン出して突きつけられたらそういう反応にもなるよね。
「私から言うことはそれだけですわ。それではご歓談中失礼しました」
「い、いや、ありがとう……」
しかし彼女は気にした様子も無く、言うだけ言うと満足そうに辞典に向き直ってしまった。結局なんだったんだ? 宣戦布告?
ちらっと常闇君に目をやり意見を求めてみるけど、彼も首を横に振る。黒影君も。エミ……誰もわからないみたいだ。
とりあえず、僕の中で八百万さんはちょっと変な人ということになった。
まあいいや。常闇君も特に話したいことないみたいだし、昨日の朝に引き続きクラスメイトの個性をまとめる作業に戻ることにしよう。
うーん、上鳴君はコスチュームに指向性補助を組み込んだ方が良いな……というか、全身から垂れ流しだったから救助の時むしろ邪魔になる。絶縁素材のマントとか、仲間や救助対象を守るための装備を組み込まないと話にならないぞ。個性把握テストの時もあまり応用利かせられてなかったし……有用な個性にあぐらかいてる人に多い傾向だな。次いこ。ええと次、次、切島君の課題は……機動力だな。硬化に加えて鋭利な形に変形することが出来るから近接戦闘では特に課題はない。人を庇うことだって出来るだろう。問題はただただスピード。これは装備で補うしか無いのか……? 硬化って個性である以上、装備は多少無茶が出来るしな……うん。とりあえず次だ。そう、障子君。彼の課題は……
次は蛙吹さん……常闇君……芦戸さん……瀬呂君。いや、
「おっはよー緑谷!」
芦戸さん……芦戸さん? あ、また夢中になってたか。気づけば教室の座席はあらかた埋まっている。
「お、おはよう芦戸さん」
「アシドサン?」
「え、芦戸さん……芦戸さんだよね?」
「ああ、じゃなくて。私には呼び捨てで良いって言ってくれたのに、緑谷はさん付けなの?」
「そっちのほうが言いやすくて……大体、昨日もそうだったし……」
「ふーん? まあいいけど。それでさぁ」
ぐ、ぐいぐい来るな……ナチュラルに机に座られちゃったぞ、うひぃ近い……そして峰田君が凄い目でこっちをみてる。こ、ここは飯田くんに助けを……
「(飯田君、芦戸さんが机に座ってるんだけど……)」
「(む、緑谷君、芦戸君と話したいのだな? むむむ……時間もそうはないし、注意は後でにするぞ! ちゃんと後でするからな!)」
……何となく、何も伝わらなかったことだけがわかった。
「おーい、緑谷、聞いてる?」
「あ、ご、ごめん、なんだっけ?」
「ほら、昨日のマフラー、耐食性とか言ってたじゃん」
「あ、あ、ああ、うん」
昨日確か説明した……よな? 戦闘中だったからおざなりだったけど。
「私の個性さ、『酸』ってよんでるけど別に酸じゃないよ?」
「え」
「昨日緑谷のために診断書見直してきたんだけど、私の溶解液は化学反応を起こしてるわけじゃなくて分子間力? って言うのを直接弱める……んだったかな」
「えええ!?」
「だから頑張れば金でもガラスでもダイヤモンドでも溶かせるんだよ。すごいでしょ!」
「……」
「危ない橋を渡っていたな、緑谷」
「八百万さんの警告が身にしみたよ」
「それでさ……」
常闇君の一言に深く同意する。最後芦戸さん
いやでも頑張ればって言ってることを考えれば、ちゃんと素材をえらべば溶けにくくはなるのか。それに
「もう、緑谷ぁ」
「あ、ごめんごめん。ちょっと芦戸さん
「え、私ようのマフラー作るの?」
「ようっていうか、対策、ね。対策」
「へー、出来たら私にも一本ちょうだい! 私、張り切り過ぎると
ああ!? なんだか峰田君が殺気と怨念のこもった目でこっちを見ている!?
「溶けるのはかわんない、よ?」
「それでも!」
「ええと……予算の範囲で検討します……昨日結構コスチュームぼろぼろになったし」
「ちぇー」
いや、実際コスチューム半壊したからさ。スティック行方不明だし……ってそうか。
「そう言えば、芦戸さん僕の武器は……」
「ああ、あのステッキ? 尾白君との時に溶かしちゃったよ。見えてなかった?」
「ステッキじゃなくてスティックね。そっか、それでか」
多分尾白君と一対一をするために牽制に使ったんだろうな。んで、二回目で冷静に対処した芦戸さんが
「そういえば妙な形をしていたが……スティックとはなんだ?」
「ホッケーっていうスポーツの道具だよ。丸まった方じゃなくてまっすぐな方持つところがステッキと違うところかな」
「ふむ。ああいった長物を使う心得があるのか? 正直投げて使ってる印象しか無いのだが」
「尾白さんを引っ掛けて投げたのは見事でしたわね」
「あはは、ありがとう。でもそれはこう、傘で誰でも一回はやる悪戯じゃない? 転ばせるくらいだけど」
「オイラはスカートめくりしかしたこと無いけどな!」
まあ僕はいつも転ばされて引きずり回される側だったけど……って誰だ今の。普通に八百万さんと峰田君が話に入ってきてる。
「まあ、そういう心得は無いよ」
「じゃあなんであんなの持ってたの?」
「それはその……衣装とワンセットだったっていうか……」
「ふむ……丸とバツの意匠が刻まれていたが」
「いや、それは……あのさ、笑わないでほしいんだけど」
「うん?」「ええ」「なにー?」「おお?」
「あれ丸とバツじゃなくて『t』と『o』なんだ。で、スティックの形がアルファベットの『J』。モチーフは『
「つまり?」
「スペルは違うけど……『
「「「「……」」」」
僕の渾身の一発ギャグが滑るのと、予鈴がなって相澤先生が入ってくるのは同時の出来事だった。
いや、確かに笑わないで欲しいって言ったけど!
気がつけばブックマークが100件超えていました。
10人以上の方に評価頂いていました。
ありがとうございます。