B-2ed   作:管蘿乃

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遅くなりましたが、救助訓練編開始です。
今回は本編5話、まとめ1話の六話あります。3時間ごとに投稿します。


B_12thD『救助訓練編 1』

「はっ、はっ、はっ、はーっ……おはよう!」

 

 僕の雄英ヒーロー科 (ヒーローアカデミア)四日目。

 危なく遅刻するところだった。教室に駆け込む途中で相澤先生追い抜いたぞ……

 

「緑谷君、予鈴1分前だぞ!」

「ごめん飯田君! すぐ着席するから勘弁して!」

 

 すっごい睨まれたんだよ!

 

「遅かったな緑谷」

「オハヨ」

「あ、おはよう常闇君、黒影 (ダークシャドウ)君。いや、野次馬してたら道に迷いかけて……」

「野次馬ですか? 低俗ですわね」

「おはよう八百万さん、昔からの趣味なんだよ。それに、俗に目を向けることもヒーローには大事だと思うよ。僕は」

「それで、何を見てきたんだ?」

「それは……あとでね。先生来た」

 

 教室に入ってきた相澤先生に当然のように睨まれた。いや、もしかしたら教室に入る前から睨んでたのかも知れない。まあ、理由がわかってる分普段より気持ちは楽だけど。

 

「連絡事項は特にない。ただ、午後のヒーロー基礎学にはちゃんと備えろ。以上HR終わり」

 

 あっさりとHR終わったな。すぐ授業が始まるだろうけど、それまでに質問に答えることが出来そうだ。

 ……でも明日からは遅刻しないようにしよう。まだ四日目だけど、朝から皆と会話をしないとあんまり学校に来た気がしない。母さんとも約束をした『高校生活を楽しむ』ための必須事項だ。

 

「それで何を見たんだ?」

「ああ、朝からヒーローの捕り物があったんだよ。僧坊ヘッドギアって連続強盗犯でしょ? ひき逃げ、立てこもり……立てこもりは現在進行形だけど、オールマイトが向かってるらしいんだよね」

「ヒーローの追っかけか」

「昔っからの趣味なんだ……ただ」

「ナンダ?」

 

 僧坊ヘッドギアにMt'レディとシンリンカムイが出てたのは良い。立てこもり犯は個性を使ってるのが映像でわかる。

 だけど、ひき逃げは?

 はっきり言って、普段なら僕はひき逃げなんか見向きもしない。目の前で起きたら被害者を助けようとはするけれど、少なくとも加害者に関してはナンバープレートを押さえるだけで追っかけたりはしない。それを追いかけたのはオールマイトが関わってたからだ。でもなんでオールマイトが出てきたんだ? 個性犯罪じゃないんだぞ?

 

「いや、なんかね……」

 

 オールマイト、何か焦ってる……? そんな気がしてくる。僧坊ヘッドギアの捕り物にも顔を出していたし、そのまま轢き逃げ犯を追いかけて行った。あげくその地区のヒーローがいるにも関わらず立てこもり事件の現場に向かってる。なにかおかしい。ような? ……いや、やめよう。僕がオールマイトの心配なんておこがましいにもほどがある。

 

「僧坊ヘッドギア、道端で錯乱してるところを捕まったんだって。自警団 (ヴィジランテ)が出たって噂になってるんだ」

「ヴィジランテにオールマイト、その地区のヒーローも商売上がったりですわね」

「ダ」

「ああ」

 

 まあ、その自警団 (ヴィジランテ)はそうそう出てこないだろうけどね。

 とりあえず先生も来たしこの話題はここまでね。授業だ授業。なんでもいいからもうちょっと話してたいとかも思うけど、楽しい学校生活にはメリハリも大事なはず。

 ……メリハリか。メリハリとは別かもしれないけど、今日こそ切島君と話さないとな。約束をすっぽかしただけならまだしも、昨日は結局一度も話さないまま帰っちゃったし。マスコミ騒ぎやら何やらあってドタバタはしてたとはいえ、それでもクラスメート一人と話す時間くらい作れなかったわけがない。単純に僕の落ち度だ……昼休みくらいまでは覚えてたんだけどなぁ。

 

 よし、一限が終わった。切島君は……上鳴君となにか話してるな。邪魔しちゃ悪いし、後にしようか……長いな……終わらないな……あ、本鈴 (チャイム)

 

 よ、よーし。二限終わり! 峰田君が早弁したせいで飯田君が嘆いたりミッドナイト先生に連れていかれたりしたけど、基本は滞りなく……え、なに八百万さん、本当に弁当作ってくるのかって? 腕が……いや、最初は体育祭の時に小さめの持ってくよ。迷惑にならない程度の。うん。うん。あ、本鈴 (チャイム)

 

 ……三限が終わったぞ。今度こそ切島君と……な、なんだって!? 今朝の立てこもり犯の続報がネットニューストップで記事になってる! オールマイトは、オールマイトはどうなったんだ!? ……流石オールマイト! これはノートに纏めないと!! ……あ、本鈴(チャイム)

 

 四限が終わったな。とうとう昼休みまで来てしまった。切島君はすぐに学食に行ってしまい、僕は弁当を食べて最終調整で保健室に来てる。当然彼とは挨拶一つかわしてはいない。

 ……駄目すぎだろ僕!

 というか、大変なことに気づいてしまった。

 僕、生まれてこのかた人に自分から話しかけるとかしたことないんじゃないか? いや、まさかそんなわけないんだけど、少なくとも中学三年間でクラスメートに話しかけた記憶がない。せいぜい学級委員として先生からの指示を伝えたりしたくらいだ。後輩くんは……結構自分から話しかけてくれたからなぁ。会話ではいつも僕が受け手になってた。

 そもそも切島君も話しかけてこないしなぁ。さては相当怒ってるんじゃないだろうか? こんなことでビクビクするくらいなら、すっぽかしたりしなければよかったんだろうけど……まあ、今更だよね。

 

「うん、左腕も完璧だね。午後のヒーロー基礎学、頑張っといで」

「ありがとうございます」

 

 よし。切島君と話そう。午後の授業開始まで十分もある。話す。絶対話す。教室に戻ったら最初に話しかける!

 

「お」

「あ」

 

 保健室の前で尾白君と会ってしまった。あー、そっか。あの日の怪我、一番酷いのが僕で二番目が尾白君と青山君、蛙吹さんだったっけ。三番目が常闇君、かっちゃん、飯田君、切島君あたり。

 かっちゃんの爆破を喰らいまくった青山君、上鳴君の放電を喰らいまくった蛙吹さんはもちろん、尾白君は僕のアイアンクローで頭蓋骨にひびが入ったとかなんとか。内容的に軽かったり速攻の治療が有効だったりで僕以外は全員授業後に保健室に一度行って終わりだったはずだけど……朝に相澤先生にも言われたし、一応でもう一度来たんだろう。幸い保健委員の僕は後でクラスメイトがなんで保健室に来たのかを確認させてもらえるから、そこで確認しておこう。

 ……正直なところ、尾白君に何をしたのかあんまりよく覚えてないんだよね。一昨日からのことを考えると、またタガが外れたんだろうな、とは思うけど。

 だろうな、じゃ駄目だってわかってるんだけどな。とは言え芦戸さんに聞いてもよくわかんなかったみたいだし、本人に聞くのは……聞くのは……

 

「あー、その」

「……」

「保健室の利用記録取るから、後で僕か芦戸さんに声かけてね」

「……」

 

 連絡事項だけで切り上げてしまった……いや! 今の僕の優先事項は切島君だし! 尾白君だってはやく保健室で体調を見てもらいたかっただろうし!

 せ、成長は一歩ずつでいいはずだし!

 ……

 情けな……まあ言い訳した以上とっとと教室に戻って、切島君とはちゃんと話さないと。

 

「おい」

「……あ、なに尾白君? もしかしてこのまま保健室に付き添った方が良いかな」

「まるで……まるで俺のことなんか眼中に無いって顔だな」

 

 ここで煽ってくるのかよ。

 ……あ、なんか目頭が熱くなってきた。落ち着け僕。あくまで流れで煽ってきてるだけで、ちゃんと用事あるかもしれないし。

 

「えっと、それで、何か用なの? 僕切島君にようあるから教室に戻りたいんだけど」

「き、切島に何かする気なのか!?」

「え、いや、約束すっぽかしたこと謝りたいだけだけど」

 

 何をそんなに怯えてるのか知らないけど、怯えるくらいなら煽ってこなければ良いのに。尾白君ははくはくと口を動かして……

 

「……蛙吹と青山も保健室に用があるらしいぞ。教室でそんな話してた」

「じゃ、じゃあさっきの話伝えといてよ」

「保健委員の仕事だろ?」

 

 ……なんなんだよ。もう。

 

 

 

 

 

Ding Dong Ding Dong (キン コン カン コーン)!

 

 嘘だったし!!

 

「なにやってた緑谷、弛んでるぞ」

「すいません!」

 

 いや、正確に言えば嘘だった訳じゃない。ただ二人とも、既に済ませていたというだけだ。教室で話してたのも嘘じゃないんだろう。なんだこの地味な嫌がらせ。

 とにかく慌てて席に着いた僕を確認すると相澤先生が口を開く。

 

「さて、今日の訓練は事故に災害なんでもござれの『人命救助 (レスキュー)訓練』だ」

 

「今回戦闘服 (コスチューム)の着用は自由になる。活動に制限が出る場合があるからな。だが俺としては今後改善するために着用することを推奨する」

 

「それから訓練所は少し遠いからバスで移動するぞ。準備ができたらグラウンド横の駐車スペースに集合だ。以上……っと」

 

「今日は俺とオールマイトともう一人で見ることになった。オールマイトが来るからってあんまりはしゃぐな。それじゃ準備開始」

 

 見ることになった……なった? 特別なのか? 今朝のオールマイトの焦りと何か関係が……っと、準備しなきゃ。ええとコスチューム、コスチュームか……殆ど溶けちゃったからマフラーが3本あるだけなんだよな。帽子は一応クッション素材だったからこういう時こそ役に立つんだけど、やっぱり半分溶けてるし。

 

「これを期にデザインを変えたらどうだ?」

「考えとくよ」

「ホネハカッコヨカッタヨ」

「ありがとう黒影君」

 

 集合場所に移動すると、心なしか皆の目が前回より優しかった。マフラーってヒーローっぽいよね。ピエロよりはずっと。

 今のうちに切島君と話を……! と思ったけど、飯田君によって出席番号順二列に並ばされてしまう。当然のようにかっちゃんと僕が最初と最後だけど。

 しかも普通の市バスとかと同じ座席だったから意味ないし。

 隣はなぜか蛙吹さんていう蛙っぽいことが出来る個性の女の子だし。

 相澤先生運転してるし!

 しかしなんだろう。学内を普通に走ってたりするんだろうか。自習のときに生徒が足として使えるように? だとしたらやっぱり雄英は凄いな。

 

「ねえ緑谷ちゃん」

「なに蛙吹ちゃ……さん」

 

 うつりそうになった。危ない危ない。

 

「梅雨ちゃんと呼んで。あのね、私思ったことなんでも言っちゃうの」

「あ……へー」

 

 危ない危ない。思わず身構えてしまった。

 

「緑谷ちゃん、あんまりそうは見えないんだけど、本当に不良なの?」

「はあ……はい?」

 

 何言われたかわかんなくて生返事を返しかけた。危ない危ない……はい!?

 

「皆噂してるの。木刀みたいな棒に、メリケンサックみたいなのが仕込まれたマフラー。相澤先生や常闇ちゃん、尾白ちゃんに対して躊躇いない攻撃。ヒーローらしくないのに派手な警告色の戦闘服 (コスチューム)に、威嚇するみたいな髑髏。凄く不良っぽいわ」

 

 はいー!? 尾白君が一人で勝手に言ってる訳じゃなかったのか!?

 言われたことを頭の中で反芻する。言われると確かに不良っぽい要素があるような無いような?

 

「あ、ねえ梅雨ちゃん聞いて聞いて!」

 

 そして僕が逡巡してるうちに向かいの芦戸さんが会話に入ってきた。ちなみに僕の反対隣には飯田君、蛙吹さんの反対隣は口田君。向かいは芦戸さんの他に常闇君、八百万さん、障子君がいる。っていうか芦戸さん、一体このタイミングで何を話す気なんだ? いまちょっとメンタルにダメージ入ってるから、話題を変えてくれるのは嬉しいんだけど……

 

「なあに三奈ちゃん?」

「その髑髏なんだけどね、超カッコいいんだよ! あの、えっと、緑谷が持ってた骨の棒ね! 『J』の形なんだって」

 

 棒じゃなくてスティックね……ちょまっ! 話題変えないのかよ!

 

「そうなの?」

「そうなの! んでね、真ん中に『to』って彫ってあって、繋げて読むと……えっと……」

この命、正義のために (ボーン トゥ ジャスティス)。緑谷さんはそう仰ってましたわね」

「あ、そうそう! それ! かっこ良くない!?」

 

 う、うわぁああああああああああああああああああああ!!?

 なんでばらした! なんでばらしたんだ! 言え! なんでだ! その話は昨日盛大に滑ってたじゃないか!? 思わぬメンタルへの追撃に思わず頭を抱えて突っ伏していると、蛙吹さんがとんとんと肩を叩いてくる。慰めてくれるんだろうか?

 

「口田ちゃんもカッコいいって」

 

 とどめだった。

 

 

 

 

 

「えと、先輩、二人死にかけてるんですけどどっちが爆豪君でしたっけ?」

「お前、わかってて言ってるだろ」

「じゃあどうして緑谷君は死にかけてるんですか?」

「この件に関しては俺は関係ないぞ。あいつの自爆だ」

「はあ」

「それでオールマイトは?」

「出勤中に働きすぎたそうです。後半から来られると」

「不合理の極みだな、なんのための三人体制だ」

 

「「「スッゲー! USJかよ!!」」」

 

 皆の叫びが演習場に響き渡る。大げさなようだが、実際そう見えるのだからしょうがない。入り口から一望できるだけで見える6つに分割されたブロックは、端から見るとそれぞれが大掛かりなアトラクションのようだ。

 

「地震、台風、火事、水難……あらゆる事故や災害を想定して僕が作った演習場」

 

「その名も『嘘の ()災害や ()事故ルーム ()』!!!」

 

 そしてマジでUSJだった。

 今日の授業を担当してくれる()()()()ことスペースヒーロー13号の言葉に、皆の心は一つに……一つに……多分一つになったことだろう。ちなみに彼は麗日さんの憧れのヒーローらしい。

 

「ええ、それでは訓練を始める前にお小言を……と、言いたいところですが簡潔に行きましょう」

 

「僕の個性はブラックホール、あらゆるものを引き寄せチリにする……最強の盾にも最強の矛にもなる個性と自負しています」

 

「加減をしなければ、ですが」

 

「そう、人を簡単に殺してしまう個性です。学生の頃は結構苦労しました。皆さんの中にもそういう個性の人がいると思います」

 

「超人社会と呼ばれる現代、行き過ぎた個性 (チカラ)を規制し、制御し、一見問題なく成り立っているように見えるかも知れません」

 

「しかし、今朝も一人の(ヴィラン)が廃人に近い状態で発見されました。(ヴィラン)同士の縄張り争いか、自警団 (ヴィジランテ )による私刑 (リンチ)か、強盗殺人犯の彼をさらに上から闇に葬ろうとする動きがある、それがこの世界の真実です」

 

「さて、皆さんには相澤さんの授業で自分の個性の可能性を知ってもらったと思います」

 

「ですからオールマイトの授業でそれを人に向ける危うさを」

 

「そして今回の授業ではその力を人の為に使うことを学んでもらう。それが雄英ヒーロー科 (このヒーローアカデミア)の基礎教育メソッドになります」

 

「皆さんのチカラは人を傷付けるためではなく、助けるためにある」

 

「今日はそれを学んで帰ってくださいな」

 

 以上、御清聴ありがとうございました。そう締め括り一礼する13号に麗日さんが黄色い歓声をあげ、飯田君がブラボーを連呼しながら拍手する。他の皆も大なり小なり思うところがあったのだろう、その言葉に聞き入っていたようだった。

 

 だから僕だけだ。

 話の内容が気まずくて、目を逸らした僕だけが気付いた。

 

「イレイザーヘッド!!」

 

 そう叫びながら手近な誰かを入り口の方に突き飛ばす。押し付けるマフラーは市街地迷彩のリバーシブル。量子ステルスは流石に希望が通らなかったけど、引っ張ると軽く彩度と明度の調整くらいは出来る優れものだ。だから早くいってくれ、目の届かないところに。

 目。

 宙に空いた穴から覗く、悪意に満ちた視線!

 

(ヴィラ——)

「全員一塊になって動くな!!」

 

 あれ、判断ミスった?




救助訓練編、もといヴィラン襲撃編です。
しかし、原作呼んでいて疑問だったんですが、なんでオールマイトが轢き逃げ犯を追いかけるんでしょうね? そりゃ警察がヴィラン受取係なんて揶揄されるのも無理ないなーって思います。
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