B-2ed   作:管蘿乃

21 / 36
本日四話目。
このまま一気に体育祭編に突入します。
別名『緑谷出久の暴走編』お付き合いください。


B_21thD『体育祭編1』

 5日目か、6日目か……いや、もう良いかな。何日目とか、自分の足跡を数えるようなのは。

 

「雄英体育祭が迫っている」

「「「クソ学校っぽいの来たああああああああ!!」」」

 

 だいたいそんな感じで僕の雄英ヒーロー科 (ヒーローアカデミア)は再開した。

 (ヴィラン)の襲撃、臨時休校に自習会、日曜を挟んで今日。うん、無事また授業を受けることが出来るようで本当に良かった。歓声を上げる級友 (クラスメート)をよそに、しみじみその喜びを噛み締める。このまま行くんだ。良かろうが悪かろうが、全力で、この場所にしがみついて。

 あ、誰かが手を挙げた。

 

「あの、あんなことあったばかりなのに大丈夫なんすか?」

「あったからこそ、雄英の危機管理体制がどんなものかをアピールするんだと。まあ警備は例年の数倍に引き上げられるから、お前らが心配することはない」

 

 戸惑いが勝ったらしい上鳴君のもっともな言葉は、相澤先生にさっくりと切り落とされる。

 改めて周りを見ると皆の様子は……実際は興奮半分、戸惑い半分なのをテンションで押してる感じかな。なんか納得。

 

「それに体育祭はお前らに取って()()()()()()()だ。おいそれと中止には出来ん」

 

 ふむ。

 個性の出現に伴って競技の有効性や公平性の調整がとれなくなり、人口と規模が縮小して形骸化したスポーツの祭典『オリンピック』。それに代わり日本のビッグイベントとなったのが雄英体育祭だ。幼い頃からずっと見てきた誰にとっても憧れの舞台。継いだ八百万さんの言になるけれど、全国からプロヒーローもスカウト目的で見に来る、雄英からプロヒーローを目指す僕らにとって最大のアピールポイントでもある。

 ……ということになっている。いや、後半は事実だけども。

 

 シンクロナイズドスイミングやフィギュアスケート、飛び込みなどの芸術点を競うもの。

 カーリングのように戦略性と精密動作性が競技の大部分をしめるもの。

 馬術のように個性を持たないパートナーの能力に依存するもの。

 そも格闘技は体重による階級分けが当たり前なのだ。本当にオリンピックは、純粋なスポーツの祭典は形骸化したのだろうか? 短くとも一週間、長ければ二週間以上行われる国家プロジェクトの代わりが、一日きりのお祭りに務まるだろうか? ましてドーピング問題やパラリンピックの存在を考えれば何をか言わんやである。そんなことある訳が無い。

 そこには国民の持つヒーロー像と、個性の発露先のイメージの統一という日本政府の思惑があった……らしい。

 

 そう思考誘導されてるのを承知の上で、一度常識的に考えてほしい。

 例えば上鳴君と八百万さん。

 健全な高校生同士が、かたやスタンガンを振り回し、かたやバットや木刀を振り回す。そしてそれを見て熱狂するクラスメートや大人達、主にヒーローやその卵。モラルハザードも良いところだ。しかも全国生中継。

 

 真にこの超人社会の倫理と安定を考えるなら、もっと個性を仕事に役に立てて生きられるのだと、ヒーロー以外の仕事もあるのだということにこそ世間の注目を集めるべきだっただろう。あるいは誰でも参加し得る個性を用いたショーかなにかを国家プロジェクトで運営しても良かったかもしれない。なんちゃら (アメリカン)アイドルとかみたいなオーディション番組なんかでもいいはずだ(まあ、サイドキックオーディションだという見方もできるけれど)。

 だけど個性を活かしたアイドル活動なんてのも現実には(ヴィラン)として取り締まられる対象で、公然とそんなことをできるのはヒーローだけなのだ。個性カウンセリングなんてものがあっても一部消防士が許可を取って水の個性を使うことすら認識されておらず、水の個性を持つヒーローが消防士に呼び出されて駆けつけるのが一般的な認識だという。精々耐熱性の高い異形系個性持ちが自分の個性はそっちに向いてるかな? と認識する程度。なお頭の固い面接官だと公平性がなんとか、救助される側が怖がるからなんとかいってそう言うのを積極的に落としに来る。

 

 いろいろ間違ってる。そりゃ個性犯罪は無くならないし、ヒーローも飽和して闇は深まるはずである。

 

 ……まあ、オーディション云々は僕と同じように雄英体育祭に否定的な人間の受け売りだけど、それほど間違ったことは言ってないと思う。それに、ヒーローになる上で最大のチャンスであるからスカウトに来るヒーローを入れないわけにはいかないとはいえ、一般の観客は入れない方向にすべきじゃないだろうか? 少なくとも僕はお母さんを会場に呼ぼうとは思わない。

 呼んでも、多分来ないだろうけど。

 

「上を目指すならこのアピールポイントを使わない手はない。プロに見込まれればそれだけで大きな前進になるしな。三回きりのチャンス、くれぐれも実力を発揮しきれないなんてことにならないようにしっかり備えておけよ。以上、HR (ホームルーム)終わり」

 

 とは言えそんなの僕個人の見解な訳で、今日まで続いたものをどうこう出来る訳も無い。

 僕に出来るのは……いや、僕がすべきことはわかった上で全力で体育祭に取り組むことだけだ……参加できるのかな?

 

 

 

 

 

「それじゃ私たちは学食だからー」

「ええ、また後ほど……相変わらず大きなお弁当箱ですわね」

「お互い様でしょ。たまには学食でランチラッシュ先生の料理食べたいところだけど……」

「あらあら、そんなことで私の相棒 (サイドキック)に成れるのかしら」

「……精進します」

 

 四限、セメントス先生の現国の授業が終わり、昼休み。すなわち昼食の時間。教室を出て学食に向かおうとする人達を見送りつつ弁当箱を取り出す。両手とも万全だから弁当箱もって食堂にっていうのもありなんだけど、やっぱり弁当箱が大きくて場所を取ることを思うと何となく行き辛い。

 そう言えば八百万さん、今日は実技の授業無いのに弁当なんだな。

 

「普段から容量アップを目指そうと思いまして。それに、緑谷さんとこうしてお弁当をいただくのも楽しいですし」

「……あ、ありが……ん?」

「『緑谷少年が、いたぁ!』」

 

 オールマイト?

 

「『ちょっと話があってね……お昼、一緒に食べよ?』」

「は」

「あら」

 

 何故か教室に現れたオールマイトからのお誘いがあった。っていうかなんで? 目の前の八百万さんも、教室から出て行こうとしてた級友 (クラスメート)達も皆一様にびっくりした顔をしている。

 

「あー……それでは残念ですが、お昼を共にするのはまたの機会ということで」

「う、うん……あ、オールマイト、今行きます」

 

 びっくりした顔のままの級友に軽く目礼して、弁当箱を持って彼を追う。何故か案内されたのは仮眠室。仮眠室? 宿直室の間違いじゃないかってくらい設備が充実しているな。小さい冷蔵庫に電気ポット、ソファー……中央に置かれた机に弁当箱を広げて、まさかのオールマイトが入れてくれたお茶を頂く。えー……ファンに殺されてしまう。いや、むしろ何がなくとも僕が死んでしまう。

 っていうか、なんで呼ばれたんだろう僕は。

 

「『本当はね、もっと早く話をしようと思っていたんだ』……あ、お弁当は食べながらで良いよ?

「は、はい。いただきます」

「『うんうん。身体はヒーローの資本だからね!』」

 

 慌てて箸をとり、オールマイトの顔を窺いながら弁当をつまむ。その割にはオールマイトが食事をする様子は無くてなんか落ち着かない。

 

「『こうやって面と向かって話すのは、3度目かな? ヘドロ(ヴィラン)を一度捕らえた時。その後の君の行動を問い質した時。そして今だ。合格通知の時もいろいろ言ったけど、一方的だったからね』」

「あむ……んぐ、そ、そうですね」

 

 ……どう考えても多すぎるよね。質も高いし。僕がファンの立場だったら絶対襲撃するよ。あるいはなんか弱みでも握ってるんじゃないかと疑って問い質すか。いや、どっちみち襲撃に違いは無いか……ってだめだ、変な方向に頭を持ってかれてる。そうじゃなくて、なんて言うか、なんかもっと実のあることを話さなきゃ。何を言おう? 何を話せば良い?

 あ、そうだ、まだ言うべきことを言ってない。

 

「あの……ええと、雄英に誘っていただいて……」

「『言っただろう? 私はなんの口添えもしていない。こうして君がここにいるのは、あの時言ったように君の正義がヒーローに相応しく、そしてそれに伴う実力を持っていたと認められた、それだけのことさ!』」

「いや、でも、あの時言ってくれました。『雄英で会おう』って」

 

 お礼の言葉を口にする僕をオールマイトが止め、それにさらに僕が言葉を重ねる。きっと貴方はわかってない。それが僕に取ってどれだけ重要なことだったのか。それを知って欲しくて、わかってほしくて……だけど、僕の言葉にオールマイトが表情を変えた。なにか、寂しそうな……?

 

「『……そうだね、そして君はそれに応えてくれた』」

 

「『私はそれが誇らしいよ』」

 

「『ここだけの話だがね。』今のも、そしてこれからする話も」

 

 何だ? 話すオールマイトの前進から白い蒸気が……オールマイトが萎んで行く……?

 

「え!?」

 

 視界がはれた時、そこにいたのは痩せた骸骨のようなおじさん……(ヴィラン)の襲撃があった日、警察と一緒に僕の事情聴取をした事務員の八木さんだった。

 

 

 

 

 

SIDE:オールマイト

 

 

 

 

 

「知っていたのかい?」

「ええ、気付いて、いました。確信は……無かったですけど」

 

 自分の正体を明かすことに、躊躇いがなかったかと言われれば嘘になる。だが必要だった。彼を救うと決めたのだ。その為に如何なるリスクも受け入れると。

 だから彼を知るために、必要だった。

 私の弱体化を知っているかどうかは彼の背後にいるものの正体を示すだろう、その情報の制度によってはそれとの距離感や深度を教えてくれるかもしれない。

 そう、できれば間違いであってほしい。

 混乱して悲鳴でもあげてくれれば完璧だ。

 

 ……だが、彼の口から出たのは小さな溜め息が一つ。

 

 その態度に心が冷え込むのを感じた。驚いていないわけではないようだが、それでも反応が小さすぎる。

 知っていた、反応だった。

 

 奴等が私の弱体化を口にしたあの時、あの場に居なかったはずなのに、だ。

 彼は知っている。それも確信を持って。

 奴等ですら、確信していた訳じゃないらしいのに。

 なにより理屈じゃなく直感が囁いている。

 宿敵と言える何者かの気配があると。

 彼を通して見られていると!

 

 奴がどんな思惑で、そこにどれだけ彼の気持ちが含まれているのかはわからない。だが、恐らく彼は奴と何らかの繋がりがあり、なにかしら仕込まれているのだろう。あるいは単なる囮という可能性だってある。どちらにせよ、彼から目を離せなくなった時点で私は奴に後れを取っている。

 

 ならばあえて踏み込もう。全てわかった上で、踏み越えて先に行く。

 そしてこの子を、全てを救い出す。

 

「なあ緑谷少年、他人に譲渡できる個性があると言ったら驚くかい?」

「え?」

 

 囮でも、罠でも、彼の正義に嘘はない筈だ。

 ならば私のこの気持ちにも嘘はない。

 

 

 

 

「私は君へ、私の個性を継いで欲しいと思っているんぐブッ!」

 

 

 

 

 小さな拳が私の右頬を貫いた。




どうでもいいですけど峰田君が中止を進言しないのは、緑谷君が「個性を知られていないのがアドバンテージだ」的な発言をしていないからです。
っていうか、原作の緑谷君も結構酷いですよね。個性が知られてないから勝てた! という流れを作っておきながら個性を知られることを恐れる峰田君の気持ちをスルーしてるんですから。



飯田天哉
個性:段階的身体能力上昇
エンジンですね。飯田君はふくらはぎで、燃料は100%オレンジジュースですが、兄のインゲニウムさんは肘についていてグレープフルーツジュースだとか。最初は深く考えていなかったのですがアニメ見たらロープの上を滑ってるし、ヴィジランテではインゲニウムさん飛ぶし。
かといって普段から滑ってる訳ではなく普通に走ってますし。インゲニウムさんも靴にローラーとか付けるでなく走っていますし。
よって排気だけでも推進は出来るが、基本的には身体能力全般が上昇するため走った方が効率が良い。と解釈しました。

個性体質:排気筒 身体正常化 カロリー貯蓄 超量貯水
当然身体能力が上昇すれば体温も上がります。内蔵も活発になりいろいろ大変でしょう。その辺を解決する第二世代的突破的特徴が身体正常化及びそれに伴う排気筒です。異常に上がった熱とか、不純物とかを排出する訳ですね。また運動量を保つためには当然カロリーが必要です。オレンジジュースだけで足りるとは思えませんし、多分あれは溜めているエネルギーを引き出すための呼び水的な物ではないかなと。
なお超量貯水はこの手の個性には絶対あります。最終種目直前のシーンで飯田君、缶ジュースで五本くらい飲んでましたもん。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。