B-2ed   作:管蘿乃

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本日8話目です。


B_25thD『体育祭編5』

side:八百万

 

 ここまで、来ましたわね。

 いえ、まだ第三種目の二回戦にすぎませんが、それでも緑谷さんとの約束は果たせます。

 

『よっしゃ! それじゃあ二回戦といこうかぁ! 第一回戦の第5試合も中々だったが、熱いバトルを見せてくれよお!!』

 

『第1試合で意外な速攻を見せつけてくれたクリエイティブガール! ヒーロー科八百万百!!』

 

(ヴァーサス) 第2試合は爆豪体調不良による自爆だってよ、お前に関しちゃもう何も言えねぇ! やってこい緑谷出久!!』

 

『んじゃレディイイイ!』

 

『START!!』

 

 さてどうしましょうか。どこまでやりましょうか。どこから始めましょうか。創造プログラミング開始。3……いえ4ロット並列……

 

「そういえば緑谷さん、私が勝ったら……の続きが聞きたいのですが」

「いまさら!? ……あー、八百万さんの気がちょっと晴れるんじゃない、かな!」

 

 様子見兼時間稼ぎ、とは言え実際に知りたいことではありますが。そう言う妙な逃げ方を続けられると、意地でも暴きたくなりますわね。

 思考を並列して、次の戦術を考えながら攻め手を増やして行きましょうか。

 

「嘘ですわね!」

 

 先ほどの試合と同じように両手を打ち鳴らして粉を、そう見せかけて全身から一気に吹き出します。そう、これは鉄哲さんに使ったひるませるための手段ではありません。視界を潰すための煙幕!

 続いてゴムボールをサイドスローで投げます。慣れていませんが、そもそも当てる必要はありません。上手くスピンをかけて、背後からの攻撃になれば緑谷さんの意識が……

 

「スーパーボールか!」

 

 逸れた! 鉄哲さんを突き落としたサスマタはどうかしら!? 

 

「シッ!」

 

 っく、一本目は避けられてしまいましたわね。二本目は当てましたが造成が甘い! 恐らくすぐに脱出するでしょう。それなら当初の予定通り、一本目を武器として、頭を打ち抜かせてもらいます!

 

「がっ!」

 

 当たった! 私の攻撃は緑谷さんに通じる……でも殴られた緑谷さんもさるもの、弾き飛びそうになっていた二本目を掴んで構えます。奇しくも私と同じ構え……少し体格諸々に差はありますが、ミラーマッチと言う奴でしょうか。

 もちろん私には個性と言うアドバンテージがありますが。

 

「胡椒とか、唐辛子を使って来ると思ってたよ」

「提案した緑谷さんなら何かしら対策して来ると思いまして。一度見せた訳ですし」

「煙幕も提案しなかった?」

「ええ、ですが先に胡椒等を見せて警戒させる……と言うのはありませんでした」

「なるほど」

 

 じりじりと間合いをはかり、円を描くようにステージの範囲を回ります。

 時間があって有利になるのは私だけ。緑谷さんとてそれはわかっているはず……それとも私の実力を引き出すつもりですか? ではロットを8番まであけましょう。生成にかかるペースは遅くなりますが、手元に武器があるのです、多少は引き延ばせるでしょう。

 

「……そういえばなんですが、私が勝ちましたら」

「や、だからそれは大したことじゃなくて……」

 

 あくまで逃げますか。そういうことなら私にも考えがあります。

 

「そうですか。では私が勝ったらサイドキックの話は無しということで」

「え、は?」

「隙ありですっ!」

「いや、ちょっ」

 

 ほうけたような表情をして、一瞬握りが甘くなりましたわよ! そんな隙、見逃すなんてあり得ませんわ! 全力の撃ち込みを緑谷さんが受け、流し、逸らしていきますがどこか精彩に欠けますわね。私が思うよりショックなのでしょうか。嬉しいような、くすぐったいような……だとしても逃げてることを追及する手は止めませんが。

 

「僕まだカツサンドの感想も聞いてないんだけどっ!」

 

 ほう、そう来ますか。

 

「カラシ使い過ぎです!!」

「分量はちょうど良かったはず!」

「好みを配慮していなかったでしょう!?」

 

 気配が変わった……? 攻め込んで来る!

 受けた場所を支点に、えぐり込むように踏み込んで脇からの振り上げ! を、生成しておいた装甲で受け止めます。変に硬い物ではなりません。簡単にくだける材質ですが、だからこそ衝撃もダメージも私自身には届きません! そして、貴方が突き出した武器を見逃す理由はありません! 新しく作った3本目のサスマタで緑谷さんのサスマタを押さえ込みつつ……左膝から下を裂くように装甲板を排出、

 

「ミソカツが良かった!?」

「わかってるじゃ……」

 

 左足を引き戻して……

 

「ありませんか!」

 

 生成と同時に文字通り蹴り飛ばす! ボーラっ!! 

 特殊なゴムチューブとゴムボールで生成した、思い出深い一品ですわ!

 

「毎日一緒にお弁当食べてたからね」

 

 私が手放したサスマタの先端を折りながら引き戻し、ボーラは受け止められてしまいました。

 拾い上げたそれをまるで映画のヌンチャクかなにかのように振り回して……すぐに投げて来るかと思いましたが、そうでもないみたいですわね。

 

「へえ、部分によってゴムの強度が変えてある……流石だね。これってもしかしてスーパーボールの時から作り始めてた?」

「よくおわかりですわね」

「ある程度はわかるでしょ」

「読ませないのが私の強みでしてよ」

「なるほど」

 

 む、腕を引いてボーラを隠しましたわね? 先端が折れたただの棒も、身体に隠すように構えて……随分深く握っているようですが、武器のリーチを誤認させた上での抜き打ち狙いですか? 対応速度が落ちると思うのですが……自信がおありで?

 

「あら、ノーガード戦法ですか?」

「どうかな?」

 

 足を前後に大きく開き、棒を背中に隠すように振りかぶる。やはり、追加のボーラを警戒している? 

 すりあしもどきで間合いを計る緑谷さんと、慣れない歩法だからでしょうか? そんなにゆったりした動きでは私に時間を与えるだけですわ。

 

「いつか警告しましたわよ!」

 

 バッテリーの創造完了! 当然接続用のケーブルも絶縁手袋も準備出来ています。即席とはいえ流れる電流は本物、このスタンバトンを受けることが出来ますか!?

 ……とは言え予想は出来ています。先のサスマタは当然金属製、流石にこれで受け止めるほど迂闊では無いはず! ならば貴方はボーラで……

 

「覚えてるよ!」

 

 なんと、棒の先端にボーラを括り付けられて……それで搦め捕って電撃を防ぐ気ですわね。ですがそのゴムは!

 

「っ!」

 

 緑谷さんが振り下ろす軌道を強引にそらして、転がりながら若干飛び退きました。

 どうやら気付かれてしまったようですわね。私がボーラに使ったゴムが導電性であることに。

 

「よくお気付きですわね。導電性です」

「やっぱり、楽はさせてくれないね。何手先まで考えてるのさ」

「いえ、即席フレイルは見事ですわ。私になかった発想です」

 

 装備のリーチ、性能、どちらもこちらが有利。

 とは言え緑谷さんには、身体能力的にはまだ全力ではないようですわね。個性把握テストで、戦闘訓練で見せたほどの腕力も、速さも感じません。先の装甲で止めた脇腹への一撃も、やろうと思えばそのまま私を吹き飛ばすくらいの力はあったはずでは?

 

「すー……はー……」

 

 深呼吸? やる気ですわね。私も、ロット全開で行きますわよ。スティック、ボーラ、バレット、アーマー、バレット、バレット、バレット、スティック、バレット、アーマー、バレット、ボーラ、ボーラ……

 

「漸く本気ですか?」

「ずっと本気だよ」

 

 それこそカツサンド作ったときから。そんな副音声が聞こえてきました。

 ……っ! いけませんわね。ここでにやけては。

 

「じゃあなんでカラシだったんですか」

「拘るね……そんなにミソカツがいいなら、僕に勝てたら作ってくるよ」

「結構です。もし緑谷さんが私に勝てたら……レモンチーズカスタードシフォンパイならいただきますわ」

「甘いものは砂籐君が得意なんだけど……」

「では私の相棒 (サイドキック)は砂藤さんですわね」

 

 駄目ですわよ緑谷さん。逃がしてはあげません。

 

「……八百万さんが勝ったらさ、もうちょっと本気で料理の勉強しようと思ったんだよ」

 

 本音……ですわね。料理は口実で、本気で私を選んでくださったんですね。

 ポケットの中の投票用紙。緑谷さんには黙っていましたが、投票用紙のすかし文字『born to justice』は一枚一枚大文字と小文字の位置が違いますの。自己投票を防ぐためでしたが、私はどれが緑谷さんの投票用紙か知っていますわ。

 

「あら、私より弱い方をサイドキックに選ぶ理由があるんですか?」

「そこはまあ、いろいろあるじゃないか」

「それで、私が貴方に勝てなかったらどうするんです?」

「残念だけど、飯田君や芦戸さんじゃ僕に変な遠慮がでる。轟君はさっきも言ったけど隙だらけすぎて相手にならない。心操君も体力面 (フィジカル)で勝ってる。誰も僕を止められない」

 

 ……? 少し落ち着きましょう。私。

 

「止める?」

「優勝したら僕は自分が無個性だって、ばらすよ。それを盾にエキシビションマッチをオールマイトに申し込んで、勝つ」

「……本気で言ってますの?」

 

 それを盾に? 緑谷さんが無個性であることを盾に? 何故そんなことになるんですの? それに、オールマイト先生に、勝つ?

 

「どんな個性にも弱点はある。手加減されたらともかく、本気のオールマイト相手になら勝てるさ。個性に憧れ続けた無個性の歪みがどこに達するのか、世界中に見せつけてやる」

「めちゃくちゃなことをおっしゃいますわね」

「無個性の歪みは、個性じゃ止められないからね。僕は彼等の象徴になる。僕らがちゃんと滅びるその日まで」

 

 もし緑谷さんの言う通り無個性の緑谷さんがオールマイトに勝ったら……それこそ世界が壊れてしまうのでは? そんなことになったら無個性とかどうとかいう問題じゃなくて、緑谷さんの立場も……雄英も……

 

「自分がヒーローになれない世界を壊す、と?」

「僕がヒーローになれないのは世界のせいじゃない、だけど壊すよ。このまま死んでいく世界を」

 

 駄目です。緑谷さんがなにを考えているのかわかりません。きっと……きっと彼のような無個性にしかわからない世界があるのでしょう。私はまだそこには踏み込めない。勝たなければ踏み込ませてもらえない。

 ならば勝ちましょう。

 

「まあいいですわ。さて、そろそろ準備は出来まして?」

「それこっちの台詞だよ」

 

 手に持っていた武器を捨てます。バッテリーも、サスマタも、手袋も。緑谷さんも私が作ったサスマタだった棒を捨てました。

 お互い次で最後だとわかっているのでしょうね。手も読まれているようです。緑谷さんはジャージの上を脱いで、私は……

 

「それってアトラトル? それともスリング?」

「さあ? オリジナルですから」

 

 これの形状を簡単に説明するならば太目のL字型のパイプでしょうか? 掌から創造された弾丸が、中を通り先端にセットされます。槍投げ機 (アトラトル)投石機 (スリング)、つまり投射兵器(造語)。銃程複雑な機構ではないですし、手で飛ばすよりは強い。そして弾丸は古式ゆかしいXREP系列のテーザー銃弾です。

 ただし、これはダミーですが。

 

「そういえば緑谷さん、私が無個性相手でも侮らないとおっしゃいましたけど」

「ん、うん、言ったっけ」

「別に無個性を侮らない訳じゃありません。緑谷さんだから遠慮しないんですわ」

「え」「シッ!」

 

 腕をふるい、飛び出す弾丸。我ながら完璧な動作。

 当然これ一発で終わりじゃありませんわよ。追加で掌から生み出した弾丸を、次々飛ばしていきます。バチバチと音を立てて飛ぶ弾丸はなかなかのプレッシャーでしょうに、ジャージを振り回して見事にさばきながら、徐々に近づいてきますわね。

 ですが気付いていますわよ。私が飛ばす弾丸のうち半分程度しか地面に転がっていないこと!

 

「らっ!」

 

 緑谷さんがジャージの片袖を離し、全力で縦に振りおろしました、絡めとっていた弾丸を投げ返すつもりですわね! 飛距離もない、スピードもない。ですが当たれば効く、と言うのがこの弾丸の特徴です。スピードがない分バラバラに飛ぶこれを、かわすのは至難の業でしょうね。かわすのであれば。

 ふふ、その弾丸は……

 

「効きませんわよ、ダミーですも、の!」

 

 本命創造! 振り抜いたのは今日最速の一発。

 絡め取った弾丸を飛ばすために、両腕を全力で振り抜いた緑谷さんに為す術はないはず!

 そう思った私の目の前で緑谷さんの身体が跳ね上がって消えました。

 これは、ロンダート(飛び前転)、からの……

 

「胴回し回転蹴り!?」

 

 飛び込みながらの浴びせ蹴り、近すぎる。振り抜いた勢いで重心が前足に……ガードを!

 

「ま、まだっ!」

 

 両腕に装甲を纏わせて交差させ、なんとか蹴りを受け止め……手に何か巻き付いて!?

 

「いいや」

 

 ここでボーラ!? あのときの、サスマタから外していたんですの!? ですがこんな物は刃を創造すれば!

 

「終わりだよ。この手の弾丸は脅威だけど、電極を避けてサイドを掴めば鹵獲できる」

 

 思う間もなく、右手で掴んでいた弾丸を突きつけられてしまいました。

 

「最後の一発以外は」

「これは正真正銘、ロンダートの最中に掴んだ最後の一発だよ。だって両手に物を持ってたらあんな風に飛べないでしょ?」

 

 ……っ。

 

「……参りましたわ」

 

『八百万さん降参! 勝者、緑谷君!』

 

 ……レモンチーズカスタードシフォンパイ、惜しかったですわね。




八百万さんの食の好みは適当に声優ネタを使わせていただきました。
アニメと原作では常闇君との戦闘の様子が結構違うんですよね。
個人的な解釈として八百万さん瞬殺の真相は『騎馬戦で(上鳴君の電撃で実は弱っている)黒影の攻撃を即席の盾で受け止める』と言う経験を元に、彼の攻撃力を低く見積もってしまったのが原因なのではないかと思っています。



八百万百
個性  :創造
脂質の持つ原子を素粒子まで分解して組み立て直し、物質を創造する個性です。当作品では実は最も原始的な個性でもあります。
なお、設計するのに相応に脳を使っているので、実は脂質だけでなくブドウ糖もガンガン使っています。

個性体質:超量貯蓄(脂質・ブドウ糖)
脂質やブドウ糖を肉体とは別のどこかに貯蓄しておく能力です。結果太りません。使い過ぎると経済に影響が出る個性らしいので、作った物はほっておいても消滅したりする訳ではないでしょうし、グラムあたりの1:1交換と解釈しています。
まあ脂質の原子を別の物に組み替えるのも問題が有る気がしますが、原爆とかだって原子を壊してる訳ですしね。多分。


なおXREP系列のテーザー銃弾は現在では不発なども多いそうですが、一応ヒロアカの世界は未来なので不発は無いと言うことになっています。古式ゆかしい扱いなのもそれが理由です。
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