B-2ed   作:管蘿乃

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一年以上ぶりになりますね……正直一年前にはもう話は出来てたんですけど、どうしても納得いく出来にならなくて推敲すること気付けば一年と二ヶ月……
いい加減、どうしようもないので投稿します。
酷いできばえとは思いますが、おまけ+職場体験編、全八話。
お楽しみください。


B_28thD『体育祭編(おまけ)』

「轟君、聞き入っているな。敵じゃないと言ったときは驚いたが……爆豪君の時も思ったが、本当にえげつないな緑谷君(かれ)の交渉力は」

「いや、あれ交渉力でいいの? 俺なんか違うと思うんだけど」

「深淵……いや、心淵(トラウマ)破葬(ブレイカー)といったところか」

「あー、距離のせいで全部聞こえるわけじゃないけど、なんか影踏まれたら敗けみたいな感じ有るよね。切島も気ーつけなね!」

「お、おう。実は俺入試の会場あいつと同じでさ」

「ど、ドンマイ?」

「そういえば飯田と八百万も負けたんだよな?」

「そういやトーナメント表では確かにそうなっているな。実力で負けたのか?」

「ああ。洗脳で棄権させられたわけじゃない。八百万君と緑谷君の試合は素晴らしかった。それにくらべて僕は……」

「私、洗脳解除されたのその直後だったんだよねー。後でビデオとか貰えるかなぁ?」

「あら、それなら今度家にいらっしゃいません? 両親が撮影してるはずですし、講堂のスクリーンでお見せできますわよ?」

「お、マジ」

「マジか! それって今日の体育祭全部撮ってるのか!?」

「え、ええ。そのはずですけど」

「じゃあ俺達が見逃した本場のチアべっ」

「峰田ちゃん、大概にしてね」

「ふむ、僕も見直したいところだし、折角だから皆で見れると良いのではないだろうか」

「そうだな、こっちのクラスであれ見てたのって俺と飯田と上鳴と……」

「あ、いや、わりぃ。俺直前に洗脳されててさ……尾白は見てたんじゃね?」

「ああ。確かに見てたよ。八百万は随分楽しそうだったな」

「ええ、遣り甲斐のある勝負でした」

「うー……羨ましいぃ」

「しかし常闇、尾白、芦戸、八百万、飯田……近距離(ショートレンジ)から中距離(ミドルレンジ)はもうどうしようもないな。可能性があるのは轟や上鳴のような広範囲型、青山のような高軌道高射程……」

「いや、無理だろ。その轟が心をへし折られてる最中だし、俺の電撃で緑谷が足を止めるイメージがわかねーよ」

「……ノン、ムッシュ緑谷も電撃はそれなりに苦手なはずだけどね」

「ん? 青山なんか言った?」

「いいや、たいしたことは言ってないさ」

「そっか?」

「……電撃は流石に効くでしょ。ゴム人間じゃあるまいし」

「いやでも緑谷ターミネーターならいけるんじゃね? 何かこう、銃弾とか喰らっても気にせず突っ込んできそうな感じあるじゃん」

「いや、流石に撃たれたら怯むんじゃない? っていうかむしろ怯んで欲しい……って、あ」

「……緑谷がトドメの台詞を放ったな。決着だ」

 

『轟君戦意喪失! 勝者……優勝、緑谷君!』

 

 

 

 

 

 目が覚めると、そこには真っ白な天井があった。本物の病院……じゃないな、まだ保健室だ。

 何処かにモニターがあるんだろう。ミッドナイトの声がする。

 

『……と言うわけで、三位の心操君のみですがメダル授与を行います』

 

 あー、ミッドナイト先生も大変だな。一位の僕と二位の轟君は多分保健室(ここ)にいるんだろうし……あれ? 飯田君はどうしたんだろう? 残念ながら情報が少なくて判断つかないや。お、メダル授与にオールマイトが出てきたらしい。

 やっておいてなんだけど、どんな顔で舞台に立ってるんだろう。

 

(さあな。俺は観客の顔の方が気になるが)

 

 まあ、無個性にNo.1ヒーローが負けたらねー。色々思うところがあるだろうし、素直には見れないよね。

 

(あれだけのことをやっておいて無個性、か) 

 

 無個性だよ。僕は普通の無個性だ。ぶっちゃけ二発目のシャイニングウィザードが決まったときは僕の方が驚いたくらいさ。多分相当油断してたんだろうね。

 

——油断じゃなくて動揺だろうがな——

 

 ん? 何か言った?

 

(いいや。しかしあれで無個性がオールマイトに勝てるとはよく言ったもんだ)

 

 嘘じゃない。僕と同じ本物の無個性は皆同じ条件を満たしてるんだから……探せばこの時代のアップル=シノダとかノフィックスもいるかもしれないよ?

 

(シノダはともかく、ノフィックスはいるとちょっと面倒だな)

 

 制約もかなり(ヴィラン)向けだもんね。

 

(……なあ出久、良かったのか?)

 

 なにが?

 

(別に、あそこまでやらなくても良かったんじゃないか?)

 

 ……

 

(お母さんと約束してたじゃないか。楽しい高校生活にするって。絶対、こっから先めちゃくちゃになるぞ)

 

 いいよ。

 

 オールマイトは僕の正義がヒーローに相応しいって言ってくれた。

 だけどそのオールマイトだって個性が無い人間を侮ってしまうのは変わらなかったし、僕はどうしたって彼の期待には答えられない。

 それに何となくわかるんだ。オールマイトはもうすぐ倒れる。そしてそうなったら、新たな平和の象徴が現れるより前に絶対に()()は動き出す。

 ……道化師達が。

 今この世界にどれだけいるのかはわからないけど、きっと彼らは皆わかってる。このままじゃ自分たちに居場所は無いって。平和の象徴が倒れたら、もし犯罪が激増したりして世界が混沌と化したら、確実に弱いとされる自分達から狩られていくんだって。

 そして個性以外の力と言うことがばれて眼をつけられたら……

 

(まあ、お前の呼びかけはかろうじてミッドナイトのマイクが拾ってたけどな)

 

 伝わってくれればいい。いざとなったら来てくれればいい。一緒に生きようとは言わないけど、一緒に死のうって言うくらいは出来るからね。

 ……ああ、でも轟君のときにしちゃった、個性が幼児期の望みから産まれるって情報はあれだったな。まあ、軽慶市のベイビーが最初の例ってことになってるからすぐに僕の妄言てことになるだろうけど。

 

(ああ、実際は母親の方が異形を生み出す個性だったんだろうけどな……ところでその轟が隣で寝てるぞ。爆豪はお前が来た後別の場所に移された)

 

 ああ、そうなんだ? ありがとう。もしかしてエンデヴァーもいる?

 

(いるな)

 

 轟君は眠ってるの?

 

(ああ)

 

「エンデヴァー? いますか?」

「ああ?」

 

 答える声。テレビで何度か聞いたことがある、無愛想な太い声。エンデヴァーの声だ。

 

(どうした出久)

 

 答えあわせだよ。

 

「僕が会場で轟君にしてた話、聞いていました?」

「ああ」

「あれ、どれくらい当たってました?」

「……何故俺がそれに答える必要がある」

「別に、答える必要は無いです。あの話がかけらも当たっていなかったなら、一応謝ろうかと思っただけで」

「一応で謝られてたまるか」

「轟君に上の兄弟は?」

「……いる」

「お母さんは?」

「……病院だ。精神のな」

「轟君は貴方に憧れてヒーローに?」

「知らん! ……いや、俺はたとえあいつが望まなくてもヒーローにした。あいつは……多分、オールマイトに憧れてるんじゃないか」

「……そのせいで焦ってました?」

「煩いぞ!」

「じゃあ最後に一つだけ」

「……」

「個性を暴走させた息子さんだか娘さんのために、自分の個性を使ったことがある?」

「焦凍には母の個性を継いだ兄が一人と姉が一人いる。使ったからなんだ? そんなのヒーローでも親でもない、人としての最低限だろう」

「そうですね」

「私は……私は最初からあの子を()()()()()()作った。だからお前の話は完全に間違いだ」

「そうですか」

「だが……その完全に間違いだと言うことにさえ目を瞑れば概ね正解だ……クソっ、正解だっ!」

「……保健室ではお静かに」

「煩い!! 焦凍はもう連れて帰る。娘に面倒を見させるからな! リカバリーガールの婆さんにそう言っておけ!」

「重傷人に伝言頼まないでくださいよNO.2」

「く……このっ」

「あ、せっかくなんでギブスにサインくれません? 『体育祭No.1(ゆうしょうしゃ)へ』って。何故かわからないですけど治療されてないらしくて」

「こぞおおおおおおお!!」

 

「煩いよエンデヴァー!」

 

 あ、この声は……リカバリーガール!

 

「ヌッ、婆さん!?」

「おつかれさまですリカバリーガール」

「……起きたか緑谷。あんたいつからだい?」

「はい?」

「ヌッ?」

「エンデヴァー! あんたはいいからとっとと息子つれて出て行きな!」

「クッ」

 

 バサっとベッドを覆っていたカーテンが開かれる。真っ赤な髪と髭に彩られたアイスブルーの瞳がギラギラと僕の顔を見つめる。

 

「サラバだ小僧! 息子をよろしくなッ!」

 

 ……なんで最後ちょっといい人風だったんだ? あの人。っていうか精神攻撃で心をえぐった張本人に息子を託すか普通。

 

「あんたもなんでああエンデヴァーを煽るんだい?」

「聞いてたんですか?」

「まあね」

「……そうした方がエンデヴァーが助かるかと思って」

「そうかい……それでいつからだい?」

「さっきも言ってましたけど、なにがですか?」

「固形物食ってないのだよ」

「……一週間くらい前からですけど」

 

 正確には八日かな? なんか調子悪いなと思ったら血を吐くようになってた。能力で治癒しても治癒しても追いつかないので、最近は殆ど相澤先生に倣ってゼリー生活だ。

 

「あんたの胃袋、穴だらけだよ。ストレス性の胃潰瘍だね」

「……そうですか」

「それでこんなことしでかすくらいならなんでもっと早く来なかった! あんたもう体重50キロないんだよ!?」

「……」

 

 知ってる。一昨日、地雷で手足を吹き飛ばされた後、それでも公平のために治療は受けなかったけど、怪我の度合いとかの記録のために保健室には来たし、その時体重も計った。八百万さんが手加減していると感じたのは、黒血や火事場の馬鹿力のこともあるだろうけど、なにより僕の素の力が落ちているからだ。

 

「体力も尽きてる、治癒だってしてやれない! 正気かい!?」

「気が狂ってる訳じゃないですよ。八百万さんにも話しましたけど、ちょっと呪われてるだけです」

「……今日は保健室に泊まりな」

「いいんですか? 病院に送らなくて」

「そっちの方がストレスになるんだろう? 襲撃の日だって、あんた家に帰ってないだろう。わからないと思わないことだね」

「あはは……」

「ちゃんと許可とって点滴も用意した。ゆっくり眠るんだね。それともまたミッドナイトの膝枕がいいかい?」

「いえ、全力で遠慮します」

 

 ……まあ、一悪は散々やったし、母さんに電話さえすればいいだろう。鞄は……持ってきてもらえてるみたいだし。

 

「それじゃ、また後で来るよ」

「はい、リカバリーガール」

 

 起きたばかりだけど、ごめんエミネ。

 

(ああ、ゆっくり休め出久)

 

「もしもし? あ、母さん? 雄英体育祭終わったよー」

 

 

 

 

『お、あ、しょ、勝者、緑谷出久! おい、マジやベーって! 婆さん呼べ! 超特急だ!! セメントス! そいつの足引っこ抜いて固めろ! そっとな! あとオールマイト! ああ手が足りねぇ!!』

 

「嘘だろ……? オールマイトが?」

「い、いやでもほら、ちゃんと出て来たぜ? そりゃ試合的には敗けだけどさ!」

「そうだよな、緑谷ボロボロだし!」

「いやでも、もし試合じゃなかったら、道具使うんじゃない?」

「道具って……」

「棒が一本あれば、あのカウンターは出来ただろうな」

「でも、ほらハンデ、あるし」

「お前ら何の話してんだよ!?」

「峰田?」

「んなこたどうでもいいんだよっ! 緑谷は、あいつ大丈夫なのか!?」

「落ち着いて峰田ちゃん、プレゼントマイク先生も言ってたわ。リカバリーガールが」

「無理だよ」

「三奈ちゃん……?」

「無理だよ、だって緑谷、もう体重50キロきってるんだよ!?」

「「「!?」」」

「リカバリーガールの治療は本人の体力を極端に消耗する……傷が、深すぎる」

「……緑谷さん自身が望んだことです。きっと緑谷さんだって、自分が大丈夫だと言う確信があってこその行動でしょう」

「今は彼を信じるしかない、ということか」

「……」

「……」

「……」

「……やっぱり、おかしい」

「どうしたの麗日?」

「だって、緑谷君、あんなに凄いのに、ただ無個性ってだけでなんで差別されなきゃあかんの!?」

「麗日さん?」

救助(レスキュー)ポイント……か」

「何の話だ?」

「それは……どうする?」

「……体育祭の様子で雄英の意向もある程度わかった。この際皆にも話そう」

「い、いやいやいや、本当に何の話をしようとしてるんだよ!」

「雄英は、恐らく緑谷君を飼い殺す気だ」

「は?」

 

 

 

 

 

 

:dark side

 

 

 

 

 

「緑谷出久の再調査結果ですが、何らかの組織との繋がりは確認できませんでした。ただ、どうも雄英でなにが起きているか、自分がどのような扱いを受けているかなどを母親に秘密にしているようです。また相当なストレスがかかっているらしく、最近では体調の悪化が顕著に観測できます」

「具体的には?」

「ここ一週間……正確には八日ですが、固形物を口にしていません。というか食べては吐いてますね。時々吐血する姿も見られています。体重は入学してから15キロ程減った状態で安定してきましたね」

「スパイ活動のストレスだろうか?」

「ストレスの原因ははっきりしてませんが、その十日ほど前からクラスメイトに避けられているようです」

「青春か?」

 

 

 

 

『ククッ……クククッ……まさかこんなことが起きるとはね……』

「なんなんだあいつ……俺より先に……! オールマイトをっ!」

「落ち着いてください死柄木弔……しかし彼は何者なんでしょう? 一回戦でも決勝戦でもほぼ喋るだけで相手を撃破しています。ヒーロー科と言われていましたが……」

「あ!? あいつあれだろ。暴風ゾーンから出てきた脳無の的だろうが! 俺はちゃんと覚えてるぞ!」

「……暴風ゾーンですか? たしかあそこは通信妨害を担当していた彼がいたはずなのですが、彼を倒してきたと? 確か無個性……でしたよね?」

「んな訳あるか! なんか個性隠してるだけだろうが! 無個性な訳がねぇ!」

「では何故第一種目で一人だけ特別扱いを……?」

『確かに、不思議だねぇ。だが、雄英襲撃の時、もう一つ不思議な物があったはずだ』

「治癒個性の持ち主ですか? 彼がそれに関係していると?」

『わからない。が、少し気にならないかい?』

「クソっ……クソっ……なにが『僕がいる』、『僕が来た』だ……今更……認めねぇ……絶対認めねぇ……」

 

 

 

 

 

「オールマイトが……負けた? 無個性の子供に?」

 

「いや、そんな訳が無い。彼は本物の英雄だ! 彼だけは間違いなく本物の英雄だ!」

 

「あり得ない……あり得ない……絶対にあり得ない……」

 

「奴を、見つけなくては。正体を暴かなくては……あいつが……あいつは……奴は……」

 

「見極める、そして殺す! 偽物が! 英雄に泥を塗ったなら、絶対に殺す!」

「待て、お前、子供に手を出す気か……っ?」

「黙れ偽物。いたずらに力を振るう敵ヴィランも俺の粛清対象だ」

「ふざけるな! 相手はただの子供だぞ!」

「……お前は語り手として残すつもりだったが、ここで始末してもいいんだぞ」

「やってみろ! 何があっても子供を殺すなんて許せるかよ!」

 

 

 

 

 

「ほう、なかなかいいな」

「なにがですか?」

「これな、読唇術が使える奴にとらせたレポートだ」

「……緑谷出久でしたっけ?」

「ああ……こいつ、無個性だって言ってたな」

「はあ、途中でそんな風に紹介されていやしたね」

「ここにはな、こう書いてある。『個性ってのはまるっきり人を誇大妄想に取り付かせる病原菌だ』」

「そりゃあ……」

「いいな、こいつ。イレイザーヘッド目当てだったが、望外の収穫だ。こいつを調べ上げろ。近いうちに接触するぞ」

 

 

 

 

 

「ブラドキング、話がある」

「なんだイレイザーヘッド」

「内通者の話だ」

「!?」

「俺は、緑谷がそうじゃないかとにらんでいる」

「正気かイレイザーヘッド!?」

「最後まで聞け。正確には内通者の一味だ。あいつを囮にして動いてる奴がいる」

「……」

「わかってるんだよ。今最大の内通者候補が俺だってことは」

「イレイザーヘッド……」

「確かに治癒する必要があった教師は俺だけだ。だが、それこそ罠だとしたら? 治療されなかったことこそが、目をそらす手段なのだとしたら? 治癒の個性を持ってる奴なら、その必要の有無だって判断つくだろう。むしろ緑谷は、最低限の治療を受けていたのだとしたら!?」

「落ち着けイレイザーヘッド! 今のお前は少しおかしいぞ!?」

「ブラドキング、俺は正気だ! あいつは明らかにおかしい! ただの無個性がどうやってオールマイトを倒す!? 何故こんなことをする必要がある!? あいつが本当にただの無個性だったとしたら、俺は!」

「聞かなかったことにしてやる……少し頭を冷やせ」

「ブラドキング!」

「内通者だとしたら目立ち過ぎだ、ありえん。それにあいつに関する報告書は、俺は()()()()読んでるぞ」

「……」

 

 

 

 

 

「やあミッドナイト。近くで見ていてどうだった?」

「……校長、何故あんなエキシビションを許可したんですか?」

「彼に可能性を感じたからさ……残酷な、可能性をね」

「……」

「それで、近くで見てどうだった?」

「ヒーロー科に入れたのは英断でした。野に放つには危険すぎる人材です。中国軽慶市の発光ベビーが第一例とされている以上、あくまで妄言として処理されるでしょうが……」

「君の個性は……」

「ええ、私が物心付く少し前から父は不眠症でした。母が父と私をまとめて寝かしつけてくれたのをかすかに覚えています」

「相澤君のお母さんは、不随意発動型の物体浮遊系個性だったっけ」

「そう聞いています。この個性で幸いだった、と。お父さんは気流を纏う異形系という話でしたね。轟君のときに出た個性婚じゃないですけど、そう言う意図があっての結婚だったそうです。ですから父からもとても褒められたとか」

「……個性のコーディネート実験は裏社会ではとっくに始まっている。生体移植による個性の受渡もね」

「ただの子供が十年でたどり着いていい答えではありませんが」

「ただのじゃないよ。無個性の、だ。この世界で無個性の子供だ。さぞ個性が疎ましくて……妬ましくて、羨ましかったことだろう」

「個性カウンセラーにでもなってくれれば……いえ」

「ああ……そうだね……そうはならないんだろう?」

「彼は言っていました。無個性の歪み、その象徴になると……死んでいく世界を、壊すと」

「そうか……そうかい! それなら彼には頑張ってもらわないとね!」




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