個性把握テスト回。
かっちゃんの扱いがひたすら悪いです。
バトルシーンが、全く書けませんでした。
「ハンカチよし、ちり紙よし、向こうで学生証と交換するIDよし」
「い、いずくスマホ持った? 定期は?」
「大丈夫。それじゃあ母さん」
「あのね出久!」
扉に手をかけたまま、振り向く。雄英を受験すると言ったときの不安そうな翳りはもうどこにもないけれど、何処か落ち着いた表情には合格のときの喜びもない。
「高校生活三年間、思いっきり楽しもうね!」
張り付けたような笑顔が胸を打つ。
当たり前だ。母さんは道化師のことを知らないし、雄英に受かったのだって無個性でも受かったってだけ。突然個性に目覚めて……なんて都合のいい話じゃない。
無個性のまま、個性を振るう人間の中に飛び込んでいくのだ。言い方は悪いけど、素手で戦場に行くようなもんだろう。
心配じゃない訳がない。
「うん、行ってきます」
それでも行くのだ、僕たちは。
さて、入試の時にも来たけど……相変わらず大きな校舎だ。全体もそうだけどドアとかロッカーとかのパーツパーツも相当大きいな、多分個性に対応したバリアフリーを徹底してるんだろう。言っちゃなんだけど外国に来たみたいでちょっと面白い。面白いけど……迷いそうだな、地図を頭に入れ直しとこう。
ええと、ヒーロー科1-Aは……ここか。
ドアは大きさの割に軽いなぁ。Aの中の三角形が窓になってるのはお洒落だけど、これBとかEとかどうするんだろう? 後で見に行ってみようかな。まあいまは他所より身内だ。さて、クラスメイトの顔ぶれは……
「机に足をかけるな! 雄英の先達や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか! そしてストレートにマナーが悪い!」
「はっ! 思わねーよてめーど、こ、ちゅ……」
あ、飯田くんだ。あと、障子君と常闇君もいるぞ、二人とも結構目立つなぁ。向こうも気づいたみたいで軽く手を振ってくれたぞ。それと……
「む、どうした君! もしかして体調が悪いのか?」
「う、うるせぇ、何でもねえよ……」
冷や汗ダラダラ足らしてるかっちゃん、ご愁傷さま。後で教師に相談してクラス替えを申請しておこうかな。
「おはよう飯田くん」
「む、君は確か緑谷君! 君も受かってたか! ……と、すまない。再会を祝したいところだが、どうも彼の体調が悪いらしくてね、保健室に連れていこうと思うんだが」
「ああ、これはほっといても大丈夫だよ。僕、彼とクラスメイトだったから知ってるんだ」
「そうなのか?」
「く、くそデクがぁ……」
「ほらね? これは『俺をなめるんじゃねえ、ぶち殺すぞクソが』って意味だよ」
「ぶ、ブチコロ? 緑谷君、意外と口が悪いんだな」
「そうかな? とりあえず彼も机から足を下ろしたし……あれ? そこかっちゃんの席じゃなくない?」
……黙ってかっちゃんは自分の席に戻って行った。え、なんでここにいたの? ここの席は……芦戸さん? だよね?
「あ、そのもさもさ頭は! 緑谷くん!」
「う、お、あ……えーと、うららららかさん?」
「もー、どう考えても『ら』が多いよ!
振り向くとそこには入試の時に助けた……助けた? 助けられた? 麗日さんがいた。足元には寝袋に入ったおじさんのおまけ付き。
名前はわざと間違えてみたけど……
うーん、しかし割と知り合いが多いなぁ。会場ごとにまとまってるのか? だとしたら切島君は……いや、今は考えるのはよそう。とりあえず目の前の麗日さんだ。足元のおじさんはチューブゼリー一気飲みしてるし。
「うん。こちらこそよろしく。お互い受かってよか」
……いやちょっと待ってなんかいる。
「お友達ごっこしたいなら他所に行け」
……なんかいる!?
「ここはヒーロー科だぞ」
廊下に巨大芋虫……もとい寝袋入りのくたびれたおじさんが!? いや、ちょっと前から気付いてたけど現実だと認識できてなかった。クラスメイトは20人全員いるし、どう見ても大人だ。とするとこの人は教師な訳だけど、雄英の教師は全員プロのヒーローのはず。でもこんな人いたっけ?
僕や麗日さん、飯田君の驚きをよそに寝袋のまま教師(推定)は教室に入ってきたので慌てて僕らは自分の席に移動する。
「
(なんだか見られてないか? 出久)
間違いなく見られてるよエミネ。うー……気まずい。
ついでに僕が真後ろに座ったせいかかっちゃんの顔色が真っ白だ。これも気まずい。クラス替えが無理でもせめて席替えを提案しよう。
「はい、君たちが静かになるまで8秒かかりました。時間は有限……だってのにマジで緑谷よこしやがった」
なんか今呼ばれたような……?
「ともあれ俺が担任の相澤相澤消太だ。よろしくね」
先生の表情が言っている。ただしお前とだけはよろしくする気はない……と。嫌われてるのか、それともかっちゃんが死にかけてるからかな。
あ、目を逸らされた。
「それじゃ早速だけど
相澤先生が寝袋からジャージを取り出す。人数分、20着。おかしい、明らかに容量と中身の体積があってないぞ? その手の個性のヒーローには何人か心当たりがあるけど、唯一顔がわからないスペースヒーロー13号は吸い込んで分解するだけだ、取り出す力は無いはず。
うーん? とりあえず言われた通りにしよう。グラウンド横の更衣室まで移動して急いで着替える。体操服は触った感じ生暖かかったりはしない。もしかして別の寝袋と入れ換えてたのかな?
「それじゃあ君達には個性把握テストを受けてもらう」
「「「個性把握テスト?」」」
聞き慣れない言葉だ。っていうか、個性なんたらって言葉自体珍しい。けど、今はそれより……
「あ、あの、入学式は? ガイダンスは?」
「ヒーローになるなら悠長にそんなの出てる時間ないよ」
みんなの心の声を代弁したであろう麗日さんの疑問は、相澤先生にバッサリと切り落とされる。雄英は自由な校風が売りとは言うけど、まさかここまでだなんて……
「なにそう難しく考えることは無い。中学の時から散々やってるだろう、ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈……個性禁止のスポーツテスト。今回はこれを個性を使用してやってもらう。青山、お前中学の時の立ち幅跳びの記録は?」
「1メートル65センチさ」
「んじゃ個性使って跳んで見ろ」
「ウィ、ムッシュ」
トントン拍子で話が進み、砂場の前に連れてこられた青山君はなぜか踏切ラインに背を向けた。
「はっ」
そして両足で真上にジャンプ。お腹からでたビームを推進力に吹っ飛んで行く。すごい! 秒速20メートルくらいか? しかも青山君は少し浮き上がっているように見える。人間を持ち上げ吹き飛ばすほどのパワーで、時速72キロ……いや、もしかしたら青山君を浮かしてる分遅いのかな? 詳細はわからないけど、相当パワーのある強力な個性だぞ……
最終的な飛距離23メートル。僕の中学3年生の時の記録が2メートル5センチだから、11倍以上。こんな調子でぽんぽん記録が出て行くのか。そりゃ無個性でヒーローとか無理だと言われるのもしょうがない。
「さすがヒーロー科! 個性思いっきり使っていいのかよ!」
「すげー! なんか面白そう!」
何となく黄昏れている僕をよそにクラスメイトは大興奮だ。そりゃ個性ある皆は良いけど、これ、僕一人だけ普通の体力テストだぞ。
……いや、わかってたことなんだけどね。
「面白そう? これからヒーローになるための三年間を、そんな腹づもりで過ごすつもりか?」
うんうん。先生のおっしゃる通りだよ皆。まあ個性があったら僕も皆みたいにはしゃいでたかも知れないけど。
なにせ
まあ、個性の的にされてた側からすれば滅びろ人類と言わざるを得ないが。
「よしわかった。トータル成績最下位のものは見込みなしとして除籍処分としよう」
うん?
「雄英の売りは知ってるだろ? 『自由な校風』」
いや、え、ちょっと待って、先生さっきから僕一人ロックオンしてません!?
「それは生徒だけじゃない、教師もまたしかり。生徒の如何は教師の『自由』、覚悟はいいな?」
覚悟はしてた、してたけど……
「これが君らのヒーローアカデミアだ」
初日から除籍かよ。夢にしても儚すぎる。
まあ、そうなったらそうなったで普通科に編入してでも戻ってくるつもりだけど。
(治癒前提の火事場のバカ力は使わないのか?)
こんな記録が残るところでそれは無理だし、それで上乗せしても二倍行くかどうか……いや、黙ってれば多分除籍は免れるんだけど、それもなんだかなぁ。
「ちょっと待ってください! 除籍なんていくらなんでも理不尽です!」
再び幾多の心を代弁したような麗日さんの言葉。んー、でもそれってどうなんだろう。理不尽なんて頼んでなくても押し寄せて来るしなぁ。
「甘ったれるな。そういう
「ただ雄英に入ればヒーローに成れるとでも思ったのか? 最高峰だぞ? これから三年間、雄英は全力で君達に苦難を強いる」
「プレゼント・マイクから聞いてるだろう?
……まあ、物理的に乗り越えるのは無理そうだから、最低限の伏線を張ろう。
「それってつまり、妨害ありってことですか?」
「「「はああああっ!?」」」
お、おお、思ったよりみんな食い付き良いな。飯田君なんか真っ先に詰め寄ってきた、麗日さんと、なんとなく見覚えのあるツンツンした赤髪の子……
「ど、どうした緑谷君、どうしたというのだ緑谷君!」
「そうだよ、どうしたの妨害なんて!」
「男らしくないぜ緑谷ぁ!」
あれ、この声切島くん……? は置いといて。
「だって先生が理不尽は乗り越えていくものって言ったでしょ? でも、どう考えてもこのスポーツテストに適さない個性ってあると思うんだよね。例えば未来が見えるサー・ナイトアイ、個性を消す抹消ヒーローイレイザー・ヘッド、スマイルヒーローMs.ジョーク、ワイプシのラグドールとマンダレイはそれぞれサーチとテレパス……そう考えるとどうしても、ね」
「なめるな緑谷、入試の時マイクが言ってただろう。他人への攻撃など、アンチヒーローな真似はご法度だ、と」
「でもそれ、判断するのは先生ですよね?」
「つまりなにか? 俺の目を盗んで妨害が出来ると言ってるのか?」
「まさか、ただの確認です。でも僕だってヒーロー目指してるんですよ? そんな風に思われるのは心外だな……ばれたら当然除籍処分ですよね」
「当たり前だ」
「じゃあ妨害があった場合の最下位は?」
「……何を言いたいかわかったが、余計な言いがかりを認める気はないぞ。やれるものならやってみせろ」
「だから先生、心外ですよ。僕は何かをする気なんて無いですって」
「ふん、時間の無駄だな。テスト開始だ。お前らとっとと動け」
さっきまでの『面白そう!』とか『除籍になってたまるか!』みたいな空気は完全に死んでしまった。多分みんな精神的なコンディションは最悪だろう、なんとかして持ち直さないと満足な結果を出せないと思う。これも妨害と言えば妨害になるんだろうか? だとしたら僕はもう既に除籍処分な訳だけど。
いや、どうあっても除籍処分か。後はまあ、出来るだけのことをしよう。これでも治癒力を生かしたチート筋トレで鍛えてるんだ。それがどれだけ通用するかとか、みんなの個性の生かし方も気になるし普通に頑張っておこう。
深呼吸、ストレッチ。列に並んで準備運動をしていると、飯田君が再びやってきた。ふくらはぎについた排気筒っぽいのからドルドル白煙がでてるのは準備運動なのかなんなのか。とりあえずかっこいいな。
「緑谷君、まさか本気では無いよな」
「ああ飯田君。先生にも言ったけど、僕一応ヒーロー目指してるんだよ?」
「わかっている。だが……正直勝手なことを言ってる自覚はあるが、僕は君の口からあんな言葉は聞きたくなかった」
「えっと……?」
「君の言い分を先生は真に受けていた。察するに君の個性は身体能力の上昇や何かを発したりするタイプではないんだろうな。あの入試の時も不利だったはずだ。なのに君は……あのとき麗日君を助けるために走った」
「それは……」
「おい飯田、50メートル走の記録無しでいいのか?」
「くっ、緑谷君、信じるぞ!」
いい人だなぁ、飯田くん。
いや、飯田くんに限らない。皆チラチラと心配そうにこっちを見てる、あのとき会場が一緒だった麗日さん、切島君(?)、障子君、常闇君……あ、青山君がウインクした。
……やめやめ! 未練になる。
今は目の前この事に集中……いや、母さんの言う通り楽しもう!
「さて、結論が出たわけだが……」
お、おかしい。どうしてこうなった?
「除籍は爆豪、緑谷の両名。それがいやなら個性ありのガチンコで闘え。勝った奴の除籍を取り消してやる」
どうしてこうなった!?
一体なぜこんなことになってしまったのか……それは作者にもわかりません。
運が良ければ本日中にもう一話投稿します。