B-2ed   作:管蘿乃

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本日2話目の投稿です。


B_7thD

「『いいじゃないかみんな! かっこいいぜ!』」

 

 グラウンドβで待っていたオールマイトはそう言ったけど、僕は周りから若干距離を置かれてる。っていうか、オールマイトですら僕を見て若干ギョッとしていた。ヒーローらしくはないよね、やっぱり。

 

(いや、どっちかっていうと骨だろ)

 

 骨か。

 骨かなぁ?

 

(骨だよ。先生にも指摘されてたけど、出久のその妙にこり固まったコンプレックスは明確な欠点だな)

 

 ううん……気を付けるよ、あんまり自覚ないけど。

 

「『さて、それじゃあ早速今日の訓練内容だが……屋内での対人戦闘訓練だ!!』」

 

「対人?」

「入試の時みたいにロボットじゃないの?」

「基礎訓練もなしに?」

 

「『ふふっ、今興味深い意見が出たね! じゃあ私から質問しよう、基礎って一体なにかな? ええと……切島少年!』」

 

「え、お、おす! き、筋トレ?」

 

 基礎、基礎か。筋トレはトレーニングであって訓練じゃないよな。いや、でも聞かれてるのはあくまで『基礎』であって『基礎訓練』じゃ無い訳で……でもやっぱり筋トレは違うような。

 

「『んん~、悪くないが違うな。常闇少年!』」

 

「 自らの未熟さを……知る」

 

 未熟さを知る? 昨日相澤先生に指摘されたよね、自分を下に見る逃げ癖とか。あんまり自覚無かったけどさっきエミネにもおこられたし。うん、でも何だろう? ちょっとピンとこないというか……

 

「『お、惜しいな。この調子でいってみようか緑谷少……ね、ん?』」

 

「ブツブツうーん基礎、基礎か。相澤先生ことイレイザーヘッドは徹底した合理主義で無駄を嫌うはず。つまり昨日の個性把握テストは先生なりの基礎だったんじゃないか? 昨日と今日の相違点は……相手が生身の人間だってことか。ブツブツ昨日みたいに計器が相手ならともかく、普通に考えていきなり対人で個性を使うなんて出来ない。出来ない? 常闇君が惜しい……そうか、出来ることと出来ないこと。自らの未熟さ。つまり基礎って言うのはブツブツ」

(出久、先生に呼ばれてるぞ)

「うぇっ、な、何でしょうかオールマイト!」

「『あー、とりあえずいいや。八百万少女、総括してくれるかな?』」

 

「つまり基礎というのは出来ることと出来ないこと、それを持つ『自分自身』のことですわね」

 

「『オッケー完璧だ。雄英ヒーロー科では、2回の授業を通して君たちに基礎を学んでもらう。この場合、相澤くんのは彼独自のメソッドだから例外として、詳しいことは次回説明することになるだろう!!』」

 

 ちらほらとなんで今日教えてくれないのかなんて意見が出たけれど、二回が1セットの授業ならそれもしょうがないだろう。

 しかし屋内での対人戦闘訓練……対人。先生の胸を借りるとかだったらあまりに無謀というか……だってオールマイトだよ? まあでも逆に安心できるか。僕らがどうこうしたところでどうにもならないだろうし。

 

「『じゃあみんなにはこのくじを引いてもらおうか! さっきも言ったが今日の訓練内容は屋内の対人戦闘訓練、それも2対2のチーム戦だ! 張り切って行ってみよう!!』」

 

 えええ、生徒同士の対人戦……大丈夫か? かっちゃんとか。

 雄英にはリカバリーガールがいる。いるけど、いざとなったら躊躇わない。覚悟をしよう。

 

(一悪のこと忘れるなよ)

 

 うん。

 

 

 

 

 さて、訓練のシチュエーションは『(ヴィラン)』がアジトに『核兵器』を隠し持っていて、『ヒーロー』はそれを処理しようとしている。ヒーロー側の勝利条件は制限時間内での『敵の捕縛』、もしくは『核兵器の回収』。敵側の勝利条件は『制限時間を逃げ切る』、もしくは『ヒーローの捕縛』。捕縛はどちらであっても『確保テープ』を対象のどこでもいいから巻き付けること。核兵器の回収はタッチさえすれば良い。

 そして籤でのチームアップ結果は以下の通り。

 

Aチーム:砂藤 力道 & 峰田 実

Bチーム:瀬呂 範太 & 耳郎 響香

Cチーム:口田 甲司 & 葉隠 透

Dチーム:爆豪 勝己 & 飯田 天哉

Eチーム:八百万 百 & 青山 優雅

Fチーム:緑谷 出久 & 尾白 猿夫

Gチーム:障子 目蔵 & 上鳴 電気

Hチーム:常闇 踏陰 & 芦戸 三奈

Iチーム:轟 焦凍 & 麗日 お茶子

Jチーム:切島 鋭児郎 & 蛙吹 梅雨

 

 対戦相手は毎回引くらしいので対戦相手に応じたシミュレーションは出来ない。さっそくだけどJチームがヒーロー、Gチームが敵として訓練が始まっている。

 一見するとヒーロー側が不利だろうか。もともと、五階建てのアジト内どこにでも核(ハリボテ)を隠せる敵側が有利だけど、チームとしての相性も良くなさそうだ。ヒーロー側の切島君と蛙吹さんは基本的に身体能力の高さが売りなのに、障子君の身体能力はその上を行く。室内故の動きにくさは圧倒的な情報収集能力でカバー、切島君のもう一つの売りである硬さは上鳴君の放電に対してはあまり有効じゃないように見える。

 2対2になると障子君がゴリ押して、抜けようとするところを待ち構えた上鳴君が放電で打ち落とす。

 一方が囮になろうとすると即座に障子君がもう一人の居場所を突き止め切島君に上鳴君を当てる。むしろ障子君は相手を誘導して一対一を二つ作る形を目指してるらしい。残念ながら戦略や相性では勝ちようが無い。ここはもう、上鳴君が相手を狙った放電が出来ないことを利用して、ヒーローチームが二人掛かりで障子君を倒せるかどうかの勝負だ……けど絶妙に逃げるんだよなぁ障子君。これは敵チームの勝ちで決まりかな? 切島君なんか集中できてないし。

 

「尾白君はどう思う?」

「え、あ、うん、どうだろう」

 

 尾白君 (チームメイト)に目をそらされた。

 相手に応じたシミュレーションが出来ない以上、勝率をあげるためにはチームの相手とコミニュケーションを取って連携を深めるしか無いんだけど……うーん、なんだかなぁ。

 あ、蛙吹さんが自爆……じゃない、障子君に舌を絡ませた状態であえて上鳴君の放電を食らった。当然放電の影響は障子君にもでるわけで、びっくりして反応が鈍った障子君を置き去りにしたヒーローチームが彼へのダメージをためらってる上鳴君を二人掛かりで確保した。何度もくらった分ヒーローチーム側に放電に対する慣れというか、耐性が出来たんだろうか。それとも根性? 何にせよ上鳴君が捕縛されると同時に障子君が逃げ出した。

 障子君ほんとうに判断早い……あそこで上鳴君を捕えに行っちゃったのがミスだな。そのまま障子君の圧倒的な索敵能力による核を抱えたままの逃げ切り勝ちが決まった。

 

 総評としてはベストが障子君、次点が蛙吹さん。やっぱり彼の索敵能力の高さが圧倒的だった。何でも、最上階にいてもだいたい建物全体の人間の動きが読み取れるほどらしい。

 僕だったらどうしたかな? 機動力が微妙だし、核を持ったまま逃げ切られることが無いように二手に分かれるのは必須だけど……一対一では敵いそうにない。やっぱり上鳴君が機能しないように超至近距離の二対一で打ち倒すしか無いか。問題は先に相手に見つかるから相手に二対一を仕掛けられたりする可能性が高いことだよな。

 情報収集能力……血坊主で何か作って情報収集とか出来ないわけじゃないけど……確実にばれるな。少なくとも今日は使わないでおこう。

 

「『両チームとも素晴らしかったぞ! それじゃあ次の試合行ってみようか……ヒーローチームH!! 敵チームF!!』」

 

 お、名前を呼ばれた。僕と尾白君が敵チーム、常闇君と芦戸さんがヒーローチームだ。

 

「あー……頑張ろうね、尾白君」

「お、おう。そうだな、緑谷」

 

 いざ本番となってもぎこちなさは消えず。どうしよう、連携。

 

「……核、とりあえず4階に設置しようか。常闇君はかなり機動力があるタイプだし、窓から最上階に飛び込んでくるかもしれない」

「い、いいんじゃないか?」

 

 ……

 

「僕らは情報収集能力とかは無いし、基本片方が護衛しつつもう片方が索敵兼陽動するのが良いと思うんだけど」

「……う、うん」

 

 ……

 

「……相手の2人はそれぞれ僕たちの上位互換だ。芦戸さんが……いや、僕と比べればクラス全体そうだ。それと常闇君の黒影も尾白君の尻尾も応用の利く器用な個性だけど、昨日のテストの結果を見る限り総合力で常闇君が勝る。狙い目は黒影に独立した意識があること。常闇君との意思の疎通にかかる時間くらいかな」

「……」

 

 ……要するに、二対二……あるいは二対三の連携で時間を稼ぐとか、もしくはうまく二対一に持ち込んでの一人ずつ撃破、可能なら僕が常闇君相手に時間を稼いでる間に尾白君が芦戸さんを圧倒、ひたすら核を運んでの逃げ切り……この辺りが今想定できる適当な勝利への展開、かな。

 

「……この訓練はどちらかといえば敵有利だ。核の設置場所はヒーローにはわからない。戦闘しながら制限時間内に見つけるのは結構大変だと思う……だけどそれは戦闘があること前提だ。もし戦闘がないなら、見取り図もあるし1フロアの確認は一分前後で済んでしまう。つまりけして片方をフリーにしちゃいけない」

「……」

「だから……」

 

 こいつ、目を合わせようともしない……!

 いや、だけど僕が彼になにか言うのか? 真面目にやれーとか? 昨日相澤先生に諦めていることを指摘されたばかりの僕が? こんな道化師そのものの格好で?

 ないない。それはない。

 ない。

 ない……よね?

 

 Pi Pi Pi!

 

 おっと、無線に監督者 (オールマイト)からの通信だ。そういえば準備時間は指定されてなかったけど……

 

『『敵チーム、そろそろ開始して良いかな?』』

「あっ、は、はい! オールマイト」

「ちょっ、尾白君!?」

『『オッケー! それじゃあ屋内対人戦闘訓練 開始!!』』

 

 尾白君が訓練開始を受けてしまった……

 ちょ、まだ核の配置もしてない! 最初にあった五階のまま……しかも核の前で両名待機なんて愚策も愚策、索敵能力がない以上足で稼ぐしかないのに。

 

「尾白君、核の前で乱戦なんて最悪だ! 索敵に出る!」

 

 慌てて核のある部屋から飛び出した僕は、とりあえず……何故か追い掛けてきた尾白君にもはや何も言えなかった。

 確かに主語は抜けていたと思う。

 でも『出るよ』とかじゃない。

 『出よう』でもなかった。

 『出る』と言い切ったはずだ。

 実力的に僕じゃ頼りないのかもしれない。だけど、二人で核の前をあけるのはあまりにひどい。あげく何も言わないままとうとう階段まで着いてきた彼を見て、僕は全部諦めた。

 

 ねえエミネ。こういう時悪者ってどう行動すると思う?

 

(そりゃ、まあ()()するよ)

 

 うん、そうだよね。こればっかりはそうするのが正しいと僕は思う。

 どうせ敵役なんだし、自分のことは全部棚に上げて開き直ろう。

 

「ねえ尾白君……尾白君!!

「お、あ、な、何だ緑谷?」

 

 相手に見つかってない、相手を探し出さなきゃ行けない、そんな今の状況。大声を出すなんてのは真っ先に除外すべき選択肢だろう。

 しかもここは一番上とはいえ階段の目の前。下まで声が届いても何も不思議じゃない。

 だけど。

 

「あのさ、僕らって(ヴィラン)役じゃないか」

「う、うん」

「仲間割れって、すごく(ヴィラン)らしくない?」

「え?」

 

 右の拳を振りかぶり、振り下ろす動作で胴をねじる。

 あからさまなテレフォンパンチ。驚きながらも冷静に受け止めた尾白君は、同時に引き戻された左手のスティックに足を払われてひっくり返った。足下にスティックあててたのに気付かないんだもんな。

 空中で状況に気付きとっさに尻尾が地面を捉えようと動くけど、それを許すと思う? 足に引っかかったスティックで釣り上げるように、ちょっとだけ本気を出してそのまま階下の踊り場に向かって彼を投げる。そして猛追のドロップキック! 踊り場に倒れ臥した彼を、慌てて階段を上がってきたヒーローチームに見せつけるように4階まで蹴落とす。

 

「役立たずはいらない……」

「み、緑くん!?」

「緑谷……!」

 

 びっくりした表情で僕を見上げる芦戸さん、常闇君、ついでにぼろぼろの尾白君。やっちゃった。もう後戻りは出来ないぞ……フー……ハァ。

 

「来いよヒーロー、俺が黙らせてやる。何人来ても、そいつのようにな……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、ななななな……」

「み、緑谷君?」

「え、何? どうなってんの!?」

「なんかずっと話してたけど……なにかの作戦なのかぁ?」

「いくら作戦ったってあいつ、仲間を攻撃したぜ?」

「どういうつもりだ……?」

「はっ、無個性のグズが本性出しただけだろ。普通にやったら勝てねーからって必死にアピールしてんだよ」

「そういう問題かしら?」

「緑谷……」

「や、やっぱりヤバい奴だったんだな!」

「……」

「ためらい無く教師に攻撃しようとするし、爆豪への脅迫なんて疑惑もあったけど……」

「無個性……無個性なんですよね……」

「緑谷君……」

「あいつ……マジでそうなのか……?」

「尾白、大丈夫なのか?」

「このマントヤバくない?」

 

ななななにやってんの緑谷しょうねぇえええんっ!!!!!!!




今回の訓練でのチーム分けは、かっちゃんと出久を闘わせられないので乱数で振り分けました。
正直やめておけばよかったなとも思いますけど、楽しかったです。
なお漫画を見る限りでは核は最初から配置されていたようですが、それだと一回戦を見ていたチームには核の位置がわかってしまうので、敵チームが自由に配置できることにしました.
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