ハイスクールD×D 水色の殺人鬼紛い   作:まるきゅー

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第十一話 戰(出艸)

玖賀出艸とは、裏側の世界において禁忌扱いとされている名だ。

『一撃必殺』。

『妖異蹴討』。

『死神』。

『惨殺屋の特攻隊長』。

『三人目の惨殺屋』。

『白黒色』。

強大強力殲滅壊滅。

その一振りで全てを塵芥へ変え、玖賀の中でも特に有名な惨殺屋。

玖賀発足当初から、リーダーである玖賀出流と共に数多の殺し合いと戦場と死線を掻い潜ってきた生きる伝説。

特定の武器は無く、名ばかりが広まりその戦闘の記録は僅かにも無い。

だが、裏側の世界で『藍色』と呼ばれる人物は、仲間にこう言ったという。

 

ーーーーーー爪先髪先一つ擦ればあの世逝き。だけど、一番喰らいたく無いのは、あの鎌だね。

 

勿論鎌など出艸は持っていないのだから、技の一つをそう名称したのだろうけど、人体に鎌とは仰々しい。

『藍色』の仲間が、玖賀出艸との戦闘を避けていたという記録があるが、信憑性は高そうだった。

さらに、根も葉もない噂だが、無限の本気の一撃を受けてなお嗤って立っていたという、眉唾物だが、何故か納得してしまいそうな噂が流れている。

これだけでなく、「玖賀と無飾以外の裏側の世界全てと敵対して勝利した」、「高層ビルから飛び降りても傷一つ無かった」、「夢幻と殺し合いを演じ引き分けた」、「『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』を零距離で食らってもゲラゲラ嗤っていた」、などの、驚異と脅威の肩書きを背負っている。

しかし、何故か、ある時から彼は、玖賀としての活動しかせず、さらには殺人衝動すらも限界まで抑えるという、玖賀の記録上前例の無い行動をし始めた。

ある時、とは。

裏側の世界では、不定期的に戦争が勃発する。

何十年間に一度、どこかの組織で、『天才』と呼ばれる人材が現れるのだ。

そうすれば、欲が出る。こいつがいれば、自分達がこの裏側の世界を支配出来るのでは無いか、と。

故に、裏側の世界では争いが絶えない。理由は簡単だ。禍根が残るからだ。それは、表側だろうと裏側だろうと変わらない。恨み辛みこそが戦争の主原因の一つだ。

だが、一際大きな戦争が、数十年前に起こった。

ある一人の狂気に狂った人間が起こした、過去最大最低の大戦争。

改悪業者も、交渉人も、惨殺屋も、流浪組も、忍軍も、他人攫いも、者売りも、色取り取りも、悪魔も天使も堕天使も、神も魔神も龍も、無限も夢幻も。何もかもが、その一人の人間に完膚無きまでに潰された。

惨殺屋によりその人間は捕らえられ、その後は地獄の最下層へ投獄された。コキュートス行きである。

その狂者の名前は、九龍永迴(くりゅうながえ)

裏側の世界のみならず、人外からも共通の異名で呼ばれる『人間』。

曰く、「緑色の大災厄」。

通り名は、緑色。

出艸が、緑色を封じた戦いを生き抜き、そして変わったのは、その戦いが終了して間も無くの事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*出騒*

出流の隠れ家へ、仲間を招集している最中だった。

街から隔絶されたかの如き竹林を、へし折りブチ折り捻じり折り、その緑色は我ら七人の中央に陣取った。

円を描くように立っていた我ら七人へ、惜しみ無くその姿を晒す者。

その者を形容するならば緑。

緑色の髪に、薄緑のTシャツの上に深緑のミリタリーベスト。若草色のハーフパンツに青緑色のブーツを履いた、緑色。

外見はまるでお洒落に失敗したミリタリーマニア。しかし、その肉体は女性のものだ。ベスト越しに、豊かな肉体を覗かせるほどに。

その、突如現れた女は、我らを舐め回すようにニヤニヤと眺め、いきなりその顔を落胆の形に歪ませた。

 

「あーあ。なんだよなんだよなんなんだよ。久々の外出だってのに、こんな雑魚と殺り合わざるを得ないのかよ。同じ玖賀なら初期メン出せってんだ。カラカラカラカラカラカラ」

 

奇妙な笑い声を上げながら、ゆっくりと、仲間の一人である玖賀出萩へと近づく女。

両者の距離4mとなったあたりで、出萩が動いた。

長袖の袖口から二本。両手に握るは小さな小さな鉄パイプ。

しかし、玖賀が扱うそれは、殺人の武器以外に他ならない。

僅か一秒で女の背後に回り込み、その頭頂部へ必殺の両撃を放ちーーー、

 

「おいおい、それでも惨殺屋?赤ん坊みたいな軌跡描きやがってさ」

 

ーーー出萩の両手が失くなっていた。

瞬間、我以外の玖賀が動いた。

誰もが歴戦の玖賀。あの「大戦争」こそ体験していないが、それでも裏側の世界の戦争を生き抜いてきた強者達だ。

チェーンソーが。

アイアンナックルが。

トンファーが。

焔が。

針が。

仲間を傷つけた、玖賀に敵対した者を惨殺するため、各々が各々の武器を振るった。

 

「カラカラカラカラカラカラーーーーーーーーーなっさけねぇなぁ、惨殺屋ァ!」

 

だが、誰一人として、女に触れる事は、否、間合いに入る事さえ出来なかった。

出萩。出鶴。出野。出傘。出起。出槇。

全員が全員、一寸の狂いなく首を飛ばされていた。

 

カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラーーーーーーーーーー。

 

「ーーーーーーさあてさあて?てめぇはどうすんだよ玖賀なんたら。まさか仲間の仇目の前にして逃げるわきゃねえよなぁ。あぁ?そこらへんどうよ?なんか動かなかったけどよぉ」

 

ニヤニヤと顔を歪ませながら、此方を挑発する女。

我が動かなかったのには、理由がある。

出流に、忠告をされていたのを、思い出していたのだ。

一年程前に、唐突に彼は我に言った。

ーーーもしもさ、出騒。全身真緑の男みたいな女が居たらさ、絶対関わるなよ。なんていったって、そいつこそがかつての「大戦争」を起こした首謀者なんだからな。

出流、感謝する。

お前の忠告が無ければ、仲間の仇を前にして、情けない死に方をしていた。

だが、冷静になれば対処出来る。

この竹林だ。自由には動けない。へし折ったところを見れば対して動きを阻害はされないようだが、隙が出来る。ならばそこを叩く。

さらには、周りは狭苦しく、戦うには真っ直ぐ我へ突っ込まざるを得なくなる。そこを叩く。

真っ直ぐ我へ突っ込んできたならばーーーーーー

 

「出番だ、血を吸い上げろ。『生死流転(アンラッキーアンハッピー)』」

 

この、L字型バールで、頭なりなんなりを潰して砕けばいい。

中折れ帽を押さえ付け、いつでも駆け出せるようにチカラを溜める。女も、ニヤニヤとした笑みは変えないが、その足に僅かな力が加わる。

 

「名前、教えとけよバール野郎」

 

「玖賀出騒。貴様は?」

 

「九龍永迴」

 

そう言って、あり得ない速度で向かってくる永迴。我もすぐに駆け出し、『生死流転』を振り上げ、振り下ろしながら永迴の脇を通り過ぎる。

一瞬の交差。

だが、手応えはある。頭をカチ割った、あの感触が手に残っている。

勝利を確信し、振り向こうとした、が。

 

「カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラーーーーーーーーー中々に弱っチィな」

 

体が、その場で動かなくなった。

冷たく、虚しく、何かに包まれていく。

あぁ、どうやら、ここで死ぬようだ。ならば、嗤って死んでやろう。

さらばだ、ーーーーーーーーー我が現世。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*出艸*

出騒が死んだか…………。

俺は目の前の女、九龍永迴の体全体を見ながら、周りの気配を感じる。

生命体は無し。この場には、俺とあの女しかいない。

俺は仇討ちに駆られそうになる体を押さえ付け、九龍へ問う。

 

「てめーは今地獄の最下層(コキュートス)行きだったはずだ。何故外にでていられる?」

 

「ハーデスのジジを脅したに決まってんだろ?出艸ァ……何年か振りの殺し合いを演じようぜ」

 

カラカラカラカラカラカラ。

笑いながら、さらっと、冥府の神を脅したと述べる九龍。

普通なら信じられないが、この女ならば納得出来る。

俺は、体を縛っているベルトを外しながら、九龍との会話を続ける。

 

「そういや、ギリシア神話はどうだった?」

 

「つまんなかったぜ!神様があんなにヒョロ弱くていいのかねえ」

 

またしてもさらっと神を罵る。

しょうがない、このまま話を続けても、なんにもならなさそうだ。

ベルトも外し終わったし、さて、ではでは、始めるかなー。

 

「てめーへの贈り物は一薙ぎ(デスサイズ)だ」

 

威圧感を込めて、低い声で高圧するが、女は何処吹く風となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーー惨殺の始まりだ」




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