ハイスクールD×D 水色の殺人鬼紛い   作:まるきゅー

17 / 29
出流の、ちょっとした悩み。


第十五話 不達(二つ)

深夜。

出杜とメルの料理(中華)を適当に作り、夜這いの準備に掛かったメルを気絶…………寝かしつけて、俺は屋上にまた戻ってきた。

 

「出騒。出萩。出鶴。出野。出傘。出起。出槇。全員、死亡」

 

改めて口に出すと、心にくるものがある。

笑えるな。何千何万と人を殺そうが、同類が死んだだけでこれ程までに、胸が締め付けられてしまうのか。いや、違うな。

歓喜しているんだ、俺は。

仲間が死んだというのに、嬉しくて堪らない自分がいる。傑作だ。なんというカスか。

 

「ーーーーーーなあ、一体俺は誰なんだろうな?教えてくれよ、水葱……………」

 

糸牧詩絃なのか?

玖賀出流なのか?

常人なのか?

惨殺屋なのか?

訳が分からない。こんな事、とっくの昔に悩み過ぎ合点した事の筈なのに。

 

「相殺性二重人格ーーーーーーはっ!笑えねぇ」

 

相殺性二重人格。

ありていに言えば、相反する二つの人格を持つ、精神病。

玖賀のメンバーは、殺人衝動と同時に、この特質を持っている。

日常生活を送る時は、本名を。

惨殺屋として動く時は、玖賀を名乗る。

本来は、二つの人格は相反するが故に、どちらが本当の自分なのか。それを悩む時があるのだが、結局は行き着くところは同じだ。

どちらも己なのだ、と気づく。

人を殺したくない自分がいて、人を殺したい自分がいる。相殺するから切り替える。切り替えれば扱える。

玖賀が、常時誰彼構わず殺しをしないのは、もう一つの相反する人格があるからだ。

だが。

ここ最近、俺は、その相反する人格が無くなってきている。

理由は分からないが、もし、どちらかが無くなれば、後には何も残らない。

糸牧詩絃が死んだとしよう。どうなるか?

常時、目についた人型を、仲間であろうと殺すただの殺人狂である玖賀出流が誕生する。

ならば、玖賀出流が死んだとしよう。どうなるか?

一般人でありながら、玖賀のリーダーを務める訳にはいかない。だが、玖賀としての自分を無くした時点で、俺は玖賀から仲間として見られない。故に、玖賀に殺されるだろう。

二つとも、俺を形成する重要な人格だ。失いたくない。

だけれど、ただ人格が無くなるわけじゃあなかった。

人格は失いそうになったわけじゃない。二つの人格が一つにまとまりそうになっているんだ。

一般人と惨殺屋の融合。

最低、最悪、最蔑。

それは、存在してはいけないものだ。そんな存在、誰もが認めない。

だってのに、分かってるのに。

 

「なんで俺ってヤツは、こうも醜く混ざってやがるんだ?切り替えもマトモに出来ないのかよ」

 

はっ!出月にでもリーダー任せるか?

…………七年は早いか。

とりあえず、今すぐに対策を打ち立てなくちゃならないわけじゃない。近い未来、俺を中心に災厄が起こるだけだ。

 

「近い未来ーーーーーーまさかな」

 

夜風に当たれば、何かスッキリするかと思ったが、別に大して変わりなかったな。もう寝るか。

そう思い、踵を返した時だった。

フワッと、かるく屋上に着地した出杜とまみえる。

 

「水の人。何か悩んでる?」

 

直球だった。

いきなり核心をついてきた。

吃驚して思わず吹き出したが、なんとも思われなかったようだ。

 

「………悩んでるよ、そりゃあ。悩まなくちゃいけない事だ」

 

「話、聞くよ」

 

そう言って、屋上のベンチに体育座りして此方をジッと見続ける出杜。その姿は、まるで本物の幼稚園児のようだ。中身は惨殺屋だが。

というか、話といっても、自分でもよく分かっていない事なんだがな。

 

「…………俺自身、よく分かっていないんだよ。何が原因でこうなったのかが」

 

「話すだけでも、結構変わるよ?」

 

「ーーーーーーなら、話してみるかな」

 

そう言って、その場にしゃがみ込み、出杜と向き合う。

 

「お前、普段はどんな生活してる?」

 

「そうだねー。姿を変えてアルバイトなりなんなり、とりあえずフリーターみたいな生活をしてるよ」

 

「その時の名前は?」

 

「榊原泰也」

 

さかきばらやすなり。

なんか二秒で思い付けそうな名前だ。

俺は、出杜の反応を見ながら話す。

 

「じゃあさ、出杜。その榊原としての自分と、出杜としての自分が、混ざりそうな時、お前ならどうする?」

 

出杜がピクッと動いた。

しばし考え、二十分程思考したのち、返答した。

 

「それこそが、本当の自分だと納得するかな」

 

星空を見上げながら、続ける出杜。

 

「混ざってるって事は、無くなったわけじゃあないんだろ?(・・・・・・・・・・・・・・)。なら、その混ざり合った自分こそが、本当の自分なんじゃないかな?」

 

…………成る程な。

無くなったわけじゃあない、のか。

ただ混ざっただけ、か。

はっはっ、笑えねぇ。結局、醜く混ざってやがるのか。

 

「…………別に、混ざり合ったって、構わないと僕は思うよ」

 

「ん?何でだよ?一般人と惨殺屋が混ざり合った存在なんざ、醜悪以外の何者でも無いだろう?」

 

「それは違うよ水の人」

 

そう言って、ベンチから立ち上がる出杜。

ツカツカと、俺の前まで歩いてきて、しゃがみ込んで、俺の心臓に手を添える。

 

「この心臓は、糸牧詩絃の心臓。そして同時に、玖賀出流の心臓。どちらが本当の自分なのかは分からないけどさ。よくよく考えてみれば、どちらの心臓でもあるんだから、別に二つの人格が一つに混ざり合おうが、『君』という存在は混ざらないし濁らないんだよ?ーーーーーー何があろうと、自分が信じた自分が、本当の自分なんじゃないかな?」

 

ーーーー!

はっはっはっはっはっはっ!!

イイね。最高だぜ出杜。

 

「自分が信じた自分が、本当の自分ーーーーーー笑えねぇ。が、最高だ」

 

「悩みは解決したかい?」

 

お陰様でな。ありがとう。

どういたしまして。

 

「さて、じゃあ僕はもう眠るよ。おやすみ」

 

「あぁ、おやすみ」

 

そう言って、屋上から飛び降りる出杜。

その姿を見届け、振り返り夜空の星々を束ねるが如く君臨する満月を見やる。

 

「行く河の流れは絶えずして、されど元の水にあらずーーーーーーーーー鴨長明。笑えねぇ」

 

本当に、笑えねぇ。

そう言って、俺も屋上を後にする。

今夜は、ぐっすりと眠れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、レイナーレ他のところです。
今回は短めの文だったので、長く書きたいですね。
ヒロイン募集中です。詳しくは活動報告を!
※ヒロインを感想欄に書かないでください。

感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。