そしてアーシアとレイナーレとの初邂逅。
『
簡単に言えば、流れを操る能力だ。俺の名前である出流の元となっている。
時間の流れを操れるし、空気の流れを操れる。水の流れを操れるし、超常の力の流れも操れる。
流れの速度を速め、加速させる。
流れを止め、停止させる。
流れを逆流させ、戻らせる。
流れを変え、軌跡を変える。
多様性応用性に富み、万能とも言える能力だ。
今は、俺以外の時の流れを止めた。
「今は、俺のみが流れている。誰も流れはしない」
シスターを連れ去ろうとする堕天使。
こいつも、時がとまり、躍動する翼もピタッと止まっている。
続いて俺は、ポケットの中の手を微動させる。
「絃角」という、目に見えない極細の糸だ。斬れ味は最悪。鈍らよりも酷い。
だが、俺が使えば、何よりも鋭く刃を煌めかせる業物になる。
さらに、この絃角を扱う者は俺しかいないが、絃角を扱う上で一人前とされる技術がある。それはーーーーーー
「糸を絡める対象が、例え相手のみだったとしても、何事も無く戦えるもの」
糸という武器は、様々な物体に絡めて使うモノだ。
絡める対象が、敵対者のみだと、個人差はあるが不利になる場合が殆どだ。糸を万全に扱えないがゆえに。
だが、俺は例え地も壁も天井も無い、空中だろうとも、絃角の腕前を鈍らずに発揮できる。
「一対………下位堕天使か」
楽勝だな。
そう言って、指一つ動かさずに、絃角を操る。
堕天使の両翼が、根元から切断された。
切り飛ばした翼は、風の流れを操って細切れにする。
「時の『流れ』は元に戻る」
呟くと、時間がまた刻まれる。
瞬間、シスターを落とし、地へ墜落する堕天使。
「かっ……はぁ、あぁっ!?な、ぜ、私の、翼がァ!!」
「アーシア!」
「イッセーさん!」
兵藤がシスターをキャッチし、落下を防ぐ。
アーシア……?まさか、な…………。
と、そこで眼前に光の槍が投げられた。
光力の流れを掻き乱し、霧散させる。
「貴様………貴様が、私の翼を切ったの!?」
「その通りだ堕天使。ついでに首を切り落としてやるよ」
堕天使は立ちあがり、両手に光の槍を現す。
右手の槍を此方に突きつけながら、悪態をつく。
「脆弱で醜悪な人間風情が、よくも私の崇高な翼を傷つけたわね!万死に値するわ!千の苦しみと万の屈辱を与えてから殺してやるッ!!」
「三下ってさ、口から出る言葉は賞賛に値するが、内容は牛の糞以下だと思わないか?」
「なんのこと!?」
「てめぇの事だよ牛糞女」
ブチィッ!と堕天使から聞こえた気がした。
地が抉れる程に初速を出し、俺の喉に槍を突き出す堕天使。俺はその動きが全てわかっている。
時を逆流させ、もう一度流す。
つまりは、やり直しだ。
(時間Aの時)俺以外の時を逆流(時間B)させれば、俺のみが(時間A)の内容を知っている事になる。
俺からみれば、過去からのやり直し。
端からみれば、未来予知。
だから、堕天使の台詞も激昂も攻撃も、全て分かっている。
紙一重で槍を躱し、躱した俺にもう一本の槍を突き出す堕天使。
「もらった!」
必殺を確信したような声を上げる堕天使。それも、知っている。
槍の軌道の先に、糸を張り巡らせ、通過した瞬間に雁字搦めに縛る。
ビタァッと止まる槍に、勢いを殺せずに前のめりになる堕天使。その顔に、肘打ちを当て、続けて裏打ちを叩き込む。
肘打ちで鼻骨が折れ、裏打ちで粉砕された感覚がのこる。
「ぎゃああああああぉあッッ!?!」
端整な顔立ちは歪み、苦痛の表情は醜悪の一言。
鼻を抑えよろめく堕天使の脛に、足刀をぶち込む。
下段足刀は、真っ正面から脛を折れる強力な技だ。狙い通り、堕天使の右足を前からへし折った。
絶叫する堕天使に構わず、その鳩尾と腹を中心に蹴りを連続して叩き込み、フィニッシュに顔面に飛び蹴りを当てる。
「ぎゅ、がァアッ!?………あ、ァア、アッ、………!!」
マトモな言葉さえ話せなくなった堕天使。
翼を切られ、足を折られて逃亡手段を奪われ、鼻骨と肋骨の骨折の痛みで呼吸さえままならない。
体中に激痛と幻痛が襲っているはずだ。
「苦しいか?堕天使。安心しろ。手足すり潰して皮剥いだら殺して楽にしてやる。簡単だろう?」
「ああ!ああああああ、あぁあぁあぁぁぁぁ…………!!」
ずりずりと、体を引きずりながら俺から離れようとする堕天使。その背中を踏みつけ、左腕を捻り上げーーーーーー
「やめてください!!!」
止められた。
先程のシスターだ。
彼女は、兵藤の陰に隠れながら、此方を見据えている。
「レイナーレ様は、確かに酷い事をしましたし、私の事だって、利用しようとしました!だけど、同時に私の世話をしてくれたんです!生かしておくためとは分かっています!打算だと理解しています!しかし、それでも、安らかな死は、与えられてもいいはずです!もう充分苦しみました!もう充分罪は贖われました!!一修道女たる私が言うにはおこがましいかもしれません!!ただ、レイナーレ様には、もう痛みを与えないでください!!」
涙を浮かべ、叫ぶシスター。
あぁ、そうか。思い出した。アーシア・アルジェントか。
『聖女』であったにもかかわらず、『魔女』と烙印を押され追放された者。
通りで、何か引っかかったわけだ。
噂通りの慈悲だな。俺には理解出来ないが。
「ーーーーーー苦しみを与えるな、と?」
「は、はい!彼女はもう力も」
ゴキッッ!
鈍い音が、レイナーレと言うらしい堕天使の首から鳴る。
「え…………?」
理解が追いついていない表情を浮かべるアルジェント。
だが、お前自身も今さっき言った事をしただけだ。
安らかな死は、与えられてもいいはず、だと。
「…………安心しろ。痛みなんて、感じる間も無く死んだ。結構、難しいんだぜ?楽に殺すのは」
「糸牧ィィィィィィィィイイイイイイイイイ!!!」
兵藤が、走ってきて襟首を掴んでくる。
「殺す必要なんて無かったろ!アーシアが許したんだ!!なんで殺したんだよ!!」
「なあ兵藤。この堕天使、今までアルジェントしか危害を与えなかったのか?」
兵藤は、ハッとした顔になる。
俺は構わず、さらに続ける。
「こいつは今まで人間やらなにやらを、そこそこは殺してきたはずだ。その殺された奴は、この堕天使を許すか?…………許すわけがないよな。アルジェントが例外なだけだよ。普通、過程はどうあれ、こいつは死んでも文句は言えない立場を歩いていたんだ。だから、殺したのは怨まれる行為なのかもしれないが、咎められる行為ではない」
「く、で、でも!」
「それに、話に聞けば、お前はこいつに殺されたんだってな?まさか、殺意もなにも無かったわけじゃあないだろ」
兵藤は、苦虫を噛み潰したような顔になり、拳を震わせている。
「それに、俺が殺すべきだと思ったから殺したんだ。それに後悔は無い」
悪りぃが、急用があるからな。
そう言って、レイナーレの羽根を一つ、兵藤に渡す。
「これは………?」
「リアス・グレモリーに渡せ。利用するだろうからな」
俺はそう言い残し、兵藤の脇を過ぎ、アルジェントをすぎる。
アルジェントは何か言いたげだったが、ショックから抜け出せないようで、交直したままだった。
構う事無く、隠れ家へ戻った。
「行くぞ」
「うん」
隠れ家へ戻った俺は、すぐに出杜と共に準備を済ませ、緋人のところまで行く。
出杜が詠唱すると、俺らの足下に転移陣が浮かび上がる。
この先に、九龍がいる。
ーーーーーー約束通り、必ず助ける。が、お決まりの台詞は言わせてもらうかな。
「さぁて、…………殺して、崩して、斬り裂いて。廻して、遊んで、捨ててやるーーーーーーーーーーーー」
惨殺の時間だ。
堕天使レイナーレ、惨殺完了。
人間九龍永迴、嘘惨殺継続。
アーシアちゃんマジ天使。
ヒロイン、募集中です!詳しくは活動報告を。
※ヒロインを感想欄に答えないでください。
感想、お待ちしております!