かなりイラつく文章になっていれば、狙い通りなのですが、どうでしょうかね?
太平洋の上空に、巨大な力と力の奔流が舞い起こった。
オーロラのように明るく、それでいて絶大や強大などという言葉では言い表せぬ、文字通り筆舌に尽くし難い破壊の力が奔る。
その力の集合点にして被害の中心たる九龍は、かつて受けた事の無い激撃により、遂に傍目から見ても分かる程にダメージを蓄積した。
右腕は抉れ、細やかな肉骨が顔を覗かせ、肋骨の浮き出ていた細い胴体からは、本当に肋骨が飛び出ていた。さらに口からダラダラと吐血し、柔肌の彼方此方に大火傷を負い、小さな銃痕を体中に残している。
しかし、それでも。
彼女は倒れなかった。
「クソッタレが………………やるじゃねぇかよ」
深い煙霧の中に嘯く悪態にも力は無く、今にも消え入りそうだ。だが、芯の部分は全く崩れず壊れない。
真冬日のようにプルプルと微動する体に喝を入れ、足腰を活動させ、肺へ静寂の空気を満たし。
「う、う、う、ぉ、ぉ、お、お、お、おお、おおおお、ぉあああああ あああああああああ ああああ ああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアア アアアアア ア ! ! ! !」
途切れ途切れ。
血反吐混じり。
息も絶え絶え。
それでも彼女は、雄叫びを上げた。
瞳をギラつかせ、心臓を熱し、精神を昂らせる。
骨が飛び出る左腕を掲げ、九龍は自らが健在であると証明する。
まだ終わらないと。まだ敗北ではないと。
だが、この勝負。勝ち負けは決まらない。
「攫いにキタよ、緑色」
唐突に、それは居た。
咆哮を上げた九龍の、左隣に、ピッタリと。
消耗しているとはいえ、彼女に気づかれずに。
黒いブレザーに、口元をすっぽりと覆う仮面。
金色の剃り込んだ、野生児のような顔立ち。
しかしその瞳は、十手二十手先を常に読んでいるような、卓越した策士の色。
彼の名前は、
職業は、
裏側の世界にて名を轟かす八つの組織、『七職無色』が、一つ。
誘拐、窃盗、強奪、拉致。
奪い盗み攫う事に関して、世界最高の技術と実力を持つ怪盗グループ。
その中でも、特に敬遠される誘拐人。
彼は九龍の左肩にそっと手を添え、薄く囁く。
「ワタシは何処にもイナイし、何処にもイル。ダカラ、私がフレている君は今、ワタシの能力がオヨビ、何処にでも居るし何処にもイナイ、チシャ猫となるーーーーーーーーーツマルトコロ、強制転移さ」
瞬間、九龍の視界がぐるりと廻る。
煙霧に覆われた世界から、何処かの街の繁華街へと。
赤、青、黄、緑、紫、ピンク、橙。
様々なイルミネーションに飾られ、目がチカチカと痛む程に鮮やかに、色とりどりの発光版が蠢き、雑踏が群れ、ザワザワと落ち着きなく忙しなく、ガヤガヤと姦しい、雑多な繁華街へと。
攫われた。
何処にでもいるし、何処にもいない、夜迦夜伽の能力によって。
「ここは………!?」
「ある都心の繁華街サ。おっと。もうエスコートはイラナイね」
そう言って、九龍の左肩から手を離す夜伽。
しかしその前に、乱暴に彼の手を振り払う九龍。
折角、今までにない戦いを演じられていたのに、たかが他人攫い如きに邪魔をされ、挙句何処とも知れない場所へ転移させられた九龍は、怒髪天を衝く、とでも言いたげに憤怒の表情を浮かべた。
「てめぇ!いきなり出てきて何をしゃしゃってんだ!?あぁ!?木っ端微塵に潰して引き裂いてやろうか!?」
「オイオイ、場所をカンガエテくれよ。一般人がミテルじゃないか」
怒りを露わにする九龍を、まあまあと諌める夜伽。
実際、彼女らは繁華街の歩道路のど真ん中にいるのだ。近くを通りかかる一般人が、何事かと顔を向けている。
チッ!と、激しく舌打ちをし、骨が剝き出しとなっている左腕で夜伽の襟首をむんずと掴む九龍。
「ムッ?」
「こっち来い!洗いざらい吐いてもらうぞ!!」
そう言って、彼を近くの路地裏へ放り投げる九龍。うぎゃっ、と情けない声を上げながら、ロクな抵抗もせずなされるがままとなる夜伽。
すぐに九龍は、ズカズカと後に続き、イタタ、と腰を摩る忌々しい攫い人の胸を踏みつけ、体重を乗せる。
めしめしめしめし、と鈍い音が僅かずつ大きくなっていく。
九龍の靴底が、少しずつ少しずつ、黒いブレザーに減り込み入り込んでいく。
「ちょ、ストップストップ!!マチタマエ!話す!話すカラ!」
「全部!?洗いざらい!?余すとこなく!?赤裸々に!?」
「……………………」
「死 刑 確 定 だ ク ソ ッ タ レ !!!」
「ああああ!!分かった分かった!!全部ハナソウ!!」
みぎみぎみぎ!
一際大きく鳴る音に、呆気なく観念する夜伽。
だが実際、九龍の眼は本気であった。仕方ない。誰しも早死にはしたくない。
足を乗せられたまま、白状する夜伽。
「で、ドコカラ話したモノか」
口元がすっぽりと覆われる仮面を付けながらも、明瞭な声音で紡ぐ夜伽。
つい先ほどまでの焦燥が嘘のようだ。まあ、彼の能力ならば、死んだところで大した意味は無いのかもしれないが。
そんな彼に、一つ一つ詰問していく九龍。
それに、嘘偽り無く答えていく夜伽。
路地裏に、暫くの間奇妙な光景が続いた。
***太平洋***
「ーーーーーー上手くいったか」
「どうしました?出流様」
「何でもねぇよグレイフィア」
爆煙が晴れた時、既に九龍と夜伽は消えていた。
その事を確認した出流は、グレイフィアや衣笠にばれないように、内心で安堵の息をつく。
(流石は他人攫い、って事か。何処にも居ないが何処にでも現れる誘拐術ーーーーーー彼奴に頼んで正解だったな)
出流はポケットに手を入れたまま、糸を操り出艸と出杜の髪を僅かに引っ張る。
作戦完了、すぐに退け。
言外にそう告げ、二人を退却させる出流。そのままグレイフィアと衣笠に向き合う。
二人は重度の緊張から解放されたためか、出艸と出杜が消えた事にも気づいていないようだ。
「助力感謝するぜ二人ともーーーーーー衣笠には約束通りの金額を、悪魔側には指定された魔物の封殺と、堕天使に封印指定されている悪魔、アゾットの解放を行おう」
堕天使は稀に、特異な能力を持った者を解析し、その異能を我が物にせんと研究している。神器などが例に挙げられる。
アゾットは、水銀を操り、とある剣の柄尻に宿っているとされている悪魔であり、堕天使がその剣を保持、アゾットの能力を日夜研究しているという。
今回の騒動を収拾にあたり、傭兵である衣笠には相応の金額を。悪魔側には、悪魔が表立って活動出来ない事態の解決を、玖賀が担う事になった。
『無飾』は基本的に報酬を要求しない異質な集団であるため、特には何もない。
出流の言葉を聞いて、着ぐるみを着た傭兵は手元にどこの系統にも属さないオリジナルの方陣を組み、その姿を霞ませていく。
「金はいつもの口座に振り込んどけよ。あと、足りなかったりしたら殺しに行くからな?」
そう言って、衣笠はさっさと何処ぞへと転移していった。
グレイフィアも、衣笠につられたわけではないだろうが、転移陣を足元へ出現させ、帰還の用意をする。
と、そこで思い出したかのように、あっ、と声を出すグレイフィア。彼女は出流へトテモイイ笑顔を向け、ある人物からの伝言を伝える。
「出流様?リアスお嬢様からの伝言を賜っております」
「…………なに?」
まさか、と冷や汗を垂らす出流。リアス・グレモリーに対しては、一度騙したという負い目があるが故の嫌な予感がした。そして、その予感は的中する。
「『よくも謀ってくれたわね?後日埋め合わせはしっかりとしてもらうわ、覚悟なさい』ーーーーーーとのことです。では、私はこれにて」
そう言って転移陣へと消えたグレイフィア。後には、頭を抱えどうしたモノかと悩ましげに顔を歪ませる出流と、彼の作戦を玖賀以外で唯一聞いていた緋人のみが残った。
緋人は、暫し爆煙の中で何処かへ攫われた仲間へ思いを馳せていたが、ふいと出流へ向き直る。
「なあ出流。今回の騒動で、幾つか不明瞭な点があるんだが、説明してくれるか?」
「断る」
即答であった。
「…………」
「………冗談だよ」
結局折れた。
出流は緋人へ体を向け、面倒そうに口を回す。
「そもそも九龍は『地獄の最下層』には幽閉されていない」
「ーーーーーーーーーは?」
***繁華街***
イルミネーションに彩られ、ガヤガヤと騒がしい街中を、頭から布切れをスッポリと被った誰かがズカズカと歩いている。よくみると血が垂れている事と、布切れの端から見えるボロボロのコートから、九龍永迴であると分かる。
彼女は、つい先ほど問い詰めた他人攫いが述べた事に対して、とてもイラついていた。
「俺が幽閉されてなかった?ーーーーーー
がぃん!と道端に落ちていた錆びつきひん曲がったパイプを蹴り飛ばす九龍。物凄い速さで飛んでいき近くのビルへ深々と突き刺さるが、気にも留めない。
「しかも制限時間も自作自演?クソッタレ、何が目的でこんな事を…………」
ブツブツと怒りを吐き出しながら、慌ただしく歩みを進める九龍。だからだろうか、彼女でも全く気づかずに前方から歩いてきた少女にぶつかってしまったのは。
「きゃっ!?」
「っと、すまねぇ!前見てなかった!怪我は無いか?」
尻餅をついてしまった少女は、大丈夫です、とだけ言ってすぐに立ち去ってしまった。勿論九龍の格好が怪しすぎるからである。
九龍は暫し少女の方を眺めていたが、これからどう動くかをまた考え始める。
少女の髪色が茶色でアホ毛があり、着ていたパーカーに二重丸が描かれていた事など、九龍はすぐに忘れてしまった。
***太平洋***
「ーーーーーーつまり、俺は今回の騒動で依頼をした夜迦夜伽では無く、大戦争時に夜迦夜風、本名入江という河童に九龍誘拐の依頼をしていたってわけだ。その後は冷凍睡眠を施し、世間には『地獄の最下層』行きと述べ、ハーデスには始末をしたと述べる。引きこもりジジイだからバレる心配も無いし、ばれたらばれたでハーデスの監督不届として解決する。同じギリシャ神話の連中からも嫌われ者のハーデスの擁護をする物好きもいないしな」
「そうか、そうすれば九龍は力を取り戻すまで誰からの干渉も受けずに療養できるというわけか。しかし、何処で休ませてたんだ?」
「さあ?他人攫いにしか分からんな」
そう言って、懐から名刺を取り出し緋人へ投げる出流。
名刺には、夜迦夜伽の連絡先が書いてあった。何かあったら使え、という事だろうか。
出流は用事は済んだとばかりに、転移陣を描く。
消える寸前、その背中に緋人は声をかけた。
「変わったな、お前」
その夜、ある辺境の街にて堕天使の小グループが、リアス・グレモリーに滅殺された。
それは物語の中軸を成す話であるが、『この物語』には関係無い。これは、笑顔でヒトを殺し殺される話なのだから。
だが、それは主人公の変貌によって軸が傾きズレていく。本来、玖賀出流は原作と呼ばれる話に関わりはしなかったはずであった。
が、玖賀出流の変化。それによって、彼は否応無しに物語の中軸へと食い込まれていく。
それは、この世界にどんな変化をもたらすのかーーーーーーーーー?
「ま、
一巻はこれにて終わりです。
二巻冒頭にて、サラッと結末を書けたらなぁ、と思っております。
二巻から、原作に深く食い込んでいきます。お付き合い願えたら幸いです。