ハイスクールD×D 水色の殺人鬼紛い   作:まるきゅー

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一見様誤解の回となっております。
原作を知る方々は皆様一様に「ファッ!?」となるでしょう。
さあ、口を窄めて、横に瞬時に開く用意と空気を吸って?
せーの、ファッ!?


第二十六話 擦れ(ズレ)

***駒王学園・旧校舎オカルト研究部***

 

「ライザー様がお越しになられるようです」

 

グレイフィアのその発言で、和やかな雰囲気となりかけていた部室に、氷が張りつめる。

ただならぬ空気を察したのか、一誠もアーシアも口を塞ぎ、出流は聞き慣れない名前に僅かばかりの困惑を抱いた。

 

(ライザー………らいざー………………ライザー…………?誰だ?記憶に無いって事は、大した実力者

じゃあ無いんだろうが…………んん?何か見落としてるなぁ……)

 

何かを思い出しそうになっている出流を待たずに、『それ』は来た。

突如として床に浮かび上がる赤き紋様。鳥と炎を彷彿とさせるマーク。それを見た出流が、ようやく頭のつっかかりを把握した。知っている紋様、否、家紋であったのだ。それは悪魔にとっては誇りともいえるものである家紋が描かれた転移陣。

フェニックスの紋様であった。

 

「フェニックスーーーーーー成る程、あそこの子息か」

 

出流がそう呟くと同時に、ゴゥ!と勢いよく噴き出す豪炎。

それは冷たい雰囲気に包まれていた部室を、物理的な意味で熱した。

チリチリと火花が散り、業火が巻き起こり、爆炎が舞い上がり、そして鎮まった頃には、転移陣の中央に、男性のシルエットが浮かんでいた。

そのシルエットが腕を横に薙ぎ、焔を掻き消すと、その姿を見ることが出来た。

真っ赤なスーツをラフに着崩し、ネクタイをつけずにシャツを胸元まで見える程大胆に開いている。ポケットに手を突っ込み、二十代を僅かばかりに過ぎた頃に見える長身を惜しげなく晒し、整ってはいるがどこか悪餓鬼な印象を持たせる顔立ちに、にやけを含みながら笑っている。

その口が開き、見た目に違わない溌剌とした男性の声が響く。

 

「ーーーふぅ、人間界は久しぶりだ」

 

そう言ったスーツの男は、部室を見渡し、そしてリアス・グレモリーを見つけると、傍目に分かるほどに口元を引きつらせ、苦笑いを浮かべる。

そして、ここで、明らかに本来の物語から乖離した発言を続けた。

 

「あぁ、久方振りだなリアス。それで、いきなりですまないんだが、決断してくれたか?」

 

ほおをぽりぽりと掻きながら、言いづらそうに紡ぐスーツの男。流暢に語るのを憚っているようにも見える。

リアス・グレモリーは、やや困った風に頭を抑えながら、此方も言いづらそうに口を開く。

 

「久しぶりねライザー。それで、その、言いにくんだけど、私はまだ相手を決める気は無いのよ」

 

「そっか………そうだよな。こんな形じゃあな………気も滅入るだろう?心中察するぜ、リアス」

 

「えぇ、両家が決めた事だから、開けっぴろげに断るのも………」

 

「俺も兄上や妹から詰られる毎日さ。確かにいい縁談かも知れないが、俺はもう心に誓った相手がいるし、お前にはまだ選ぶ時間も権利もあるし、あって然るべきだ」

 

そう二人は愚痴を零しながら、ソファに座り向かい合う。

リアスは嘆息し、思うようにいかない現状に呆れ果て、ライザーと呼ばれた男はリアスに対する同情と、彼女を取り巻くしがらみを嫌悪しているようだ。

と、そこで一誠が困惑の声を上げる。

 

「え?フェニックス!?ライザー!?誰!?あと縁談って、どういう事だ!?」

 

頭を抱え、縁談、という言葉に絶望の色を滲ませる彼は、目の前にいる男と、矢継ぎ早に繰り出される話についていけていないようだ。

そこで、グレイフィアが彼へ説明をする。

 

「一誠様は初見となりますね。この方はライザー・フェニックス様。名門フェニックスのご三男にあらせられ、また、リアス様の婚約相手で御座います」

 

「………不本意ながら、だけどな」

 

「え?え、え!?えぇぇええええええ!?」

 

部室に一誠の叫びが響き渡った。

その絶叫を聴覚から弾きながら、出流は、彼は彼である事で心に重い石を乗せていた。

 

(ライザー・フェニックスーーーーーーまずいなぁ、確か出音のもう一つの人格が世話になってたような…………悪魔と玖賀で、一波乱起きなきゃいいが………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧校舎の屋上。そこに、彼らはいた。

黒いスーツを着た男性。

メイド服を着た少女。

白衣を着た青年。

白衣に瓶底眼鏡をかけた少女。

ダブリットを着た男性。

異様な服装の者もいれば、ごく普通の服装の者もいる。

あやしげな者もいれば、一見まともそうな者もいる。

楽しげな者もいれば、陰鬱そうな者もいる。

黒スーツの男性が口を開く。

 

「さて、私の計算によれば、出眠が独自に動き出したようだ。目的は定かではないが、な」

 

Grizie(ありがとう)、いい情報だ。ならばペッツォも動こうか。彼は実力なら初期メンバーにも勝るとも劣らないが、もしもの事があるやもしれん」

 

ダブリットを着た、長身のイタリア人がそれに応える。

ついで白衣の青年が興味を持ったような声音で続く。

 

「玖賀出眠さん………会った事なければ見た事も無いっすねぇ。強いんですか?そんなに」

 

「貴方よりは遥かに強いです。また、会った、では無く、遭った、の方が正しいでしょうね、彼を表すなら」

 

メイド服の少女は、明らかに年上の白衣の青年に辛辣な言葉を述べる。

がっくりと肩を落とす青年だが、フラスコやメスシリンダーを指に挟んでぶら下げている瓶底眼鏡の少女に話を振る。

 

「そういや、出流さんライザー・フェニックスの事見たらなんか嫌そうな顔しましたけど、何かあるんすか?普段はポーカーフェイスを崩さないのに」

 

「んー?あぁ、それは出音がいるからだろうねっ!彼女は、もう一つの顔は料理人だからねっ。種族も違和感無く悪魔と過ごせるものだし……けど、やっぱり玖賀でもあるから、これが原因で悪魔と喧嘩になるんじゃないか?って心配してるんでしょ。何方に転ぼうが、実験さえ出来れば私はそれでいいけどねっ!あと知的好奇心の満足感!」

 

と、そんな会話をツラツラと続ける彼らだったが、ふと黒スーツの男性と、ダブリットを着た男性が立ち上がる。

 

「では、私たちは出眠のサポートにむかう。私の計算によれば、二時間ほどで会えるはずだ」

 

「ふむ。了解した。で、君たちはどうするんだ?」

 

ダブリットを着た男性が、他の三人へ言葉を向ける。

彼ら彼女らは三者三様の答えを即答した。

 

「【実験】するよっ!」

 

「出流様のサポートにつきます」

 

「出輪さんと合流するっす。隠れ家探し頼まれたんで」

 

三者の答えを聞き、頷いた二人は、瞬きよりも速くその場から消えた。

残された三人も、一人が消え、また一人が何処かへと消え、最後に残ったメイド少女は、下の階でのやり取りを傍受していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーつまり、いつまで経っても私たちが乗り気でないから、レーティングゲームで白黒はっきりするという事?」

 

「まあ、そうなる。俺が勝てば即婚約。君が勝てば即破談。分かりやすいだろう?両家とも欲望だらけだ。流石悪魔というべきか」

 

「貴方も、ヒトの事は言えないわよ?」

 

こりゃ手厳しい。

そう言ったライザーは、はぁー、と嘆息する。明らかに遣る瀬無い気持ちがありありと分かる。

 

「俺はやるからには全力は出さずとも手抜きはしない主義だが………失礼ながらリアス、今の君の実力と眷属では、例え俺が手抜かり無く手加減したとしても、俺たちには勝てないだろう。あと一年程実践経験を積めば、あるいは、といったレベルだ」

 

「それは言われずとも分かっているわライザー。だからこそ両家とも波風立つ事無く、レーティングゲームでの勝敗に婚約の結果を持たせたのでしょう?確かに私も良い縁談だとは思うし、両家にとってはこれ以上無い程の縁談でもあるでしょう。でも、それでも私にはまだ自由があるわ。だからライザー、貴方には悪いけれど、倒させてもらうわ」

 

ソファに座り向かい合った二人の上級悪魔は、互いとも手加減無く相手を叩き潰す事を誓った。

必勝を確信しながらも油断の意識を殺し切り、まだまだ青いが才能溢れるリアスを迎え撃つ覚悟を決めるライザー。

圧倒的な敗率に手を震わしながらも、己の自由の為、また、『グレモリー』としてではなく、一人の『リアス』として、自分より遥かに強い不死鳥へ戦いを挑むリアス。

ここに、レーティングゲームでの決着に、同意が成された。

 

「ーーーーーーなあライザー・フェニックス」

 

と。

両者の間で火花散るこの場面で、出流が口を挟んだ。

彼は壁に背中を預け、大して緊張した様子もなく、今度は完璧なポーカーフェイスで語る。

 

「レーティングゲーム。確か悪魔同士の戦いで、非公認でのゲームも一定条件下ならば認められるーーーーーーだが、お前は何度か経験している上、成人しており実力も確かだ。それに対するリアス・グレモリーの実力はどうだ?経験も無い、まだ力も発展途上もいいところ、眷属の質もまだまだ甘いし数も無いから戦略も限られる。さらには勝たなきゃ即結婚ときた。これはあんまりじゃあないか?」

 

彼の予想外のフォローに、驚愕を隠せずに目を丸くするリアス。それを見て、やっぱポーカーフェイスを少しは磨け、と心の中で静かに落胆する出流。他の面々も絶句する程驚愕し、出流の人となりを多少は知っていたグレイフィアさえも僅かに口端をピクリと動かした。

しかし、実際面食らったのはライザーだ。何かしら事情があると思って放置しておいた人間に、いきなり口を出されたのだから。

 

「…………確かに、大きなハンデを与えなければ成立しないゲームだったな。だが、名乗りもせずにいきなり口を出すのは感心しないな、人間。俺はライザー・フェニックス。上級悪魔としての爵位を魔王さまから恐れ多くも賜っている。それで、お前は?」

 

「玖賀出流。しがない惨殺屋だ」

 

さらりと言った出流。しかし、それは誤りだった。

裏事情というものがあり、一般悪魔には玖賀の情報が限りなく少なくしか与られていない。そして、その少ない情報には、惨殺屋として名高く、目についたものすべてを惨たらしく殺す狂人の集団であり、リーダーの名前は玖賀出流という人間である、としか無い。

つまりは、今ここで言うべき名では無かった。

予めリアスから事情を知らされており、二、三度部室にも顔を出していたからグレモリー眷属には警戒されこそ敵対はされなかった。

しかし、ライザーと、その眷属は違う。ただの危険人物者の集団の、飛び切り凶悪な人物でしか無い。

今まで接してきた悪魔達が、皆上層部であったため、その辺りの事情に疎かった出流の、珍しい大失態だった。

 

「ーーーーーー惨殺屋が、何の目的があってここにいる!!」

 

激昂したライザーが、背に龍鱗すらも容易く燃やす炎翼を生やし、周りにいるリアスやその眷属へ危害が及ばないように配慮をしながらも、絶大の一言に尽きる炎玉を放つ。

と、瞬間炎玉が何か極細の刃物に切り刻まれたかのように霧散して消える。

 

「………中々予想外。いやはや噂よりも強いじゃないか。出音め、教育し過ぎじゃないか?」

 

ぼそりと、居ない仲間へ愚痴を零す出流。その隙に、ライザーの足元からまたフェニックスの紋様が現れ、彼の眷属達が一同に解する。

全員女性であったが、実力は本物である彼女達は、主が敵としている出流を見るやいなや、即座に戦闘態勢に入る。

グレモリー勢も、巻き込まれないように身構え、またもや部室内に敵意が満ちる。

訳がわからないのは出流だが、グレイフィアと上級悪魔以外殺して静かにさせようかと、危険極まりない事を自然に悩んでおり、全く事情が分かっていない。

ここで、嘆息しながらグレイフィアが仲裁に入る。

 

「皆様、矛を収め下さい。私から説明いたします」

 

その声を機に、静かに出流を警戒しながら敵意を緩めるフェニックス勢と、ほっとするグレモリー勢。名乗っただけで何故襲われたのか理解できていない出流。彼らへの説明を、内心面倒に感じながらも、丁寧にグレイフィアが行っていく。

漸く、部室に静かな空気が漂った。




ファッ!?
如何だったでしょうか?焼き鳥?さて、誰の事やら。
フェニックス勢は色々強化されております。主に精神面。
では、また時間があれば、投稿致します。それまで、気長にお待ちいただけるよう………。

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