何て、格好つけたはいいが、空を飛んでる相手に攻撃する手段は生憎と今は無い。
手持ちの武器になるものは、シャーペンや定規といった文房具に、爪とかの肉体に、袖に仕込んだプッシュダガーナイフ一本だ。
ダガーは投擲出来そうだけど、外れた時が怖いし、手持ちの武器で一番殺しやすい。出来れば、確実にトドメをさせる場面で使いたい。
………とか、普通は思うんだろうけどーーーーーー
「ふむ、恐怖しないのか。つまらんな、せめて泣き叫び下級な存在として唯一の誉れである、我々高潔な存在を楽しませるのが道理だろう?」
「五月蝿いぞ下級堕天使。もう少し実力つけてから講釈垂れろ。力に裏打ちされていない自慢は虚しさしか感じないぜ」
「貴、様アアアアア!!人間如きがッ!侮辱する気か!!!!」
えぇ!?挑発に乗り過ぎだろう?
まあ、殺気が増したところで、全然怖く無いけど。
「おい、兵藤一誠」
「な、何だ!?」
「俺が動いたら、全力で走れ。立ち止まるな。家にも帰るな。俺から………」
と、ポケットから紙を取り出し、兵藤を通り過ぎながら手の中へと入れる。
「連絡が入るまで、ずっと走り続けろ。その紙は、まあ、説明しにくいが、かなりアナログな通信機だと思え。破ったり濡らしたりしたら使えなくなるから気をつけろ」
「お、お前は?」
「あの堕天使を惨殺する」
「無茶だ!お前も逃げ」
と、そこまで言った兵藤に、俺はほんの僅かな殺意を向ける。
兵藤は固まり、呼吸も満足に出来ないみたいに、汗が滲んでいる。
「さっき、俺は何と言った?ーーーーーー惨殺の時間だ、と言った筈だ。惨殺は始まってるんだよ…………何なら、楽に殺せるお前からでもいいんだが、敵対してないし、クラスメイトってのもあるし。……………まあ、お前を助けるつもりなんて無いこと、それだけは忘れんな」
そう言って、殺意を堕天使へと向ける。兵藤は解放され、元の状態に戻ったようだ。
堕天使は、怒りながらも理性はまだあるようで、俺らが話しているうちに光の槍へと力を溜め続けている。
「遺言は頼んだか?矮小で脆弱なる人間よ」
「遺言?オイオイ、何十年先の話してんだよ、おっさん。遺言なら、あんたが書いた方がよくないか?年齢や外見的にもーーーーーー状況的にも」
「馬鹿にするなよ人間ッ!!直々にその命、散らしてくれようぞ!!!!!」
ブゥゥウウン!!と、重厚な音を立て、その右手に下級堕天使にしては中々の槍を生み出す。
まあ、下級堕天使にしては、なんだよなぁ。
「その程度か?もうちょっと頑張ろうぜ?中年」
「ッッッッ!!!!よかろう……………もはや肉片一つ、塵芥一つ残さず消し飛ばしてやろう!!!」
安い挑発に乗って、上空から高速でわざわざ近づいて来てくれる堕天使。翼っていうアドバンテージがあるのに、アッサリ放棄したのは、馬鹿と評するか無謀と評するか、どっちにしろ、失敗だというのに違いは無い。
「さぁてーーーーーー殺して、崩して、斬り裂いて。廻して、遊んで、捨ててやる」
「ほざくなぁあああああああああぁぁあぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」
ッッ!と空気を震わしながら急接近する堕天使。しかし、まあ、俺には通じない。
ーーートシュッ…
と、とても小さな音と共に、堕天使の眉間にダガーが突き刺さった。
さらに、続け様にシャーペンに鉛筆などを翼に突き刺し捻じり、地へと引き摺り降ろす。
「ぐぅ、が、アアアアアアアアアアアアアアアっっ!!??!」
信じられない、といった顔で手足をバタつかせる堕天使。既に槍は消え、力を失い始めている。
「馬鹿な!馬鹿な!馬鹿な!この、ぐっ!?アがぁっ!!」
叫ぶ堕天使の膝を捻じ曲げへし折った。ついでにもう片方の膝の皿は定規で削り取る。
「あああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!!!」
「騒がしい」
御近所迷惑だろうが。
そう言って、肋骨を一センチずつ罅を入れて、ちょっとずつ、折っていく。
「………!!……………ッッ!!」
失神してしまったようだ。
まあ、拷問は専門外だからなぁ。これからするのは惨殺だし。
っと、兵藤は大丈夫かな?一般人から悪魔に成り立てじゃあキツイ絵面だが…………
「って、ちゃんという事聞いて逃げてくれたのか。まあ、良しとしよう。相手に力を溜めさせて、慢心させるだけの手段だったんだけど」
あの紙だって、何の意味も無いメモ用紙だし。
まあ、そのうち騙されたって気づくだろ。
まずは、そうだな、指から殺るかーーーーーー
「それじゃ、ここからが本番だぜ堕天使ーーーーーーーーー惨殺の時間だーーーーーーーーー」
堕天使ドーナシーク、惨殺完了。
転生悪魔兵藤一誠、惨殺回避。