魔法科?うるさいそんな事より都牟刈だ!!   作:益荒男

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 やっと原作まできましたよ。なんでこんなに時間かかった?俺の投稿スピードがクソだからだよ。


入学編
学園ものの入学式に何もイベントが無いってのはいけないと思うby益荒男


 

 始まりは、言ってしまえば暴走

 

 物語の登場人物に憧れたというよりは、共感したというべきか、彼の言うことに胸を打たれたというべきか。少し言葉には言い表しにくいものだが、先のことと変わりはない。

 

 自分はやらなければならない

 

 願望でもなく責務でもない。それが当たり前のことだと思ったのだ。自分は何故こんな所にいる、早く俺はやらなければ。そんなこれまでに感じたことの無い情熱が、心の底から溢れるのが止まらない。他のことなどどうでもいい。このときから自分にとって、文字通りそれが俺の全てだった。

 

 

 今だって、そのはずだ

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 あの迷惑ながらもそれなりに楽しかった決闘から数日、俺は遂に中二チックな白い制服を身にまとい、これから通うことになる校舎を見上げていた。

 

 

「うわあ・・・」

 

 

 でっけー、そしてきれー。うちの中学もそこそこ綺麗なところだったけど、如何せん場所が田舎なもので規模がそこまで大きくなかった。それが高校に上がってみればどうよ。なにあの「金かけました」っていうのが一目でわかる校舎。もっと他のところに金回せよ。土地は広いし、建物は多いし、庭には噴水があるし、地味にここら霊脈の起点になってマナが集まる霊地になってるし。ん?最後に何か混じってたような。ま、いっか。

 

 皆さんご覧の通り、今日はこの魔法大学付属第一高校の入学式だ。はぁ・・・遂にきたちまったかこの日が。いるんだろうなあ司波兄妹・・・原作に巻き込まれるんだろうなあ・・・嫌だなあ・・・え?あの九重八雲との戦いはどうなったんだって?()()()()()()()()()()?あのあと三時間ぶっ続けでやって、右腕を奪ったまでは良かったんだけど体力が保たなくて動きのキレが落ちた瞬間をドスン。終始優位は自分にあったけど決めきることが出来なかった自分の完敗ですよ。向こうは

 

 

「途中からは忍術をフルで使っていたというのに、それでも優位を保てた上にぼくの右腕を奪うなんて、君は本当に末恐ろしいね。けど君は魔法、そして強化すらも何も使ってないじゃないか。これで負けたら僕の人生は何だったんだって話だよ。ま、今回は最後まで粘った僕の勝ちってことで。また頼むよ刀弥くん」

 

 

 なんて言ってたけど、そんなの関係ない。負けは負けだ。てかあの人魔術の存在知ってそうな感じだったな。それはともかく、負けっぱなしというのは我慢ならない。とりあえず最後のサムズアップがくっそムカついたから一年中にアイツをボコれるように絶対なる。俺を煽ったことを後悔させてやらぁ・・・!はいそこ、こいつ相変わらず沸点低いなとか言わない。前から俺は煽られたり小馬鹿にされるのが大嫌いなんだ。

 

 さて、そんなことを思っているうちに、もうそろそろ入学式が始まる時間だ。場所はしっかり把握してるからいくら広いといっても迷うことはないだろう。周りにまだ生徒はちらほら見えるけど、みんなちょっと焦ってるぽいし。真っ直ぐ講堂へと向かうとしましょうかね。

 

 

 こうして、俺のクソッタレた学園生活は幕を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

「うわあ・・・」

 

 

 本日二度目の反応。入学式開始前に講堂に入れたはいいものの、もうほぼ席は埋まっていた。マジか。もうちょっと早めに家出るべきだったか?いや朝の鍛錬とか夕食の仕込みとかがあったからな、仕方ねえやコレは。えーと?あそこはハンカチ置かれてるし、ならあっちは・・・ダメだ。俺に女子二人に挟まれたところに一人で座れる度胸はないってかいらない。けど他に空いてるところは・・・お?あそこ空いてんじゃん最後列の一番右。別に前に座りたい訳でもないし、よしあそこにしよっと

 

 

「おい、待て」

 

「ん?」

 

 

 ようやく見つけた空席に喜びながら向かおうとすると、後ろから声をかけられる。聞き覚えのある声だったので、もしかして自分かと後ろを振り向いてみると、案の定見知った顔があった。この如何にも最初に主人公の踏み台にされそうなエリートモブ風の男は

 

 

「モブ崎」

 

「一文字違う、僕は森崎だ。いい加減に直せ。そろそろ飽きるだろ」

 

 

 こいつは森崎瞬(もりさきしゅん)。俺の中学二年からのクラスメイト。こいつとの付き合いは、実技授業の模擬戦で相手する事になったとき、俺が間違えて「モブ崎」と呼んでしまい怒らせたのが始まり。反撃として森崎は、やれ自分はエリートの人間なんだお前とは格が違うんだお前の戦い方は魔法師の面汚しだと色々言ってきた。俗に言う思春期によくなってしまうアレだ。煽られた俺はまあそれは煩くてムカついたから、魔法一切使わずに全部相手のエア・ブリット回避した後腹にゼロ距離スパークをぶち込んでやった。後で先生に説教くらったけど。それからコイツはことあるごとに俺に模擬戦を申し込んできて、今のところは全戦全勝。たまに噛み付いてくることはあるが、俺は中々コイツを気に入っている。プライドが高いのは別として努力家で挑戦家なのは見ていて気分がいい。今ではこんなやり取りができる仲だ。多分唯一の友達って言える友達じゃないか?絶対口には出さないけど。ついでに言うと俺が中学の頃にやった模擬戦の相手の半分は森崎である。

 

 

「なに?」

 

「あっちは止めておけ。前にまだ空きがあるからそっちにしろ」

 

「なんで?」

 

「周りをよく見てみろ」

 

 

 周りってどういうこと?何かルールでもあったの?とりあえず言われた通り周りをみてみる。みんな普通に好きに座ってるだけじゃないか。ん?そういえば肩のエンブレムって・・・あっそういうこと。一科生と二科生で座る席が前後に分かれてるのか。

 

 

「やっと気付いたか?お前って妙に鈍いとこがあるよな」

 

「そんな規則あるなんて聞いてないけど」

 

「周りが勝手に分かれているだけだ。けどわざわざ目立つ行動をとる必要も無いだろ。わかったなら早く来い。あと五分で開会だぞ」

 

 

 森崎の言うことにそれもそうかと納得し、大人しく後ろについて行く。着いたのはさっき自分がいた右最後列の真逆の左最前列そこに二つ空席があった。ご丁寧に森崎は自分のハンカチを置いて席取りをしていたらしい。てかコイツわざわざ俺の為に反対まで呼びに来てくれたのか?まさかと思い森崎を見ると、咳払いをして念を押すように淡々と言ってきた。

 

 

「勘違いするなよ。僕も少し遅めに来てここしか空いてなかったんだ。それでトイレに行っていた帰りに、たまたま目について声をかけた。それだけだ」

 

 あっそうすか。

 

「ありがとう」

 

「ふん、次は知らないからな」

 

 

 男のツンデレとか腐った貴婦人くらいにしか受けないと思うぞ。まあ、経緯はともかく助けられたのは事実だからお礼だけは言っておく。森崎が内側に座ったから、それに続いて俺は一番外側に座る。森崎はすでに逆側に座っている男子生徒達と交友を深めているようだ。俺は特に話題も喋る気も無いので一人でぼーっとしているとしましょうか。

 そのまま暫くすると、講堂のカーテンが閉められステージ付近以外の照明が落とされた。ようやく入学式が始まるようだ。講堂内は静まり返り、この学校の生徒会長の宣言によって式は始まった。お決まりのような校長の挨拶などは特に無く、式はスムーズに進んでいく。お陰でこっちも眠くなったりはしなかった。話を真面目に聞いている訳でもないけど。そうして終盤へ差し掛かかり、続きまして新入生代表の挨拶」と司会進行役の声が響くと共に講堂は急にざわめきだした。今日の鍛錬のメニューを考えていた俺は、それによって意識をステージに戻す。

 

 

(ああ、そういえばそうだった。お前だったな、新入生代表は。久しぶり司波深雪)

 

 

 腰半ばまである艶やかなストレートの黒髪、日本人離れした雪の如く白く透き通った肌、完璧な左右対称で均整のとれた容姿。そのまま人の想像できる美しさを最大まで詰め込まれていると言ってもいいだろう。司波深雪はそれほどまでに美しく成長していた。不覚にも、この俺でさえ少し見とれてしまうくらいに。えっ?てか超美人じゃん。昔はもっと子供らしかったような?何というか、あれはもう学生って括りに入れちゃいけないんじゃないか?いや、いかんいかん。俺としたことが取り乱してしまうとは。ええい心の鍛錬が足りない証拠だ。今日の鍛錬は精神修行を主にしよう。心を落ち着かせて静かに深呼吸をする。未だにざわめきが収まらない周りが少し気になって隣を見てみると、森崎が心ここにあらずといった様子で司波にお熱な視線を送っていた。てか周りの男子全員がそんな感じだった。あっこれは落ちたな。学校中の男子の心を鷲掴みとか一昔前のアイドルかってーの。周りの男子と司波の両方に呆れるように視線を舞台に立つ司波に戻した。

 

(アイツ、何で俺を見ている・・・!?)

 

 司波深雪と目が合った。根拠は無いが確信があった。勘違いなどではなく、あいつは俺を見ているのだと。この距離じゃあ向こうから顔を正確に見分けることなんて出来ないとは思う。けど何故かヤバいと危機感を覚えるも、こんな状況では隠れることなんて出来やしない。とりあえず目の焦点をぼかし気配を少しずつ消していく。呼吸を一定の間隔で少しだけ行い、周りに溶け込むように自身の存在を薄めていく。気休めになるかすら怪しいが今できることなんてこの程度だ。やり過ごせるか?気配を消してからしばらくすると、まるで何かを見失ったキョロキョロしだした。ようし、どうやらなんとかなったみたいだ。ヒヤヒヤさせやがってコノヤロー。

 幕裏から注意でもされたのだろうか。ハッとしたように司波深雪は本来の仕事を思い出し急いで取り掛かりに戻る。新入生代表の挨拶を済ませた彼女は、最後に恭しく一礼をした後舞台から降りていった。最後に司会進行役からの終了の言葉により、俺の高校入学式は終わった。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

「司波さん、お疲れ様。いい挨拶でした」

 

「生徒会長、ありがとうございます」

 

「そういえば、壇上に上がって直ぐの時、少しぼーっとしていた時間があったけど、どうかしたのですか?」

 

「あっす、すいません!えっと、その・・・あの時は少し、緊張してしまって」

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。緊張なんて誰にだってあることです。気にすることなんてありません」

 

「はい・・・」

 

 嘘だ、緊張なんて物はほとんどなかった。敬愛するお兄様に良いところを見せないとと気負ってはいたが、でもそれが理由じゃない。

 

 最前列の右端辺り。壇上に上がって直ぐに目がそこに行った。まるで、探し物がそこにあるということを直感しているように。そして、一人の男子生徒に目が止まった。確証は無いけれど、たぶん彼も私の目を見ていたと思う。そしてあの人のことが浮かんだ。私の初恋の人、私の罪の証。魔法に大して興味を示さなかった彼が、こんな場所にいるはずもないのに。

 

 私が彼への思いを自覚してからと言うもの、これからの生活が激変する訳ではなかった。いつも通り、作法や高校へ向けての勉強と魔法の訓練を続け、夜にあの写真を胸に抱えながら彼との思い出で自分を慰める日々。変わったことと言えば、少し前から体術を嗜むようにになったくらい。もともと兄が体術を修めていることから少し興味はあったが、そういえば彼も鍛えていたことを思い出し本格的に自分もやってみようと決めたのだ。最初は戸惑っていたが、今では兄から師事を得ている。

 そんな私はこの第一高校に入学し、勉強を見てくれた兄の期待に応え学年主席の座を手に入れた。これからの二度目の学校生活はとても楽しみに感じている。

 

 けど、絶対に満たされることなんてない。私にとって学校という場所は、彼と共に過ごすことで満たされるものなのだから。

 

 

 

 

 

 

 色々ヒヤッとすることはあったが、なんとか入学式が終わった。生徒達この後、IDカードの交付を窓口で済ませ自身の個人情報の登録をしなければならない。そこで自分のクラスを初めて知ることが出来るのだが、めんどくさい事になりそうな司波と同じクラスにはあまりなりたくない。兄の方はあっちが二科生だし、司波と接点を作らなかったら関わりを持つことはないだろう。

 

 

「森崎」

 

「何だ」

 

「お前、惚れたか?」

 

「は、はあ!?だ、だ誰が誰に惚れただって!!?」

 

「いや、そんなに動揺するなよ」

 

「・・・あ」

 

 

 分かり易過ぎるだろお前。今時そんな初な反応する奴いねえぞ。

 

 

「どうせ司波深雪にだろうけど、応援はしとく」

 

「か、勝手に決めつけるな!おい待て!」

 

 

 特に別れる理由もなかったので森崎と一緒に行くことに。そのついでにさっきのことを聞いてみたらこんな反応が返ってきた。もうこいつメインはれんじゃねえの?ってくらいベッタベタなリアクションをしてくれる。コイツっていじられキャラだったんだな。

 

 

「・・・誰にも言うなよ」

 

「大丈夫、まず相手がいない」

 

「それはそれで別の問題があるぞ」

 

 

 ほっとけ。

 

 当たり前のことだが、入学式終了直後ということで窓口前には大勢の生徒が並んでいた。遠目に他の窓口を眺めて見るが、何処も彼処もそれなり混んでいたので大人しく適当な場所に並んでおく。人混みで酔いそうになる刀弥にとって、この場所は苦痛でしかなかったが。十五分後、ようやく刀弥の番が回ってきた。自身の個人情報を登録しIDカードに生徒の情報を映させる。刀弥のクラスはB組、森崎はA組だった。登録を済ませた彼は同じクラスになった連中について行った森崎と別れ、人の少なくなっている中庭に出る。適当にベンチに腰掛けた後、長い溜め息を吐いた。

 

 

(今更ながら、こんなところに来ちゃうなんてなぁ。どうしてこうなった、なんて考え飽きたし。もうちょっと周りを見て行動するってことを覚えろって話しだよなぁ)

 

 

 自販機で何気に初めて飲む缶珈琲を買い、クリップを開け格好付けて一気に飲み干そうとする。が、結局苦さに絶えられず一口で咳き込む馬鹿を晒すことになった。「苦い・・・」なんて呟くが、ブラックなので当たり前である。いまの学校の中庭には、ブラックの缶珈琲を苦さを耐えながらチビチビ飲む刀鍛冶師の姿があった。刀弥がようやく珈琲を飲み終わった頃、学校のチャイムが鳴った。今からクラスでホームルームが開かれるのだが自由参加なので刀弥はもちろんパスする。現実が苦いんだから珈琲くらいは甘くしようなんて考えながら、刀弥は帰宅しようとベンチを立つ。そうしようとしたが、途中で止めて背もたれにもたれかかった。視界の先に、一人の女生徒がこっちに向かって歩いてきた。その目はしっかりと刀弥のことを見つめている。

 

 

(めとめが合う~しゅんかん好きだときづいた~、なんてロマンチックなものじゃねぇな。俺は知ってるんだ、ありゃぁ一種の獲物を狙う目だね。・・・フラグっていつ立てたっけ?)

 

 

 何時でもどこでも立ててるよ、と突っ込む人間などここにはいない。その女生徒のことを、刀弥は前世の記憶(アニメの知識)で少しだけ知っている。そして、これから自分にとって都合の悪いことになるのも、容易に想像がついた。刀弥の目の前まで歩いてきた彼女はハッキリとした口調で刀弥に言葉をかけた。

 

 

「君が、政狩刀弥君で合っているかな?」

 

「・・・誰?」

 

「風紀委員会会長の渡辺摩利だ。それと、私は君の先輩に当たる。礼儀はしっかりと付けるべきだぞ」

 

「・・・すみません。で、渡辺先輩は俺に何のようですか」

 

「うむ、話が早くて助かる。では単刀直入に言おう」

 

 

 あ、間違い無く面倒ごとだ。刀弥は頭の中でそんなことを思い浮かべるが、時すでに遅し。磨利は顔に笑みを浮かべながら、彼のことを試す、そして見極めようとするように刀弥に言い放った。まるでこれからが楽しみで仕方がないという風に。

 

 

「政狩刀弥、君を我が風紀委員にスカウトにきた」

 

 

 刀弥は心の中で、また溜め息を吐いた。

 




 
 如何でしたでしょうか?という訳で、魔法科原作突入です。本当、ここまで長かった・・・!予定なら書き始めて3ヶ月くらいで入る筈だったんですけど。これも一週間もかけずに復刻イベントを入れてくる運営って奴が悪いんだ!

 では今回はこの辺で、次回も首を長くして待っていただけると嬉しいです。

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