魔法科?うるさいそんな事より都牟刈だ!!   作:益荒男

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 村正おじいちゃんへのリビドーが抑えられなかった。
 小説投稿初心者なので生暖かい目で見守って下さい。


転生編
プロローグ あるいはこのまま終わり?


 

 

 

 

 これは、ひとりの男が夢を叶えて終わる

 

 

 

 そういう物語だ

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 俺は転生者だ。前世の名前は吉田蓮斗、今世の名前は政狩 刀弥。前世の方は忘れていい。

 

 でも、転生した理由はひと昔前の「事故に合いそうになっていた子どもを助けてトラック激突神様邂逅特典貰って転生ヨロシク☆」って訳じゃない。

 

 前世での死因はふつーに年を食い過ぎだってだけだ。九十五まで生きれたんだから只人としては充分だろう。神様にだって会ってねえし特典なんてものにも心当たりはない。いや普通にこんなジャンルもあったな。

 

 いやー最初はまじでビビった。自宅のベッドの上で家族や弟子達に見守られながら目をつむって「ああ、死んだな」って思ってたら、なーんか声が聞こえんのよ。気になって目を開けてみたらあら不思議、5歳位の体になって暗い部屋に知らないオジサンと二人っきり。何か事件の香りもするけど後で俺(?)の祖父だと分かった。

 

 爺や、あん時は急に叫んでゴメン。めっちゃ心配してたし。厳格で無口だけどすんごい孫思いだった。でも「年寄りを驚かすな」っていうのは俺のセリフだよ。もう違うけど、ピッチぴちの小学生は最高だぜ状態だけど、いやバスケもしないけど。

 

 それから俺は父と母と祖父の四人暮らしをなんやかんだで楽しみながら送っていた。

 

 

 そんでこっからが重要。今の俺のいる世界がこっちに来てから五年後の十歳になってようやく発覚した。てか分からされた、小学校の社会の授業で。

 

 

「では○○君、教科書の12ページの最初一行を読んで下さい。」

 

「はい!えーと『2040年、世界的な食料困難により第三次世界大戦が始まりました。』」

 

「はい。よく読めました。」

 

(へー今の小学生はそんなことまで習うのか。)

 

 

 何て思いながら俺は頬杖をついてあくびをしていた。昨日の鍛錬が長引いてしまい寝不足気味なのだ。

 

 

「では、続きを○○ちゃん、お願いします。」

 

「は、はい『戦術核が使われるほどの大乱戦になる中、世界滅亡の危機にまで達しましたが、後に『魔法』と呼ばれる超能力を扱う『魔法師』の登場により戦火は少しずつ小さくなっていき、開戦から20年後の2060年第三次世界大戦は終結しました。』」

 

 

 ふーん、そーなのねー・・・。え?魔法?魔術でなくて?いやそれもおかしいけど。てかこの設定どっかで聞いたことがあるような・・・。

 

 

「はい、よく読めました。皆さんが知っての通りこの様にして魔法という物が認められました。では、皆さんは魔法のことについてどんな事を知っていますか?」

 

「はい!確かサイオンっていうのを使うんだよね?おとーさんが言ってた!」

 

「あとエイドスってものも関係あるって聞きました。」

 

「『サイオンでエイドスを書き換えてあらゆる現象を起こす』って本に載っていたと思います。」

 

 

 わー今の子どもは博識だなーはーはっはっはっはっはぁ・・・。

 

 ダメだ。言い逃れできねえ。確定だ。

 第三次世界大戦に魔法、想子に個別情報体か・・・。

 

 

  ここ魔法科じゃねえか!!!!

 

 

 魔法科ってあれだろ。劣等生と名ばかりの世界最強シスコンお兄様が俺TUEEEEEする話だろ。原作読んでたけど、ほとんど覚えてねえ。今の年も合わせると八十年以上前じゃねえか?読んだのは。よく今の単語だけで分かったな。俺の頭も捨てたもんじゃねえな。

 

 そうかー魔法科かー。どーしよっかなー。

 

 

 

 

 

 

 ま、いっか

 

 

 

 

 

 

 ここがどんな世界だろうが関係ない。

 俺にはやることがある。叶えるべき夢がある

 

 学校が終わったあと、友達と話すこともなく(てかまず友達がいない)まっすぐ家に帰る。俺んちは学校の最寄り駅から三つほどいってバスにのり山を登ったその途中あたりにある。学校まで片道一時間ほど。一番近くの小学校があそこにしかなかったのだから仕方がない。過疎化って面倒だったんだな。

 

 山を登りきりようやく帰宅。木製のスライド式ドアをあけ玄関前で靴を脱ぎ畳を踏んで爺やのいる部屋へ一直線で向かう。

 

 そうなんです。うちんちバリッバリの古い和式の祖父家なんです。電気もガスも通ってないし機械の類もほとんどない。買い物などは山を降りて街でするが基本的に家の外には出ない。冬は布団とこたつだけがたよりだ。

 

 ふすまを開け爺やと会う。両親は今は結婚記念日の旅行中だ。何か読み物をしていたのだろう。本を置いて振り向く

 

 

「帰ったか、刀弥」

 

「うん、ただいま爺や」

 

 

 挨拶を済ましてじっと待つ。爺やはそれを見て難しい顔をしだした。

 

 

 

「今日もするのか?」

 

「うん」

 

 

 それを聞いてため呆れたようなあきらめたようなため息をはく。爺やも折れたようだ。不孝者でごめんなさい。でも、これだけは絶対に譲れないんだ。

 

 

「ついてきなさい」

 

「はい」

 

 

 それだけ言って立ち上がる。その言葉に従って俺もついて行った。どこに行くかも行き方も知っているが、自分一人だけで勝手に入るのは家族全員から固く禁止されている。

 

 さーてこっから気合い入れていくぜ。夢のためにレッツゴー!

 

 

 

 

 

 

 ついでに爺やが読んでいた本の題名は「おじいちゃんの悩みをスパッと解決!コレだけは守ろう 孫との接し方」だった。爺やマジ天使。そんで本当にごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

――――-――-――

 

 

 

 

 

 

 

 

 転生した世界が分かってやるべきことはなんだ。

 

 

 

 その世界の異能の修行?

 

 ―否である。

 

 

 ヒロインのフラグ作り?

 

 -否である。

 

 

 重要組織との接触?

 

 ―否である。

 

 

 確かに、そうした方が楽しめるという人もいるだろう。

 

 そうした方がすごしやすいという事もあるだろう。

 

 そうしなければ生きられないという世界もあるだろう。

 

 

 けど俺は違う。

 

 

 この世界で生まれ持った、この家族とこの場所があれば充分だ。これ以外のものは今はいらない。むしろ邪魔だ。

 

 

 

 

 

 

 カンッ カンッ カンッ カンッ

 

 

 音が響く。その源は目の前の爺やである。障子窓から夕焼けの日が漏れる部屋の中、赤く焼けた鉄に一定のリズムで鎚を振り下ろす。

 

 

 カンッ カンッ コロン カンッ

 

 

 ある程度まで伸びたら縦に折り曲げ四半回転させた後、再び鎚を振り下ろす。言葉にすれば単純だ。だが此処までの間に俺にとってはどんな財宝にも届かないほどの価値があった。

 

 

 最適な鎚を振り下ろすタイミング、リズム、力の入れ具合、勢い、場所、鉄の延ばし具合、いつどのようなタイミングと角度で鉄を折るか、いつどこから再び振り下ろすのか。

 

 

 

 

 そう、今俺は刀鍛冶を視ている。そして爺やの持つ技術の全てを盗もうとしている。

 

 

 

 

 

 前世の俺は、中学の頃からあるゲームにはまっていた。

 

 その名も Fate Grand Order

 

 小学生の頃に原作、Fate stay nightにはまり奈須きのこの描く世界観に魅了された。

 

 もちろんFGOは事前予約から始めた。

 

 最初にギル様を当てて狂気狂乱したのも、林檎をかじりながらイベントを周り徹夜したのも、今じゃいい思い出だ。

 

 小遣いが少なかったので無課金勢だった(福袋?あれは必要経費だ)が、貯めた石で孔明先生を当てようとして50連爆死したこともあったし、引き継ぎコードを使った次の日に父親がアップデート更新を間違えてアンインストールなんてした日は絶望のあまり学校を3日ほど休んだ。

 

 再び始めソロモンで号泣しながら楽しんでしばらく経ったある日、比喩なしに俺は運命に出会った。

 

 

 

 亜種並行世界 屍山血河舞台 下総国

 

 

 英霊剣豪七番勝負

 

 

 夢と現の狭間、そこで再開した宮本武蔵と共に七人の英霊剣豪に勝負を挑む物語。

 

 

 そのラスボス戦で、一人のサーヴァントがその真価を発揮した。

 

 原作ファンは待ちに待った登場(杉山はいない)に歓喜し、その最後の勇姿は全てのマスターの心を打った彼。

 

 

 

 名は千子村正

 

 

 

 原作主人公、衛宮士郎の姿で登場した伝説の刀鍛冶師。その刀は全て逸品であり、徳川からは幕府を開く前からの因縁から妖刀と恐れられた。

 

 

 

 

「奥の手はねえのかって?阿呆か。んなもん、あるにきまってんだろ。」

 

 

 

 

 確かにかっこよかった。社長男の絵描くの久しぶりじゃねとか、BGM合いすぎだろとか、めっちゃ興奮した。

 

 

 でも、そこじゃない

 

 

 

 

「かつて求めた究極の一刀。其は、肉を断ち骨を断ち命を断つ鋼の刃にあらず。」

 

 

 

 

 

 士郎だからこそ出来たんだと理解したし、伏線を張ったライターに素直な賞賛を覚えた。

 

 

 でもそこじゃない。

 

 

 

 

「我が業が求めるのは怨恨の清算。縁を切り、定めを切り、業を切る。」

 

 

 

 

 ここだ。ここからだ

 

 

 

 

「―即ち。宿業からの解放なり。」

 

 

 

 

 何も言えなかった。只何かが心の中ではまった気がした。

 

 

 

 

 

「・・・・・・其処に至るは数多の研鑽。千の刀、万の刀を象り、築きに築いた刀塚。」

 

 

 

 

 

 

 刀とは切る物、ただ切る為に在る。

 

 

 

 

 

「此処に辿るはあらゆる収斂。此処に示すはあらゆる宿願。」

 

 

 

 

 

 なら、物など切れて当たり前だろう。寧ろそこからだ。

 

 

 

 

 

「此処に積もるはあらゆる非業────

我が人生の全ては、この一振りに至るために。」

 

 

 

 

 

 目に視えないものを切る。それこそが、本当に至るべき場所。刀という物の到達点。

 

 

 

 

 

 

「剣の鼓動、此処にあり─────!

受けやがれ、こいつがオレの、都牟刈、村正だぁーッ!」

 

 

 

 

 

 

 そして思ってしまった。

 

 

 打ちたい。

 

 

 この都牟刈りと呼べる刀を打ちたい、と

 

 

 

 

 

 そんで俺は刀鍛冶師になった。

 

 

 

 うん、自分でも馬鹿だと思うよ。ゲームやってたら刀打ちたくなりました。刀鍛冶師目指しますってアホか。それを高校生の頃に決めちまったもんだから、親は猛反対。いや諦めなかったけど。これまでずっとダラダラなあなあで過ごしてきた俺が必死になって話しているのを見て両親は困惑していた。

 

 そこから、俺は知識を集め、体を鍛え、高校を退学し、ネットで知った山奥に住む隠れた刀匠の元に弟子入りしにいった。師匠も最初は受け入れてくれなかったけど、腹を空かせても帰らないのを見てどれだけ本気か分かってくれたのだろう。家に泊めてくれて、暫くしたら弟子入りも認めてくれた。

 

 ここまで来れば、後は精進あるのみだ。只打ち続けた。あの画面で見た刀を目指し続ける。何年も何年も。

一時期、気紛れで出した自分の作品が世間を騒がしたこともあったが、まだまだ足りない。俺が目指すのはこんなものじゃない。

 

 後は、結婚して子供作って弟子を取って最初の方に言った通り、たどり着けずに死んじまって、この世界にやって来た。

 

 もうこれは運命なんだと思ったね。神様にはマジで感謝だ。いたらだけど。

 

 それと、俺が運命と感じた所がもう一つ在る。

 

 

 一通りの作業を終えた爺やが、片付けを済ませてこっちを振り向き口を開いた。

 

 

「刀弥よ」

 

「何?爺や」

 

「本当に根源を目指すのか?」

 

 

 そう、この家は型月世界の魔術師の家系なのだ。元は妖狩りを生業とし今に至っているらしい。

 

 そして、ある理由から俺にこの家を次がせることを皆は嫌がっている。政狩家の歴史を、俺の父の代で終わらせようとしているのだ。

 

 だが俺はそれを拒んだ。でないと俺は刀を打てなくなってしまうからだ。

 

 この家の魔術師の方向は「自ら打った刀と己の技により境界を切り、根源へと到達する。」だ。

 

 最初聞いた時は「何この脳筋一族」と戦慄したものだ。そして思ったね。実に自分にあっていると。

 

 

「はい」

 

 

 静かに、それでいて力強く頷く。

 

 ああそうさ、目指すよ根源。本来の目的は都牟刈だけど、別に切り開いてしまっても構わんのだろう。それに型月ファンとしても根源の渦が一体どういうものなのかヒジョーに気になるしね。

 

 

「そうか」

 

 

 そう言って、一度目をつむってしばらくしてからまた開き、扉の方へと向かった。

 

 

「もう直ぐ、あやつらも帰ってくる。夕餉の支度をするぞ。鍛錬はその後だ。」

 

「はい」

 

 

 俺も立ち上がり、爺やについって行った。

 

 技の鍛錬自体は幼少の頃から行っている。これは別に鍛えて置いても損はないだろうという考えらしい。

 

 お陰様で、今では子供とは思えない程に鍛えられた。刀だって、自由に振り回すことはできなくても、構えられる程には扱える。魔術による身体強化なしで。

 

 それに、技をもって根源を目指すといわれたら、思い浮かべるのはたった一つでしょう。

 

 幻想種TUBAMEを切るために生涯を捧げた伝説のNOUMIN、そして彼が生み出した対人魔剣。己の技だけで多重次元屈折現象なんてことをやらかした侍。

 

 技で根源に至るなんて抜かしてるんだ。そんぐらいしないといかんでしょうよ。今の時点で全くできる気はしないけどね!

 

 だが、この俺にこんな世界を与えてくれたんだ。つまりはこういうことなんだろう。

 

 

 

 

 

 神(きのこ)は言っている。

 

「都牟刈持って燕返しうっちゃいなYO☆」と。

 

 

 

 

 いいぜやってやるよ。こちとら魔法科になんて興味ないんだ。今度こそ俺の夢を叶えてやる。俺の冒険はまだ始まったばかりだ!!

 

 まあ、まずは夕餉の準備から始めますか。確か漬け物のあまりがあったな、魚も学校の帰りに買ってきたし。

よーし今日の献立きーまった。両親が帰ってくるまでにパッパッと済ませちゃいましょうかね。てかあのバカップル共が、今のご時世結婚記念日に一緒に二人だけで旅行なんてする夫婦なんてなかなかいねえぞ?仲のよろしいことで。カーッペ、爆発すりゃいいのに。

 

 さて、台所に向かいましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・てか、この世界、魔法科と型月ゴッチャになってたんだな。

 まあ、どんな話だったか詳しくは覚えてねえし、ヒロインにも魔法モドキにも興味ないし、一生こっから離れる気もないし。関わることもないだろ。AHAHAHAHA・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六年後

 

 

 

 ・・・・・・今思えばあれがフラグだったんだろうなぁ。昔の俺のバカヤロウ、第二魔法使えるならそこの時間軸を消し去ってでも無かったことにする。

 

 

「答えろ、お前は何者だ。」

 

 

 刀をもって佇んでいる俺に、後ろから大型拳銃式CADを向ける「魔法科高校の劣等生」の主人公。

 

 世界最強お兄様、司波達也

 

 

 

・・・・・・ドウシテコウナッタ

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 なんか合ったら指摘ください

 あと誰かルビの振り方教えて・・・


追記、十一月一日、感想から指摘を受け、英霊剣豪七番勝負をネタバレとなるところを改稿しました

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