魔法科?うるさいそんな事より都牟刈だ!!   作:益荒男

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 月姫やって、メルブラやって、生命線聞きながら執筆して、これまでの人生のなかで最も型月に浸かっていると実感している今日この頃、どうも益荒男です。


 最&高の出来栄えでした。「アルクと先輩ルートだけかぁ」なんて愚痴こぼしちゃってマジすいません。もうボリュームがやヴぁい。ついでに新情報と新設定もやヴぁい。これのおかげでリーナ編のプロットが丸々一つ没になりました。ちくせう

 皆さんはもうすでにプレイされましたか?されていましたらお気に入りシーンはどこでしょうか?どんどん教えて下さい。私は全部好きです(迫真)。
 
 その中でも選ぶのなら、アルクルートは「竜虎相打つ」と「好き、好き、大好き!」。シエルルートは「宇宙志貴」と「この、偽善者」でしょうか。二人とも可愛くて仕方がないんや…。

 前置きが長くなりました。今回は短めです、前がけっこう長かったからユルシテ…

 それではどうぞ



少し素直になってやったらこれだよ(憤慨)

 帰宅したころには既に日が落ちかけていたこともあり、今回は九重の寺に寄ることもなく真っすぐ帰宅することにした。

 キャビネットを利用せず、駅前の人ごみに紛れることなく路地裏に入る。細い曲がり道をいくつか抜けることしばらく、すると時代にそぐわないアパートや木製家屋が目立つようになってくる。

 

 俺の住まうアパートは普通に歩くと学校まで一時間近くかかる住宅街にある。

 その地域は世間からは「旧世街」と呼ばれてちょっとした有名どころらしい。引っ越してくるまで俺は全く知らなかったけど。

 なんでもこの町の代表者が大戦以降の都市開発を頑なに拒み続け、一世紀近く前の生活様式を保存してきたのだという。アパートメントやスーパー、見せ物市やコインランドリーまで、22世紀も目の前という現代では既に絶滅したと思われているものが、ここではお目にかかることが出来る。

 要はこの場所だけ平成のままだということだ。別に醜くはない。

 

 ずっと山の中で文明人とは如何に?みたいな生活をしていた自分にとっては、HARといったお手伝いロボが置かれた現代家屋に住むというのはどうも落ち着かない。

 まあ、もともとそんな楽な生活を送らせる気は爺やにもなかったようで。なので俺はこの時代に取り残された旧世街で生きていく運びとなったのだ。

 

 不便に感じることはまずない。商店街は目の前、欲しいものは大抵そこで手に入る。唯一気がかりなのは学校が遠いことぐらいだが、それもほとんど八雲の寺からの登校になるから遠いと感じることもそうそうない。

 鍛冶修行が気軽にできないという俺にとって致命的な点を抜いて、一介の高校生が一人暮らしをするには充分な環境がここには揃っていた。

 

「トーヤ君ってすごいのねえ、ふつう今どきの若い子なんて自分で家事なんてしないわよ」

「そうなんですか」

「それはもう、向こうに住んでいた木崎さんのとこも、引っ越し記念にHARを買ったら『もう家事をする気なんて起きないわ』なんて言ってたし。この町で身一つ、それもその年でこれで十分だなんて」

 

 最早絶滅危惧種ねと、アパートの前でポストの確認をしていたらばったり会った大家の佐々木さんは笑いながらビニール袋を携えている。恐らく地球堂のセールの帰りだろう。

 ちなみに地球堂とは俺も利用する、商店街前のこの町で一番大きいスーパーである。毎週何らかのセールをしており、その時は必ず町中の阿修羅(主婦)たちが集まり関ケ原もかくやという戦場を生み出す。

 

「そんな頑張り屋な刀祢君には…はい、こちらを進呈いたしましょう!」

「……さんま、いいんですか?」

「オバサンつい買い過ぎちゃった♪こっちにもたくさんあるし、新鮮なうちに食べないともったいないでしょ?」

「じゃあ、ありがたく」

 

 この前もそんなことを言っていたが、貰えるものは貰っておく精神は一人暮らしで大切だと学んだ俺は素直に魚を受けとる。今日は塩焼きで決まりだな。

 

 ちなみにここ数日の夕食の主菜は、全てこの偉大なる大家からのいただき物である。

 

 

 

 ありがたい夕食を平らげ、風呂も済ませた俺は、いつもの日課に移った。

 簡素というか生活色をあまり感じさせない部屋の壁に付けられた小さめのふすま。俺の普段着は実家の頃から愛用の着流しであるが、中の服は制服と予備の着替えくらいしか入っていない。それを開き、底の奥の暗がりに手を伸ばす。

 引っ張り出すのは、胸に抱えられるくらいの大きさの立方体。引っ越してきたときに直接持ってきた収納用魔術礼装だ。封印を解除し中から我が愛刀たちを取り出す。

 

 日課とはつまり刀の手入れだ。この礼装の中の歪みは空間しか適用されておらず、経過する時間は礼装内外で変わらない。ならば、きちんとこまめに刀身の油を変えておかないと湿気で錆ができてしまう。

 母さんはスペースの節約しかできず、経年劣化は避けられない欠陥品だとため息をついていたが。少なくとも空間を節約するだけでなく、規定値までの大きさのものを多数持ち運びできる、というだけで十分イカれた性能だと思うのは俺だけだろうか。

 

 ともかく今は、手入れをしていこう。学校にいたころから早く刀に触りたくてたまらなかったのだ。危ない発言なのは解っている。

 まずは爺やから渡された小太刀からだ。鞘に収めたまま両手で支え軽く頭を下げる。刀身を抜き放ち、家から取り寄せた道具を使って、柄と刀身を慣れた手つきで取り外していく。

 この世界で目覚める前からもう何度も繰り返してきた行為だ。前の世界では白鞘は扱っていなかったが、もう十分に経験は詰んでいる。

 

 上等な紙を使って刀身の油をやさしく拭き取り、布で包んだ綿を使い打ち粉を等間隔でまぶしていく。これを何度か繰り返していくと、最後に何にも遮られることのない刀身本来の姿が現れる。

 

(やっぱすげえや爺や。刃文といい反りといい、果たすべき役割に応じた最適の形をしている。機能美って言葉がよく似合うな)

 

 今の自分でこれを再現できるかと考え、すぐに頭を横に振る。

 俺や父さんのようにただ打ちたい形をひたすらに目指すのではなく、望まれるものを最大級の再現をし形にするのが爺やの鍛冶だ。

 あらゆる鍛冶手法に精通し、知りえるものすべてを修めている爺やに打てぬ形の刀はないだろう。そして、彼に鍛えられた刀は一流の傑作の名を欲しいがままにする。

 

 求道者と職人

 

 そもそもの土台が違うので、俺と爺やを比べること自体が間違いなのかもしれない。

 それでも批評するなら……打刀であれば俺も引けを取るつもりはないが、その他の形態を比べれば俺は爺やに校庭三周分くらい劣るだろう。

 

 人に望まれる鍛冶師、その完成形の一つこそ、我らが『政狩 龍馬(鉄人)』その人なのだ。

 

 

「その程度の歳月で、私の人生に並ぼうとする時点で間違っておるのだ戯け」

「おじ様、急にどうしたのかしら?ため息なんかついて」

「気にしない、気にしたら僕たちの負けだよアイナ」

「…?」

 

 

 

 

 

 改めて、刀身に新しい油を塗っていく。この順番で次々と刀の手入れを済ませていき、最後に真打『紫焔』を鞘に納めて今日の分の日課を終える。

 

「──はぁ」

 

 簡単な手入れとは言え、常に気を張っているのはかなり疲労する。さて、この前商店街で見つけた緑茶でも入れて一服するとしよう。

 

「茶葉はええと…」

 

 シンクの下の扉を開けて中を漁る。あれ、一昨日くらいここに片付けたはずなんだが。

 ううん、こう見ると台所周りはものが充実してきたな。調理器具やな調味料に加え、壺に入れられた梅干しやお漬物、味噌と多種多様。小さめの備え付け冷蔵庫の中は食材や出汁でいっぱいだし、かなり生活色が出てきたのではないだろうか。

 まあ、それ以外の場所はほとんど手を付けていないのだが。精々箪笥の中にものを置いてるだけか。後は本棚と机のみである。それでも少し前の自分では想像できないくらい一人暮らしに馴染んできたな。

 

「お、あった」

 

 急須に茶葉とお湯を入れて、ちょうどいいくらいになったら玉露に注ぐ。

 一口飲んだ後、ちゃぶ台の上に玉露を置く。五臓六腑に染みわたる、ちょうどよい苦みと温もりが心と体の緊張をほぐしてくいった。

 ベットに背を預け、くつろぎながらほうっと息を吐き、ふと物思いに更けて天井を見つめる。

 

「打ちたい…」

 

気が緩んで、最近の愚痴がつい自然に零れてしまった。

 

 そう、全く足りない。何が足りないかと言われれば、自分という存在を形成するための必須要素が完全に不足している。

 

 俺はこっちに来てから、一度たりとも鍛冶をしていないのだ。

 

 一人暮らしに適応していく、それと比例するように俺の鍛冶欲はどんどん膨らんでいた。最近ほんとに槌を握っておらず、金床の前に腰を下ろしてすらいないのだ。

 

 少し前の俺からすれば考えられない状況だ。仕送りはあれど、余分はない。生きるために動かなければ生きられないという状況になったとき、俺は断腸の思いで刀から少しだけ距離を置くことを決めた。八雲との激闘を経て思うところも多々あったので、しばらくは生活の安定と自己研磨に重きを置いたのだ。

 それからしばらく、既にライフワークは構築され、寺での修業についても充足感を得ている。そろそろこれに支障をきたさない範囲で、限界まで刀鍛冶に打ち込んでもいい頃合いだろう。

 

 だというのに

 

「なんで俺、あんなこと言っちゃったんだろ」

 

 

 

 

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「俺は風紀委員には入りません」

 

 熱烈な勧誘に対して、俺の返答は酷く簡素なものだった。

 答えを聞いて、渡辺先輩と森崎、沢木先輩はあらかじめ想像していたのか軽く嘆息するだけで済ましたが、周りのメンツはかなり驚いているようだ。彼らの中では俺の風紀委員入りは既に確定事項として扱われていたらしい。

 当然といえば当然の帰結。

 今の俺の放課後の日課は九重 八雲との修業か、地球堂のセールでの激闘である。鍛冶を好きに行えない以上、自身を鍛えることに傾倒するしかなく、買い物については死活問題だ。普段の放課後を別に回す余裕なんてものは無かった。

 

 政狩 刀祢という人間は基本、自己中心的な人間である。自分で言うのもなんだが、自身の利益にならないものへの関心は極めて薄い。目の前で困っている人がいたとしても自分からは声をかけない。助けを求められても用があれば断るし、面倒だと思えば切り捨てる。気まぐれで助けたら助けたで対価を要求したくはあるし、何も無かったら心の中で悪態をつく。

 もちろん、無関係な奴に害を及ぼすことは良しとしないが、利することを自ら望んでやる気概なんてものは一切ないと言っていい。気に入らないことがあれば文句の一つも言いたくなる。売られた喧嘩は叩いて買う。

 ここまで色々挙げてきたが、ろくでなしと比喩されても全く異論をはさめないのが俺という男なんだろう。

 

 客観的に見ればこんな人間が風紀を取り締まる側にいるのは間違っているし。俺個人としても面倒だし拘束されるし、風紀を守るなんて複雑怪奇な奉仕行為に関心はない。背中がかゆくなってきそうだ。

 

「そうか、本人にその意思がないのなら仕方が──」

「だけど、手伝いならします」

「……は?」

 

 だから、もし風紀委員に入るとしたら、その理由はとても単純かつ個人的。友人の願い事はなるべく聞き入れたいと思う心は、こんな俺にもあったらしい。

 

「えっと、それはどういうことだ?」

「風紀委員に籍を置くことはしませんが、人手が足りない時くらいは呼ばれれば手伝います」

「随分と勝手な物言いだが……いや、能力を目当てに勧誘している身でそれは言えんか」

「放課後をなるべく制限しないようにしてくれれば、俺は基本なんでもいいです。そっちの指示に従います」

「だけど、この条件では君にメリットがないぞ」

「別にいいです」

 

 俺は森崎の「一緒に風紀委員をやりたい」という願いを少しでも叶えるため、そして森崎の成長を近くで師匠面して間近で見たいがために、限定的に風紀委員へ協力することにしたのだ。

 

 俺の返答を聞いてから、先輩たちは困惑した様子で話し合いを始めた。結果、その場はとりあえず『一番近いイベントである部活勧誘週間での活躍を見てから』という形に収まり、改めて今日は解散になったのだ。

 

 

 

-----------

 

 

 

 うん。余裕がないの、俺のせいだなこれ。自分で刀鍛冶に掛ける時間を潰しにいってる、紛うことなき自業自得だバカ野郎。

 まあ、なんでと言いながらも後悔とかは全くないのです。森崎と組めるなら一週間程度の放課後くらい捧げてもいいさ。

 もし退屈が森崎への義理を上回ったのなら、きっぱり風紀委員との関係を断てばいい。卒業さえできればいいから多少悪目立ちしてもモーマンタイ。後にこじれることもないでしょう。

 

 唯一の懸念点は司波兄だ。今日の模擬戦中にすごい見てきたし、こっちを見る目に敵意が隠しきれてなかったもん。多分、俺と司波の関係のことは既に知っているだろうしなぁ。

 ……なんとかなるか?流石にこんなくだらない昔の事情に、いくら可愛い妹のためとはいえ首を突っ込んでくるだろうか?

 うん、そうだよ。そうに違いない。たぶん、きっと、めいびー。最強無敵のお兄様はこんな些末ごとにはかけらも興味はありません。俺なんて最愛の妹によって集る羽虫Bあたりに過ぎないでしょう。だから心配なんてありはしないのです。これまでのは全部杞憂。はいこの話おしまい。人これを思考放棄といふなり。いや、いわない。

 

「……疲れてるな」

 

 いい感じに意識がハイになってきている。だが日中イベントが押し寄せてきたせいか、俺の体は休息を求めて抗議をあげていた。眉間を揉んでみるが変わらず睡魔が意識を襲ってくる。

 

「寝るか?いや、そういえば」

 

 母さんからの課題で怪文書めいた研究資料が仕送りと一緒にあったはずだ。確か机の上に置いといたんだっけ?ええと、あった。なになに…

 

「第三次…基盤…衰退、…超能力…技術体系化…ううん、なんじゃこりゃ」

 

 あの人時間があったらいつもこんな面倒く…もとい常人には到底理解できないことを考えているのか。しかもこれ現代魔法のことについても触れてるんじゃないか?そういえば俺が中学の頃、たまに俺の電話帳みたいな魔法関連の教科書みてふむふむうなずいてた様な。

 最近は、図書館に行く機会も増えたってお父さん手紙に書いてたっけ?暇ならまず料理の腕を磨いた方が…おや急に悪寒が。

 

「……俺は好きだよ、母さんの料理」

 

 さもありなん。まあ一応読んでみるが、感想が欲しいと言われてもそもそも読み切れるかが怪しいなコレ。アトラス院の人って話すとき面倒臭がられたりしないのかな?とりま愚痴っていても仕方なし、ゆっくり時間をかけていきますか。

 

 

 結局二十分しない内に飽きて寝てしまい、そのまま読まずにいたことを母アイナからローキックで折檻されるのだが。この日の夜はもうそんな想像もできないくらい、本当に疲れた一日だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 




 刀祢の身の回り(住居)編でした。やだこの主人公、森崎君に甘すぎ…!


 どうでもいいんですけど、この前友達の家でお酒飲んでて思いっきり失敗したんですよね。みんなほんとにいい友達で「気にすんな」と言ってくれましたが、申し訳なさでまた吐きそう…。
 今回の件で自分の限界は知れたので、二度と同じことは起こさないと誓いました。皆さまもどうぞお気を付けください。「酒は飲んでも飲まれるな」ってマジで名言。

 月の裏側ルートが出るまでワシは死ねないんや……オリンピック分は待たないといけないのか。

 それでは、読んでいただきありがとうございました。次回も気長にお待ちいただけると嬉しいです。
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