魔法科?うるさいそんな事より都牟刈だ!!   作:益荒男

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 バンド練習しながら小説書きながら評価に戦慄しながらこの年でウルトラマンネクサスにはまっている今日この頃の益荒男です。

 あーいそがしいそがし


ご先祖様は恐らく、今の俺らを見て泣いているだろう。「私はこんな脳筋などではない!」と

 テテテッテッテー♪ テテテッテッテー♪

 テテテッテッテッテ♪ テテテテテ♪

 

 頭の中で某絶対に時間内に終わるはずもない料理番組のテーマを流しながら調理を進めていく。

 

 はいワカメを切ってー豆腐を切ってー♪お湯に味噌をとっかしったらー♪煮干しを入れてー材料ブッチ込みふたをしろ♪はい味噌汁の準備完了。この間僅か50秒。

 

 次は焼き魚でーす。腹をさいてー内臓抜き出し腹を開く♪二つに切ってー塩をまぶしたら七輪の上にボッシュート♪これを二つ用意しましょう。水分の蒸発による泡が出てきたあたりでひっくり返してを繰り返しましょう。それで焼き魚の準備も完了。かかった時間は3分程度。

 

 「爺や、こっちできたよ。そっちは?」

 

 「あと2分待て」

 

 我が家、政狩家の食事は「効率よく的確に、それでいながら上品に」がモットーである。先のふざけた感じに紹介した手順も時間も、最も効率よく美味しく出来上がるようにご先祖様が調べ尽くしたものなのだ。

 

 何でもこれは、まだ妖狩りを生業としていた頃、「いつ依頼や任務が入ったとしても直ぐに動けるよう、それでいながら旨いものを食いたい」と思った当主がいて、それを聞いた者全員が賛同した結果、一族総動員で研究され生み出されたらしい。

 

 やっぱ馬鹿だわこの一族。仕事に忠実なのはいい。けど総動員なんてする必要ねえだろ。周りも馬鹿だが当主も馬鹿だ。同じ一族だからこそ分かる。コイツゼッタイ愚痴を零しただけだ。そんで皆が乗り気になった勢いでやっただけだ。

 

 

 

 

 ここで少し、こんな旧時代のような生活をしている魔術師兼刀鍛冶一家、我らが政狩家について説明していこう。

 

 時は遡り約900年前、元は西欧の魔術師であった我らがご先祖様。彼は人間の文明の起源となる「火」を題材に根源へと至ろうとしていた。彼自身も優秀な魔術師であり、火を扱う魔術において右に出るものは指で数えられる程しかいなかったそうだ。

 

 だが、いつの時代においても優秀さと面倒事はセットでついて来るものである。彼の研究に目をつけた魔術師達が徒党を組んでその成果を我が物にしようとしたのだ。基本自分の研究にしか興味なんてないはずの魔術師がここまでする事が、彼がいかに優れた魔術師だったかを物語っている。

 

 彼はそれから逃れるために、他の魔術師がまだ手付かずの東方を目指した。だが、研究をするには場所も資金も足りていない。そこで彼が目につけたのが、航海士マルコ・ポーロの「東方見聞録」そこに記された「黄金の国ジパング」。そう、ここ日本だ。

 

 黄金の国というのに惹かれたのか新たな竜脈の発見を期待したのかは分からないが、それから彼は日本を目指し旅を始め、そして辿り着いた。

 

 

 

 だが、彼の不幸はさらに続く。

 

 

 

 勘のいい奴なら分るだろう。今から約900年前、この頃は鎌倉幕府が開かれ、北条氏が実権を握り執権政治を行っていた時代。そしてマルコ・ポーロの「東方見聞録」。この二つのワードから導き出されるもの。

 

 

 

 すなわち「元寇(げんこう)」だ。

 

 

 

 「元寇」とは、モンゴル帝国の王フビライ・ハンが東方見聞録で日本を知り、その国を支配しようとふっかけてきた二度の戦争のことを差す。ご先祖様は来る時期が悪すぎた。その戦争に巻き込まれたのだが、彼も魔術師の一人。自分の魔術を用いて襲ってきた奴を返り討ちにしていった。

 

 彼はそこで初めて刀というものを知った。彼にとって剣とは、重さを武器に敵を叩き潰すものなのだから。あんなに細く美しい身で、馬や鎧を綺麗に両断する刀に見惚れたのだ。

 

 戦争が終わりようやく一息つけると思った矢先、彼は一人の地主の下へと招かれることとなった。どうやら、彼が自分の身を守ろうとやっきになっていた所で偶然助ける結果となった武士が高い身分の御家人だったらしいのである。

 

 御家人は彼に褒美を与えるとし、ご先祖様はここに来る途中に見つけた竜脈の起点となっている土地を要求した。土地という面で御家人は少しためらったが、山の一面に小屋を建てるだけでいいと言えば簡単に譲ってくれたそうな。

 

 これで竜脈の確保はできた。ならあとは生きていくためのお金だ。御家人に相談した所、妖怪退治はどうかと勧められた。お前が使う魔術とやらでどうにかできんか、と。彼はそれを引き受けた。有名どころの竜種や妖精などとは違う、この国独自の幻想種に興味を持ったからだ。それから彼は日本の竜脈を拠点とし妖狩りを生業とする魔術師となった。これが政狩家の発端だ。

 

 

 

 

 ご先祖様は子孫達がここまで脳筋になるとは思わなかっただろうなあ。なんて思いながらお椀に米を盛っていく。聞いた限りでは、この人は普通の魔術師って感じだろう。ではどっからこうなっちまったのか、そして何故刀鍛冶となり根源を目指す手段を変えたのか。それは・・・

 

 

「ただいま帰りましたーって、お、旨そうな匂い。」

 

「Good timingだったようね。私もお腹がすいてきちゃった。」

 

 

 玄関の扉が開く音と共に二つの男女の声が聞こえてきた。バカップル共も帰ってきたようだ。

 

「お帰りなさい。」

 

「帰ったか。早く着替えて来い。夕餉の準備はついさっきすんだ。」

 

「ただいま。刀弥、オヤジ。ならさっさといってくる。」

 

「ええ、刀弥の作るご飯が待ち遠しいしね。」

 

 台所から顔を出して迎えると、そんな言葉を返して隣部屋へと向かった。

 

 俺の父親、政狩郁麻(いくま)

 

 俺の祖父、脳筋一号の政狩龍馬と既に他界した脳筋二号の祖母の間に生まれた常識人にして政狩家現頭首。過去の事件により()()()()()、既に刀鍛冶としての現役は引いているが、その腕は過去に打たれた作品全てを凌駕する刀を生み出す程。現代でも知る人ならば彼を「蘇った村正」と呼ぶ。刀の技においても人の域を逸しており、全力の爺やを隻腕ながら圧倒する。

 

 そして、政狩一族で唯一至りかけた(・・・・・)者だ。

 

 

 俺の母親にして常識人二号 政狩・アイナ・ミハルトン

 

 名前の通り日本人ではない。生まれはイギリス。彼女は元アトラス院の魔術師であり、そこからここ日本に逃げ出してきた錬金術師である。

 

 何故あのアトラス院から逃げ出せたのかずっと疑問だったが今ようやく理解した。

 

 恐らく、第三次世界大戦が引き起こったせいでこれまでの魔術情勢が崩壊したからなのだろう。魔法科の設定にも外国の関わりが極端に減ったみたいなことも書いてあった気がするし。この世界ならではの出来事っていうことだろう。

 

 ついでに父さんに惚れた理由は、アトラス院からの追っ手から自分を守ってくれた彼に惹かれたから、らしい。チョロい。

 

 

 夕食を盛った食器をお盆に乗せて運んでいると二人が戻ってきた。全員がちゃぶ台についたら、はいいっせーのーで

 

「「「「いただきます」」」」

 

 まあ、なんかんや言って俺も久しぶりに家族全員で食卓につけて嬉しいのだった。美味しいって言ってくれたらいいな。面には絶対ださねえけどな。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「それでは始めるぞ。刀弥。」

 

「よろしくお願いします。」

 

 夕食を終えて場所は変わり家の隣に建てられた道場。修練着に着替え、そう言ってお互いに頭を下げる。

 

「まずはいつも通り素振りからだ。やれ。」

 

「はい」

 

 そう答え、木刀を構える。通常の物より二倍ほど重い特注品だ。それを振り上げ、刀身のぶれないように振り下ろす。それを繰り返していく。

 

「重心が前に傾いておる。」

 

「次は右だ。動き出しが鈍くなるぞ。」

 

「疲れてきたからと力を込めるな。木刀を離さない最低限の力だけを入れろ。」

 

 一つの間違いを改善すると、また新しい間違いが生まれる。そして間違いが生まれることが無くなるようになるまで、余分な物を削ぎ落とし一つの完成にまで近づけていく。

 これだから研磨するということは止められない。爺やという本当に優れた師を持てたことにも感謝だ。父さんには劣ると言っても、爺やも人の域を既に逸した超人の一人だ。例を挙げるならば、母さんを抹殺しにきた魔術師十数人を父さんと二人で文字通り瞬殺するほどである。

 あん時はチビっちまうほどの衝撃を受けたね。腰の刀に手をかけた事に気付いた時にはもう手遅れ。次の瞬間には襲撃してきた三分の一が文字通り一刀両断されていた。俺の家族チート過ギイ!俺もあんなんシテーーー!

 

「止め」

 

 三百回程降っただろか。木刀を下げ、息を吐く。この少しの間で既に汗を滝のようにかいてしまっていた。それくらい集中してやっていたという証拠だろう。けどこんなものウォーミングアップにもなりやしない。

 

 爺やが木刀につける為の重りを渡してきた。これで木刀の重さは大の大人でも持ち上げられないほどになる。

 

「次だ。魔術回路を起動させてそれをつけろ。終えたら再開だ。」

 

 言われるまま、俺の体の魔術回路全■■本のうち7本を起動させる。俺の起動させるイメージは、熱した鉄に槌を振り下ろすイメージだ。頭の奥でカンッと鉄が鳴り、起動させるとともに自身に木刀を構えられる最低限の身体強化をかけ、重りを付ける。

 

 後は素振りを繰り返す。爺やが指摘し、正していき、己自身を磨き上げていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきの話、政狩家の歴史の続きを語っていくとしよう。

 

 何故刀鍛冶を始めたのか、そしてどのようにして「自ら打った刀と技をもって境界を切り、根源への道を開く」なんて脳筋思考へと至ったのか。

 

 なんとそこには、俺が最も尊敬し目指すべき目標である人物、千子村正が大きく関わっていたのだ。

 

 何度か代が変わりながらも、火の魔術師と妖狩りを生業として生活を送っていたご先祖様。時々戦国武将の合戦に巻き込まれながらもこれまでどおり依頼を遂行していたら、彼は信じられないものを目にした。

 

 一人の男が刀だけを持って霊を切り祓っていたのだ。刀は見た所刃こぼれもなく刃の磨かれ具合からついさっきできた新品の様であったし、特に魔術を使った痕跡もない。

 

 なら何故切れた。さっきのは鬼といった肉体を持った幻想種ではなく、生き霊や地縛霊などの概念的な存在だ。何の神秘も用いずに祓いのける。それも礼装ですらない只の刀で。

 

 

 魔術師は問うた、お前は何者だ。

 

 男は答えた、只の刀鍛冶だ。

 

 

 そう、この男こそが千子村正であり、この出会いが魔術師の運命を決定づけた。

 

 魔術師は彼に興味を持った。聞いてみたところ、新しい物を打ったから試し斬りをしようと思い山を下っていたら、先の変なのにあったらしい。霊を「変なの」といっているあたり、彼が刀以外に興味がないところを匂わせる。恐らく、自分がどんな偉業を成し遂げたか欠片も理解していないだろう。

 

 魔術師は村正の了解を得て刀を直に手に取り、霊を切った理由を理解した。

 

 この刀に込められたもの、それは『執念(思い)』だった。

 

 

 全てを切り裂け。神も仏も業も縁も、目に視えぬものであろうとも、一切合切を切り裂いてゆけ。

 

 

 もはや怨念の域にまで達した執念。そんな思いが込められた世の中にある物全てを超える刀。人の思いと技とは、極めれば神秘をも切り裂くというのか。魔術師の戦慄は天辺にまで達した。そして、そこに根源への道筋を見いだしてしまったのだ。

 

 「一度決めたら即実行」がモットーの我が一族。魔術師は村正の下に弟子入りする事を願った。村正は最初はつっぱねたが、ふとあることを思いつき条件付きで弟子入りを許した。その条件とは刀の鉄を熱する為の焚き火を魔術で補うことだった。魔術師は二つ返事でこれを了承。村正の下に弟子入りを果たした。

 

 後はもう止まらない。村正の下でひたすらに刀を学び続け、火を焚き続け、槌を握り締め鉄を打ち続ける。妖狩りの依頼も、まずは刀の試し斬りをし、効かないなら身体強化をかけて拳に炎を纏い殴り倒すという、最早魔術師の面影も感じられないようになっていた。

 

 脳筋の連鎖は止まらない・・・!

 

 使う魔術も、「火」「強化」「解析」「治癒」の四つのみとなり、最終的にはこの四つ以外の魔術が扱えなくなるところまで行ってしまった。

 

 刀を扱うにも技術が必要と理解し、近くの道場で基礎を学んでは師範代をそこで得た技術のみで打ち倒してから抜けるを繰り返すという新手の道場破りみたいなことをやらかし始めた。いや道場破りよりたち悪いなコレ。

 

 そして最後に姓を改名。師への感謝と尊敬を表し、村正の「正」に「打つ」という意味を持たせるのぶんの部首を付け「政」。妖狩りを生業としていたことを残すため「狩」の字を置き、「政狩(まさかり)」となった。

 

 

 魔術世界において(恐らく)初の「魔術の研究を用いずに根源を目指す」魔術師(脳筋)の爆☆誕である。

 

 

 いや本当にどうしてこうなった。なんかこの台詞デジャヴを感じるな。つまり俺は自滅因子だった・・・?相手は誰だ?政狩家そのものか?なら不能になってさっさと根源いたらなきゃ。目的のためなら不能にだって道化にだってなってやる。

 

 この一族にも村正が関わっていた事に最初はものすごく興奮したが、ここまで来るともうなれてくる。自分の夢を叶えるのに適した環境をこれ以上ないほどに整えてくれたのだ。ここまでお膳立てをされて何も為せませんでしたじゃ、刀鍛冶や求道者という前に男が廃るってもんだ。誰にも邪魔はさせないし立ちふさがるというのなら一切合切切り捨てる。だから・・・

 

 

 「そこまで。見込んだ通りかなりの成長速度だ。これなら次の段階に進んでもい

 

 

オォヤァジイイイイイイイイイイイ!!!

 

 

トォウゥヤァァァアアアアアアアア!!!

 

 

 ・・・まずはこの第一関門(バカップル共)を越えなければ。

 

 

 

 

 

 




 俺のにわか歴史アンド型月知識に矛盾などがございましたら遠慮なく指摘して下さい。

 自分で書いてて思ったけどだめだなこの一族

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