面倒くさがり女のうんざり異世界生活   作:焼き鳥タレ派

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2.今回をもちまして本企画は終了とさせていただきます。長らくのご愛顧ありがとうございました。…ちょっと遅めのエイプリルフールよ。1!

「困ったわねぇ。困ったわ。ああ」

 

あたしは私室のデスクで頬杖をつきながら悩みに悩んでいた。

お前に悩みなんかあるのかって?

失礼ね。毎回のように現れる変人やトラブルのせいで頭抱えてるの見てるでしょうが。

 

とにかくあたしは今回のお話をどう持っていくかわからず困っていた。

次回は100回目記念特別編をやりたいから、続き物はできない。

かといって1回で完結する面白エピソードの案があるわけでもない。

またみんなにイタズラしようと思ったけどルーベルにボコられるからやめた。

……あら、それなら普通に遊んでもらえばいいんじゃないかしら。

我ながらいい案だと思う。

 

そうと決まれば善は急げね。

私室を出ると1階のワクワクちびっ子ランドを目指して早歩きで廊下を進む。

ルーベル達は以前の失敗以来、ちょっとあたしを警戒してるところがあるから、

簡単には部屋に入れてくれないかもしれない。

とりあえず子供達にちょっかいを出すことにした。

また転ばないように慎重に階段を下りて、ドアのない子供部屋の前に立つ。

 

「やっほー、何してんの?」

 

まずは入口で声を掛ける。いきなり入ったらピーネが警備兵ルーベルに通報する。

ピーネにもパルフェムのような懐の深さを身に着けて欲しいもんだけど、

まだまだあの娘には期待できそうにないわね。

とにかく、ピーネは鬱陶しさを隠さず、パルフェムは笑顔であたしを迎えた。

 

「里沙子には関係ないでしょ。この前本屋で買った魔導書を読んでるの。邪魔しないで」

 

「まあまあ、よろしいじゃありませんか。今回はきちんと訪ねてくださったんですから。

どうぞお入りになって、お姉さま。さあ、パルフェムの隣に」

 

「うへへ、ありがとね!……よっと」

 

住人の許可が得られたから堂々と侵入する。まずはパルフェムのベッドに腰掛けた。

 

「勝手に私の部屋に入れないでよ!」

 

「パルフェムの部屋でもありますわ。

部屋の半分の使い道はパルフェムに決める権利がありましてよ」

 

「屁理屈ばっかり!里沙子もパルフェムも大嫌い!ふん!」

 

「そう邪険にしないでよ。何読んでるの?

……ふむふむ、“はじめての水魔法、真水からシャボン玉をつくろう”。

なるほどピーネらしいわ」

 

「どういう意味よ!用事がないなら出てって!またルーベル呼ぶわよ!」

 

「怒ることないじゃない。可愛らしいなって言いたかったのよ。

あと、今日はパルフェムの許可を得てここに居るからルーベルも手出しはできないわ。

パルフェムが証人。証人といえば、エ○バの証人がまた来たの。

あいつら一体何がしたいのかしら」

 

「ほら。ピーネさんもお姉さまも矛を収めてくださいな」

 

「別にケンカなんかしちゃいないけど、わかったわ。

ピーネも機嫌直してよ。あんたの邪魔はしないからさ」

 

「……うるさくしたらルーベル呼ぶからね」

 

「了解。というわけでパルフェム、静かに遊びましょう」

 

「よろしくてよ」

 

ワクワクちびっ子ランドに滞在する権利を得たあたし。

24にもなって働きもせず昼間から子供に構ってもらってる自分が

軽く終わってるような気がしたけど、深く考えないことにした。

 

「何して遊ぼうかしら」

 

「和歌を詠んでみませんか。たまには戦いと関係なく」

 

「お、いいわね。お題は何にする?」

 

「そうですわね……では、ピーネさんの魔導書から“水”で何かひとつ」

 

「オッケー。できたものからジャンルを問わず」

 

それからあたし達は頭を捻って風流な和歌を作り始めた。

もう春だし、水にこだわらずこの爽やかな季節をメインに詠み込んでもいいわね。

お、パルフェムが早速ひとつ出来たみたい。

 

「それでは、まずパルフェムから。

……春日向 水を少女が 学びけり。

う~ん、暖かい日差しを浴びながら水魔法を学ぶピーネさんを詠んだのですが、

あまりにも工夫が足りませんわね」

 

「ちょっとブランクあったんだからしょうがないわよ。次あたし。

……国破れ 水の流れに 涙して 我が顔(かんばせ)を 春風撫でる。

国が滅びても変わらずただ流れる川を眺めて、

郷里の恋しさに涙で濡れた顔を春の暖かい風が撫でていったって情景を詠んだの。

“国破れて山河あり”をちょいパクして背伸びしてみました」

 

「素敵な短歌ですわ。パルフェムも負けてられませんわね。ではもう一つ。

……白魚の ごとき少女の細指が 水の戯れ 手繰りける。

やはり水魔法の魔導書を読むピーネさんを詠んだのですが、

ただの説明になってしまってますわね。スランプですわ」

 

「落ち込まないの。そういう時はリラックス。

それでは里沙子お姉さんがリラックスできる一首をプレゼントしましょう。

国破れ 水の流れに 涙する それにつけても金の欲しさよ」

 

「ぷっ!いやですわ、お姉さまったら!」

 

「国が滅亡してお先真っ暗。金さえあればこんな川の縁で泣かずに済むのに。

さっきの短歌を金欲し付合で台無しにしてみました」

 

「和歌魔法で詠んだら何が起きるか見ものですわ」

 

「金が出てきたら一割ちょうだい」

 

クスクス笑うあたし達を、さっきからピーネがちらちらと見てる。

無意識なのかこっちが気づいてないと思ってるのかは知らないけど、

興味があるには違いないっぽい。

 

「どうしたのピーネ。うるさかった?」

 

「……別に」

 

「よろしければピーネさんもいかがですか。

五七五の十七音に季節を感じさせる言葉を入れるだけの、

誰でも作れる古典的な詩ですわ」

 

ピーネは魔導書を読むふりを続けてるけど、内容が頭に入ってないのは明らか。

しばらく目を遊ばせると、ようやく口を開いた。

 

「前に……俳句を教えるって言ってたわよね、パルフェム。

一応何かの役に立つかもしれないから、教えなさいよ」

 

「ふふっ、今言ったように、五七五で情感や風景を詠むだけですわ。

多少文字がオーバーしても構いません。自由に作ってみてください。

お題は引き続き水で」

 

「ええと……5・7・5よね。水に関係するもので、季節の言葉を入れる。

すぐ考えるからちょっと待ちなさいよ」

 

「慌てなくてもいいから。季節もなんだっていい。それと、拗音は数えなくていいわよ。

小さい“あ”とか“や”なんかね」

 

目を閉じてピーネがまだまだ成長段階の言葉の引き出しから

懸命に適切な言葉を選び出し、初めての句を作り出す。

あたしとパルフェムは何が出てくるか楽しみにしながら待ち続ける。

それからたっぷり10分掛けてピーネが目を開けた。

 

「できたわ!」

 

「聞かせてくださいます?」

 

「おほん、じゃあ言うわよ。……シャボン玉 白鳥座見て ふと飛ばす」

 

「へえ、いいじゃない。その心は?」

 

「心って、どういうこと?」

 

「どんな気持ちをその句に込めたのか教えて」

 

「シャボン玉を白鳥座まで飛ばせるほど強くなりたいってことよ」

 

「しかし、白鳥座は秋の季語ですわ。どうして春ではなく秋の星座を?」

 

「べ、別に。なんとなくよ」

 

話したくない、もしくは話せない様子が明らかだったから、深く突っ込まなかった。

 

「そうよね。なんとなくパッと浮かんだことを文字にするのも俳句の楽しみだし、

そもそも俳句で絶対やっちゃいけないことはないってプレバトの夏井先生も言ってた」

 

「確かに、初めて作ったのにきちんと形になっていて素晴らしいと思いますわ。

歌人の弟子になって修行をすれば一流の俳人になれるかもしれませんね」

 

「廃人なんて里沙子ひとりで十分よ。私は最強の吸血鬼になりたいの」

 

「お、上手いこと言ったわね。やっぱ才能あるんじゃない?

シャボン玉か。懐かしいわ。……ベン・ジョンソンが飛んだクスリで飛んだ♪」

 

あたしが小さい頃、幸せなワタシ(記憶が曖昧)っていう深夜番組で

誰かが歌ってた替え歌。

まだ子供だったあたしはゲラゲラ笑ってたんだけど、

いくら調べても詳細がわからないの。

あと、別コーナーで「恐怖のお仕置き、自転車ミサイル!」というネタも

やってたんだけど、やっぱり芸人の名前は忘却の彼方。

坂道で加速した自転車から飛び降りて、フェンスに縛り付けた人にぶち当てる拷問よ。

当時の状況を覚えている方は御一報くださると嬉しいわ。

 

「なんですの?その歌は」

 

「話すと長くなるし、知らないほうが身のためよ」

 

「だったら最初から歌わないでよ。気になるじゃないの!」

 

「ごめんごめん。懐かしくなってついね」

 

その時、2階から足音が聞こえてきて、ワクワクちびっ子ランドの前で止まった。

ルーベルがフィンガーレスグローブをはめた手を壁につきながら、

興味深げにあたし達を見回す。

 

「ふーん。なんだか楽しそうだから来てみたが、えらく盛り上がってるな」

 

「な、何よ……今日はちゃんと了解を得て遊んでるわよ」

 

「わかってるって。

いやな、お前も人との正しい付き合い方を覚えたんだなぁって感心してさ」

 

「うっさいわよ!

あんたなんか初めて法王猊下に会った時、どせいさん丸出しだったくせに!」

 

「あ、なんか馬鹿にされた気がするぞ!

ずっと後回しになってたが、どせいさんってのは何なんだ!」

 

「地球侵略に来たけど旅の途中で目的を忘れて結局地球に住み着いたおちゃめさんよ」

 

「うふふ、可愛らしい方たちですのね」

 

「実際見た目もユニークで可愛いわよ。ぷっくり鼻が出た丸っこいマスコットみたいで」

 

「ぷぷっ!ルーベル可愛いんだってさ~!」

 

「……おーし、里沙子もピーネも表に出ろ。いいから出ろ!」

 

「馬鹿、やめなさいよ!暴力は何も生み出さないわ!

ピーネはともかく、あたしにまで手を上げる気!?」

 

「普通逆だろう!おっきい24歳児が!」

 

「なんで私まで!叩くなら里沙子にしなさいよ!」

 

“みなさーん。お茶が入りましたよ~。冷めないうちにどうぞ~”

 

ルーベルが拳の指を鳴らしたところで、ジョゼットの呑気な声に救われた。

 

「チッ、後で覚えてろよ」

 

「まあお茶ですって。みんなを待たせると悪いから早く行きましょう。ほら二人も」

 

あたしは子供達を盾にしながら、渋い顔をするルーベルを避けてダイニングに向かった。

 

 

 

 

 

全員がテーブルに着いてお茶を飲み始めても、

ルーベルはまださっきのことを根に持っていた。

 

「まったく、珍しく大人しくしてると思ったら、

口から出てくるのはやっぱりろくでもねえ事ばかりだ」

 

「あんたが来るちょっと前までは雅で乙な言葉遊びをしてたのに。

むしろあんたに邪魔された被害者なのよあたし達は」

 

「なんだとこのー!」

 

「どうか落ち着いてくださいルーベルさん。

ええっと、言葉遊びというと、パルフェムさんの俳句というものでしょうか」

 

エレオノーラが間に入って暴れ馬を止めてくれた。

彼女がいなかったらこの企画の3分の1は成り立たなかったと言っていい。

もしエレオが不祥事を起こしたら、

それらをごっそり削除しなきゃならなくなるからハッパにだけは手を出さないでね。

 

「はい。今日は和歌魔法とは関係なく、俳句や短歌を作って遊んでいましたの。

ピーネさんが初めて俳句を詠んで、とても楽しゅうございました」

 

「マジかよ!あの字数制限がキツいやつを作ったってのか?」

 

「そこまで驚かれるとなんかムカつくわね」

 

「マジよ。出来栄えも結構良かったんだから」

 

その時、私室からエリカがふよふよと漂ってきた。

 

「遅れてすまぬ。だが、俳句なら拙者も心得があるでござるよ。

どうせなら誘って欲しかったのじゃ」

 

「例によって位牌の中でグースカ寝てたくせによく言うわ」

 

「なんなら今すぐ一句」

 

「もう俳句大会は終わりました。あたし達は今からやることがあるんだから」

 

「また仲間はずれでござる……」

 

「しかしよう。やることってなんだ?」

 

「呑気ねえ。この企画も次回でとうとう100話目でしょうが。

今回は前夜祭として全員のエピソードを振り返るのよ」

 

「そんな大事なこと、遊んでないで先に済ませれば良かっただろうが」

 

「奴に計画性がないことは前回も話した。

最初は本当に俳句を詠むだけの日常回にしようと思ってたけど、

字数が全然足りなくて急遽各キャラのダイジェストをやることにしたらしいわ。

というわけでルーベルから」

 

「何が“というわけで”だよ!……わかったよ、やりゃいいんだろ?

私がこの家に越してきたのは、確か去年の年明けだったな」

 

「その頃はわたくしと里沙子さんと二人きりでしたね~」

 

「ああ。その時の私は里沙子を両親を殺した犯人と誤解しててな。

仇討ちのつもりで押し掛けたんだ」

 

「そんな事情があったなんて……わたし、知りませんでした」

 

「ワタシも……」

 

「まぁ、そんな深刻になるなよ。里沙子の協力で真犯人は捕まった。

だから私は恩返しに里沙子の用心棒としてここで働くことにしたんだ」

 

「昔から頼りになる方でしたのね、お姉さまは」

 

「今思えば、当時はクロノスハックもなかったのに、

オートマグ持ってる相手に接近したり無茶してたわねえ。

それはそうと、あんたお婆さんがいたんじゃない?一人で大丈夫なの?」

 

「しょっちゅう手紙はやり取りしてる。

近所のみんなが色々面倒見てくれてるから心配いらないってさ」

 

「たまには顔出してあげなさい」

 

「そうだな。今度土産でも持って様子を見てくるよ。

私についてはこんなところだ。次は誰だ?」

 

「はーい!もちろん最古参のわたくしです!」

 

ジョゼットが元気よく手を挙げるけど、

読者もとっくに読み飽きてるこいつの過去は、なるべく切り詰めたいところ。

 

「わたくしはですね~

モンブール中央協会で育ち、シスターとしての教育を受けて旅に出たんです。

でも、途中で寄ったダイナーで置き引きに遭っちゃいまして……

途方に暮れて彷徨ってたら、暴走魔女の集団に捕まっちゃいました!」

 

「どうしてそんな間抜けな過去を楽しそうに語れるんだか。

そんで、厚かましくもこの教会に駆け込んできたのよね」

 

「はい!その後、悪い魔女を里沙子さんと将軍が倒してくださったおかげで、

わたくしは晴れてこの教会のシスターになることができたのです!」

 

「召使いとしての役割も忘れないでね」

 

「わかってますよぅ……エレオノーラ様はどうですか?

全てのシスター達の憧れの存在ですから、改めてお話を聞きたいです」

 

そうね。魔王編をメインにこの企画の大部分に絡んでるから、

覚えてない読者の方に再度説明が必要だわ。

 

「わたしは、お祖父様の命により、

イエス・キリスト様が降臨されたこの教会で留学を始めたのがきっかけですね。

最初は借金取り扱いされましたけど。ふふ」

 

「知らない間に家に侵入したかと思えば寄付金払えなんだもん。

そりゃピースメーカーに手が伸びるってもんよ」

 

「ですが税の免除を話に出すと、すんなり受け入れてくれましたよね」

 

「本当、里沙子は守銭奴ね!

しこたま貯め込んでるんだから、税金くらい払えばいいのに」

 

「金はいくらあっても困らない。削れる出費は削りまくるのが幸せに生きる秘訣よ」

 

「でもま、言っちゃ悪いがこの華奢な女の子が

後々魔王をぶっ殺すとは思ってもいなかったけどな」

 

「あと、話は変わるけどクロノスハック制御のために

魔力をコントロールする訓練を受けたんだけど、あの激痛は今でも忘れられないわ。

なんか楽しんでる様子だったし、エレオは絶対Sだと思った」

 

「や、やめてください!

あれは短期間でマナと魔力を制御するには仕方がなかったんですから!」

 

「ヌフフ、別にいいのよ。人類は必ずどちらかに分類されるんだから」

 

「お姉ちゃん……何があったの?」

 

「え?ああ、魔法の特訓が厳しかったな~って思い出話よ。大したことじゃないわ」

 

カシオピイアには伏せておこう。絶対後でエレオと何かトラブルが発生しそうだから。

二人の間で板挟みになって寿命が縮むに決まってる。さりげなく話題を変える。

 

「魔王編と言えば、カシオピイア。あなたと出会ったのもあの時だったわね。

更に妹だとわかったのもその直後。異世界に妹がいるなんて夢にも思わなかったわ。

ずっと一人っ子だと思ってたから驚いたし、嬉しかったわ」

 

「うん……ワタシも、ずっとひとりぼっちだったから、今はすごく幸せ」

 

「まぁ、最初は手がつけられない暴れん坊だったけどな。

これから一緒に生活することに不安を覚えたのも確かだった」

 

「ごめんなさい……」

 

「こらー!妹の古傷えぐるんじゃないわよ!あんたと違って繊細なんだから」

 

「なんだとー!お前だって私に任せっきりだったくせに!」

 

「ああ、みっともないわね、あんた達は。

優雅に過去を振り返ることもできないのかしら。

私がお手本を見せてあげるから謹んで拝聴しなさい。

私の名前はピーネスフィロイト……」

 

「以上、各社の提供でお送りしました」

 

「聞きなさいよ!

とにかく私は、魔王と人間の戦いに巻き込まれてこのボロ教会に住むことになったの!

あっ、里沙子が茶々入れるからすごくざっくりした説明になっちゃったじゃない!」

 

「気になる人は過去話読んでねっていう神の意志よ」

 

「キー!なんかエリカの次に雑に扱われてる気がする!」

 

「拙者がワースト1でござるか!?前々回あれだけ頑張ったというのに!」

 

なんだかカオスな状況になりつつあるから、最後のひとりに望みを託す。

 

「パルフェムも改めて軽く自己紹介でもしてよ。

いないと思うけどご新規さんが見てるかも」

 

「では、僭越ながら。少し前まではパルフェム・キサラギという名でしたが、

今はお姉さまの姓を名乗らせていただいてますわ。

経緯は長くなるから省きますが、皇国の首相を務めていた時代もありますのよ。

今はこうして里沙子お姉さま達と共に平和な毎日を送っています」

 

「ありがとう。最後にまとめてくれて助かったわ。

女三人寄れば姦しいって言うけど、うちはあたし含めて7人もいるから、

好きに喋らせると時空にバグが発生してまともに話が進行しなくなるのよ。

この家はボロいファミコンソフトみたいなものなんだから、大事にしてほしいものだわ」

 

「どういたしまして」

 

パルフェムの精神年齢の高さに感謝しつつ、

そろそろ今回の話を締めくくろうとオチを探す。

最後にもう一首詠もうかと思ったその時だった。

 

コンコン ハッピー運送でーす。お荷物を届けに来ましたー

 

玄関が鳴った時、一瞬ドキッとしたけど宅配業者なら大丈夫ね。

立ち上がって玄関のある聖堂に向かう。

ドアスコープを覗くと確かに動きやすそうな制服を着た配達員。

扉を開けると、彼が梱包材に包まれた大きな板状の物を持って待っていた。

 

「こちらにサインお願いしまーす」

 

「これでいいかしら」

 

「はい、結構です。ちょっと大きいので、気をつけてくださいね」

 

「ありがとう。ご苦労さま」

 

「ども、ありがとうございましたー」

 

配達員が玄関口に置いていった物を眺めてみる。何かしら。

……ああ!前回約束した奴からの報酬ね。

みんなも荷物の正体が気になって集まってきた。

 

「なんだそれー?」

 

「こないだ謎の言葉を調査したでしょ?あの時の報酬。100話ギリギリで届いたわ」

 

「かなり大きなものですね。何なのでしょう」

 

「見ればわかるわ。開けるわよ」

 

あたしは報酬を何重にも包んでいる梱包材を丁寧に剥がしていく。

徐々にその姿が顕になっていき、最後の1枚が取り払われた時、皆が目を丸くした。

 

 


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