面倒くさがり女のうんざり異世界生活   作:焼き鳥タレ派

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太陽を盗んだあたし

皆さんは、昔「バトルロワイヤル」という小説及び映画が

物議を醸したことを覚えているかしら。

独裁政権が中学生を集めて殺し合いをさせるという狂った世界観が

賛否両論を巻き起こし、一時国会でも取り上げるほどの話題を呼んだの。

 

そのバトルロワイヤルを完全自由参加型にしたら

今回のような違った形の悲劇が生まれると思う。

やっぱりお話しするのはそんなイカれた物語。

毎年のように報道される、無茶な組体操や(略。

ハーメルンの片隅から、斑目里沙子より。

 

 

 

 

 

「ようよう。二回戦も頑張ったじゃねえか、里沙子!」

 

レジャーシートの上で、ぐでーっとあぐらをかいて前のめりになるあたしを、

あっけらかんとした声で励ますルーベル。

 

「正直、里沙子さんは銃がなかったら意外とヘタレなところがあると思ってましたけど、

さっきの活躍で見直しました!」

 

「うい……」

 

嫌味のひとつも出てこないあたしは力なく返事することしかできない。

とりあえずジョゼットは“あとで殺す”と脳に書き込む。

 

「本当に大丈夫なのですか?事故が起きる前に棄権することも考えてくださいね。

大聖堂教会を頼ることに、何ら後ろめたいことはないのですから」

 

「お姉さま顔色が悪いですわ。

もう少しパルフェムが年上なら代わりに出場できましたのに……」

 

「ありがと。本当にエレオとパルフェムだけが救いよ」

 

「もうお弁当食べようよー!私、待ちくたびれてお腹空いちゃった」

 

「あんたは見てただけでしょうが。まぁ、あたしも腹ペコなんだけどさ。

それと、カシオピイアは?」

 

「結局会えてねえ。こう会場が広くちゃな」

 

「合流できなかったときに備えてお弁当を渡してますから大丈夫だとは思うんですけど。

わたくし達もお昼ご飯にしましょうか。ちょっと待ってください」

 

ジョゼットが持ってきたランチバスケットを開けて、紙皿やフォークを皆に配る。

それからこの世界でも手に入る割と密封性の高い容器に詰めた料理を広げた。

サンドイッチやほうれん草のキッシュ。卵焼きにウインナー。

カマンベールチーズをビスケットで挟んだ一品。

いろいろあるけどやっぱりデザートには梨が。母さんみたいなことしてんじゃないわよ。

 

「……ジョゼットにしてはやるじゃん」

 

「腕によりをかけて作りました~。それでは皆さん召し上がれ!」

 

みんなが“わ~い”と子供みたいに食事に群がる。

飯を食うのもしんどいあたしは、とりあえず紙皿を手に取った。

その時、ふよふよと何かが近づいてくる気配がしたから、振り向いてみる。

あらまあ懐かしい顔じゃない。

 

「あっ……」

 

来ようかどうか迷っていたらしく、急に振り返ったあたしに空中で少し動揺する彼女。

ヴェロニカだった。さっと何かを後ろに隠す。

 

「ヴェロニカじゃないの。久しぶりね。こんなところで会えるとは思わなかったわ」

 

「お、お久しぶりです……」

 

「おう。1年ちょっと前に里沙子に嫁宣言したネーちゃんじゃねえか。

こっちで一緒に食おうぜ」

 

「よよよ、嫁!?お姉さま、どういうことですの!」

 

「泣きたくなるくらい弱ってるから大声出さないで。

家に帰って風呂入って冷えたエール空けてぐっすり眠ったら説明するから。

とりあえずその件についてはケリがついてる」

 

グレーのセミロングにラピスラズリの髪飾りがワンポイントの、メガネが似合う彼女。

今日もチェック柄のドレスを着て微妙に浮かびながら、なんだかモジモジしてる。

 

「ほら、ルーベルの言う通りあなたも一緒に食べましょうよ。」

 

「あの、でも……」

 

「いいから座った座った。狭いならジョゼット蹴飛ばしゃ済む話」

 

「ひどいです……」

 

まともな知り合いとの思わぬ再会に

テンションが5ポイントくらい回復して彼女を招き入れる。

 

「それでは失礼して」

 

「にしても凄い偶然よね~。元気だった?今日はなんでこんなところに?」

 

「おかげさまで。領主様から大会の視察を仰せつかって来ました。

開催地を提供していることもありますし、帝国初の試みですから」

 

「じゃあ悪いけど領主さんに伝えといて。“二度とやるな”」

 

「フフ、では確かに。まさか里沙子さんが出場されてるとは思いませんでしたけど」

 

ヴェロニカも緊張がほぐれてきたのか、笑いがこぼれる。

ていうか、なんで緊張してるの?

 

「一等賞が欲しいっていう複雑な事情があるの。そろそろ食べましょう。

ヴェロニカも遠慮しないで食べて。ジョゼット、もう一枚皿ちょうだい。水も」

 

「ちょっと待ってくださいね」

 

「あっ、お昼のことなんですけど、その……」

 

そう思ったらまた緊張する。あたしのせいなの?そうなの?

基本的に独りの人生を送ってきたあたしは

他人の心の機微が全くと言っていいほどわかんない。

何も言えずに困り果てていると、

彼女がおずおずと懐から可愛らしいクロスで包んだ箱を取り出した。

 

「よかったらでいいんですが、わたし、お弁当を持ってきてるので、あの、里沙子さん。

食べて、いただけないでしょうか……。本当、味見程度でいいんです!」

 

正解のないクイズの予想外の解答に驚いてあたしまでまごつく。

 

「弁当って、いや、あなたのご飯はどうなるの。

あ、ジョゼットの飯を食べればいいのか」

 

「……ご迷惑、でしょうか?」

 

「違う違う!そんなことない!ありがたくいただくわ!」

 

また真顔で泣きそうになったから慌てて弁当を受け取る。

クロスを広げると女の子らしい小さな弁当箱。

痩せの大食いだったあたしの学生時代の無骨な男物とは大違い。

フタを開けると未知の世界が広がっていた。

 

「まぁ……」

 

唐揚げ、ミートボール、固めに焼いたダシ巻き卵、

添え物に茹でたブロッコリー、プチトマト。

ご飯は白米じゃなくてタケノコをメインの具にしたピラフ。

彩り豊かな世界にしばし見惚れる。

 

「いただくわよ?」

 

「はい」

 

今度はあたしが緊張しながらフォークで唐揚げを口に運ぶ。

うん。弁当は冷めるものだから冷めても美味しさを保てるかが勝負どころなんだけど、

文句なしにうまいわ。

 

「おいしいわ、この唐揚げ!」

 

「よかった、お口に合って。

ミストセルヴァの沼地で捕れた、活きのいいワニを揚げてるんです」

 

ほっとした様子で告げるヴェロニカ。あたし以外のメンバーが騒ぎ出す。

 

「ワ、ワニ!?あの凶暴なワニですか?」

 

「そんなもん食って大丈夫なのかよ……?」

 

「なにぶん帝都で売っている食材しか知らないので、分かりかねます……」

 

「パルフェムは、聞いたことがありませんわ。皇国と食文化が違いすぎて言葉が……」

 

ピーネは硬くなって何も言わない。

 

「ちょっと、あんたら失礼でしょう。

言われるまで鶏肉としか思えないくらい歯ごたえも味も変わんなかったんだから。

ヴェロニカ、気にしないでね。あたしはうまけりゃ細かいことはどうでもいいの。

あなたの弁当、おいしいわよ」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「あなたがお礼言ってどうすんの。

ほら、ヴェロニカも食べて。ジョゼットの弁当でよかったら」

 

「たくさんありますからいっぱい食べてくださいね!」

 

「では遠慮なく、ごちそうになります」

 

ヴェロニカもサンドイッチとキッシュを皿に取って食べ始める。

全員にいい感じに飯が行き渡ると、あたしも手作り弁当の続きを楽しむ。

手作りもなにも、この世界にコンビニ弁当なんてありゃしないんだけど。

 

そんなわけで、熱帯気候に近いこの領地でも傷みにくいよう工夫された

ヴェロニカの弁当を食べるうちに、すり減った精神力が戻ってきた。

これで第三種目も頑張れそう。

 

「そういやさあ、次の競技は何なんだ?」

 

飯を食わないルーベルがいつもどおり水を飲みながら聞いてくる。

水筒の水には限りがあるから飲みすぎないでよ?

 

「あたしが知るわけないでしょ。どうせろくでもないものに決まってる」

 

「ヴェロニカさんはご存知ありませんか?」

 

「わたしの職務はあくまで運動会が円滑に進んでいるかどうかの視察ですから、

プログラムの詳細までは知らされてないんです」

 

「……そうですか。何か対策ができればと思ったのですが。

2つの競技で里沙子さんが危険な目に遭っているので」

 

「円滑になんて進んでないわ。運営も参加者も頭のネジが外れてて、

危険だろうが血が流れようがお構いなしに無理矢理続けてるだけよ。

マヂな話その辺のこと領主さんにしっかり伝えてね」

 

「そのようですね……。

確かに安全管理が疎かになっている点は報告しなければなりません」

 

「頼むわ。ほんと頼むわ」

 

その後もあたしはちょっとしたピクニック気分で現実を忘れた。

おいしい弁当を食べながら仲間とダベり、

気がつけば再び戦場に赴く気力を取り戻していたことに気づく。

 

「ふぅ、ごちそうさま。ありがとうヴェロニカ」

 

宴もたけなわ。みんなたらふく食べて、

あたしもカラになった弁当箱をクロスで包み直すと、ヴェロニカに返した。

 

「お粗末様でした。食べてくれて、ありがとうございます……」

 

「だからなんであなたが礼を言うの。おかげでまた戦えるようになったわ。

参加者はあたし含めて残り17人だから、“事故”が起これば

あわよくば次で1位になれるかもしれない」

 

 

《♪ピンポンパンポン…お昼休憩がまもなく終わります。

午後の部が始まりますので、選手の皆さんは待機所へお戻りください》

 

 

いいタイミングで昼休みが終わった。

さて、エネルギー補給も済んだし、行くとしますか。

レジャーシートから立ち上がり、靴を履く。

 

「どうか、お気をつけて」

 

「頑張ってこいよー」

 

「わかってるって。ジョゼット達はなるべく日陰にいるのよ?」

 

あたしは仲間と別れ、再びヘルメットと軍手をはめて待機所に戻る。

四角い白線のエリアはすっかり人が減って寂しくなった。

できれば次で決着がつくといいんだけど。

そんな気持ちも知らないで、進行役がまたマイクを取る。

 

《それでは皆さん!お時間が参りましたので、第三種目を開始致します!

続いての競技は……借り物競走です!》

 

意外にも普通の種目で逆に驚いた。

スタッフがいっぱい紙がぶら下がった物干し竿みたいなものを設置してる。

てっきりK-1グランプリでもおっぱじめるのかと思ってたけど。

 

《ルールは至って簡単!

まずはグラウンド中央に吊るされた封筒をひとつ取ってください!

中の紙に書かれているものを、どなたでも結構です。誰かからお借りして

ゴールで待っているスタッフに渡してください。

生き残れるのは先着6名!競技の性質上、今回は待機所から直接スタートとなります。

また刃物、火器爆発物(略)》

 

今度は速さもそうだけど運も必要になるわね。

誰も持ってないようなものを引いたらその時点で詰む。

 

《準備はいいですか?それでは…借り物競走、スタート!》

 

選手達が喚き立てながらロープを張った一対のポールに殺到する。

無駄に声が大きい連中のおかげで、寂しくなった空気がまた沸き立つ。

クライマックスが近くなって、観客の熱も高まりきっていた。

 

欲しくもない声援を受けながら、あたしも走り出し、

大男の群れに巻き込まれないよう封筒を取る。

どうせ中身はわからないんだから、安全第一で行きましょう。

で、空いていたスペースで取った封筒を乱暴に破って開けると一枚の紙。

そして書かれていた単語を見て愕然となる。

 

『恋人』

 

人をコケにするのも大概にしなさいよ!

非リアは負けろっていうあたしへの宣戦布告じゃないの!

ガンベルトを家に置いてきてなかったら、

テントの連中にピースメーカーの.45LC弾をお見舞いしてたと思う。

 

あああ、それどころじゃない!

恋人なんかどうすりゃいいのよ。タロットカードの“恋人”はアリかしら?

いや、どっちにしろ難易度高いしタロット自体この世界に来てない可能性の方が高い!

他のやつらはもう観客やスタッフに駆け寄って何やら叫んでる。

 

「頼む!誰か10000G貸してくれ!」

 

「“ロケットランチャー”ねえか!必要なんだ!

誰かロケットランチャーが何かを教えてくれ!」

 

「皇帝陛下の王冠だと!?あるわけねえだろそんなもん!」

 

他にも無茶ぶりされた選手の悲鳴が響く。

誰にも相手にされない彼らの様子を見て気づいた。

これは次の(恐らく)決勝戦に備えて、

腕力が通用しない手段で選手をふるいにかける運営の罠!

あたしらはハズレを引かされたのよ……!

 

ただ“恋人”と書かれた紙を握りしめてその場に立つしかないあたし。

運営に対する苛立ちとか憎悪とか殺意とか、

負の感情が腹の中に渦巻いてどうしようもない。

どうせ負けるならテントに並んでる賞品強奪しようかしら。

どこまで逃げられるかやってみようかしら。

そんな馬鹿なことを考えるほど追い詰められたその時。

 

“里沙子さん、がんばってくださーい!”

 

観客席から聞こえる声援。ジョゼットやエレオじゃない。

 

「あ、はは……」

 

乾いた笑いが漏れる。救いの手が差し伸べられた。あたしは声の主に向かって走り出す。

グラウンドから出て観客席に乱入。そして、彼女の手を握った。

 

「きゃっ!どうしたんですか、里沙子さん?」

 

「お願い。一緒にゴールまで来て!」

 

「えっ、借り物競走ですよね?」

 

「“魔女”が課題なの。協力して」

 

「わたしは魔女と人間のハーフなんですが、大丈夫でしょうか……」

 

「大丈夫。駄目だろうとごねまくるから大丈夫。とにかくお願い!」

 

「はい、わかりました!」

 

ヴェロニカの手を取り、再びグラウンドへ。

途中、観客席でさっそく選手がトラブルを起こしてるのを横目にダッシュする。

 

“姉チャン、そのダイヤの指輪貸してくれ!”

“いや、やめてください!”

“絶対返すからよ!”

“お嬢様から離れろ、馬鹿者!

……稲妻の妖精、野蛮な巨人に仕置きせよ!リトルショック!”

“ひぎやぁああ!”

 

既に2人がゴールしてる。急ぎましょう。

ふわふわ浮かべる彼女を風船のように引っ張りながら目的地を目指していると、

なぜか後ろから何人かが追いかけてきた。

 

「あいつだ!待てー!」

「お前の紙とブツをよこせ!」

「ここまで来て負けられるかー!」

 

げっ、ハズレを引いた連中があたしの借り物を奪いに来た。

ゴールまでの距離はグラウンドを丸ごと横切らなきゃいけないほど残ってる。

全力疾走するけど、負け確定のやつらも必死。

息が上がるほど走ってもしつこく食い下がってくる。追いつかれるのは時間の問題。

だったら賭けに出るしかない。あたしはさっき見たやり取りを思い出した。

 

「はぁ…はぁ…。

ヴェロニカ、あなたの魔法で後ろのバカ共なんとかしてくれないかしら」

 

「でも、魔法の使用は禁止されてるはずでは?」

 

「選手はね。だけどあなたは観客だから関係ない。

運営が何か言ったらそん時もごねるから心配しないで」

 

「それでしたら……。

大地が育む命の水よ、其が恵み知らざる愚者に芳しき誅罰を!

デスモーキーフレーバー!」

 

ヴェロニカが魔法を詠唱すると、

彼女が左手に集めた魔力に呼応して、地面から真っ白な煙が勢いよく立ち上り、

グラウンド全体に及ぶほど広範囲を包み込んだ。

煙を吸い込んだ連中は、途端に激しく咳き込みはじめ、その場で動けなくなる。

 

「ごほ、げほぉ!息が、息ができねえ!」

「目がぁ!目に染みる!痛え!」

「ああ臭え!野焼きよりひでえ!助けてくれー!」

 

予想以上に被害が及んだけど、とりあえずやったわ!あとはゴールするだけ。

違う理由で呼吸が苦しいあたしは、

走るペースを緩めてスタッフの待つエリアまで早足で急ぐ。

 

「はぁー、ふぅ…。ありがとうヴェロニカ。おかげで6位以内は確実キープよ」

 

「こんなことをしてしまって、本当によかったのでしょうか……」

 

「審判がなんにも言ってこないでしょ?だからこの作戦は有効なの。

さあ、二人でゴールテープを切りましょう」

 

そしてあたし達は一緒に白線で示された目的地に滑り込んだ。既に4人が到着してる。

ヴェロニカの魔法がなかったら危なかったわね。

スタッフが近づいてきて、紙と借り物の提示を求めてきた。

 

「おめでとうございます。指定の紙と借り物を……!?」

 

あたしはスタッフの肩に手を回して、強引に少し離れたところに連れて行った。

 

「あたしの借り物はこれ。彼女がそう。文句ないでしょう?」

 

「でも…。あなたもあの人も女性です、よね?」

 

「ねえ、ヴェロニカ!

あたし達って帝都でデートしたり、

景色のいい展望台で抱きしめあったことあるわよね!?」

 

「そっ、そうですが!それが何か?」

 

彼女は真顔で、だけど耳を真っ赤にして答えた。さらにスタッフに迫る。

 

「でしょう?だったらこの券も彼女も有効よね?無効ならその理由を説明願うわ。

ただ性別が同じだからというだけであたし達の関係を否定するなら、

あなたや大会運営に対して訴訟起こす」

 

「わかりました、わかりましたから……。では、37番さんが5着で」

 

「やったー!やったわヴェロニカ!あたし達の勝利よ!」

 

「おめでとうございます」

 

「あなたのおかげよ。手伝ってくれてありがとう」

 

「そんな。わたしはただ、ついてきただけで……」

 

「謙遜しないの。あなたの魔法で助かったんだから」

 

喜びを分かち合っていると、まもなく6人目も“ジョジョの単行本”を持ってゴール。

煙幕魔法の巻き添えを食らったみたいであたしを睨んできたけど、

恨むならこんなキチガイ共の乱痴気騒ぎからとっとと降りなかった自分を恨んで欲しい。

 

《勝負あり!そこまで!》

 

同時に審判が終了を宣言。運に見放されグラウンドに残された選手達が肩を落とす。

とぼとぼと受付に向かい、ゼッケンとヘルメットを返却し、参加賞を受け取る。

午後まで粘って得たものが菓子袋ひとつだというのはとても気の毒だと思う。

ああはなりたくないわね。絶対次の決勝で1位にならなきゃ。

 

《ご来場の皆様、第三種目の勝者達に惜しみない拍手を!

いよいよ次の最終種目で今大会の優勝者が決定されます!》

 

会場が割れんばかりの拍手に包まれる。

プレッシャーもあるけど、勝っても負けてもお家に帰れるという安堵感が大きい。

そんなわずかな希望は決勝戦で粉々にされるわけだけど。

 

「ヴェロニカ、もう観客席に戻って。仕事中に連れ出してごめんなさいね」

 

「いいえ。優勝を祈っていますね」

 

ヴェロニカと別れると、

彼女はまたホバーしながらジョゼット達のところへ戻っていった。

空が飛べるっていいわね。あれなら泥が跳ねてドレスが汚れる心配がない。

ジャージ姿で散々暴れまわったあたしは

嘘まみれ泥まみれ汚れっちまった悲しみだらけの哀れな女。

 

この上決勝戦で負けたら参加賞だけぶら下げて惨めに帰宅することになる。

ピーネ以外誰も喜ばない。それだけは避けなきゃ。

 

《勝ち残った6人の偉大なる挑戦者達は待機所でお待ち下さい!

すぐに最終種目の準備を行います!

第一回サラマンダラス帝国大運動会のラストを飾るに相応しい、

激しいバトルをお楽しみに!》

 

心底どうでもいいアナウンスを聞きながら、

たった6人になったあたし達は指示通り待機所へぶらぶらと歩く。

白線のエリアに入ると、乾いている地面を見つけて体育座りする。

体が疲れているのか、じっとしていると眠くなってきた。

 

うっかり眠りそうになったけど、ゴトン!と地を揺らす音に叩き起こされる。何事?

飛び上がるほど驚いたあたしは会場を見回す。

そして会場の奥から現れたものが目に入ると、戦慄のあまり言葉を失った。

 

 

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