──大統領。不本意な報告をしなければならない。
──聞こう。
──スラッシュに続きレプリカも敵の手に落ちた。
まだ生きてはいるが、我々とルビアの関係について口を割ってしまった。
──斑目里沙子は?
──仕留めそこねた。言い訳をするつもりはないが、情報より
完全に時間を停止させた。俺の全力でどうにか相殺できたが、次はないだろう。
ターゲットも俺達の襲撃を警戒し、更に停止能力を上昇させるべく対策を講じているはずだ。
──なるほど……もう諸君に手はないと?
──まだだ。マルチタスクがいる。
──あの子供達を?いよいよ我々も追い詰められているということか。
──全て俺の責任だ。2名を失い、会議が迫っているというのに未だに結果を出せずにいる。
──この計画からは手を引くべきなのかもしれない。
まだ我が国の関与を示す証拠は掴まれていない。
──あと少しだけ時間をくれ。必ずミッションはやり遂げる。
──できるか。
──必ず。
──いいだろう。連絡はこれで最後になる。経緯線を媒体にした世界通信は強い痕跡を残す。
──次に会うのは国際会議閉会後、ということか。
──どのような結果になろうとな。健闘を祈る。
──ああ。俺達がルビアに勝利をもたらしてみせる。そして皆を…いや、いい。失礼する。
そして俺は紺色のパスポートを閉じて通信を切断した。
その頃、あたしはスペード・フォーミュラの次なる襲撃に備えて、
クロノスハック・新世界を更に強化すべく猛特訓を……
するわけないじゃない、このクソ寒いのに。
ったく、どうなってんのよ。ラジオじゃ今年は暖冬だのなんだの言ってるけど、
あたしは例年通り凍える寒さに蝕まれてるわよ。
ワクワクちびっこランドの魔導空調機を強奪しようかと思ったけど、
ピーネの猛抗議やマリーの嫌味に阻まれて失敗に終わった。
今、あいつらはパルフェムも加わって3人で遊んでる。
最近の若いもんは家主に対する尊敬だの遠慮だのが欠けてるから困るわ。
半纏を着込んでダイニングで熱いコーヒーをすする。あちち、舌やけどした。
本当にろくなことがない。
「骨折り損のくたびれ儲け、ね」
「何がでしょう?」
エレオノーラが読んでいた新聞から目を離して尋ねる。
この娘も寒いはずなんだけど、あたしと違って我慢強い。
「この国際会議編の総評。まだ終わっちゃいないけどさ。
今回の事件が始まってからなんにもいいことなんてありゃしないじゃない」
「そうですね。争いばかりが続いていて里沙子さんの身に何か起きないか心配になります」
「弾代ばっかり出ていって何が変わったかっていうと、おさげ一本引きちぎられただけ。
一応クロノスハックがバージョンアップしたけど、あれの出番は即ちあたしの災難だから。
使わずに済むならその方が良いに決まってる」
「愚痴ったってしょうがねえだろ。始まっちまったなら終わらせるしかねえだろうが」
天然で寒さに強いルーベルは定位置でいつものように水を飲む。
「ルーベルまで他人事だと思って。
終わらせるつっても敵の居場所もわかんないのにどうしろってのよ。
現状ここで向こうからお越しくださるのを待つしかないのよ?
あたしもうあいつらの顔見るの嫌なんだけど」
「なっとらーん!」
冷え込むダイニングでルーベルとエレオに愚痴っていると、めっきり出番の少なくなったエリカが
2階からふよふよと川に捨てられたペットボトルのように漂ってきた。
「大声出さないで。寒さと苦労で心が弱ってるから。あんたに構ってる余裕もないから」
「戦の最中にありながら何という体たらくであるか!
里沙子殿も一家の大黒柱であれば、刺客の一人や二人に泣き言など言わず、技を磨き己を磨き、
敵将の首を取るほどの気概を見せるべきであろう!」
「あんたいつからそんな熱血キャラになったのよ。
近くにいるだけでめまいがしそうだから元に戻しなさいな」
「ええい、言い訳無用!今から拙者と共に特訓をするのじゃ!表で木刀の素振り一千回!」
「あ、そっか。ずっと出番なかったからどんなキャラだったか忘れられたのね。
とにかく、やりたきゃ一人でやってなさい。あたしはここから一歩も動く気はない」
「なにをー!そのたるんだ性根を拙者が叩き直してくれよう!」
「ほー。どうやって」
「拙者には百人殺狂乱首切丸という妖刀があることを忘れたかー!
即ち、現世の肉体に折檻することも可能!さあ、里沙子殿。覚悟を決めてそこに直るがよい!」
「なんとか丸のフルネーム、久しぶりに聞いたわ。
使い捨てられた設定ほど哀れなものはないわね。
で、あんたはあたしの部屋に置いてある首切丸であたしをどうするって?」
「無論、今から持ってきて……あ」
うん。幽霊のエリカでも持てる首切丸は実体があるからあたしを叩くこともできるんだけど、
実体があるゆえにドアをすり抜けられない。私室以外での保管も禁じてある。
「お馬鹿。寒いんだからアホなやり取りで体力使わせないでよ」
「ぐぬぬぬ……」
「でも、わたくしも最近の里沙子さんはだらけすぎだと思います」
思わぬところから矢が飛んできた。
キッチンで皿を洗っているジョゼットがスポンジを動かす手を止めずに、
あたしに文句をぶつけてきた。
「それ見たことか!ジョゼット殿も同じ思いである!」
「世間の人達はこの寒波の中働いているんですよ?
平日でも家でごろ寝できているだけマシだと思ってください」
「あんたは誰の味方なのよ!」
「今はエリカさんです」
「あんただってずっと家にいるじゃない!」
「こうして食器を洗っているのが見えませんか?
里沙子さんも家にいるなら家事のひとつも手伝ってくださいよ」
「お湯で洗えてるだけまだいいでしょうが!
世界設定的に、ここの連中は冷たい井戸水で水仕事してるってのに!
あんたは恵まれてるほうなの。オーケー!?」
「だあ、うっせえ!なんでこの家の連中は静かに朝を過ごせねえんだよ!」
「あんただって原因のひとつでしょうが!」
「皆さん、どうか落ち着いてください!
ジョゼットさん、わたしも手伝いますから半分貸してください」
「いえ、そんな……」
「ほらほらどうすんだ?次期法王に皿洗いなんかさせていいのか?」
「呑気に水ばかり飲んでるあんたも同罪よ!」
イライラしてきた。これ以上騒ぐようなら殺虫スプレーとライターで火炎放射器を作って
まとめて追い払おうと思った時、再び2階の住人が階段を下りてきた。
静かなる女、その名はカシオピイア。何故か彼女が来た瞬間、うるさい連中が騒ぎをやめた。
「……お姉ちゃん。はい」
カシオピイアが必要最低限の言葉を添えてあたしに例の音叉を差し出す。
う~ん、玄関ノックほどではないにしろ、これにもあんまり良い思い出はないんだけど。
まぁ、終わりの見えない言い争いを続けるよりはまだいいわね。さっそく指で軽く弾く。
「もしもーし、どちらさん?」
『里沙子嬢、我輩である』
「皇帝陛下!?」
あ、別にいつ連絡が来てもおかしくない状況なんだけど、
バカやってる中での意外な着信だったからつい驚いてしまったわ。
時を少し遡り、サラマンダラス要塞。
なにも要塞とてスペード・フォーミュラへの対策を
里沙子一人に任せきりにしていたわけではない。
ここ、要塞本館の東側にある通信保安課では、特殊部隊アクシスによる
不審な魔導通信の監視が昼夜を問わず行われている。
地球で言うところのサイバー攻撃やスパイ行為に対抗するために存在する機関だ。
無数に並ぶデスクにはタイプライターのような入力装置が備えられており、
上部に幻影魔法のホログラフで形成された、
パソコンのモニターに当たる情報表示版が浮かび上がる。
隊員達はそれぞれの目的で入力装置のキーを叩きながら出力結果を観察。
必要に応じて上層部に報告し、報告を受けた本部が“異常”と判断した場合、
多少強行的な手段で“正常”に戻すという活動が一般人には知られることなく行われている。
現状視察に訪れた皇帝は、隊員のひとりに声をかけた。
「タンゴ。ブランストーム方面への国外通信に関して異常は?」
「今の所、認可外の周波数による双方向通信は認められません」
「わかった。引き続き監視を頼む」
「了解」
「ワルツ。貴官の担当は国内エリアの魔導通信回路であったが、何か報告は?」
「はい。各領地の騎兵隊駐屯地を結ぶ専用回線の他、帝国所有の通信網に……あら?」
「どうした」
ワルツという隊員がスペースを空けて皇帝にホログラフの画面を見せる。
「こちらのログをご覧頂きたいのですが、一瞬不可解な場所に魔力の発信源が。
すぐに消えてしまったようなのですが……」
「うむ、なぜこんなところに。ここには駐屯地も観測所もないはずだが」
「拡大して内容を分析します」
彼女が再びキーを叩くと、帝国地図のある一点が拡大され、紫色の光点が現れた。
更に入力装置でコマンドを入力すると、光点が点滅を始め、圧縮された過去の情報を出力。
ノイズだらけの音声が流れる。
──……ろう。連絡……最後に……。経緯度……媒体に……通信……残す。
──次に……のは……閉会後……ことか。
──ど……なろうとな。……祈る。
「陛下、これは」
ワルツの言わんとすることを理解した皇帝はひとつ頷いた。
「ルビアと工作員の通話だ。発信源の詳細を」
「はっ。最寄りの駐屯地が捕捉した音探マナを測定しますと……出ました。
モンブール領とハッピーマイルズ領の境、東経128度59分、北緯19度77分です!」
「よし、ワルツ。この位置情報を各員に送信。
軍用回線担当はモンブール、ハッピーマイルズ両騎兵師団に指定座標の封鎖を通達。
これよりルビア工作員確保に動く。決して敵に気取られるな!」
“了解!”
重要機密を扱う通信連絡部所属の隊員達は、ホログラフ画面を見たまま返事をした。
つーわけで、あたしは音叉を握ったまま皇帝陛下の話を聞いてたの。
興味を示した周りのメンバーが緊迫した雰囲気にあたしの周りに集まって聞き耳を立て、
ハムスターの群れみたいな格好になってる。
みんな、あたしを暇人だの怠け者だのろくでなしだの言うけど、
どいつもこいつもどんぐりの背比べだと思う。
一瞬、越路吹雪の“ろくでなし”を歌おうかと思ったけど、お話がダレるからやめにした。
『各領地の騎兵隊が工作員の逃げ道を断ち、帝都の本隊がこれを一気に叩く。
貴女にも随分と苦労を掛けたが、もう心配することはない。
帝国が総力を上げてルビアの戦力を削ぎ落とす。
国家の責任追及には時間がかかるだろうが、もう君達が危ない橋を渡る必要はない』
「お待ち下さい!奴らの厄介な点は単なる火力の大きさではありません。
物理法則や概念を直接操る能力、
わたくしのクロノスハックに類する現象を放ってくる危険性なのです。
いかに陛下直属の兵と言えど、甚大な被害は免れないと……!」
『気遣い痛み入る。だが、それについては情報官より報告を受けている。
我輩とてそれに無為無策で挑むほど阿呆ではない。マリー情報官がいるなら伝えてほしい。
我らの心配は無用。引き続き斑目女史並びにエレオノーラ女史の護衛を務めよ』
その時、いつの間にか後ろにいたマリーがあたしから音叉を奪った。
「陛下、私はこちらに!工作員の捕縛には陛下も向かわれるのでしょうか?」
『先遣隊の戦果を考慮し、必要とあらば』
「でしたら、どうか私にも出動命令を!陛下の身辺警護も情報官の任務では!?」
『……却下する。特例に次ぐ特例で有耶無耶になっているが、本来貴官は
魔王との戦いの中で永続的にハッピーマイルズ領での労役に就くという刑罰を受けているのだ。
それを忘れてはいかぬ』
「お願いします!斑目氏の髪を見てください!
敵は時間を停止させる彼女の三つ編みを奪ったのです!」
いつものお気楽な雰囲気を引っ込めて、必死に音叉に向かって叫ぶマリー。
だけどその願いは聞き入れられない。
『却下する。冷静な情報官らしくもない。まだ我輩が直に剣を執ると決まったわけはないのだ。
貴官に浮足立ってもらっては困る』
「しかし……」
マリーの様子を見ていたあたしは、彼女の手からそっと音叉を抜き取った。
「あっ」
「斑目です。通話を代わりました。皇帝陛下直々のご連絡本当にありがとうございました。
お言葉に甘えてわたくし達はいつも通りの暮らしに戻ります。
マリーにはわたくしから言い聞かせておきますので」
『よろしく頼む』
「片田舎から帝国軍の勝利を祈っております」
『激励に感謝する。では我輩はこれで』
「失礼致します」
別れを告げると、ビリビリとした音叉の振動が止まった。慌ててマリーが抗議する。
「ちょっと!どうして勝手なことしたの!?私は、私には皇帝陛下を……」
「ストップ。陛下の言うことが聞けないの?
彼、言ってたじゃない。普通に仕事してるけど、本来あんたは刑に服してるの。
これ以上命令無視を重ねたら軍から放り出されるわよ。
もちろん、皇帝陛下だってそんなことしたくはないでしょうよ。
でも、偉いさんだからって何でもかんでも許されるわけじゃないの。他の部下の手前もある。
マリーにだけ甘い顔してたら面目も立たないし、組織としての規律が成り立たなくなる。
そんなのあんたの方がよくわかってるでしょう」
「でも……」
マリーは悔しそうに下ろした手を握る。だけどね。
「それに、あんた勘違いしてない?」
「勘違い?」
「あたしは“いつも通りの暮らし”に戻るって言っただけよ。
いくら面倒くさがりのあたしでも、
何度もカチコミかまされて大人しくしてるような女じゃないわ」
そして腰のピースメーカーを抜いて銃口を天井に向け、ニヤリと笑って見せた。
「お姉さま、もしかして……!」
「ねえ、エレオノーラ。ハッピーマイルズとモンブールの間に教会的なものってある?」
「確かマーカスさんとベネットさんが結婚式を挙げた公営教会がありますが、
本気なのですか!?」
「ウシシシ、そうだよな。お前ってそういう女だよ」
何が嬉しいのかルーベルが笑ってるけど、とにかくそういうこと。
善は急げよ。いや、悪は急げになる可能性が大。
「マリー以外でピクニックに行きたい人~?」
「私も行くぜ。いくらなんでも一人じゃ無理だろ」
「本当は暴れたいだけなんじゃないのー?まあいいわ、ルーベル決定」
「すみません。
わたしもお力になりたいのですが、立場上要塞の活動に関与する事ができなくて……」
「そっか、エレオが戦争なんてしちゃあ法王猊下がお冠よね。
ジョゼットも戦力としては頼りないし」
「わたくしは何も言ってないのにハブられました。確かに戦えないんですが……」
「お姉さま、そろそろ皆様に和歌魔法の存在を思い出して頂きたいと思っていますの」
「パルフェム決まり。でもなるべく後ろにいるのよ?」
「しょうがないわねえ。この私が力を貸してあげても……」
「シャボン玉じゃどうにもならない。ピーネは留守番」
「キー!何よその扱い!里沙子なんかもう知らない!」
「カシオピイアは?」
「ワタシは…もう招集がかかってる。本隊と合流しなきゃ」
「じゃあ、向こうで会えたらお互い頑張りましょう」
どんどんメンバーが決まっていく。冬の寒さに奪われていたやる気が蘇ってくるわ。
これもガンクレイジーのサガかしらねぇ。
「さっそく支度をしなくちゃね。あたしは一旦部屋に戻るから。ブツの準備をしないと」
「こりゃー!拙者を忘れるでない!
戦に赴くというのに
「はいはい、お約束ありがとう。首切丸も必要でしょ?一緒においでなさいな。
……じゃあ、10分後に聖堂に集合!」
出撃メンバーがそれぞれの形で力強く返事をした。
あたしもエリカを連れて急ぎ足で階段を駆け上がり、私室のドアを開くと、ガンロッカーを開放。
まさによりどりみどり。休載中もメンテは欠かしてなかったのよ。
「まずピースメーカーは標準装備として、ヴェクターSMGで派手に弾幕を張るでしょ?
それからCentury Arms M100でドカンと一発。こいつの出番は久しぶりね。
長距離戦になるかもしれないからドラグノフも持ってきましょう。エリカー、準備はどう?」
「うむ!白狐丸も首切丸も切れ味に変わりなし!いざ出陣じゃー!」
「待ちなさいって。今、弾薬類トートバッグに詰めてるから。……よし、こんなもんかしら。
行きましょう」
「武者震いが止まらんぞー!」
戦闘準備を整えると、あたしはエリカの位牌を引っ掴んでバッグにしまい、部屋を後にした。
聖堂にはもう全員集まってる。
「お待たせ。それじゃあ出発しましょう」
「予想通りというかなんというか、ハリネズミかよお前は。軍人でもそんなに銃持ってねえぞ。
この企画では人間殺すのNGってルール忘れんなよ?」
「わかってるって。今となっちゃなんでそんな縛り作ったのか思い出せないけど。
エレオ、お願い」
「はい。皆さん手を」
エレオが小さく白い手を差し出す。
あたしがそれを握ると次はルーベルがあたしの手を、という感じで円になる。
そしてエレオが“神の見えざる手”を詠唱。聖堂が柔らかなオレンジ色の光に満たされる。
いつもの浮遊感が強まっていく。
体が落ちながら昇っていくような不思議な感覚に身を任せていると、
何度かまばたきをした瞬間に景色が変わった。
うっすら雪化粧をした平原。そばには年季の入った小さな教会。
「ここに来るのは何年ぶりかしら」
「何年ってほどでもねえ。マーカスの坊主が結婚したのは…去年だったか?忘れた」
「まあいいわ。今は関係ない。さて、獲物の住処を目指しましょう」
彼らの居所は……探すまでもないわね。あの日感じた暗い殺気が西から流れてくる。
今度はこっちが一撃食らわせる番よ。
冷たい北風を受けながら、あたし達は雪に足跡を付けつつ歩を進めていった。
2階から駆け下りてきたフリーズの声で目が覚めた。パジャマ姿のまま酷く慌てている。
「ジ・エンド、大変よ!この場所がばれたわ。軍に囲まれてる!まだ距離はあるけど」
「デリートとマルチタスクは?離脱準備を」
「できない!外を見て」
窓から外を眺めると、鉄より黒い棒が何本も地面や壁に突き刺さっている。
こちらの射程外から弓で射られたのだろう。
手を握ってみる。使用不能ではないが、能力の出力が弱まっている。なるほど、これの仕業か。
「戦闘を開始する。俺が時間を稼ぐからお前も装備を整えろ。子供達は外に出すな」
「わかった。無理はしないで」
「無理をしなければ死ぬだけだ。そろそろ行くとしよう」
服のまま寝ていた俺はベッドから起き上がり、コートを羽織る。
寝室から出ると、リビングを横切り玄関のドアを開ける。
「……」
地平線に広がるように黒い軍服の軍隊が四方に展開している。激戦になるだろう。
俺はホルスターからキャバルリーを抜き、始めの一手について考えを巡らせた。