面倒くさがり女のうんざり異世界生活   作:焼き鳥タレ派

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あたしの場合、瓶ビール5本で記憶が飛ぶらしい。

脳内BGMを『野蛮人の魂』(ミスター・ノーボディより)にして仲間達と雪道を歩む。

うんうん、感じるわ。大地を埋め尽くすほどの軍隊がこの先にいる。

それと、変な連中の変な気配もね。まだ戦闘は始まってないみたい。

乗り遅れるわけにはいかないわ。後ろを歩く仲間を振り返り、声をかける。

 

「全員、戦闘準備は?」

 

「いつでも。M82のメンテもバッチリだ」

 

ルーベルが人間には片手撃ち不可の(いや撃てるかもしれないけどまともに当たらないだろう)

対物ライフルを構えてみせる。

 

「綺麗な雪景色ですわ。しばらくぶりに自信作ができそうです」

 

クリスマスにプレゼントした新しい帯でおめかししたパルフェムも、

歩きながら新作に思いを巡らす。

 

「拙者の二刀流でいかなる敵も斬り伏せてみせようぞ!」

 

「エリカはあんまりあたしから離れられないんだから無理するんじゃないわよ?

あ、多分銃撃戦になるから接近戦主体のあんたは出番ないかも」

 

「呪術の心得もあるでござる!見損なうでない!」

 

「はいはい、当てにしてるわよ?」

 

小さな村を通り抜けて、坂道を上る。

初めてジ・エンドと対決した時に感じた圧迫感が強まってきた。崖の上に寂れた一軒家が見える。

あら?既に先制攻撃を受けていたのか、

壁に真っ黒な金属の矢みたいなものがたくさん刺さってる。

その辺に転がっているものを見ると細長い六角柱だから本当に矢なのかどうかは知らない。

 

坂を上りきると、スペード・フォーミュラが潜伏していると思われる家がもう目と鼻の先。

足を止めて様子を見るけど、しんとしていて中からは物音ひとつしない。

遥か遠くからは叫ぶような慌てた声。帝国兵があたしを見つけてパニックになってるみたい。

いないはずの女が銃器をたんまり抱えて現れたんだから無理もないわね。

 

ポケットの音叉が震えてるけど、これは後で怒られる用だから今は居留守を使う。

あたしは人の家を訪ねる時の正しい作法で住人を呼び出す。

 

「おるかー!?」

 

返事はない。しばしの静寂。

だけど裏口から見知った顔がSAAキャバルリーモデルをぶら下げて歩いてきた。

 

「……サービスの悪い宅配屋みたいな真似はやめろ」

 

「こっちじゃこれがスタンダードなマナーなのよ」

 

「意味のない嘘もやめろ」

 

「ごめ、ふざけすぎたわね。

あんたらにばかり足を運ばせるのも悪いと思ってね、今日はこっちから来てみたってわけよ」

 

「そいつは助かるが、あいにく取り込み中でな」

 

ジ・エンドが振り返ると視線の先にはやっぱり帝国軍の大部隊。

困ったわねぇ。事と次第によっちゃ、彼らとも戦う羽目になるかも。

 

「なら、邪魔が入る前にちゃっちゃと始めましょうか。あたしとあんたらの意地を賭けてさ。

後ろの3人は気にしないでよ。他の仕事をしてもらうから。今度こそ二人で決着をつけましょう」

 

「いいだろう……だが、子供には手を出すな」

 

「わかってるって。でもあんたらの親玉については根掘り葉掘り聞くことになるわ。

あんまり手荒なことをさせないでくれると助かるって中の連中に伝えてくれない?」

 

「ミッションを放棄しろと?

無意味な降伏勧告だ。俺達のような人間が生きていくには勝ち続けるしかない」

 

「やっぱだめかー。それじゃあ、ジ・エンドはあたしの担当。他の3人は……突撃―!」

 

「おう!」「ごめんあそばせ!」「いざ参る!」

 

あたしの号令でルーベル達が一軒家に突入。

追いかけようとしたジ・エンドにあたしのホルスターからピースメーカーを抜いて突きつける。

 

「くっ…!」

 

「ちょっと待った。あんたの相手はこのあたし。

お互い銃をホルスターに納めて仕切り直ししましょう。心配しないの。

これでもあたしら野盗も殺したことないのよ。子供なんてもっと殺さない。

絶対大丈夫だから。信用してよ」

 

お互い黙って自分のSAAを一旦しまう。帝国軍の攻撃が始まる前にケリをつけなきゃね。

見つめ合っていると、家の中から爆音のような銃声が窓ガラスを震わせて轟いた。

 

 

 

 

 

その時、突入したルーベル達3人はスペード・フォーミュラ構成員の捜索に当たっていた。

いささか乱暴な方法で。

ルーベルはバレットM82で柱という柱に12.7mm弾を叩き込む。

古くなっているとは言え硬い木材が弾丸に粉砕され木くずに変わっていく。

命中するたび家屋に振動が加わり天井から埃が降ってくる。

 

「見た目より中は広いが探すまでもねえ。家が崩れそうになったら向こうの方から出てくる!」

 

「お姉さまみたいなことはおやめになって!

パルフェムが和歌魔法で探知しますから少々お待ちを!」

 

「うむむ……本陣に乗り込んだはいいが、どうにも調子が出ないのじゃ」

 

首切丸を手にしたまま、エリカはただその場でふらふら浮かぶ。

 

「さっきまでの元気はどうなさったのです!?あ、一句できましたわ!

……薄氷(うすごおり) 足元泳ぐ 氷下魚(こまい)かな」

 

パルフェムは薄氷の下で泳ぐ魚を眺めるように敵の動きを探る和歌を詠む。

そして扇子を広げ、扇面を横にするとフリーズ達の姿が一瞬浮かび上がった。

だが、ほんの数秒ですぐに消えてしまう。

 

「あらら?どうしたんでしょうか。そこそこの出来だと思ったのですが……」

 

「私に任せとけ!もう一本ふっ飛ばせば家が自分の重さに耐えきれなくなる!」

 

また12.7mm弾が年季の入った柱を爆弾のように粉砕する。

 

「ですから!パルフェム達まで下敷きになるからやめてくださいまし!」

 

──そう。やめてちょうだい。あなた達の相手は、私がする。

 

その声に目を向けると、2階からスーツ姿をしたブロンドの女性が

ルーベル達に警戒しつつゆっくりと階段を下りてきた。

 

「子供達が、怖がってる。追い詰められたら、何をするかわからない」

 

「だったら早えとこ降参してくれるとお互い楽なんだが」

 

「できない相談ね。私達に退路はない。あなた達には、消えてもらう……!」

 

フリーズがカッと目を見開くと、周囲の空間に薄いブルーの色が着き、

ルーベル達の体が重くなったように動作が制限される。

 

「うおっ、なんだこりゃ!」

 

「なんだか…着物がすごく重く感じますわ」

 

「拙者は始めから体がだるいというか重いというか……」

 

「そう……やっぱり、だめなのね」

 

もがく3人を見てどこか悲しそうに呟くと、フリーズはダガーを抜いてルーベルに歩み寄る。

 

「くそ!」

 

危険を感じたルーベルもじっとしているわけではなく、

急に重量を増したバレットM82の銃口を向けて引き金を引いた。

愛用の対物ライフルはドラゴンの吐息のような発射炎と共に、

秒速853mのスピードに加速された大型弾頭を発射。

弱体化されたフリーズの固着空間を突き進む。

大幅に弾速は落ちたものの、どうにか目で追うのがやっと速度で食らいつく凶暴な

12.7mm弾の反撃を受け、フリーズは回避はできたが思わず体勢を崩す。

 

「きゃっ!」

 

「ルーベル殿~。彼奴は実力を出せておらんでござる。

家の周りにある妙なものから霊力を吸い取られておる。

拙者も先程から体力を奪われてろくに動けぬ有様……」

 

「パルフェムの和歌魔法がかき消されたのもそれが原因でしたのね」

 

「……その通りよ。本来なら周囲の空間を完全に停止させることができるのだけど」

 

立ち上がりながらフリーズは再び攻撃の構えをとる。

 

「家の周りが散らかってると思ったら、そういうことだったのかよ。

パルフェム、エリカ、下がってろ。こいつは私の相手だ」

 

「すみません。何か役に立つ句をもう一つ考えてみますので……」

 

「何たる無念!首切丸がありながらろくに戦うこともできぬとは!」

 

二人が後退したことを確認すると、ルーベルはM82を置きフリーズと相対した。

代わりに片方だけのボクシンググローブをはめる。

 

「……何をしているの?」

 

「んー、まともにぶん殴ったらお前死んじまうだろ。これでも力自慢で通ってる」

 

「この空間で私をまともに殴れるとでも?

効果は減少しているけど、私はここを自由に動ける。あなたはそうじゃない」

 

指先でダガーをくるくると回しながら言葉通りにルーベルの周りを歩いてみせる。

一方彼女はフリーズを視界から外さず、じっと攻撃の機会を伺う。

 

「確かに砂に埋められてるみたいに体が重いや。どうしたもんかなぁ」

 

「……悪いけれど、残った2人に何かされる前に、あなたを始末させてもらう」

 

「だとよ。パルフェム、なんとかならねえか?」

 

「わたくしの、力及ばず、もうだめだ」

 

フリーズが立ち止まり、ダガーを構える。

ルーベルは彼女を見据えて来る当てのない好機の到来を待つ。

その場を冷たい緊張感が支配し、いつ最期の時が訪れてもおかしくない。

 

「はっ!」

 

そして女が地を蹴り両手で握った刃物を突き出す。

次の瞬間、フリーズのダガーがルーベルの胸を目掛けて空を切り、深々と突き刺さった。

……かと思われた。

 

──うるう年 枯木集いて 友救い

 

一句詠まれると同時に、床に散乱した大量の木片がフリーズの右腕に張り付き攻撃を封じた。

思いがけない現象に驚愕し、彼女自身も思わず手を止めてしまう。

 

「えっ!?」

 

「オラァ!」

 

効果は一瞬。しかしルーベルにとって接近した敵の腕を掴み身体を引き寄せ、

全力を込め腹を殴るには十分過ぎるチャンスだった。

 

「かはっ…あ……」

 

固着空間を強引に振り切ったルーベルの拳がフリーズの腹に食い込み、

彼女は膝から崩れ落ち、気を失って床に倒れた。

同時に彼女の能力も解除され、皆の行動に自由が戻った。

全員人心地つき、フリーズの周りに集まる。

 

「サンキュー、パルフェム。おかげで痛い思いせずに一撃ぶちかませたぜ」

 

「ふふ、どういたしまして。ちゃんと伝わってよかったですわ」

 

「お前が五七五で返事しただろ。なんか一句浮かんだんだなってわかった。

ナイフじゃ私は死なないから、最悪身体を刺させて手を掴むことも考えたんだが、

オートマトンでも痛いもんは痛いからな」

 

「しかし拙者はいいとこなしでござった。とほほでござる」

 

「変な棒っきれのせいで力が出なかったんだろ?気にすんなって」

 

フリーズを縛りながら会話をしているが、まだ油断はできないことを思い出す。

そう、まだ全員ではない。

 

「エリカ、ひょっとしたらまだ暴れるチャンスはあるかもな」

 

「むむ、そのようでござる!」

 

階段の上を見ると、いつの間にか小さな人影が3つ。双子の姉妹と銀髪の少女。

 

「フリーズから離れて……!」

 

銀髪の子は警戒心を隠そうともしないが、双子の方はただニコニコと笑っている。

もう一仕事頑張らなくちゃな。

得体の知れない敵を前に、ルーベルは傷つけずに相手を無力化する方法はないか、頭を悩ませる。

 

 

 

 

 

ちょっと待って!

まだ今回は終わりじゃないわよ。あたしの苦労話も聞いていってちょうだい。

ジ・エンドとドンパチ始めようとしたんだけど、その下準備にまず手を取られる。

いつものように“コインが落ちたら銃を抜け”方式で勝負しようとしたんだけど、

彼が帝国軍の方へ手をかざしたまま相手をしてくれない。

 

「なにやってんの?」

 

「……無粋な輩を帰らせようとしているのだが、上手く行かなくてな」

 

「具体的には?」

 

「彼らの“作戦行動を終わらせ”て、立ち去るように働きかけているのだが、

効果が一部にしか及んでいないようだ」

 

ああ、それで。なんかさっきから帝国軍の方がやかましいと思ったら、

帰ろうとしている部隊とそれを止めようとしている部隊が分かれて揉み合いになってる。

 

「今のうちにその辺お掃除しましょうか?こんなことならジョゼット連れてくるんだったわ。

全部片付けさせるのに」

 

「正気を保っている兵が押し寄せてくる方が早い」

 

後で将軍に聞いたんだけど、この変な棒は吸魔石と同じ素材で出来てて、

暴走魔女のアジトに突入する前に撃ち込むものなんだってさ。

あたし達への嫌がらせとしか思えない後付け設定のせいで難儀させられる。

 

「なら、そうなる前にさっさと勝負しない?

あなたも6発撃ち尽くすようなダラダラした戦いをする気はないんでしょう」

 

「ああ……そうだな。今は、太陽がもうすぐ真上か。正午になると村の鐘が鳴る。

鐘の合図で銃を抜け」

 

「いいわよ。この際、国際会議だのなんだのは抜きにしましょう。

二人のガンマンの由緒正しき決闘。あたしは女だけどさ」

 

両者、ホルスターに手をかざす。風にちらほらと霰が混じる。

タンブルウィードに砂埃も良いけれど、雪原での果し合いも乙なものだわ。

確かマカロニ・ウェスタンじゃないけど“ペイルライダー”の舞台も雪山だったわね。

 

鐘の音はまだ。もうすぐだとは思ったんだけど、10分以上経ったんじゃないかと思う。

銃の合図を待つ時間はいつも永遠のように長く感じる。やっぱり関西人はせっかちなのかしら。

だとしたら兵庫県民は銃を使った決闘には向かないわねと、馬鹿みたいなことを考えた時。

 

カーン、カ…ドゴオオオン!!

 

鐘かと思ったらものすごい爆音が轟き大地が揺れて、二人共思わずその場でよろける。

 

「ちょっと!あの村の鐘って毎日こんなに派手なの!?」

 

「いや、違う!これは……!」

 

彼が振り向くと、家の壁に大きな穴が空いて、ルーベル達が外に放り出されていた。

怪我はしてないみたいだけど、みんなも状況が飲み込めてないみたい。

 

「ゲホゲホ……なんなんだよ、この、化け物は!」

 

「ルーベル!?パルフェム!どうしたの!」

 

「お姉さま、逃げてくださいまし……」

 

「待って、今行く!」

 

「マルチタスクか!俺が、止めなくては!」

 

あたしもジ・エンドも、決闘をほっぽりだして崩れかかった一軒家へ駆け出す。

まず、外傷はないけど身体を打った様子のパルフェムの背中を抱き起こした。

ハンカチで顔に付いた砂を軽く払い落とす。

 

「大丈夫?しっかりして!」

 

「うう…お姉さま。ここから離れて、すぐに」

 

「ええ!なんかよく知らないけど、ルーベルも立てるわね?」

 

「私は大丈夫だ、早く逃げろ……」

 

ふらつきながらも自分で立ち上がっていたルーベル。あと、エリカは?

あの娘はちょっとやそっとじゃ死なないっていうかもう死んでるから大丈夫っていう、

ややこしいポジションだから後回しになってたけど。

 

“おのれ怪物めー!今日こそ百人殺狂乱首切丸の錆にしてくれよう!”

 

「あのお馬鹿!こらー!深追いはやめなさい!」

 

壁に穴が、というより壁自体がなくなってた家に飛び込むと、

あたしはそこで信じがたいものを見た。

腐敗した豚に似た死骸が巨大化し、形の崩れた緑色の翼を生やしたドラゴン。

そいつがあたしを見ると、ボエー!!と一鳴きした。大音声と臭い息に思わず顔をしかめる。

 

エリカがそいつに首切丸で何度も斬りつけてるけど、

腐った肉に沈み込むだけで効いている様子が全くない。

 

「エリカ、撤退よ!あたしらは化け物退治に来たわけじゃないの!」

 

「しかし此奴を放っておいては!」

 

「言うこと聞かないとあんたの位牌、豚に食わせるわよ!?」

 

「うむむ、無念なり!うらめしや~!」

 

全員ダッシュでその場から逃げるけど、ジ・エンドがドラゴンゾンビに向かってなんか叫んでる。

少し走るスピードを緩めて盗み聞き。

 

“マルチタスク、やめるんだ。そいつは危険過ぎる。デリート、お前がやらせたのか?”

 

“だってフリーズが、先生がやられたんだもん!”

 

“今すぐやめさせろ。俺たちの任務を忘れるな”

 

“いや!軍に捕まったら、先生もみんなも殺される!スラッシュみたいに!”

 

よく見たら、ドラゴンゾンビに子供が3人乗ってる。臭くないのかしら。

……あ、あの双子は前に見たことあるわ。確か、フリーズと戦った時ね。

子供が関わってるのか~。放っとけないわね、いろんな意味で。

 

「ルーベル、みんなを連れてエレオノーラのところに戻って」

 

「なんだと?お前はどうすんだよ!」

 

「いいから!パルフェムをお願い!デカブツをなんとかしなきゃ!」

 

「なんでお前が!スペード・フォーミュラとか軍に任せればいいだろう!?」

 

「その帝国軍のどこかにカシオピイアがいるの忘れた?さっさと殺さないと奴の餌食になる!」

 

「しまった、そうか……!里沙子、死ぬんじゃねえぞ!」

 

「わかってるって。更新頻度が落ちてもこの企画をやめるつもりはないの!」

 

そこであたしだけUターン。まだドラゴンゾンビをなだめようとしているジ・エンドに合流した。

今の所、奴は行動を停止してるけど、いつまた暴れだすかわからない。

今のうちに戦闘準備しなきゃ。

 

「あいつに関する情報プリーズ」

 

「斑目里沙子。どうしてお前が」

 

「あれに生きてられると割と迷惑なの。ほら情報」

 

「……狂腐王ヘルゼラトプス。マルチタスクが召喚した出どころのわからない生物だ。

生きていると言えるかはわからんが」

 

思わず苦笑しつつ、背中のフックからレミントンM870を抜き、

トートバッグから12ゲージ弾の箱を取り出す。

 

「はは、なんつーか、ウチらしいネーミングだわ。ほい、これ」

 

そしてショットガンと弾をジ・エンドに渡した。

驚いているのか、感情を表に出さない彼が少し黙ってから受け取る。

 

「何故だ」

 

「Single Action Armyでゾンビの化け物相手にするのはキツいでしょ?

悲しいけどピースメーカーは人間が限界。貸したげる」

 

「……済まない」

 

「先生だかなんだか知らないけど、全部終わったらちゃんと尻ひっぱたいてお仕置きしとくのよ。

マルチタスクだっけ?あの娘達召喚士だったのね」

 

「違う。彼女達の能力は……その名の通り並行作業(マルチタスク)

二人の意思が一致しなければ発動しない特殊なものだ。

この世界に居る全てのアース人の能力を共有して同時に使うことができる」

 

「ワオ、それじゃあミドルファンタジアのどっかに召喚士になった地球人がいるわけね」

 

「そういうことだ。……それで、お前はどうする」

 

装備のことを言ってるのかしら。だったらあたしは……

 

「I have this!(こいつがある!)」

 

ショルダーホルスターからCentury Arms Model 100を抜いて構えた。

マグナムじゃないけど、ヤバい時ほど心にゆとりを大事にね。

誰のモノマネかわかった人には20ポイントあげる。正解は次回発表するわ。

 

無駄口を叩いている間に状況も動き始めた。

ジ・エンドが能力を解いて時間が経過し、落ち着きを取り戻した帝国軍がついに行動を開始。

軍馬の隊列が怒涛のように押し寄せてくる。

それに気づいた狂腐王ヘルゼラトプスが彼らに向かって豚のような咆哮で威嚇。

頭が痛くなるようなややこしい三つ巴の戦い。

想定外を上回る最悪さで国際会議編が幕を閉じようとしてる。生きて帰れたらの話だけどね!

 

 


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