♪ニューオーリンズに女郎屋がある
人呼んで
たくさんの女が身をくずし
そうさ あたしも そのひとりさ
「朝日楼」作詞作曲、高田渡 原曲、アメリカ民謡。
フォークソング界の仙人とも言える彼が今の日本を見たらどんな歌を歌うのかしらね。
彼だけじゃない。昭和の宝がどんどん世を去っていく寂しさに思いを馳せる。
あたしは教会の建つ小高い丘で草むらに腰掛けながら、
おセンチな気分に浸りつつ彼の名曲を口ずさんでいた。
……誤解しないでね。別に今の生活を悲観してるわけじゃないの。
ただ彼の歌が好きでなんとなく歌ってるだけよ。それとあと、後ろに居るやつに捧げるため。
「ちゃんと店長さんにまともな源氏名もらった?」
「お黙りなさい、斑目里沙子……!」
立ち上がって振り返ると、ぴっちりしたピンクのナース服を着た女があたしを睨んでる。
使い捨てキャラになったかと思われた彼女の復活に冗談抜きで感動を覚えた。
素材としては存在してるものの、
奴の技量不足で物語に再登場できない哀れな住人がたくさんいる中これほど嬉しいことはないわ。ゆっくりと拍手を繰り返しながら彼女に歩み寄る。
「おめでとう。再登場おめでとう。マヂでおめでとう。何年ぶりになるかしら」
「約1年半!ようやくあなたへの復讐のチャンスが巡ってきましたのよ!
さあ、斑目里沙子。ここで会ったが百年目。
四大死姫が一角、魔界医師ローナを侮辱した罪、その命で贖ってもらいます!」
ローナがメスであたしを指しながら宣戦布告をするけど、
バトルに入る前に久々の出番で舞い上がってる感じの彼女には色々準備が必要ね。
「だからそのユニット名は評判悪いんだって。リーブラもカゲリヒメも嫌がってるでしょう?
あと、あんたのこと忘れたかそもそも知らない人のために
改めて自己紹介したほうがいいんじゃないかしら」
「……オホン、そもそも四大死姫とは私達4柱の上位魔族が結束した神すら慄く恐怖の象徴!
そして私は生命と医学を司る魔界医師ローナ。
私に治せない病はなく、あらゆる命を殺すも生かすも思いのまま。
長きに渡り敬愛する魔王様のお世話をしてきたのだけど、斑目里沙子!
彼はあなたの卑劣な策略で命を落とすことになってしまった。
このローナの存在理由、何より魔王様の命を奪ったあなたを決して許しはしない!」
「まだあるんじゃない?
あんたのせいでトイレをリフォームする羽目になったんだけど、その理由。
まぁ、あたしらも使うから別にいいんだけどね」
悪いけどその経緯については汚い話になるからここでは割愛させてもらうわ。
気になる人はエピソード“朝っぱらからウィスキーで深酒すると~”を読んでちょうだい。
2回も書きたくはないの。
「くっ…!それはあなたが卑怯にも私の……ああ、口にするのもはばかられます!
いいから銃を抜きなさい!
今度こそ四大死姫の恐ろしさをその魂に刻み込んで差し上げましょう!」
「それってクロノスハックの対策がちゃんとできたってことでいいのかしら。
さすがになんにもなしで再挑戦じゃ前回と結果は同じだし読者も納得しないわ」
「カゲリヒメに聞きました!あなたが時間を止めなければ戦えない卑怯者だということを!
フフ…それに、ようやくドクトルが戦闘用の薬品を作ってくれたので準備は万端。
前回は不覚を取りましたが、二度同じ手が通用するとは思わないことです」
ローナが腕や腰に着けたホルスターに差した様々な色の薬品が入ったシリンジを見せつけるように
身体をしならせる。
「いや、時間止めるのってしんどいし十分頑張ってると思うんだけどねぇ。
それを言ったら誰かに薬もらったあんたの方が卑怯だと思うがどうか」
「減らず口もそこまでです!来ないのならばこちらから!」
言うやいなや、医療器具を収めたベルトのポーチからメスを抜き取り、
空間を切除するように鋭く投げてきた。
小さな風切り音を立てながら飛んでくるけど、狙いが甘い。首をひねって軽く避ける。
クロノスハックなしでも余裕だったけど、これは牽制だと思ったほうがいいわね。
「この程度で死んでもらっては困るというもの。でもこれは避けられるかしら!?」
思った通り、ローナがホルスターから赤色のシリンジを抜き、
回避行動の直後で隙が生まれたあたしにダーツのように投擲。
人間離れした指のバネで放たれた注射器が銃弾のような速さで迫る。
ふぅん、伊達に上位魔族を名乗ってるわけじゃなさそう!
体勢を立て直してる時間がない。次はクロノスハックを発動。この世界はあたしのもの。
またおケツに刺してやろうかと、止まった世界の中で注射器に手を伸ばそうとして……!?
やめた。不気味な予感がしたあたしは大きく右に走って距離を取る。
直後、シリンジが爆発して白煙を上げた。
クロノスハックを解除して様子を見ると、白煙が僅かに粘性を持って大地に広がった。
やがてそれは意思を持つように一体の巨大なスライムになって辺りを這いずる。
触ったらヤバいのは間違いなさそう。とにかくピースメーカーを抜いて応戦する。
「へえ、やるじゃない!
どんなタネかは知らないけど、停止時間の中で動ける生物兵器?でいいのかしら」
「驚くようなことではなくてよ。これが上位魔族本来の力。
リーブラやカゲリヒメと運良くお友達になったと思って油断しているようだけど、
彼女達の気まぐれがいつまでも続くとは思わない方が身のためですよ」
「あいにくあたしに友達はいない!」
あ、自分で叫んどいてなんだか悲しくなった。とにかくピースメーカーの銃口をローナに向ける。
スライムも気になるけどこいつをシメてなんとかさせるしかないわね。だけど彼女は余裕の表情。
左手に桃色の魔力を集めながら何やらやらかしそうな予感。
「フフ、銃など私に効きはしませんが、これでも撃てるというならご自由にどうぞ。
……死にゆく亡者の群れに告ぐ。自壊の果て行き着きたるは虚しき輪廻。
くたばりあそばせ、死罪召喚!」
詠唱と共にローナがホルスターを掴み思い切り引っ張ると、
異空間から長さ数mはあるベルトリンクが現れ彼女の身体に巻き付く。
カラフルなシリンジが長い弾帯に連なってて下手に割るとろくでもないことになりそう。
トリガーガードから指を抜く。
「賢明な判断、大変結構。一つでも割れたら
半径10km内がVXガス、硫化水素、青酸ガス、その他諸々に包まれ死の世界と化す。
屋敷にいるお仲間ものたうち回って虫のように死んでいくことでしょうね。
さあ、あなたに何ができましょう。斑目里沙子!」
ちょっとマズい状況だわね。
得意げに語るローナ、一発目で現れたスライム、教会の順に視線を移す。
スライムが教会に向かってズルズルと流れていく。
「あたしとしては、あのバブルスライムみたいなやつの正体が気になるかも」
「あれこそドクトルの最高傑作、憎食ワームMk2。
触れるもの全てを溶解させながら好物の聖属性を求めて時空を超えてどこまでも追い続ける。
うふふ、やはり聖女エレオノーラも教会の中にいるようですね。
お得意のクロノスハックで止められるかしら?」
「まるでMk1があったみたいね。見たことないんだけど」
「それは以前あなたの妨害に遭って出しそこねたのです!
……まあ、結果としてより強化されたMk2の誕生に至ったわけですが。
聖女は憎食ワームに任せるとして、
そろそろあなたには苦しみぬいて死んでいただくとしましょうか」
「自分で作ったわけでもないのによく恥ずかしげもなく自慢できるもんだわ。
絶対あんた4人の中で一番弱いでしょう?」
「余裕ぶっていられるのも今のうちでしてよ!
選ばせてあげましょう。あなたのために様々な処置を用意しておりますの。
フッ化水素酸の霧でじわじわと肉体を食い破られるか、
1000倍に濃縮したカエンタケのエキスで焼けるような激痛に絶叫するか。
そうそう、前回出番がなかった濃縮呪素を直接投与するのも面白そうですわね」
「……へえ、面白いじゃん。一応あんたも勉強してるんだ。試しに何か一つ使ってみなさいな」
「クロノスハックで逃げられるとでも?
見くびらないでほしいものですわ。今度の薬は私とドクトルの共同開発。
毒性の調合を私が、時空跳躍の性質をドクトルが付与し、
クロノスハックを超えた完全無欠の化学兵器!」
単に名前を略してるのか、それともまたリサーチ不足なのか。
ちょっと危ない賭けだけどやるしかないわね。憎食ワームMk2が玄関先に辿り着こうとしている。
「ああそう。あんたの努力を讃えて1発だけ食らってやるわ。
自慢の注射器、あたしにちょうだいな」
視界を広げてローナと憎食ワーム両方に警戒しつつミニッツリピーターを握りしめた。
彼女が嘲笑うような笑みを浮かべてベルトリンクから緑色のシリンジを一本抜く。
「よくってよ。では手始めに、私の受けた屈辱を倍にして返すことにしましょう。
本来は悪魔用、人間に使えば一ヶ月は暴れるような腹痛が止まらない便秘薬。
……何をするかはお分かりですね?」
シリンジの先端を指先でトントンと叩き、攻撃準備を整える。
あのこと根に持ってたのね。無理もないけど。
「さっさとして」
「では遠慮なく!」
ローナが再びシリンジを指先から発射。
その瞬間、あたしは金時計の竜頭を押し、持てる魔力を一気に全開放。
──クロノスハック・新世界!
通常のクロノスハックをスキップして強引に世界を二重に閉じる。
目に映るもの全てがモノクロになり、正確なコントロールで放たれたシリンジは目の前で停止。
よかった。あいつの情報戦の弱さに救われたあたしは、
ローナを無視して憎食ワームを横目に教会に飛び込む。確かしまっておいたアレがある。
聖堂を抜けダイニングに飛び込み、冷温庫を開けて手を突っ込んだ。
とっくに新世界の効果は切れてたけど、
目的のブツを手に入れたあたしはホッとして2階に駆け上がり丘を見下ろせる私室の窓を開ける。
“里沙子は!?あの女はどこに行きましたの!”
あたしを見失ってキョロキョロするローナが見える。
彼女はどうでもいいとして、憎食ワームがそろそろ教会に接触しそう。対処を急がなきゃ。
麻袋に入ったそれを取り出して窓の外に放り投げ、
空中に舞ったところをピースメーカーで撃ち抜いた。同時にあたしは床に伏せる。
中心を撃ち抜かれて一瞬安定を失ったコスモエレメント・氷雪が
怒ったように絶対零度の猛烈な冷気を噴き出し、周囲の一切合切を氷漬けにした。
氷の嵐が収まるまで待ってたけど、
凍えるような吹雪であたしの耳まで凍って落ちるかと思ったわ。
コスモエレメントの暴走が終わると、あたしはゆっくり立ち上がって窓の外を見る。
さすがエレオノーラが無限に近いエネルギーと言ってただけのことはあるわね。
なかなか楽しい光景が広がってるわ。
手を伸ばすと、コスモエレメント・氷雪がふよふよと漂いながらあたしの元へ戻ってきた。
「どうどう。悪かった悪かった。よくやってくれたわ」
まだ不満な様子でぴょんぴょん跳ねるコスモエレメントを麻袋にしまう。
もしかしたらこいつ、自分の意思があるのかしら。ああ、しもやけ起こしそう。
とにかく、当面の危機を回避したあたしは歌を口にしながら外に戻る。
♪アイスクリームよ
あたしの恋人よ
アイスクリームよ
あたしの恋人よ
あんまりながく ほっておくと
お行儀がわるくなる
「アイスクリーム」作詞、衣巻省二 作曲、高田渡。
一瞬にして雪原に変わった丘に出ると、玄関前に迫っていた気色悪い軟体生物は
カチンコチンに凍りついてた。こいつはもうどうでもいい。
すれ違いざまに.45LC弾を撃ち込むと、砕け散って生命活動を完全に停止した。
用があるのはこいつの方。氷から出られなくなりアイスクリームになって動けなくなってる。
面白くなりそうね。
「おーい、生きてるかい?」
コツコツと氷塊を叩いてみると、中でローナが辛うじて動く唇で“たすけて”を繰り返してる。
このまま観察するのも悪くないけど芸がないわね。
あたしは一旦裏口に回って積み上げていた藁を一抱えして戻ってくると、
氷のそばに置いてライターで火を点けた。
藁は瞬く間に燃え上がり、ローナ入りの氷を溶かし始める。
とは言えこんだけ大きい氷が水になるまでは時間がかかる。
あたしはどっこいしょとその場に座り、キャンプファイヤーとシケ込んだ。
ときどきそこら辺の枯れ葉や枝を継ぎ足しながら15分くらい待ったかしらね。
氷の柱にビシッと亀裂が走って真っ二つに割れ、中から倒れ込むようにローナが出てきた。
「やあ元気ー?」
「あばばば…さぶい……」
「やっぱ今回もリサーチ不足だったかー。
残念。あたしのクロノスハック、バージョンアップしてたのよ」
「ま、まだ勝った気になるのは早くてよ……シリンジはまだまだ、あ」
「うん。それじゃ使い物にならないわよね」
確かに注射器はたくさんあるけど中身が凍ってちゃしょうがないわね。
あと、これはあたしも計算外だったんだけど追い打ちを掛ける出来事が。
ぐごごごごご……
歴史は繰り返す。地鳴りのような、そして獣の唸り声のような轟きが響く。
前回のローナを覚えている人なら音の正体はお分かりだと思う。
「お、おなかいたい……」
「3月に入ったけどまだまだ風は冷たいし、そんなミニスカートで出歩くからよ。
特に女性は身体の冷えに気をつけるべき」
「誰のせいだと……!ああっ、またなの!?四大死姫であるこの私が二度までも!」
「ほんで、どうすんの。お家に帰るか、まだケンカ続けるか」
「馬鹿を言わないで……今、精神集中を切らしたら、私は、もう……!」
「きちんとお願いできたらあんたが必要な設備を使わせてあげる」
「早く、トイレに、連れて行きなさい……」
「聞こえなーい」
「ト、トイレを、貸してください」
「う~ん、もう一声」
「お願いします、どうか、トイレを、使わせてください……!!」
「はい一名様ご案内~。覚えてるだろうけど奥行って右」
「立てない……」
「もう、世話が焼けるんだから」
顔面蒼白のローナに肩を貸してやりながら教会に戻る。
トイレはワクワクちびっこランドに近いから今回もあたしが監視として留まったんだけど、
本当に切羽詰まってたみたいで暴れる様子もなく個室に飛び込んだ。
「ちゃんと換気扇回すのよー?」
“うるさい!”
ピーネとパルフェムが部屋から覗き込んできたけど、
黙って両手でバッテンを作り鼻をつまんで見せると何も言わずに引っ込んだ。
実際には換気扇のおかげで臭いの問題はなかったけど、
お行儀がわるいってレベルじゃない音が遠慮なく外まで漏れ出てくる。
とてもじゃないけどお伝えできるものじゃないから
事が済むまであたしの歌を聴いてちょうだい。
♪北から南からいろんな人が
毎日家をはなれ夜汽車にゆられ
はるばると東京までくるという
田んぼからはい出 飯場を流れ
豊作を夢見て来たがドッコイ!
そうは問屋がおろさない
お役人が立ちふさがって言うことにゃ
わかってるだろが来年は勝負なんだよ…!?
「銭がなけりゃ」作詞作曲、高田渡。
サビに入ろうとしたところで例によってゲッソリしたローナが出てきた。
そしてフラフラになりながらも目を血走らせながらあたしの両肩を掴む。
「……これで、これで勝った気になるんじゃないわよ!?」
「わかった。わかったから次の出番まで毎日ヨーグルトを食べて腸を大切にしてあげなさいね」
「余計なお世話です!」
ローナが壁に左手をかざすと暗黒のゲートが開き、
おぼつかない足取りで中に入りどこかに帰っていった。多分リーブラ達がいるところだと思う。
「……今度会ったら腹巻きをプレゼントしましょう」
“終わったかー?”
ダイニングからルーベルの声。水飲みながら新聞読んでる。
「呑気に座ってないで手伝ってくれりゃいいでしょうが。一応エレオのピンチだったのよ?」
「あいつなら……まぁ、大丈夫だと思ってさ。案の定トイレ行きになっただろ」
「だけどさー」
「里沙子さん、わたしは大丈夫ですので。それより怪我などはされませんでしたか?」
逃げようともしなかったエレオが紅茶片手に心配してくれた。
「うん。ちょっと手がしもやけになったくらい」
コスモエレメントが入った麻袋を見ると、やっぱり生き物みたいに中でゴソゴソと動いてる。
「使い終わったら冷温庫に戻しといてくださいね~。冷凍したお肉が解けちゃうんで」
何事もなかったかのように夕飯の支度を続けるジョゼット。
「わかった。……夏まであんたとはお別れね。お休み」
夏場は便利だけど冬の間は出番がない。
かと言って外に置いといたらパクられるから冷温庫の冷却剤として利用してるのよね。
あたしは奇跡の触媒にしばしの別れを告げて元の場所に戻した。
次元の狭間
「うう……誰か、温かいものをください」
ほうほうの体でミドルファンタジアから帰ってきたローナは寒さに震えていた。
「ほいほい。沸かしたての蒸留水をどーぞ」
ドクトルからビーカーに入ったお湯を受け取ると、息で冷ましながらちびちびと飲む。
消耗しきっていた彼女だが、さっそく彼女は今回の戦いについて文句をつける。
「ドクトル、どういうことですの?里沙子のクロノスハックを無効化する憎食ワーム!
無効化どころか氷漬けにされて殺されました!しかも、その上、私まで巻き添えをくらって!」
「また敵にお手洗いを借りたの?ふふ」
わかっていてわざと聞くカゲリヒメ。少し口元が緩んでいる。
「それは!そうですが……なんというか、ちょっとした体調不良で。
あ、話は終わっていませんわドクトル!クロノスハックに負けた理由をご説明願います!」
「そりゃあ、ドクトルのせいにされても困るよ。チミの提供した情報が古かったんだ。
クロノスハックは進化を遂げて超高速移動から完全なる時間停止に変貌したんだからね。
あのワームでは対抗できまいよ」
「えっ、そうですの…?なら、それならそうと言ってくれれば!」
「ご自分の戦いなのですから情報収集は自己責任でなさるべきでしょう。
そして情報は常に最新のものを。人間でもそこのところは理解できているのですよ?」
「リーブラは一体誰の味方なのですか!上位魔族が人間風情に肩入れするおつもりで!?」
「私は誰に味方することもありません。
里沙子さんに会いに行くのも全ては知的好奇心を満たすため。
……あと、答えたくなければ答える必要はありませんが一応聞いておきます。
なぜ四つん這いになっているのですか?」
「どうせ理由なんかわかっている癖に、あなたという人は!」
「アハハ、また軟膏を作ってあげるから機嫌を直したまえー。ウハハハハ」
「だからローナは実戦向きじゃないんだって。もう諦めて新しい主人を探したら?」
「皆さん揃って言いたい放題……四大死姫が聞いて呆れます!」
「その変な名前はやめて!」
「勝手に私を妙なグループに編入しないでください」
「ドクトルも基本来る者拒まずだけど、これは、いらないや」
「魔族の頂点に立つ我々に相応しい旗印の一体何が不満なのでしょう。
なぜ私ばかりがこんな目に……」
手の中のビーカーは身体を温めてくれたが、彼女の心には隙間風が吹いていた。