面倒くさがり女のうんざり異世界生活   作:焼き鳥タレ派

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マジンガーZはスパロボでしか知らなかったから武装の多さに驚いたわ。

とりあえずシルヴィアをダイニングに通したあたしは彼女に向かい合うようテーブルに着き、

ルーベルが上座に来るような感じで陣取る。

……なんつーかね、この世界で日本のマナー云々言っても仕方ないけど、

やっぱりこの家のあたしの立場ってもんが失われつつある。

おっと、悲しみに浸ってる場合じゃないわ。さっき会ったばかりの歌姫をもてなさなきゃ。

 

「ねーえ、ジョゼット……ああ、あなた達は基本飲み食いしないのよね」

 

「はい」

 

シルヴィアがオートマトンだってことをすっかり忘れて、

ジョゼットに茶を入れさせるところだった。

 

「水くらいならどう?」

 

「いただきます」

 

水切りカゴからコップを取り、蛇口をひねって水を入れてシルヴィアに出した。

これくらいならあたしでもできる。できんのよ。

 

「はいよ」

 

「どうも」

 

とにかく3人に水やコーヒーが行き渡ってゆっくり話せるようにはなった。

でも、ルーベルが明らかにふてくされた様子で雰囲気はあんまりよろしくない。

頭をボリボリ掻きながら吐き捨てるように聞いた。

 

「で?わざわざこんなところに何しに来たんだよ」

 

「あなたに会いに来たの。いけなかった?」

 

「ここは一応あたしの家だからチャー研における精神病院扱いしないでほしい」

 

「別に。だが、言いたいことは街で言ったからもう話すことはないと思うがな。

それに、よくここがわかったな」

 

「駐在所で尋ねたら教えてくれた。

里沙子さんはこの国じゃ有名な人だから、彼女と一緒に住んでるあなたもすぐ」

 

あたしのツッコミというか訴えを無視して会話は続く。

このままじゃいけないから二人の間に自分の言葉をねじ込んだ。

 

「あら、あたしのこと知っててくれたのね。更新がスローペースなもんだから、

魔王編やら魔国編で色々活躍したってことが完全に過去の話として忘れ去られてるのよね。

恩知らずな連中よ、ホントに」

 

「私も、里沙子さんみたいに強くなりたいな。そう思ってたの。ふふ」

 

囁くような声を漏らす彼女の艷やかな笑みは、同性のあたしすらハッとさせる魅力を備えてる。

 

「……なんでそこまで変わりてえんだよ。お前にはお前の良さがある。

今日のサーカスだってお前が出た途端、大盛り上がりだったじゃねえか」

 

「知ってるくせに。私はみんなとは違う。歌が上手な小鳥さん。ただそれだけ。

昔から話していたのに、どうしてわかってくれないの?」

 

「違う!お前はオートマトン一綺麗で、誰にも負けない歌の才能があって、私と違って上品で、

村の誇りだった!」

 

「違わないわ!一芸に秀でてたって、生きていくには何の役にも立たない。

口には出さなくたって、みんなそう思ってたに決まってるもの!」

 

にわかに剣呑な流れになって、ちびっこランドからピーネとパルフェムが顔を覗かせたから

黙って戻るよう手で促す。ピーネがやっぱり言うことを聞かずにこっちに来ようとしたけど、

パルフェムが引っ張り込んでくれて助かった。

 

こうして精神年齢の差が如実に現れる度にあの娘には助けられてるわねぇ。

今度喫茶店でケーキでも奢ってあげましょう。

そうじゃなかった。なんとかしなきゃ。主人公として。

 

「まあまあ、二人共落ち着いてよ。子供達も驚いてるからさ」

 

「ごめんなさい」

 

「気にしないで。ここの連中タフだから。そうだルーベル。

聞くことはないって言ってるけど、彼女のこと、色々知りたかったんじゃないの?」

 

「……もういい」

 

「嘘つくんじゃないわよ。ねえシルヴィアさん。

あたし、ちょうどあなたが来るまでルーベルからシルヴィアさんの昔話を聞いてたの」

 

「え、ルーベルが?」

 

「里沙子!」

 

「黙って。このまま彼女を放ったらかしにしといていいの?

こうしてあんたを訪ねてきたのに、なんにも聞かないままサーカスに帰していいの?

嫌いな歌を続ける理由も聞かずにさ」

 

すると少し唇を噛み、ルーベルが若干ためらいがちに言葉を選んで語りだした。

 

「そうだよ。お前のことが気になってた。

私が急に出ていったせいで変わっちまったんじゃないかってな。悪かったと思ってる。

ここでの生活が楽しくて、お前も元気にやってるって勝手に思い込んで、

今まで一人ぼっちにして。……本当、すまなかった」

 

そしてコップの水を一気に煽る。シルヴィアが細い首を横に振って続けた。

 

「ルーベルのせいじゃないわ。これは私の願い。ずっとずっとこうなりたかった」

 

「サーカスの歌姫に、か?」

 

「言ってるじゃない。私はみんなのようになりたかった。

オートマトンらしく丈夫で、里沙子さんのように強く」

 

「待てよ、答えになってねえ。

サーカスじゃねえなら、結局お前は何になったって言うんだよ……?」

 

あたしも腑に落ちないわね。大人しく二人の話を聞いてるけど、何かが噛み合ってない。

 

「もう、鈍いんだから。ねえルーベル、一緒にログヒルズの村に帰りましょう?

みんなと同じになれた私は、普通のオートマトンとして、

またあなたと故郷で静かな暮らしができる。それが叶うなら、今すぐサーカスを辞めたっていい」

 

「何言ってんのかさっぱりだぞ!?とにかく……村には戻れねえ。

里沙子には私がいないと駄目なんだ。

両親の件でカタをつけてくれた恩もあるし、説明が難しい事情もある」

 

「……そうなの。里沙子さんがいるからだめなのね。だったら、里沙子さん」

 

「なにかしら」

 

シルヴィアは真っ直ぐにあたしを見つめ、

 

──ごめんなさい

 

幅の広い刃物と化した右腕をあたしの心臓に突き刺した。

と、クロノスハックの発動が0.1秒遅れてたら過去形になるところだった。

身体をひねってロングソードとも段平ともつかない刃を回避したけど、

突然の出来事に全身から嫌な汗が噴き出し、両腕に鳥肌が立つ。

すかさずショルダーホルスターからデザートイーグルを抜き、彼女の眉間を狙って時間停止解除。

呼吸が乱れて肩が揺れるけど、この至近距離なら外さない。

 

「はぁぁ…けほ。どういう、つもり、かしら?」

 

「シルヴィア!お前、その腕は何なんだ!いやそれより、バカなことはやめろ!」

 

「だって、里沙子さんがいるとルーベルが村に帰れないんだもの」

 

今度は両腕を槍に変えて二撃目を繰り出してきた。鋭利な武器が今度は腹と目に迫る。

迷わず発砲。狭いダイニングに似合わない暴力的な銃声とマズルフラッシュが場を支配し、

44マグナム弾が額に命中したけど……あたしもルーベルも信じがたいものを目の当たりにする。

 

「お前、その顔……!!」

 

「痛いわ」

 

まるで効いてない上に銃創が普通じゃない。

潰れた弾丸を中心に、シルヴィアの顔が粘土を殴ったように波紋を描いて歪んでいた。

そして歪んだ部分は水銀のように粘性を持ってグズグズと再生を始める。

狭い空間での戦闘は自殺行為。

即座に判断したあたしは、ルーベルに呼びかけつつすぐさま聖堂の玄関へ走り出した。

 

「外でやるわよ!あんたも来て!」

 

「ちくしょう、どうなってんだ!?」

 

あたし達はシルヴィアの“待って”という声を背に、教会前の原っぱに飛び出した。

お互いパニック状態だけど、あたしは彼女の姿にほんの少しだけ見覚えがある。

おかげで僅かに早く自分を落ち着けることができ、20mほど距離を取って戦闘準備を整える。

 

「ほらルーベルも。腰のピストル構えて!」

 

「なあ、あれなんだよ?シルヴィア、あいつ一体どうしちまったんだよ!」

 

「いいから!」

 

二人で銃を構え、シルヴィアが出てくる開きっぱなしの玄関に銃口を向ける。

しばらくして再生を終えた彼女が小幅に歩いて上品な所作で教会の中から現れた。

もう腕も元のすらりとした人の形に戻ってる。

 

「……なあ、里沙子。どうしても撃たなきゃ駄目か?」

 

「さっきのアレ見なかったの?彼女を倒さなきゃあたしらが殺される。

違うわね……きっとターゲットはあたしだけ」

 

シルヴィアがあたし達に呼びかけてくる。

 

「里沙子さーん。お願いです、ここまで来てくれませんか?お願い」

 

返事をせずに再び連続で発砲。

腹に2発食らわせると、圧力を掛けられた柔らかい金属のようにひしゃげ、

彼女はお腹を抱えて少し苦しそうな表情を向けた。

 

「痛いじゃないですか。乱暴はおよしになって」

 

「いきなり心臓ぶっ刺すのは乱暴じゃあないのかしら!?」

 

「私達が慎ましやかな生活を送るために、必要なことだったんです。許して死んで。お願い」

 

「シルヴィア、いい加減にしろ!自分が何してるかわかってんのか!?」

 

「わかってるわ。ルーベルを、取り戻すの。

また、昔のように、一緒に木を伐ったり、歌を歌いましょう」

 

強力無比なデザートイーグル連射も効果がなく、

また再生したシルヴィアは今度は自分から接近してきた。

一歩ずつ、確実に、無邪気な殺意を携えて。

 

ルーベルがピストルを両手で構えたまま、迷いに迷って彼女の脚を狙ってトリガーを引いた。

特徴的な歯車型ハンマーが60度回転すると、

パァンと一般的な9mm弾が弾けシルヴィアの左脚に命中。

 

デザートイーグルより威力の小さい拳銃弾は強固な身体を傷つけることなくただ潰れてしまった。

でも、精神面で彼女に少なからずダメージを与えたみたい。

 

「ルーベル…?どうして。私を撃ったわね!ご両親を殺した、あの銃で!」

 

「黙れ……!銃は殺すだけじゃない。守ることもできる。

私は里沙子にそう教わったし、だからお前が里沙子を殺すって言うなら、

銃でも何でも使ってこいつを守る!」

 

「……そう、その人があなたを変えてしまったのね。私が元に戻してあげる」

 

「変わったのはお前だ、シルヴィア!」

 

もう一度発砲。次は頭部を狙ったけど、次の瞬間ギョッとする出来事に戦慄した。

彼女が2体に分裂して弾丸を回避した。

一方はオートマトンの身体、もう一方はシルヴィアの形をした液体金属。

 

「ひどいわ。ひどいわ。二度も私を撃つなんて。

あなたがその気なら、私だって力ずくであなたを連れて帰る」

 

「な、お前……」

 

「もういいルーベル。一旦退くわよ。全力で街まで逃げるの!」

 

絶句する彼女の肩を掴んで離脱を促す。銃身が震えてる。これ以上の戦闘は無謀。

 

「こいつを置いてくのかよ!?」

 

「今の装備じゃ彼女を倒せない!危ないのはあたしらの方なのよ?

それに、彼女の変化には心当たりがある」

 

「水銀のバケモンになっちまったアレか?」

 

「そう。どっかに隠れて情報共有。というわけで……走るわよ!」

 

「お、おい待てよ!」

 

次の瞬間、あたしはシルヴィアの不意を突くように街に向けて駆け出した。

慌ててルーベルもついてくる。

シルヴィアは再び液体金属と融合して一体に戻り、数秒遅れて追いかけてきた。

途中、一瞬だけ振り返ったけど、脚にまとわりつくロングスカートも気に留めず

ロボットのように機械的な姿勢で手足を交互に動かしていた。

 

足の速さも並じゃない。距離を詰められそうになる度にデザートイーグルで銃撃。

倒せはしないけど44マグナム弾の衝撃で速度を遅らせどうにか街まで逃げ切れた。

市場を突っ切って酒場に駆け込む。

 

「マスター、匿って!」

 

財布から取り出した金貨1枚を放り出すと、バーカウンターの裏に滑り込んだ。

 

「おいおい、どうしたんだ里沙子?ヤバい奴じゃないだろうな」

 

「いいから!」

 

床に座り込むと心臓の激しい鼓動で身体が揺れる。

休憩なしで殺人マシンからダッシュで逃げてきたからね。

スタートの遅れと市場の混雑であたし達を見失ったシルヴィアの声が聞こえてくる。

 

“ルーベル?里沙子さん?どこなの”

 

同じく隣で床に座るルーベルが外の様子を覗いつつ悔しそうに歯噛みする。

あたしも少し顔を出してみたけど、広場の真ん中でキョロキョロしてるわ。

隠れながらあたしらは小声で今後の方針を話し合う。

 

「くそったれ、なんでこんな事になっちまったんだよ……!

里沙子、あいつがあんなになっちまった理由を知ってるって言ってたよな。

何がどうなってるんだ、教えてくれよ」

 

「知ってるっていうか可能性のレベルだけどね。一応その前に確認。

オートマトンを液体金属の身体にできる神療技師って存在する?」

 

「いるわけねえだろ!神療技師が作るのは木の身体だけだ!」

 

「シッ、声を落として。……なるほど、間違いないわね。

どこかのキチガイが“ターミネーター”に影響されて

彼女の身体に改造を施したとしか考えられない」

 

「ターミネーター?なんだそりゃ」

 

「マリーが店でいつもテレビ見てるでしょ?

あれを劇場の大きな画面で見られるようにした娯楽が映画。

ターミネーターはその作品シリーズなんだけど、

最新作にシルヴィアと同じ挙動をする敵サイボーグが現れる」

 

「ど、どんな話なんだよ。その…なんとかって映画は?」

 

「1997年8月29日。審判の日とも言うんだけど、

その日にスカイネットっていう人工知能が人類に反乱を起こして30億人を抹殺したの。

ターミネーターはスカイネットやそいつが生み出した殺人兵器(ターミネーター)

人類との戦いを描いた作品」

 

「今のシルヴィアもターミネーターとかいうやつだってのか?」

 

「そこんとこ微妙なのよね。

彼女、さっきオートマトンの身体と液体金属の肉体に分離したでしょ?

スカイネットが造り出したTシリーズにああいうことをする個体はないの。

プラズマ砲やミニガンも撃ってこなかったし」

 

「サイボーグだのTなんとかだのはいいから要点を話してくれよ!違うってなら何なんだ?」

 

「多分、彼女のベースにされたのはREV-9(レヴ・ナイン)

スカイネットが存在しない世界で生まれたサイボーグ。

あんたも見ただろうけど、とにかく共通してるのは生半可な攻撃じゃ倒せないってこと」

 

「じゃあ、やっぱり私達はシルヴィアを……」

 

「本気で殺さなきゃ殺される。少なくともあたしはね。

あんたは無理矢理連れ帰されるだけで済むだろうけど」

 

「いや、私も戦う。お前を見捨てて逃げられるわけないだろ。

ここで逃げたら、一生後悔するから」

 

「気持ちは嬉しい。でも彼女と戦う心づもりはあるの?

言っておくけど、サイボーグは説得が通じる相手じゃないわよ」

 

「正直、わかんね。出たとこ勝負しかねえと思ってる。

シルヴィアが変わっちまったのは私がちゃんとあいつのことを見ててやらなかったから。

あんな風になるまで悩んでたことに気づけなかったから。だから私がケジメつけねえと」

 

「なら、決まりね。まずは装備を整えましょう。

武器はほとんどガンロッカーに置いてきちゃったからね。……マスター、裏口借りるわよ」

 

「あいよ。何してるのか知らんが、あんま危ないことに首突っ込むなよ」

 

「ごめんもう手遅れ」

 

あたし達は酒場奥のゴミ置き場に通じるドアから外に出て、

シルヴィアの目を盗んで南北に延びる大通りに出た。

とりあえず彼女を撒くことができたけど、一時しのぎに過ぎない。さっさと対処する必要がある。

大通りを北に進み、交差点を左に曲がる。

 

「入りましょう」

 

しょっちゅう世話になってる銃砲店。押し入るようにドアを開けて転がり込んだから、

店主の親父もびっくりして銃に手をかけようとした。

 

「なんだ里沙子か。驚かすんじゃねえ。強盗かと思ったぞ」

 

「ここで一番破壊力の大きい武器をちょうだい。あと強力なショットガン。弾もありったけね!」

 

親父の文句も無視して注文を突きつける。

 

「またドンパチやらかす気か?お前も飽きねえな。アースから良いもんが入ったばかりだぜ。

砲弾を連発する携行兵器だ。ショットガンの方はそうだな……水平二連散弾銃なんかどうだ?

頻繁にリロードしなきゃならんが、2連発できる」

 

「どんなの?見せて」

 

「ほら、あのケースの中に入ってる」

 

彼があたしの後ろ側にあるショーケースを顎で指す。

中にはこんな状況じゃなきゃ胸が踊るようなステキ兵器が。

 

「自衛隊の96式40mm自動てき弾銃じゃない!よく仕入れたわね」

 

「魔王が死んでからレア物が市場に回りやすくなってるからな。

あんたにゃ無理だが、オートマトンの姉ちゃんなら軽々扱えるだろ」

 

「買うわ!ダブルバレルも出して」

 

「待ってな」

 

ショーケースの鍵を持って親父が椅子から立ち上がると、大型のグレネードランチャーと

フレームの金属部分に細やかな彫刻が施された中折式ショットガンを取り出し、床に置いた。

さすがに重量24.5kg の96式40mm自動てき弾銃をカウンターに持ち上げるのは

しんどかったらしい。

 

「うおっと。やっぱこいつは重てえな。両方合わせて50000Gだ。連発砲は50発装填済み。

ショットガンは12ゲージが30もありゃいいか?」

 

「うん。はい、ちょうど5万ね」

 

小銭入れから10000ミスリル硬貨を5枚取り出し、支払いトレーに置いた。

 

「ほう?こいつが新しい硬貨か。まだ見たことなかったんだよな」

 

「高額貨幣ができたおかげでオシャレな財布に切り替えられたわ。

それじゃあ、あたし達急いでるから。あたしのは、イタリア製・ベルナルディね。美しい……

じゃなかった。ルーベル、グレネードランチャー持って」

 

「あ、うん……」

 

買い物をしている間ずっと黙っていたルーベルが、

あたしがダブルバレルを持ち上げるのと同じくらい楽に大型銃器を担ぎ上げる。

親父の“また来いよ”の声に送られて店を後にすると、

新しい武器を手に入れて少し楽しくなっていた気分が消え失せる。

そう、これを買ったのは現実と戦うため。辺りを見回し、近くを歩いている少年に声をかけた。

 

「ねえ君、ちょっといいかしら」

 

「なーに?」

 

「お小遣いあげるから、広場にいるお姉さんに伝言をお願いできる?」

 

「マジで!?いいよ」

 

「ありがと。髪は金色ですごく長いの。それから……」

 

少年に30G渡してシルヴィアの特徴とメッセージを伝えると、次の目的地へと足を運ぶ。

ルーベルの表情は芳しくない。無理もないか。これから旧友との決闘が待ってるんだから。

それからは会話もなく、あたし達は駅馬車広場に向かった。

 

 

 

 

 

貸し切り馬車を降りて少し歩いた荒れ地。大地の熱が靴を通して足の裏を温める。

真っ黒な地面が広がり、ところどころ赤く燃える溶岩が見られる人気のないところ。

 

ミドルファンタジアの定番ウィスキー、ボルカニック・マグマの生成に使われるピートも

この辺りで掘れる。

炭化した植物に付近を流れる溶岩に含まれる鉱物が特有の香りを染み付かせることで、

ガツンとスモーキーフレーバーの利いたウィスキーに仕上がるらしい。

 

酒か銃の話しかできなくてごめんなさいね。女として終わってることは認めるから勘弁してよ。

さて、わざわざ別の領地に場所を移したんだし、やることやりましょうか。

パリパリと表面が薄く固まった地面を踏み砕く足音が近づいてくる。

 

「見つけた。ルーベル。里沙子さん」

 

「見事な俊足ね。あたしらは全速力の馬車で来たってのに、ほぼ同着」

 

「……シルヴィア、目ぇ覚ませ。

誰に身体をいじくられたのか知らねえが、今のお前はオートマトンですらねえよ」

 

「ひどいことを言うのね。私が私になるために、どれだけ大変な思いをしたのか知らないくせに」

 

「わかんねえよ!私の知ってるシルヴィアは、人殺しのサイボーグなんかじゃなかった!」

 

「説得は通じないって言ったでしょ、ルーベル。

さあ、遠慮なくかかって来なさい。もう逃げも隠れもしないから」

 

「それでは、お言葉に甘えて」

 

シルヴィアは両腕を鋭い刃物に変形させ、

あたしとルーベルは銃砲店で調達した新兵器を彼女に向ける。

一瞬両者の間に殺気が走り、熱風吹きすさぶ火山地帯での戦いが始まった。

 

 

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