ヴェクターSMGを構えたあたしは、全員に指示を出す。
敵の有効射程距離到達まで、あと10数秒。
「全員2階に集合!パルフェムはカシオピイアの部屋でピーネを守って!
思いついたらでいいから、俳句が浮かんだら援護をお願い!」
「わかりましたわ!」
「負けたら、許さないから……」
「あたしとルーベル、カシオピイアが3人で窓から殺さない程度に敵を撃つ。
ここでお願いが一つ。敵が接近してきても、一切何も喋らないで。
近づいたら無言で撃たれる。その印象を奴らに持って帰らせるの!」
「おう、任せとけ!」
「了解。戦闘、開始」
ルーベルもカシオピイアもそれぞれの銃を構える。
「ジョゼットとエレオノーラも裏手側の部屋で避難。
エレオは、いざとなったら“神の見えざる手”で、パルフェム達を逃して!」
「はい!ジョゼットさん、こちらの部屋へ!」
「里沙子さん、駄目なら一緒に逃げてくださいね?お願いですから……」
「あんたは人より自分の心配なさい!……さぁ、こんなとこかしら」
あたしは窓の私室から街道側の景色が見える窓を開けて、様子を見る。
うん、今まで登場した当て馬共がうじゃうじゃいる。野盗、はぐれアサシン、放浪騎士、
荷馬車の大砲の側に筋肉隆々の大男。海賊みたいな二本角が生えた兜を被ってるわ。
こいつをどうあしらうかがポイントになりそう。
あとは、魔女数人。遠くの空を旋回してる。
海賊男が周りの部下達に命じて、荷馬車を回転して砲をこっちに向けた。
それが開戦の合図となる。
“うおおおお!女を殺して名を上げろ!!”
賞金稼ぎの軍勢が雄叫びを上げて突進してきた。
「来るわよ!」
籠城戦開始!連絡用に私室と2室のドアと窓を開けた、あたし達3人の戦闘班は、
一斉に敵軍に向けて銃を向ける。
あたしは、サイレンサー装着済みのヴェクターSMGで狙いを定め、
軍勢の足元を狙い、トリガーを引いた。
高速で排出される空薬莢がぶつかり合い、うるさく金属音を立てる。
でも、銃声自体はミシンの音を大きめにした程度。
銃弾は先頭の連中の地面前方をまっすぐ横に薙いで、足を取られた野盗達が転倒、
後続が彼らに躓いて派手に将棋倒しを起こす。
これなら耳を痛めずにバカを叩きのめせるわ!
新兵器の威力に舌を巻きながら他メンバーの状況を確認。
「ルーベル、カシオピイア、そっちはどう!?」
「鎧野郎を2人仕留めた!這いながら逃げてくぜ!」
「野盗5名並びにアサシン3名無力化!」
滑り出しは上々ね!……と思ったら、今度は空中の魔女が攻撃を仕掛けてきた!
ホバリングしながら、オカリナを吹きつつ、左手から笛に魔力を込める。
すると魔女の周囲の空間が横に長く歪み、石の礫が嵐のように吹き付けてきた。
石ころでもあのスピードを得れば人を殺すには十分すぎる。
とっさに頭を下げて直撃を回避。でも部屋ん中がメチャクチャ。最悪!
「2人共大丈夫!?」
「なんともねえよ、こんなもん!」
「問題なし。攻撃を続行する!」
改めて敵戦力を確認。数えきれないほどの野盗、10人ほどのアサシン、放浪騎士。
移動砲台とみなしていい大男。
まだ撃ってこないのは、死体が細切れになって身元確認ができなくなるから、
タイミングを見計らってるんだと思う。そして、魔女が3人。
“怯むな!俺達のチャンスは目の前だ!!”
二度目の突撃が始まった。いつもの雑魚とは違って、野盗の目が血走ってる。
これだけ大勢で分配しても十分過ぎるほどの、
懸賞金がかかってると思ったほうがいいわね。
魔女も気になるけど、再びヴェクターSMGで威嚇射撃。
やっぱり大勢が派手に転ぶけど、足元の味方を踏み越えて教会に迫ってくる。
魔女からも目が離せないってのに、面倒な連中ね……!ヴェクターの弾にも限りがある。
あたしは腰のホルスターからベレッタ93Rを抜いて、サイレントボックスを唱えて、
狙いを付け、発砲。
奴らの武器や出血量の少ない部位を撃ち抜くと、叫び声を上げながら逃げていった。
7,8発撃ったけど、大容量のダブルカラムマガジンに20発入ってるから、
まだまだリロードは必要ない。
ピースメーカーも好きだけど、オートマチックも便利なものね!
下に対処したのも束の間、今度は上からの攻撃。また魔女が暴れ始めた。
さっきのオカリナが礫で牽制しながら、もうひとりの魔女が、呪文を唱える。
すると、目に見えるほど青い冷気が彼女を取り巻き、
背中からカマキリのように巨大な鎌を3対計6本生やし、
ブオン、ブオンと素振りをして急降下してきた。まずい!
「ルーベル、そっちに行ったわ!」
「ああ、わかってる!」
氷の魔女は、氷の鎌をルーベルの部屋の外壁に突き刺して身体を固定。
ターゲットのひとりに最接近し、ニタリと笑う。
「うふふ、あたしが一番乗りね……この際あんたで構わない。
怖がらないでよ、一瞬で終わらせてやるから、こっちにおいでなさいな……」
魔女が手を差し出す。そしてルーベルは。
パシン…
無言でその手をはたいた。魔女が眉間にしわを寄せて怒りを顕にする。
「人形風情が……!図に乗るんじゃないわよ!
ここでバラバラにして胸の天界晶引きずり出してやるから!」
「……」
やはり無言で、ルーベルは魔女に腰だめ撃ちでバレットM82を放つ。
屋敷中に響くほどの銃声が轟き、
スナイパーライフル用の大型弾が至近距離で発射されたけど、
着弾寸前で魔女の前方にオレンジ色のシールドが現れ、12.7mm弾を受け止めた。
「ふふっ、あたしが何の備えもなく近づいてきたと思ってるの?
この魔障壁は並大抵の攻撃じゃ破れないわよ!
今度はあたしの番、まずはその悪い腕を切り落としてやろうかしらねぇ!?」
既に獲物を仕留めた気になっている魔女をよそに、
ルーベルはポケットからメリケンサックを取り出し、右手にはめた。
そして構えを取り、全身の闘気を右腕に集める。
「食らいなさい!」
その瞬間、氷の鎌が彼女を捉えた。ように見えた。
だが、鎌はバキィ!と粉砕され、その先にある魔女の魔障壁が突き破られ、
数トンの力で術者の腹にめり込む。ルーベルの全力の拳を食らったのだ。
「ううっ!げぶうっ……!!な、にが……?」
複数の内臓が破裂し、大量に吐血した魔女は、氷の鎌と共に力なく落下し、
投げ捨てられた荷物のように地面に転がった。これで生きているほうがおかしい。
1人撃破。
「……並大抵じゃねえんだよ」
一言だけつぶやくと、ルーベルはバレットM82を構え直し、再び雑魚の狙撃を開始した。
ごめんね。
人間は殺しちゃだめだけど、それ以外の敵ならOKなの、この企画。実績もある。
さて、あたしも頑張るとしましょうか。
獲物は仲間を殺られて動揺中のオカリナ魔女。
ベレッタ93Rのセレクターを切り替え、3点バーストに移行。
折りたたみ式のフォアグリップを展開して、両手でしっかり銃を構える。
そして照準を合わせると、トリガーを引いた。
マシンピストルが9mmパラベラム弾を3発連続で発射。魔女のオカリナに命中。
驚いた魔女は思わず砕け散ったオカリナを持っていた左手に意識を向けて、隙を見せる。
そこで再び3連射。
“あっ……”
と、彼女が言ったようだったけど、魔障壁を張る暇も無く、
9mm弾が腹部に2発、顔面に1発突き刺さった。
魔女は悲鳴を上げることなく、空に血の筋を立てながら、墜落。
2人目撃破。なんだけど、3人目がいつの間にかどっか行った。空を見回すけど、いない。
最後の魔女を探していると、嬉しくない情報が!
“野郎共!砲を向けろ!里沙子を屋敷から叩き出せ!”
海賊男が手下に指示を出してカノン砲をこちらに向けさせた。
即座にヴェクターSMGに持ち替えた……のはいいけど、
アレを撃って破壊するのは難易度が高い。なぜなら周りに人間がいっぱい居るから。
砲だけじゃない。予備の砲弾も積んであるから、
それに引火させずカノン砲だけを無力化するのはちょっとコツが要りそう。
“撃てえええ!!”
敵が砲身に点火すると、ボロ屋敷を揺らすほどの轟音と共に砲弾が飛んできた。
目を見開くほど集中してクロノスハックを発動する。
心臓に悪いわね、あと一瞬遅かったら直撃してたわ。
あたしはヴェクターSMGで、空中で静止する砲弾を集中射撃して爆破。
能力解除。もう弾切れだわ。リロードしなきゃ。
あたしはカラのマガジンをリリースして、新しいマガジンを挿入口前方に引っ掛け、
斜め後ろに引くように装着。モタモタしてられない。
ルーベルやカシオピイアが頑張ってくれてるけど、海賊男が次弾を装填してる。
あら、リロードってことは?
あたしはとりあえず奴を泳がせることにして、眼下の大群を追い払う作業に戻る。
だいぶ勢いが弱まってきた。またヴェクターSMGで坂を薙ぎ払う。
やっぱり野盗とはぐれアサシンが突っ込んでくるけど、
サブマシンガンが放つ高速の弾丸に恐れをなして逃げていく。
“やってられっか!命がいくつあっても足りねえよ!”
“撤退!撤退だよ、あんた達!”
今まで氷の魔女以外は一人も敵を寄せ付けてない。
きっと奴らにとっては不気味でしかないでしょうね。近づいてもただ撃たれるだけ。
目の前の建物は教会なのに、攻め込んでも返事もなく、
暗い窓の奥から弾だけが飛んでくる。
ここを乗り切れば目標達成だと思う。
“2発目だ!派手に行くぞお前ら!”
おっと、二発目のカノン砲発射準備が整ったみたい。軽く右手を振って緊張をほぐす。
“撃てぇ!!”
また爆裂音と共に砲弾が飛来。クロノスハック発動。
またしても停止している目標を集中射撃。砲弾が爆発し消滅したのを確認すると、
すぐさま次の作業を開始。狙うは砲弾を撃ってカラになったカノン砲内部。
少し息を吸い、慎重に照準して、10mmオート弾をバースト撃ちで狭い砲口に叩き込む。
無数の強力な弾丸が砲身内部で暴れまわり、砲腔をズタズタにして、火門を損傷し、
とても安全に次弾発射ができない状況に追い込んだ。クロノスハック解除。
“おい、どうなってんだ!弾が当たらねえぞ、次だ次!……なんじゃあ、こりゃあ!”
“砲の中がめちゃくちゃだ!出撃前に点検したのに!奴らに撃たれたんですよ、兄貴!”
“あそこから鉄砲で砲の中を撃っただと!?何考えてんだ、あの連中は!”
“どうしましょう、兄貴……”
“退却だー!砲がなくなったら、戦いようがねえ!他の連中みたいに狙い撃ちされる!”
ふぅ。砲を乗せた荷馬車と海賊男達が退いていくわ。
二度とバカな連中がうちに来ないように、
逃げてった奴らがどれだけこの戦いについて触れ散らかしてくれるか。
それを宣伝度で表すと、80%くらいかしら。歩兵は全部逃げた。
けど、まだ気になる奴がいる。例えば……後ろにいる奴とかね。
「やっと、見つけた……私の、チカラ……」
貞子みたいに長過ぎる黒髪を垂らした不気味な魔女。
いろいろ突っ込みたいけど我慢我慢。
「あなたを、燃やして、あの方に、新たなチカラをいただくの……うふふ」
気色の悪い笑顔を浮かべると、最後の魔女の髪の毛が、液体のように床に溢れて広がる。
自分を液状化して壁の隙間かどっかから入ってきたのかしら。
ベレッタに手を伸ばすけど……
「やめたほうがいいわ……私の魔法は、特別だから……」
そう言えば臭いわね。多分タールか何か。あたしの部屋汚さないで欲しいんだけど。
今でも礫だらけなんだから。思わず顔をしかめそうになるけど、
ポーカーフェイスで乗り切るのよ、あたし。
とにかく銃は使えなくなった。あたしが火だるまになる。
この女が巻き込まれない仕組みになってるのか、自滅覚悟であたしを殺しに来たのか。
正直、後者でも何も不思議に思えない。
「お願い、死んで。ね、ね、あの方にあなたの心臓を捧げるの……」
魔女はダガーを取り出すと、あたしに近づいてくる。
銃が使えないとなると、もう奴を殺す方法はない。……ないんだけど、
魔女だからって必ず殺す必要はないのよね!
あたしはデスクの上のトートバッグに手を突っ込むと、それを一振りした。
シャキンと金属の擦れる音を立てて、2段階伸びたそれを、
ダガーを持つ魔女の腕に、渾身の力で振り下ろした。骨を砕かれて、絶叫する魔女。
「いぎやあああ!!」
奴が激痛に転げ回る。
あたしは耳の定期検診の帰りに、武器防具店で買いっぱなしだった特殊警棒を、
左手にパシパシ叩きつけながら魔女に近寄る。
痛みで集中力が切れたせいか、変な油はずるずると本体に戻っていった。
ついでにオカリナ魔女が放った礫も一緒に吸い込んでいってくれた。
掃除の手間が省けてなによりなにより。
壊れたもんはそれほど大したものじゃなかったし。
というか、金時計以外大したものはない。
「いだいいぃ……私の、私の手がぁ……はっ!?」
魔女の前に立つと、今度は右脛に強打を打ち付けた。またも教会に叫び声が響く。
「ギャアアアァァ!!やめて、おねがい!もうやめて!」
泣きながら懇願する魔女。
でも、あたしは表情のない目でただ彼女を見るだけ。
更に恐怖を掻き立てるため、もう少し痛い思いをしてもらいましょう。
両手は流石にかわいそうだから、今度は左足の膝を一撃。皿が割れた感触。
「あぐううっ!なんで!?なんで黙ってるの!
おねがい、許して!なにか言ってよぉぉ!!」
この辺かしら。あたしは魔女の胸ぐらを掴むと、窓の側に引きずって、
ちょっと重いけど抱えて外に放り出した。
満身創痍の魔女は、魔力を操り、地面に激突する寸前のところで、必死の思いで浮遊。
どうにか木の上まで高度を上げると、ちらりとこちらを見た。
彼女は、やっぱりずっと自分を見つめているあたしに怯えて、
ふらふらと街の方へ浮かんでいった。
これで宣伝度100%ね!
もう野盗連中にとって、ハッピーマイルズ教会は何を考えてるかわからない、
何をされるかわからない、キチガイ連中の巣窟ってことになるわ。
それはそれで何かひっかかるけど、
もう雑魚の襲撃に悩まされることもなくなるでしょう。
安心して昼寝もできるってもんよ。
あたしは特殊警棒を縮めて、トートバッグに入れた。
どこに装備するかは後で決めましょう。
ゴルゴの影響で、なんか近接戦闘武器も調達したいな、と思ってた時に
これを見つけたの。
ウォッチドッグス(1作目)のエイデン・ピアースが、
これで犯罪者をしばき回す姿がカッコよかったから即購入したんだけど、正解だったわ。
人間だったら殺さずに済むし。
「おーい、何やってたんだ。すげえ悲鳴が聞こえたんだが」
「敵、来たの?」
「来たけど半殺しにして広告塔になってもらった。みんなは?」
「大丈夫に決まってるだろ」
「ワタシも……」
締め切っていたドアが開き、他のメンバーも出てきた。
「里沙子さん、さっきの悲鳴は!?」
「あたしじゃない誰か。だったら誰だっていいじゃない。
天下泰平。世は全てこともなし」
「教えてくださいよ~すごくびっくりしたんですから」
「ろくに言葉も交わしてないのに教えようなんてないでしょ。
とにかくこれで平和が訪れたのよ。あたし達にとっての、だけど」
ちびっこ2人も無事でよかったわ。
「里沙子お姉さま、あまりピーネさんを驚かせないでくださいまし。
まだ部屋で固まってますわ」
「ごめん、ごめん。今行くから」
パルフェム達が避難していた部屋に行くと、
ピーネがしゃがみこんで、両手で耳をふさいでいた。
こっそり後ろから近づいて、わっ!と背中を押してやると……
「キャアッ!え……里沙子?
ふ、ふざけんじゃないわよ!マフィア抗争やるなら私がいない時にして!」
「悪かったわよ。あたしらの平穏な生活を取り戻すための、致し方ない措置だったのよ。
機嫌直して」
「じゃあ、今のイタズラは何!
あんた、いっつも私の嫌がることしかしないじゃない!仕返しよ!」
ピーネがあたしの腕に噛み付いて血を吸ってきた。
でも、だいぶ前にも言ったけど、痛い・気持ちいいメーターでも、
ほんのちょっと痛い方にしか……あら、今日は少し気持ちいいに触れたわ。
そう言えば、定期的に献血して血を入れ替えると、
身体に良いって迷信を聞いたんだけど、本当なのかしら。
「ピーネ。これから時々血を吸って、あたしの身体をきれいにしてくれないかしら」
「いやよ!あんたの酒臭い血なんて飲めたもんじゃない!あーまずかった!
……それによく考えたら、あんた自分の要求ばっかりじゃないの!」
「あはは。それだけ叫ぶ元気があるなら大丈夫ね。ジョゼットー?
小腹が空いちゃったから、お茶にしましょう。あたしはお菓子出す。お茶お願い」
「は、はい」
「待て里沙子―!」
あたしは肩をぐるぐる回しながらダイニングに下りていった。
ホント、何にも悪いことしてないのに、
慎ましやかな生活を送るために戦争ごっこしなきゃいけないなんて理不尽だわ。
しんどいね~生きていくのは。サザンの新曲どうしてCD出ないのかしら。
それからあたし達は、まったりとしたお茶の時間を過ごしたわけよ。
お茶菓子と一緒に久方ぶりの平穏を噛みしめる。こんな日常が続けばいいんだけど、
運命ってもんはとことんあたしの幸せが嫌いだから、何があるかわかったもんじゃない。
油断はできないわね。
お茶を楽しんだ後、昼寝をしようと私室に戻ったあたし。
ガンベルトを外そうとして、ふと気づく。拳銃はピースメーカーとベレッタ93R、
背中の留め具にはドラグノフとヴェクターSMG。
じゃあ、左脇のCentury Arms Model 100の代わりには何が当てはまるのかしら。
そうだ、これだけ武器が増えたなら、ガンロッカーも必要ね。
これからは慎重な武器選択もしなきゃ。
ガンロッカーは家具屋じゃなくて銃砲店で備え付けのカタログから注文だから……
またお買い物ね。今日の戦果が広まるのを待って、またお出かけするしかないわ。
軽くうんざりした気持ちに苛まれながら、ガンベルトをポールハンガーに掛けると、
ベッドに飛び込んだ。
はい、買いました。何をって?ガンロッカーに決まってるじゃない。
あれから一週間。銃砲店で注文したガンロッカーが届いたのよ。
さっき業者が来て、私室の隅に設置してくれたわ。
とりあえず今はピースメーカーとドラグノフを収納してる。
ちびっこがイタズラしないようにしっかり鍵を掛ける。
あたし達の奮闘の甲斐あって、もうアホが襲撃かましてくることもなくなったわ。
酒場のマスターによると、無法者曰く、
ハッピーマイルズ教会は“狂気の館”なんですって。
気が狂った住人が無差別に人を撃つんですって。
壁画のマリア様と目が合うと呪われるんですって。
かなり笑える。ジョゼットが聞いたらどんな怒り方するのか、
ちょっと試してみたい気がするわ。
今日はもうやることもないし、昼寝するほど眠くもないから、読書でもしましょうかね。
今回はちょっと短めだけど、これでおしまいなの。皆さんは良い睡眠を。さよなら~
まぁ、これがあの出来事のきっかけになるとは、夢にも思わなかったんだけど。