面倒くさがり女のうんざり異世界生活   作:焼き鳥タレ派

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注)また悪ふざけです。次からちゃんと書きますので許してください…


番外編3: 冬でもないのに指にあかぎれができるの。なんで?

ワイワイ…… ガヤガヤ……

 

今回は聖堂の長椅子を隅に寄せて、

テーブルに料理を並べて立食パーティー形式にしてみたわ。

みんな食うことに夢中だけど、気にせずステージ上の演説台に上がる。

 

「……会場にお集まりの皆さん、こんばんは。

今夜は第2回番外編パーティーにお集まり頂いて、本当にありがとう。

まぁ、企画の趣旨としては主に、前回と同じくこの会合で、

出番に恵まれない子羊達にチャンスを与えようと思うの」

 

ウマウマ! ぺちゃくちゃ…… うし…うし…

 

「一旦食うのを止めて聞いてくださるかしら。……食うのをやめろと言っている!!」

 

決して食べる手を止めない連中にしびれ切らしたあたしは、

44マグナムを天井に向けて撃った。

 

カチィン!カチィン!

 

マリーの店で手に入れた銃を鳴らすと、ようやく牛どもがあたしの方を向く。

 

「ああっ!里沙子さんたら、またマリア様のお部屋で銃を!?」

 

「100均のクラッカーがなくなったから代用してるのよ!

つか、あんたも散々見たでしょう!モデルガンだけど割と通る音が出るのよ、これ。

……えー、改めまして、第2回番外編パーティーを執り行いたいと思います。

前回の会合及び前話のメタネタは需要がないことがわかっていますので、

さっさと終わらせたいと思います。

特に前話は投稿後、呆れた約2名の方が去ってしまわれたので」

 

「おう、さっさとしろよ。俺達の待遇について早く説明してくれ」

 

「あら律儀に今回も来たのね、マーカス君!

キャスケット帽をかぶった、あまり上等とはいえない服装の少年」

 

「当たり前だ!何回出す出す詐欺に騙されたと思ってる!

あと、いい加減コピペをやめろ!

ちゃんと毎回、場面に合わせた微妙な特徴を考えて手打ちで入力しろ!」

 

そーだ、そーだ!

 

さっそく容姿の説明や登場シーンでコピペを使われた連中が騒ぎ出す。

出してもらえただけありがたいと、どうして思えないのかしら。

無視してプログラムを進行する。

 

「さて、今回は巻きで行きたいから、ちゃっちゃっと進めるわよ。

まず、前回のパーティーから、このハッピーマイルズ教会に増えた仲間を紹介するわ。

一人目は軍人のカシオピイア、あたしの妹よ」

 

「よろしく……」

 

おお~っ……

 

ビシッと軍服に身を包んだ彼女が頭を下げると、野郎連中がため息を漏らす。

当然よね、このあたしの妹なんだもの。美人なんだもの、あたしと違って……

何よ、あたしは正しく現実を認識できる人間なの。次。

 

「オバケのエリカ。以上」

 

唐揚げうめえ お前食い過ぎなんだよ うるせえ、たこせんでも食ってろ

 

「なんじゃーお主ら!そのカシオピイア殿との反応の差は!

なぜ拙者が存在してるかとか、どこから来たのとか、そういう疑問はないのかー!」

 

エリカが何も斬れない刀をブンブン振り回すけど、

連中の優先順位が唐揚げ>>>エリカであることは確定的に明らか。

 

「はーい、じゃあ最初の2人はこのくらいにしましょうかね。

繰り返すけど、予定詰まってるから。ほら、二人共ステージから下りた下りた」

 

「うん」

 

「待てー!話はまだ終わってないわ!終わっとらん!」

 

「はいはい、急ぐ。次、ピーネ。さっさと」

 

「……相変わらず私の扱いが雑ね。コホン、よくお聞きなさい!

私は誉れある吸血鬼一族が長女、ピーネスフィロイト「ありがとうございました」」

 

「終わり!?里沙子、あんたいつか覚えてなさいよ!」

 

「巻きだって言ったでしょ。パルフェム、どうぞ」

 

「皆さん、はじめまして。

元皇国首相のパルフェム・キサラギです。宜しくお願いします。

今の姓はマダラメですが」

 

養子? 初めて聞いたが… そんな事よりカワイイ子ばっかだな やっぱ里沙子は…

 

「その続き言ったら、この特殊警棒で二度と椅子に座れない身体にするわよ。

バカは放っといてどんどん行くわね。

前のパーティーで紹介したメンバーはもう良いわよね?そこの隅っこで立ってるわ」

 

ルーベルが指をひらひらさせ、エレオノーラは小さく頭を下げ、

ジョゼットは手を振ってる。

みんな嫌というほど見てるから、改めて必要する必要はないわね。

 

「お待たせしました、続いてのプログラムは、“出番ナシに愛の手を”です。

エントリーナンバー1。番外編以外の出番ナシ歴最長のマーカス君で……

ちょっと、待ちなさいな!」

 

「うるせえ、マイクを貸せ!」

 

紹介も終わる前にステージによじ登ってきたマーカス君が、

あたしからマイクを奪い取った。せっかちねえ。

 

「このメンバーの間でも変な意味で有名になっちまったマーカスだ!

みんな、里沙子との約束は信用するな!この俺が証拠だ!

第2話に出たっきり放ったらかしなのは知っての通りだ!

こいつが何かと引き換えに出番をちらつかせてきたら、念書でも何でも良い!

絶対約束を守らざるを得ない何かを残しておけ、以上!」

 

本当に聞き分けのない子。散々説明してきた世界の法則を再度説明する。

 

「まるであたしが、あなたに意地悪して出番を取り上げてるような言い方だけど、

出すかどうかは、今キーボードを叩いてる、ろくでなしが決めてるの。

開場前のセッティング中に電話して確認したら、

“どうしてもエピソードが思いつかない”だってさ」

 

「ざけんな!じゃあ、俺の出番は?」

 

「そうね……

やりたくないけど、次回の番外編までには必ず1話書く。っていうか書かせる。

それでいいでしょ?」

 

「……本当に本当だな?」

 

「何ならこのページ、スクリーンショットで残してもいいのよ?」

 

「おし……今度こそ信じるからな?」

 

「もちろんオーケーよ。気が済んだらステージから下りて。もう2000字も使っちゃった」

 

なんとかマーカス君をステージから下ろす。次のゲストは、と……

 

「エントリーナンバー2、黒鉄の魔女ことダクタイルさんです。どうぞ~」

 

女性陣の中でも異彩を放っている彼女が、カツサンド片手に壇上に上がると、

会場をじろりと見渡した。その威圧感で皆が静まり返る。

 

「帝都で魔道具屋をやってるダクタイルだ。

出番だの活躍だのどうでもいいが、タダ飯が食えるっていうから来てやった」

 

さすがはリプリー。

出番なんてどうでもいいとか言ったら、他のやつならブーイングの嵐だけど、

みんな黙って話を聞いている。

 

「だから、そのリプリーってのは誰なんだい!初めてうちに来た時から何度も何度も!

私の名前は、ダクタイルだ!!」

 

「えっ、直接言ったことなんてないはずなのに!?

ちょっと、この世界の人、いつの間にか人の心読んでること多いわよ!

心の中はプライバシーの固まりなんだから、大事にしてくれないと……」

 

「誰だって聞いてんだ!」

 

「ア、アースのエイリアンっていう映画の主人公で、あなたにそっくりなの!

不死身に近い化け物と幾度も激闘を繰り広げた女戦士よ」

 

「ふーん……続けるよ」

 

あーよかった。悪くは思っていないみたい。

 

「とは言え、別に言うこともないんだけどね。

武器防具の補修・強化が必要なら、たっぷり金を持ってうちに来な。

銃でも剣でも金属なら何でも来いだ。私からは以上」

 

彼女は店の宣伝をすると、勝手にステージを飛び降りた。

そして、今度はドリンクコーナーの安物赤ワインを、

グラスになみなみと注いで飲み始めた。

 

彼女は呼ぶかどうかは最後まで迷ったのよね。

魔王編でクロノスハック制御に力を貸してくれたキーパーソンだし、

その後もちょっとだけ出た覚えがある。今頃考え込んでも仕方ないけど。

 

次の哀れな子羊はだ~れだっと。ファイルの名簿に指を滑らせる。

ああ、こないだ来たこいつね。

 

「エントリーナンバー3、深…じゃなくて匿名希望さん。

事情があって顔出し不可だから、ステージに上がれないの。

そちらの窓のそばを見てもらえるかしら」

 

全員、あたしが手で示した方を見ると、

地球の裁判で、被害者や告発者のプライバシーを守るための、

キャスター付き仕切りの中にいる女性が。

 

誰だあの人 知らね 今回初登場ってオチじゃねえよな

 

「ジョゼット、彼女に例のマイクを」

 

「はい、ただいま~……どうぞ」

 

《ありがとうございます……》

 

変声機能付きマイクを渡すと、彼女が一言挨拶をした。

 

「えーと、彼女は事情があって身元を明かせないから、そうね……仮にSさんとするわ。

めったにないチャンスで自分の胸の内をさらけ出して」

 

《はい……私は最初、何を企んでいるか、敵か味方かもわからない、

謎の実力者ポジションとして、物語の締めに何度か登場していました。

ですが、だんだん登場機会は減っていき、

最後には取ってつけたようなギャグキャラに方向転換……!

生前から親交のあった、魔王の次にボスキャラになるものと思っていた私は、

驚きを隠せませんでした。

実際、読者から頂いた感想からも戸惑いがにじみ出ていました》

 

オオーゥ……(アメリカホームドラマのあれ)

 

「何か、奴に言いたいことはある?」

 

《これ以上使い道のない不幸なキャラを作らないでください。

簡単でいいのでプロットを作ってください。

1話でいいので、作った以上、ちゃんと活躍させてあげてください。

私が訴えたいのはそれだけです……ううっ》

 

ひでえ… 鬼畜の所業だぜ 私もいつああなるのか…

 

Sさんがハンカチで涙を拭う。

確かに彼女は、最近迷走を続けてるこの企画の犠牲者と言えなくもないわね。

だから分厚い設定資料集買ってまで、

ダンガンロンパと同時進行するのは無茶だって言ったのよ。

今も隣で澪田唯吹がこっちに向かって敬礼してる。本当どうしようもない奴ね。

可哀想だけど次のプログラムに移らなきゃ。

 

「えー、まだまだお話は聞き足りないけど、次のプログラムに行くわね。

ええと今度は、“斑目里沙子に物申す”?なにこれ。

予定では、あたしの戦いの軌跡を紹介する予定だったんだけど」

 

「悪いな、里沙子。こっちで勝手にプログラムの内容を少し変更させてもらった」

 

「ルーベル!?どうしてあんたが!」

 

彼女がなんか紐で縛った大量の手紙らしきものを持ってる。

 

「実は私のところに大量の嘆願書が届いてたんだよ、お前の被害者からな。

直接お前に渡すと握りつぶされるに決まってるからって、

お目付け役の私のところに来たってわけだ」

 

「聞いてないわよ!勝手なことしないで!」

 

「エントリーナンバー1。悪霊使いベネット。……まだ来てねえな」

 

ルーベルが会場を見渡していると、遠くから大声が聞こえてきた。

 

──斑目エエェェ!里沙子オオォ!!

 

そして、ドアを思い切り開け放って、声の主が現れた。

 

「はぁ、はぁ、ようやく会えましたわね……

ここで逢ったが百年目、積年の恨みを晴らしてくれますわ!」

 

「ああ、塩人形じゃない。施設は楽しい?」

 

「楽しいわけないでしょう!私はエビルクワィアー随一の悪霊使い・ベネット!

人間の幼生体などと……あ!また名乗りをコピペで済ませましたわね!?

私達キャラにとって一番大事なつかみを!」

 

「ふぅ、誰かと思えば塩人形じゃないの。こいつなら害はないわね。

適当に食べ物つまんで楽しんだらホームに帰りなさい」

 

「お断りしますわ!今日、ここに来るため、1日外出権を得るために、

毎日必死でいい子を演じていましたのよ!

ガキ共とおままごとをしたり、学芸会のお芝居で木の役をしたり、

手をつないで輪になって歌ったり……

齢100を過ぎて子供のお遊戯をさせられる屈辱があなたにお分かり!?

嗚呼、思い出すだけでも吐き気がしますわ!」

 

「気分が悪いならそこのドアからトイレに」

 

「お聞きなさい!魔女の力を無くしても、この恨みが消えることはなくってよ!

あんな子供の刑務所みたいなところに、私を放り込んだお前は絶対に許さない!」

 

その時、ベネットがバーベキューの鉄串を抜いて、あたしのところへ走ってきた。

一瞬空気がざわっとなる。本当に一瞬だけ。

どれくらい一瞬かというと、必死にローストチキンにかぶりついてるやつが、

口を閉じるのをほんの少しの間やめた程度。

こんなのにクロスハック使うのも馬鹿馬鹿しい。

ステージに上がったら蹴飛ばしてやりましょう。来た来た。

 

「覚悟なさい、斑目里沙子……!」

 

「もう夜なんだから先生も心配してるわよ。

ご馳走なら箱に詰めてあげるから早いとこ……」

 

「えっ……」

 

あたしが喋ってる途中で、塩人形が呆然とした様子で鉄串を落とした。

カラン…という金属音に、全員が食事の手を止めて鉄串を見る。

なんであたしの安全より鉄串に興味を引かれるのかしら。

 

「せ、“せんせい”!?キ、キキキキキィィィ!!せんせいは嫌アァ!

ごめんなさい!ベネットいい子にしますからぁ!」

 

突然うずくまって髪を振り乱し、意味不明なことを叫び散らす塩人形。

一体なんだってのよ。

 

「おい、里沙子。お前、ちゃんとまともな施設を選んだんだろうな……?」

 

「選択肢がなかった。ハッピーマイルズに児童養護施設は1箇所だけだったから。

悲鳴を上げても誰にも聞こえないような人里離れたところよ」

 

「シャレにならん事件の臭いがするぞ。ちゃんと明日にでも面会に行ってやれ」

 

「気が向いたらね。とにかく、塩人形がうるさいから迎えに来てもらうわ」

 

あたしはスマホでベネットの児童養護施設に電話して、

パニックを起こしてるから迎えに来てくれるよう頼んだ。

職員が来るまで暇だったから、サンドイッチをかじって待っていた。

ああ、もう、塩人形黙ってよ。あんまり叫びまくると舌を噛むわよ。

そのうち、ドアのノックが聞こえたから、職員を迎え入れる。

 

「ビリジアンリボン財団管轄、ハッピーハッピーこども園です。

パニック症状を起こした児童はどちらに?」

 

「ご苦労さまです。途中まで皆と食事を楽しんでいたのですが、突然あんな風に……

わたくし共にも原因がわからなくて」

 

そっとステージを指差す。

 

「お手数をおかけしました。すぐに連れ帰って“治療”しますので」

 

「よろしくおねがいします」

 

白衣を着た筋肉質の職員達が塩人形を肩に担いで連れて行く。途端にやつが泣きわめく。

 

「帰りたくないよー!里沙子でいいからたすけてー!うわああん!」

 

「こら、静かにしなさい!大人しくしないと“おしおき”が待ってるぞ!」

 

「おしおき……?いやー!!おしおきは、もういやあぁ!!」

 

ドアが閉じられるとベネットの悲鳴が徐々に遠くなっていく。

ようやくうるさいのがいなくなった。さて、休憩は終わり。

 

「ルーベル。あんたが勝手にプログラム変えたんだから、

責任持って司会進行しなさいよ」

 

「わかってるって。次のお客さんはっと。皇帝さんに腹を切断されて死んだヘクサーだ」

 

「あいつ?あれも散々出まくったんだから、呼ばなくても良かったんじゃない?」

 

その時、ステージの上に赤い旋風が巻き起こり、あっという間に人間の形になった。

重い鉄の手枷に囚人服。かつて戦った宿敵が現れた。

……けど、番外編じゃ壮絶なバトルとかないから。

 

「思い出した。あいつね。

ナイトスラッシャーことタグチさんにも招待状は出したんだけど、

流石に皇国からは遠すぎて来られなかったの。

今は元の修理工に戻って、奥さんと子供とよりを戻して楽しく暮らしてるらしいわ」

 

「それは素晴らしいことですね。

ひとつの勇気の形を示してくれた彼が幸せになってくれたのは、とても喜ばしいです」

 

「今回はセリフ数少なくてごめんね、エレオ。番外編ってこういうもんだから」

 

あたし達がどうでもいいことをだべってると、ヘクサーが語りだした。

どいつもこいつも勝手に話進めるわね。

この企画の主人公があたしってこと忘れてないかしら。

 

「へへっ……死んだ後地獄からこっちを見てたんだけどよう……

どうしてもわかんねえ事があんだよ。

その答えを求めてクソみたいな地獄から戻ってきたんだ……」

 

「そのままUターンして血の池地獄に帰ってくれないかしら」

 

「ああ。ひとつ質問に答えてくれりゃ、すぐに帰るさ。

三カ国同盟?くだらねえモン作りやがった現世にはなんの未練もねえ」

 

「じゃあ、何が知りたいのかしら。

番外編特権で生き返ったからって、また暴れたらWordファイルごと削除するわよ」

 

「……第66話」

 

「それはっ!!」

 

まさか誰もが忘れてるそれを持ち出されるとは……!

 

「なになに?“ウィスキー買ったけど、この猛暑が収まるまでは控えることにしたわ。

お願い理由は聞かないで。”……理由ってなんだ」

 

「“聞かないで”っていう言葉はね、

特定の事柄について尋ねることをやめて、っていう意味なの。

国語辞典を一冊読破してから出直してらっしゃい」

 

「いーや、私も気になる」

 

「里沙子さんに何があったのか心配です」

 

「そうですよ~仲間なんですから隠し事はなしですよ~」

 

「お姉ちゃん、何があったの?」

 

「里沙子お姉さま、パルフェム達を信じて!」

 

「里沙子の秘密ねぇ。私も気になるわ、ウシシ!」

 

りーさこ! りーさこ! りーさこ!

 

このアホ共……!こんな時だけ一致団結しやがって!ヘクサーは、笑っている。

まさかこのためだけに生き返ったの!?このクソ暇人め!

 

「わ、わかったわよ。言えば良いんでしょ……?」

 

おおーっ!

 

あたしはマイクを取ると語り始めた。

 

「あれは暑い夏の夜だったわ。買ってきたウィスキーをちょっと飲みすぎたの。

瓶から見える減り具合から気づいた時にはもう手遅れ。

フラフラになったあたしは、そのままベッドに倒れ込んで寝たの」

 

「ほう……それで?」

 

「よ、翌朝気がついたらとんでもないことに気づいたの。

パジャマがパンツ辺りがびしょ濡れになってたのよ!

でも、断じて言うけど、寝小便かどうかはわからないわ!

臭いを嗅いだけど、まったく臭わなかったもの!

つまり、猛暑による大量の寝汗だという可能性も決して排除できない!」

 

「プークスクス……里沙子がおねしょだって!」

 

「違うって言ってるでしょう、ヘタレ吸血鬼!

全く臭わなかった以上、寝汗であるという可能性も捨てきれない!

大事なことだから2回言った!本当に全く臭わなかったのよ!」

 

寝小便(笑) ゲラゲラゲラ ゲロの方がまだマシね あれで24らしいぜ

 

「黙れー!腐れモブ共!」

 

「落ち着け。だから酒は控えめにしろと言ってたんだ」

 

「本当にちょっとだったのよ!トリスの瓶でいつもより1cmくらい水位が浅いくらい!

きっと、絶対、猛暑のせいよ!あたしはちっとも悪くない!」

 

「一月くらい前、里沙子さんのパジャマが異様に濡れていたのは、

そのせいだったんですね……」

 

「お黙りジョゼット!あんたはあたしの味方だけしてればいいの!」

 

「クックック……それだけ聞けりゃあ十分だ。俺は地獄に戻るぜ。

悪鬼との潰し合いも案外楽しいもんだぜ、じゃあな」

 

「あ、お待ち……」

 

あたしが呼び止める前に、ヘクサーはまた赤い風になって消えてしまった。

会場を見渡すと、ニヤニヤと笑いながらあたしを見るたくさんの目。

 

「で、出てけー!パーティーなんかクソ食らえよ!」

 

今度こそあたしは天井に向けてピースメーカーをぶっ放すと、

みんなドアに殺到して逃げていった。ご丁寧にワインボトルだけは抱えていって。

 

「あー、里沙子さん!とうとう本物の銃を撃ちましたね!?

ちゃんと穴は修理してくださいね!それまでご飯抜きです!」

 

しばらくその場に立ち尽くして、若干神経の高ぶりが落ち着いたあたしに残されたのは、

食べ残しだらけのパーティー会場。そして手元のピースメーカー。

みんな、もう、部屋に戻っていった。

 

 

 

トントントン。翌日。

あたしは屋根に登って、ひとり寂しく、

昨日勢い余って発砲して穴を開けた屋根の修理をしていた。

トントントン。素人仕事で板を打ち付け、ただ穴を塞ぐ。

そんなあたしは独り言をつぶやく。

 

「酒って、どんな副作用があるかわかったもんじゃないわ。みんなも気をつけてね。

あたしは手遅れだったけど……とにかく、今回の評判を見て、

今後も機を見て番外編をやる、もしくは二度とやらないかを決めるわ。

率直な感想プリーズ。はぁ」

 

“里沙子さーん!まだ光が漏れていますよ!ちゃんと直してくださいね!”

 

「わかってるわよ!」

 

 


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