面倒くさがり女のうんざり異世界生活   作:焼き鳥タレ派

92 / 143
謎のファンレターが来た話
遺伝子組み換え作物って結局害なの?誰か教えて


最初の異変が起きたのは1週間前だった。

デスクで単行本になった“玉ねぎくん(1巻)”を読んでいると、ドアを叩く控えめな音。

 

“お姉さまー。お手紙が届いていますわ”

 

「あいよ。ちょっと待って」

 

椅子から立ち上がり、パタパタとスリッパを鳴らしながらドアを開けると、

半纏を着たパルフェムが。彼女が一通の封筒を渡してきた。

 

「郵便受けにお姉さま宛てのものが」

 

「ありがとー。どれどれ……ジェニファー?誰かしら」

 

「お知り合いではありませんの?」

 

「ううん、全然。読んでみるしかないわね。とにかくありがとう」

 

「それでは、パルフェムはこれで」

 

「風邪引かないようにねー」

 

とりあえずあたしはデスクに戻って、全く覚えのない差出人からの封筒を眺める。

表の住所や名前は子供の字。封を切って中の便箋を取り出して広げた。

 

『りさこ お姉さん こんにちは。 わたしは ジェニファーです。

本を よみました。 かいぞくと戦う お姉さんが すごく かっこよかったです。

お姉さんは いろんなところを ぼうけん してるんですね。

わたしも 大きくなったら がいこくに 行ってみたいです。

そして お姉さんのように つよくて かっこいい ガンマンに なりたいです。

これからも わるい人を やっつけてくださいね。

ジェニファーより』

 

あらやだ、強くてかっこいいですって。照れるわねえ。

海賊と戦ったのは、確か魔国から帰る途中だったわね。

歴史的に見れば割と最近の話だから現代史の教科書を読んだのかしら。

 

だけど所々情報が間違ってるわね。

ガリアノヴァ艦隊を殲滅したのは幽霊船ジャックポット・エレジーだし、

そのジャックポット・エレジーにとどめを刺したのは仮面ライダーに変身した皇帝陛下。

 

さて、誰とも知れぬ女の子に夢を与えてしまったからには返事を書かなきゃね。

こればっかりは面倒くさいとか言ってられないわ。

引き出しから筆記用具を出すと、今度はあたしの手紙をしたためる。

 

『こんにちはジェニファーちゃん。里沙子です。

お手紙ありがとう。あの海での戦いは大変だったけど、

実は、かいぞくとゆうれい船をたおしたのは、皇帝へいかなのよ。

かいぞく船はゆうれい船に粉々にされたし、ゆうれい船は仮面ライダーになった

皇帝へいかが火の玉になって体当たりしてやっつけたの。すごいでしょう?

だから、大人になったら、もんくを言わず、ぜいきんを払いましょうね。

あたしもそうしてるから。

あと、けん銃を持つのは、もう少し大きくなってからにしたほうがいいわ。

銃をうつと、手がびりびりするし、火薬のにおいが手についてなかなか落ちないの。

それに、これからは銃をおぼえるより、

勉強をがんばっていい大学に入ったほうが、もうかるわ。そういう時代なの。

わるい人を見たら、戦おうとしないで、兵隊さんに言いましょうね。

元気でね。斑目里沙子』

 

「よし!」

 

未来ある若者に役立つ一口アドバイスを添えた返事を書き終え、

ジェニファーの住所を書いた封筒にしまい、糊で閉じる。

うちには封蝋なんて洒落たもんは置いてない。

ちょっくら街まで手紙を出しに行きますか。

最寄りの郵便局は役所の一部署で、窓口も同じカウンターにある。

街に入ってすぐトンボ返りできるから野盗さえ出なきゃ割と楽。

 

今日は連中が出なかったから、街までの道のりはカットするわよ。

役所に入ったあたしは、“郵便受付”の看板が掛かったカウンターに並んで、

受付のお兄さんに手紙を渡した。

 

「郵送をお願い」

 

「はい。送り先は……帝都ですね。帝都宛ての封書ですと、3Gになります」

 

「これで」

 

あたしが3Gを支払うと、局員が消印を押してから手紙を黄色い収集箱に入れた。

 

「確かに受け付けました。ご利用ありがとうございます」

 

「よろしくね~」

 

一仕事終えたあたしは、他に用もなかったから、さっさと教会に戻った。

世のためになることをすると疲れるわ。

それでも悪くない気分で私室に戻ったあたしは、夕食までぐっすり昼寝をした。

 

 

 

 

 

翌日。あたしは読みかけの玉ねぎくん(1巻)の続きを読んでいた。

 

「描き下ろしのキャベツくんスピンオフもなかなか面白いわ。

ピンチになると春キャベツから冬キャベツに変身するあたり、

特撮モノ意識してるのかしら」

 

その時、まだ読み終わらないうちに1階からルーベルの声が響いた。

 

“里沙子ー!お前に手紙が届いてるぞー!”

 

「持ってきてー!」

 

“取りに来ーい!”

 

「ケチー!」

 

“動けバカー!”

 

これ以上大声を出すのがしんどくなったから、

億劫だけどコミックを置いて立ち上がり、部屋から出た。

1階に下りると、ジョゼットと買い出しから戻ったばかりのルーベルが

封筒を押し付けてきた。

 

「ほらよ。寒いからって引きこもってないで、たまには散歩でもしろ」

 

「ありがと。今は寒すぎるから夏まで待って」

 

「夏になったら暑いから冬まで待って、だろ?

お前の言動は読めてるっていうか、読めすぎてマンネリなんだよ。この企画にしても」

 

「それ気にしてるからあんまり言わないで。本日のお手紙は、と。……ラッセル?

また変なやつから手紙が来た」

 

「知り合いじゃないのか」

 

「いいえ、全然!!」

 

驚きのあまり昔観たミュージカルのセリフで答えてしまったわ。

住所の文字はやっぱり子供のもので帝都の消印が押されてる。

害はなさそうだから一応読んでみることにした。

私室の椅子に戻り、封筒にレターオープナーを通す。中から出てきたのは一枚の便箋。

あたしに何の用かしら。

 

『こんちは!オレ、ラッセルっていうんだ。父ちゃんは魚屋。

里沙子姉ちゃんの本、すっげー面白くてクラスのみんなも全員読んでる。

この前学校で読んでたら、先生に取り上げられそうになってヤバかったけど。

オレも里沙子姉ちゃんみたいに、拳銃一丁でギャング団と戦ったり、

目が一つの巨人を倒したりするカッコいいヒーローになりてーんだ!

どうすればそんなに強くなれるのか教えてくれよ!

父ちゃんは魚屋を継げってうるさいけど、オレは世界最強の賞金稼ぎになりてえ!

そんで悪い奴や強いモンスターを倒しまくって大金持ちになるんだ!

ラッセルより』

 

ああ。思わず天を仰ぐ。また間違った情報が流れてる。

教科書の出版会社もしっかりしなさいよ。子供が誤った歴史を覚えたらどうするの。

“一つ目の巨人”は魔王編に登場したサイクロプスのことだと思うんだけど、

ギャング団ってのがさっぱりわかんない。

いつかうちに攻めてきた野盗軍団のことかしら。

でも教科書に載せるほどの出来事とは思えないのよね。

仕方がないからとにかく返事を書く。

 

『ラッセル君はじめまして。お便りありがとう。斑目里沙子です。

君が読んでる本にひとつ間違いがあったから伝えておきますね。

あたしはギャング団と戦ったことはないの。そういう悪い人の集まりは

軍人さんが殺してくれるから、わざわざあたしが戦う意味はないでしょう?

お父様が魚屋さんということだけど、立派な職業だと感心するわ。

暑い日も寒い日も、毎朝早くから港に仕入れに行くなんてあたしには無理。

君は賞金稼ぎになるのが夢なんですってね。夢を持つのはいいことだけど、

あたしとしては魚屋さんを継いだ方が賢いと思う。

賞金稼ぎは君が思っているほど楽しい仕事じゃないわ。

痛い思いをして1Gも儲からないことなんて珍しくないし、死ぬ人だって大勢いる。

仕事が見つからなくて困ってる人がたくさんいる中、

お父様の魚屋という仕事場が用意されてる君はとてもラッキーよ。

今は納得できないかもしれないけど、いつかわかる時が来るわ。勉強頑張ってね。

斑目里沙子』

 

「書けたー!」

 

直筆で手紙を書くという、めったにしない作業を終えたあたしは、

湧き上がる達成感に声を上げて、背もたれに寄りかかった。

ラガーでもエールでもどっちでもいいから祝杯を上げたいもんだけど、

ルーベルに怒られるかジョゼットがチクる。

 

また返事を封筒に入れて、糊で封をする。

今度はジョゼットに郵便局に持って行かせようと思ったけど、

ジョゼットが街に行くには護衛がいる。その護衛はルーベル。

ビールと同じ理由でダメね。

”散歩ついでに自分で行け”って言われる未来が見える。

 

それに、なんたってあたしへのファンレターなんだし、

最後まで責任持って返事を出すのが筋ってもんよね。

ヌフフ、ファンレターか。あたしもすっかり有名になったものね。

や~ね、名声は要らないものランキング第3位なんだけど、

ちびっ子からお手紙もらっちゃったら返事をしないわけには行かないじゃな~い?

 

糊が乾いた封筒を見て、思わず顔がニヤける。たまには悪くないものね。

あたしはガンベルトを巻いて街まで出かけたけど、今日も野盗は出なかった。

悪いけど、今回はあいつらの出番はなさそう。難なく街の役所まで辿り着けた。

郵便窓口に手紙を差し出す。

 

「郵送お願ーい」

 

「少々お待ちを。……帝都宛てですので3Gですね」

 

「はいな」

 

「では確かに。ご利用ありがとうございました」

 

「よろしくー」

 

係員が封筒に消印を押して収集箱に入れるのを見届けると、

相変わらず激混みの市場を横目に街を後にした。

 

 

 

 

 

なんかおかしいな、と思ったのはその2日後。また手紙が来たのよ。

コンコンとドアをノックした後、下の隙間から差し込まれた。

この無口対応は多分カシオピイア。今度はハガキ。

また一人青少年があたしの魅力に気づいてしまったのね。

デスクに持っていって読んでみる。あら、今度は大人の字ね。

裏返して読んだらこんな感じ。

 

『マリアンヌざます。あなた方の不健全で不道徳な書物に対し、抗議の意を示します。

息子のベッドの下に怪しい物があったので、内容をチェックしたところ、

それはまあ、口にするのもはばかられるいやらしい描写ばかり!

破り捨てる前に、この本の出版差し止めを求めるべく、抗議文を書いた次第ざます。

あなた方が発行している子供に有害な本を今すぐ回収し教育委員会に謝罪すること。

この要望に対して誠意ある回答が得られない場合は、教育に携わる一人の親として、

訴訟も辞さないことを覚悟しておくざます!』

 

あー、どこの世界にもいるもんなのね。子育てに失敗したと思い込んだら

他人や社会に責任をなすりつけないと気が済まない自称教育者。

年頃の男子ならエロ本のひとつやふたつくらい読むでしょうに。

相手にするのもバカバカしい。

丸めてゴミ箱に捨てようかと思ったら、ふと気になる表現に気づいて手が止まった。

 

“いやらしい描写”ってことはエロ本で間違いないけど、

それじゃあジェニファーやラッセルが読んでたのって一体なに?

どう考えても漫画や教科書としか思えないんだけど。

 

一番気になるのは最初の方の“あなた方”。

あたしが誰かと組んでいやらしいことしてるとでも言いたいわけ?

さっぱりわけわかんない。何か手がかりが返ってくるかもしれないから、

腑に落ちない気持ちを抱えながら、マリアンヌというババアにも返事を書くことにした。

 

『拝啓

 立春を過ぎても寒さの厳しい今日此の頃、マリアンヌ様におかれましては

ご清祥のこととお喜び申し上げます。

 さて、この度はハッピーマイルズ教会の活動に貴重なご意見を賜り、

感謝の念に堪えません。

しかしながら、わたくしと致しましてはマリアンヌ様が主張しておられる書籍の

出版に関わった事実はなく、そもそも執筆活動を行った事もございません。

 よって、あなた様の要望に応えることは不可能であり、その結果生じた

如何なる損害についても当教会すなわち責任者であるわたくしはその責を負いかねます。

この返答に対しご納得頂けない場合、訴訟手続はマリアンヌ様に一任致しますので、

折返し裁判の日程等ご連絡頂きますようお願い申し上げます。

 それでは、法廷でお目にかかれることを楽しみにするとともに、

略儀ながら書中をもちましてお礼とさせていただきます。

                                     敬具

  2019年2月11日

                                斑目里沙子

 

追伸 手紙には頭語と結語、更に言えば時候・結びの挨拶というものがございます。

これらを省くことが許されるのは精々小学生までであります故、教育云々を語る前に

まずはマリアンヌ様ご自身が常識的なマナーを身につけられる方が宜しいかと存じます』

 

「こんなところね。書き方が決まってる分、形式的な手紙のほうが楽なのよね。

特にこういうバカをあしらう時には」

 

あたしは宛先を書いた封筒に、手紙とガジェット作りで余った鉄くずを入れて封をした。

手紙もこれで3通目。別にマリアンヌが訴訟を起こそうが止めようがどっちでもいい。

裁判で件の本が見られるわけだし、本当に無関係だからあたしが勝つに決まってる。

金も余ってるから弁護士も雇い放題。

 

家を出て街道を歩きながら考える。やっぱり変なのよね。

同姓同名の人違いって線も考えたんだけど、

みんなうちの正確な住所書いて送ってきてるし、

その割には読んだ本の内容が微妙に違ってるの。

 

そもそもハッピーマイルズ教会の住所をどこで知ったのか。

確かにこれまで不本意ながら世間の皆様をお騒がせして悪目立ちしてきたけど、

なんで今になってこんな訳のわかんない状況に陥ってるのかしら。

 

考えてるうちに街に着いちゃった。口をへの字にしながら役所に入る。

郵便窓口の受付に重い封筒を置く。中のものがジャラジャラと音を立てた。

 

「また帝都に手紙っていうか封筒を送りたいの」

 

「こんにちは。これは……少しお待ち下さい。この重量で帝都宛てですと、10Gです」

 

「あ、料金は着払いでお願い。どうしても欲しい部品らしいから速達で」

 

「それでしたら2G加算で12Gです。先方の了解は頂けてますか?」

 

「もちろんバッチグーよ。なるべく早くおねが~い」

 

「かしこまりました。ご利用ありがとうございます」

 

3度目の手紙を出し終えたあたしは帰路に着く。ん、手紙に同封した鉄くず?

なんてことないわ。重くして郵便料金を高くするための嫌がらせ。

そいつを着払いで押し付けたってわけよ。

あたしからの返事だと知ったら受け取らざるを得ないだろうからね。

 

それはともかく、とりあえず役所から出たけど、

また奇妙な手紙が届いたら本格的な調査に乗り出す必要があると思う。

直接送り主を訪ねて例の本を見せてもらうことも考えなきゃいけない。

不安な気持ちのまま教会に帰った。

その日の晩は憂さ晴らしにエールを一本多めに飲んだ。

ルーベルに事情を話したら特別に許可が出たのよ。

 

「最近よく外出するから散歩する気になったのかと思ってたが、

そんな事になってたのか」

 

「そーなのよ。初めはただのファンレターだと思ってたんだけど、

身に覚えのない抗議文まで来るし。それに、どうも3人共違う本読んでるっぽいのよね」

 

「へぇ、里沙子に請求書以外の郵便物が届くなんて珍しいこともあるものね」

 

「はいピーネ黙る。世の中には幼くして大人の魅力がわかる子供達もいるのよ。

ぬいぐるみと戯れてばかりいるお子ちゃまと違ってね」

 

「なんですってー!」

 

「ああ、はいはい。里沙子もピーネもケンカはやめろ。

ちゃんと子供に返事を出したから里沙子はエール2本飲んでいいぞ。

ものぐさなお前にしてはよくやった」

 

「マヂで!?やったわ、神様も世の中も普段のあたしの行いを見ているものなのね!」

 

「手紙に返事を書くなんて普通のことじゃない。

それしきのことで褒められて喜んでちゃ世話ないわ。どっちが子供なんだか」

 

「エールの味も知らないちびっ子が何をほざこうが痛くも痒くもないわ」

 

「だからやめろって言ってるだろ、うるさい連中だな」

 

まあ、さっきも言ったけど、夜はこの前買った干し肉と、

柑橘系フルーツの香りが爽やかなエールで幸せになったの。

心地いい酔いのおかげで怪現象を忘れて、気分良く眠れた。

 

 

 

 

 

“二度あることは三度ある”をオーバーフローして、四度目が来た。

その封筒に押された消印は、またしても帝都のもの。

表にはうちの住所。裏にはPN:ランランルー。大人の字。

もう何も言わずに手にした封筒を開封する。

中の便箋に書いてあったメッセージは以下の通り。

 

『里沙子さんこんにちはー。本名は恥ずかしいから、ランランルーって呼んでね。

えーっと、何から話そうかなぁ。とりあえず、新刊読みました。

相変わらずドスケベですね(褒め言葉)!

里沙子さんが、夜の教会で仲間達とあんなことやこんなことを!

三つ編みメガネの女の子が乱れに乱れる。マリア様が見ているというのに!

これはもうね、合法的な児童ポ○ノですよ!ああいやらしい(褒め言葉)!

里沙子さんは戦いでは攻めなのに、あっちの方は受けなんですね。

どうしようもなくランランルーの劣情を掻き立てるド迫力24ページが

フルカラーで20Gはとてもお買い得だと思います。

ちなみにランランルーとしては、もっと道具を使ったプレイを希望します。

夏の新刊も楽しみにしてますので、先生にもよろしくお伝え下さい。

それでは、今夜もお楽しみくださいね。私も楽しみます。ランランルーより』

 

「キエアァァァァアアア!!」

 

怒りに任せて手紙を縦半分に破き、椅子の上で暴れる。

 

「誰が合法○リだぁ!!あたしをいくつだと思ってる!24、24、斑目里沙子は24!!」

 

突然叫びだしたあたしの声を聞きつけて、みんなが部屋になだれ込んでくる。

 

「おい、どうしたんだ、いきなり大声出して!子供ら怯えてるぞ!」

 

「お姉ちゃん……!落ち着いて」

 

「そうだ落ち着け、アラサーにはまだ時間がある!」

 

「落ち着けるわけないでしょうが!

知らないところで知らない誰かに痴女扱いされてるというのに!

あんた達も被害者なのよ、それ見なさいよ!」

 

床に捨てた手紙を指差すと、ルーベルが拾い上げてつなぎ合わせた。

同時に顔をしかめる。

 

「こりゃあ、ひでえな……

まるで私達を題材にしたエロ本がどこかで売られてるみたいじゃねえか」

 

「“まるで”じゃなくて売られてるのよ、実際!この前のクレームも

ランランルーが読んでる本に対するものだと仮定すれば説明がつく!」

 

「やだ…ワタシ達が、お姉ちゃんを……」

 

真っ赤になってカシオピイアが手紙を捨てた。

 

「しかし、子供達が読んでいた本はどうなる?

そいつは単なるお前の冒険物語だったんだろ?」

 

「そんなこと知らないわよぉ!

(褒め言葉)つけりゃ何言っても許されると思うなバカヤロー!!あああああ!!」

 

冷静なルーベルが手紙を拾い直して考え込む。

あたしがまたデスクに八つ当たりしていると、エレオとジョゼットも部屋に入ってきた。

 

「どうなさったんですか、里沙子さん!?」

 

「すごい声が1階まで聞こえてきました……」

 

「なんで、なんで、あたしばっかりこんな目に……」

 

その時、手紙の内容を分析していたルーベルが、重要なポイントに気がついた。

 

「なぁ。最後の方に書いてある“先生”って誰のことだ?

里沙子の知り合いに心当たりはないか?

お前はともかく私達のことまで知ってるってことは、どこかで会ってる確率は高いぞ」

 

「はっ!!」

 

そこである可能性が脳裏をよぎった。

知らない奴がここの住所を知ってるという事実。

内容がバラバラで、フルカラーすなわち絵で書かれている書物。

そして“先生”という人物の存在。もう間違いない。

 

あたしは立ち上がると、ガンロッカーの鍵を開け、

ヴェクターSMGとレミントンM870を取り出した。

重装備のアタシを見て、エレオが恐る恐る尋ねてくる。

 

「あのう、里沙子さん。それで一体何を?」

 

「エレオ、悪いけどあたしを帝都に連れてって」

 

「それは構いませんが、そろそろわたし達にも状況を教えてくれませんか?

ここ最近、里沙子さんの様子が変なので……」

 

「知らないほうがいいわ。犯人潰しに赴くのよ。帝都に血の雨を降らせてやるわ」

 

「はぁ…あまり危険なことはなさらないでくださいね?」

 

「心配しないで。あたしにとっては危険じゃないわ」

 

「心配しかできねえよ。私達もついていく」

 

「勝手になさい」

 

エレオの白い手を掴んで、あたし達は輪になった。

神の見えざる手で、光の粒子になり、帝都の大聖堂教会へ運ばれていく。

そこで思いもよらない…ごめん嘘。だいたい予想した通りの真実を目にする事になった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。