図書館島の司書長様   作:粗製リンクス

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投稿します。ゆっくりとではありますが更新していきますので楽しんでいただければ幸いです。


プロローグ

 世界には魔法が存在する。

 それは、昔から絵本や、漫画に出てくるような子供の夢を詰め込んだ魔法から人が人を

害する事に特化したような危険極まりない魔法まで様々なものが存在する。

 

 しかし、魔法が世界に普及しているかと問われればそれは違う。

 魔法は確かに存在する。しかし、魔法はそれを扱う技能を持つ者達によって秘匿され続

けているからである。それは、魔法を扱うのに必要な魔力を持つ人間の数が限られている

ことに加え、一つ何かを間違えば災厄を起こしうるものだからである。

 

 先に述べたように魔法には簡単に人を害せるものが数多く存在する。

 そう、正に拳銃のように軽い動作でだ。

 

 拳銃ならば科学が発展した昨今の社会ならば防弾チョッキ等、弾丸を防ぐ術もいくつか

存在するが、魔法にはそれが無い。

 

 魔法は魔力と呼ばれる不可視の力を用いて発動されるものが殆どであり、それらは実体

を持たず、ただ純粋な力の奔流により周囲に破壊を齎す。

 

 これが、魔法を扱うもの同士であるならば、力には力というように放たれた魔力に対し

魔力を用いた力場で防ぐこともできる。

 

 しかし、これは技能を持つ者に限られる。

 魔力を持たない人間には防ぐ術がないのである。

 

 こういった理由により、魔法使い達は魔法という存在を秘匿し続け、また、魔法が露見

しないように昔日の魔法使い達は地球とは違う位相に新たな世界、魔法世界を生み出し、

そこに多くの魔法使いが移住した。また、表の世界に残った魔法使い達は自身らの間での

み適応される法を作り、魔法を扱うとはどういった事か、魔法使いはどうあるべきかを幼

い魔法使いの子供達に教える為の学び舎を制作した。

 

 そうして、魔法は世界に存在しながらも、表社会に出ることなく裏で脈々と受け継がれ

ていた。

 

 時は流れ、表には飛躍的に発展を遂げた科学技術が、裏には脈々と受け継がれ、時と共

に精錬されていった魔法技術が世界を支えていた。

 

 進歩した科学技術と魔法技術。これらにより世界の不思議は次々とその原理を解明され

ていく事となる。

 

 しかし、世界は広く大きい。

 

 どれほど技術が進歩しようとも未だに世界には解明できない謎は残っているのだ。 

 

 例えば、それはエジプトにあるピラミッド。あれは科学技術が発展した現代でも如何よ

うな方法を取れば古代の技術力であのように美しく建造されたのかが判明していないとい

う。

 

 例えば、メキシコにあるパレンケの石棺。これは古代マヤ文明の遺跡から発掘された石

棺なのだが、驚くべきことに石棺の表面には古代の宇宙飛行士と思われる人間がロケット

を操縦している姿が彫られていたという。

 

 例えば、聖ヨゼフの階段。これは支柱が無い宙吊りとなった木製の螺旋階段であり、こ

の階段は物理学的に何故壊れないのかが未だに解明されていないという。

 

 そして、例えば『取り替え子〈チェンジリング〉』。

 生まれたばかりの赤子が妖精によって連れ去られ、数日後には帰ってくるのだが、赤子

は何かが変わってしまい帰ってくると言う。

 

◆◆◆◆

 

 魔法世界に存在する都市の一つ。名をアリアドネー。魔法世界における自治を認められ

た独立学術都市国家である。

 

 アリアドネーは学術都市の名に相応しく数多くの魔法研究施設が存在する。

 そんな多くの研究施設があるアリアドネーの中でも名物と呼ばれる建物が二つある。

 

 一つはアリアドネーを防衛する為の魔法騎士を育成する魔法騎士団候補学校。

 そして、もう一つはアリアドネー、いや魔法世界随一と言われる程の蔵書量を誇る大図

書館、その名をミアミル大図書館である。

 

 ミアミル大図書館の職員が休憩の時に使用する一室。そこに一人の青年がいた。

 歳の頃は二十歳に届くか、届かないかといったくらいである。

 青年は特徴的な髪の色、燃え盛る炎のような朱髪であった。

 もちろんそれも目立つのだが、なによりも目を惹くのは青年の耳であった。

 そう、青年の耳は短くはあるが尖っていた。

 

 この特徴的な容姿を持つ青年の名をルキスと言った。

 ルキスは此処、ミアミル大図書館で働く司書の一人である。

 

 ルキスは昼食であるサンドイッチを食べ終えると、自身のカバンから一通の手紙を取り

出す。手紙の差出人はルキスにとって最も大事な家族である少女からだった。

 

 ルキスが手紙を開くと、手紙から仄かに光が灯り、一人の少女の姿を紙面に投影した。

 

 手紙から人の姿が投影されるなど現実ではまずあり得ない事である。

 しかし、此処は魔法世界。科学技術ではなく魔法技術の発達した世界である。

 故にこの手紙は彼ら魔法に関わる者にとっては極普通のものなのである

 

 紙面に映しだされた少女は10歳に届くか届かないかと言ったくらいであり、ルキスよ

りも鮮やかな赤い髪と意思の強そうな瞳が特徴的だった。

 

『兄さん、久しぶり。元気にしてる? ご飯はちゃんと食べてる? 洗濯物は溜めてない

でしょうね? それから――――』

 

 マシンガンのように飛び出てくるルキスの身を案じる妹の言葉の嵐に青年は苦笑いを浮

かべながら、手紙であると分かっていながらついつい返事をしてしまう。

 

「相変わらずのマシンガントークだな。大丈夫だ、ちゃんとやっているさ」

 

『――――。あ、手紙の容量がもう無いじゃない。もう、まだまだ言い足りないのに。ま

あいいわ。えーと、兄さん、この度私も遂にメルディアナ魔法学校を卒業することが出来

ました。まあ、主席はとれなかったんだけどね。それでね、卒業後に指定される魔法の修

行先なんだけど、あの超絶問題児のネギと一緒の学校、えーとマホラっていう場所行くこ

とになったの。ネギはそこで教師を、私は占い屋を営むようにって書いてあったの。

修行先はまさかの日本で、なんだか色々先行きは不安だけど私頑張るね。

…………それでね、えーと。もし兄さんに一度来てほしいなーみたいな。その、兄さんの

仕事は知ってるし、忙しいだろうけど偶には兄妹でご飯とかしたいなーみたいなね。

まあ、頭の片隅にでも覚えててね。

……最後に! 偶にはメルディアナ魔法学校に来てくれって校長先生やネカネさんが言っ

てたよ。それじゃあね、兄さん。貴方の妹アンナでした!』

 

 手紙の光が消え、それと同時に少女、アンナの姿も消える。

 残ったのは不可思議な言葉で書かれた手紙と苦笑いを浮かべたままのルキス。

 

「アンナももう卒業とは。めでたい事だ」

 

 微笑みながら手紙をカバンにしまう。

 ふと時計を見れば、既にルキスに与えられた休憩時間が終わりを告げようとしていた。

 

 ルキスは椅子から立ち上がり、体を伸ばし、肩を回しながら職員用の休憩室から出る。

 

「やあやあ、親愛なるルキス君。愛しい愛しい妹さんからの手紙で有意義な休憩が取れた

みたいで何よりだ」

「館長。適当な事言わないでくださいよ」

 

 ルキスが職員が使用する業務用の椅子に腰掛けるのを見計らったかのように一人の男が

ヒョコヒョコとやってきた。

 男の名前をジョン・ラフグレスと言い、ルキスの勤め先である図書館の館長を務める男

である。ジョンは銀縁眼鏡の位置を直しながら意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「いやいや、適当なものか。だってルキス君、いつものブスっとした顔じゃあなくて、微

笑みを浮かべているんだもの。君がそんな顔をするのは大抵妹さん絡みだってのはもう此

処の職員なら誰でも知ってることさ」

 

 ニマニマと笑うジョンにルキスは降参とでも言うかのように両手を上に上げる。

 

「館長の言うとおりですよ。ええ、そうですとも。アンナからの手紙ですよ。どうにも先

日、遂に魔法学校を卒業したとかでして」

「まあまあ、そうヤサグレない。へえ、妹さんももうそんな歳か。いやあ、時の流れは早

いねえ。私も歳を取るわけだ」

 

 最近、腰が痛み始めたのはそのせいかな、などとボヤくジョンを横目にルキスは考え事

をしていた。その内容とはもちろん妹のアンナの事である。

 

 手紙では久しぶりに食事でもしたいと言っていた。

 そう、久しぶりにだ。

 ルキスがミアミル大図書館で働き始めてから既に五年の月日が流れており、ルキスはそ

れ以来妹のアンナとは手紙のやり取りしかしていなかったのだ。

 

 何度か会いに行こうかと休暇届を出した事もあったのだが、ルキスが休暇届を出そうと

した時に限って、色々と問題が発生し今までアンナと会う事ができずにいた。

 

 ここでいう問題とは何か。

 それはもちろんルキスの勤め先であるミアミル大図書館の司書としての仕事である。

 ミアミル大図書館は魔法世界随一の蔵書量を誇るだけはあり、日々の利用者は数え切れ

ないほどである。

 

 アリアドネーの学者が研究論文の為の資料を探しに来たり、魔法騎士が新たな魔法を学

ぶ為に参考書を探しに来たり、あるいは一般市民が娯楽小説を探しに来たりなど、利用者

の目的は様々だが、とにかく忙しい。

 

 もちろん、それらの利用者全ての対応を司書であるルキスがやるわけではない。

 そういった一般利用者の対応は別に職員がいるのである。

 

「そうそう、ルキス君。後で僕の部屋に来てくれないかな。君に言わなくちゃいけない事

があってね」

「はあ。それはここじゃあ駄目なんですかね?」

「まあ、問題はないけどね。やっぱり仕事の話はちゃんとした場所でやらなくちゃ」

 

 じゃあ行こうか、とジョンが言った時だった。

 

 ミアミル大図書館全体が大きく揺れた。

 突然の大きな揺れに図書館の棚が揺れ、幾冊かの本が床に落ち、図書館を利用していた

客達も何ごとかと辺りを見渡す。

 

「館長! ルキス司書!」

 

 同じく辺りを見回していたジョンとルキスの下に一人の年若い獣人の男がかけてくる。

 

「やあ、マイク君。また『アレ』かな?」

「ええ、館長。また『アレ』です。対応をお願いしてもいいでしょうか?」

 

 マイクと呼ばれた職員は申し訳なさそうに頭をかく。

 

「まあ、それが司書である私と館長の仕事ですからね」

 

 行きますか、と館長の方を向く。

 

「え? いやいや今回はルキス君だけで十分でしょう。ここから感じる限りどうやら此処

がどういう場所かを詳しく調べもせずに来たみたいですし」

 

 そう言って動く気配を見せないジョンにルキスは大きく溜息を吐き、

 

「……下っ端はこれだから辛い」

「ははは。なら頑張って昇進したまえ」

 

 ジョンの言葉に背中を押されるように揺れが起きた場所へと向かった。

 

◆◆◆◆

 

 ミアミル大図書館は魔法世界随一の蔵書量を誇る図書館である。

 蔵書はそれこそ学術書から絵本、更には魔法学校の教科書まで揃えられている。

 

 こういった本は一般の利用客にも貸出されているのだが、中には一般には貸出を許され

ない本もある。

 

 それは俗に魔導書と呼ばれるものである。

 魔導書は魔法に関する事が書いてある本であるが、学術書や魔法学校の教科書と違い、

本それ自体が魔力、もしくは意思に近いものをもっている。

 

 こういった魔導書は力が足りない者が読もうとすれば正気を削られ、良くて廃人、悪け

ればその魔導書の奴隷とされる。

 

 その為、魔導書というのは厳重に保管されており、それはミアミル大図書館も例外では

ない。先にも述べたようにミアミル大図書館は魔法世界随一の蔵書量を誇っている。

 

 そのため、保有している魔導書の数も魔法世界一なのである。

 

 そして、こういった魔導書は格に違いはあれどいずれもが大きな価値を持っている。

 その為か、書物蒐集家などは大枚を叩き魔導書を求める。

 

 そして中には正規の手段ではなく、非合法、いわゆる裏の人間を雇い他所から強奪をし

ようとする者もいる。

 

 今回の爆発もそういった輩によるものだった。

 

 そして、ミアミル大図書館の司書の仕事とはそういった招かれざる輩への対応、そして

魔導書の世話なのである。

 

 ルキスが爆発の現場に辿り着くと、そこにはリーゼントやアフロ、スキンヘッド、更に

は全身に刺青、体のいたる所にピアスなどのいかにも碌でもない人間です。と全身で主張

している者達が暴れていた。

 

「オラオラ、魔導書はどこだ!?」

「ひゃっはーーー!」

「魔導書を寄越しなジジイ!」

 

 余りにもあからさま過ぎるならず者達にルキスは軽く頭痛を覚える。

 

「ええー、何アレ。いかにも過ぎるだろう。もうアイツら全身で私は囮ですって言ってる

ようなものじゃないか」

 

 正直に言うならばここのTHE・囮は放っておいて恐らくはいるであろう本命の魔導書泥

棒の下に向かいたい衝動に駆られるが、ここでならず者達を放っておくのもミアミル大図

書館の名に傷がつく。

 

「しょうがない。さっさと終わらせるか」

 

 そういってルキスは一歩前に出ながら、胸元から一冊の本を取り出した。

 

◆◆◆◆

 

 ミアミル大図書館の地下にある大衆スペース。

 そこには本を読む為に程よい明かりとゆったりと座れる椅子が多く設置されており、一

見すればただそれだけの部屋なのだが、実を言うとこの大衆スペースからミアミル大図書

館が保有する魔導書の管理室へと入る為の階段が存在している。

 

 魔導書の管理室という重要な場所に繋がるのが大衆スペースというのも余りにも不用心

であると思われるが、実際のところは真逆である。

 

 ここ、大衆スペースには常は多くの利用者がおり、また常駐の職員もいるため誰の目に

も映らずに管理室に繋がる階段へと行く事は出来ないようになっている他、現在のように

何かしらの問題が起き、職員や利用客がいない場合でもある防衛システムが存在する為、

何ら問題はないのである。

 

「くそっ! なんなんだコイツは!?」

 

 魔導書管理室前にて一人の男が悪態をつく。

 男は黒いローブで全身を隠しており、顔を拝む事は出来ないが、声から焦りが滲みでて

いる事が窺える。

 

 男に焦りを与える原因は管理室前に鎮座している一体の石像にあった。

 

『入室許可証ノ提示ヲ』

 

 まさに悪魔といった風貌の石像が男の行く道を阻んでいるからである。

 

『入室許可証ノ提示ヲ』

 

 この悪魔の石像、ガーゴイルこそがミアミル大図書館魔導書管理室の門番である。

 

「くそっ、魔導書は目の前なのに……っ。雷の暴風!」

 

 ローブの男は手に持った杖から無詠唱による魔法を放つが、それはガーゴイルに当たる

直前に張られた結界によって完全にかき消されていた。

 

 これこそが管理室を護るガーゴイルに与えられた力であった。

 入室許可証を提示しない限り決して扉を開ける事はなく、無理やり通ろうにも魔法障壁

を持っている為、生半な魔法は通じず、物理的に破壊しようにもガーゴイルを構成してい

るのは魔法世界でも随一の硬度を誇る魔法金属であるため、それも難しい。

 

 まあ、攻撃手段を持たないこのガーゴイルでは時間稼ぎしか出来ないのだが、それこそ

がガーゴイルの役目であるため問題はない。

 

「やれやれ、上の囮も大分お粗末だったが本命のアンタも大分アレだな」

 

 ローブの男にルキスが声をかける。

 

「むぅ!? もう上の連中はやられたのか!? ええい、役立たず共があ!!」

「いやいや。ここがどういう場所かも調べないで泥棒にやってきたアンタに言われちゃ囮

の奴らも浮かばれないね。まあ、それじゃあ名乗らせてもらおうか。ミアミル大図書館所

属、魔導書管理部司書、ルキス・ヴァレリー・ココロウァだ。まあここがアンタの終わり

って事で」

 

 満足な下調べもせずに泥棒に入った間抜けをルキスは嘲笑う。

 ルキスの言葉にローブの男は怒りで体を震わせ、彼に杖を突きつける。

 

「若造がぁ! 雷の暴風!」

 

 杖から強烈な稲妻と突風がルキスに襲いかかるがルキスはそれを見て大きく溜息を吐き

胸元から一冊の本を取り出し、

 

「遮断」

 

 それだけを呟いた。

 すると、本が浮かび上がりパラパラとページが捲れたかと思えばバラバラになる。

 バラけた本のページは一枚一枚が意思を持つかのように動き、ルキスと魔法の間に紙の

壁を作りだす。

 

「間抜けは貴様の方だ! そんな薄っぺらい紙で私の魔法を防げるものか!」

 

 叫ぶ男にルキスはもう一度深い溜息と侮蔑の視線を投げる。

 

「……アンタが盗みに来たのは魔導書だろう? 魔導書ってのは力持つ本だ。それがこの

程度の魔法を遮断できない筈ないだろう」

 

 魔導書、ルキスは確かにそういった。

 確かに魔導書は力を持つ魔導書であり、それに内包された力も様々だが、基本は本であ

るため、やはり主目的は知識を得ることにあるのが普通である。

 

 しかし、今目の前の光景はなんだろうか。

 本がバラバラになりページの一枚一枚が意思を持つかのように動きまわる。

 

「鳥籠」

 

 本のページ達はルキスの言葉に忠実に従う兵士の様に動き、ルキスを護る城壁から男を

囲む檻へとその姿を変える。

 

「さて、と。一応聞いておこうか? 今ここで投降するのなら怪我はさせないが?」

「何を言うか! これしきの紙束くらい……っ」

 

 男はそう言って杖を構えようとするが、

 

「まあ、そうなるだろうと思ってた。じゃあサヨナラって事で」

 

 魔法が放たれるよりも速く、ルキスが指を軽く動かす。

 男を囲っていたページの大群が一斉に襲いかかり、数瞬の後に残されたのはローブだけ

でなく身にまとう服をパンツ以外は切り裂かれ意識を失った男の醜態だけだった。

 

 男を襲ったページは再びルキスの下に戻ると一冊の本に戻る。

 

「やあやあ、仕事は終わったみたいだねえ」

「館長、相変わらずタイミングがいいですね」

「まあ見てたしねえ。それにしてもルキス君も優しいね。服だけを裂くなんて」

「え、何言ってるんですか。本を盗もうとする輩をこれだけで済ます筈ないじゃないです

か」

 

 ルキスはそう言うとカメラを取り出し、醜態を晒す男を激写する。

 

「取り敢えずこの写真はどこかの新聞社に投稿してきます」

「前言撤回だよ。相変わらずの鬼畜っぷりだね、ルキス君」

 

 まあいいや、とジョンは言い、管理室前に設置されている連絡装置で警備員を呼ぶ。

 

「さ、後は他の職員に任せて行こうか」

「行くって何処へですか?」

「忘れたのかい? 君に言わなくてはならない事があるって」

 

◆◆◆◆

 

 ミアミル大図書館館長室。

 派手すぎず、しかし貧相ではない調度品に彩られた館長室に連れて来られたルキスはジ

ョンの正面に座っていた。

 

「それで館長、私に話というのは?」

「うーん。取り敢えず仕事の話ではあるんだけど。その堅苦しい言葉遣いはやめていいか

な。今ここにいるのは上司と部下である他に無二の友人なのだから」

「……ジョンがそう言うのなら」

 

 言葉遣いを公人のものから私人のものに戻したルキスにジョンは一枚の紙を手渡す。

 

「これは?」

「うん。君の新しい就職先が書いてある紙」

 

 さらりと言うジョンの言葉にルキスは石のように固まる。

 

「はぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「いや、そんなに驚いてくれるなんて。ちょっと軽く渡した甲斐があったなあ」

 

 カラカラと笑うジョンにルキスは懐から本を取り出そうとする。

 

「あ、それは勘弁、タンマ。一応ね、これにも事情があるんだ」

 

 詳しい事は紙に書いてあるから。一先ず本から手を離したルキスは書類に目を通す。

 

「……なるほど。納得はしてないが理解はした。つまり出向って事でいいわけだな?」

「まあ、そういうことかなあ。それで返事は? ルキス・ヴァレリー・ココロウァ君?」

 

「わかった。わかりました。まあアンナに会ういい機会という事にする」

「あちらでも良い仕事を。ルキス君」

 

 ルキスの手元にある書類に書かれていた任地先は

 

『旧世界・麻帆良学園都市』

 

 と書かれていた。

 

 

 




こんな感じではありますがスタートしました。
ルキス君は基本は本で戦いますが一応近接戦闘もできます。武器はもちろん……。まあ、予想できる方はできるでしょう。お楽しみに!

それではまた次回。

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