就職したら世界が滅びそう   作:高菜チャハーン

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ステージは森。敵対エネミーの数は十体。魔猪とゴーストが5体ずつです。
それと、所長から「戦闘能力の確認も兼ねている」と、言伝を預かっています。
それでは、開始してください。


10話 全力で狩ってしまおう

眼前に広がる空間の姿が変わっていく。

 

全面が白に塗りつぶされた正方形の部屋から。不規則に多様の樹木が根付く森へと変わっていく。

 

スピーカーから聞こえるのはシミュレーション室の制御担当スタッフの声だ。

ステージが森であったり、敵が魔猪とゴーストなのは、いつもの俺の戦闘スタイルを知るためだろう。

 

 

そうこう考えていると視界は全て森へと変移しており、魔猪が5体、こちらを見て様子を窺っている。

所長からの伝言もあることだし、全力で狩ってしまおう。

 

 

脚部へと強化魔術を施し、魔猪へと接近する。驚愕の表情を浮かべたその目に向かって、手に持った水晶を見せつけるように前に出し。

 

水晶へ魔力を送り、形状変化させる。

 

 

 

 

 

どんな生物だろうと、臓器を鍛えることは出来ない。

 

どれだけ固い鱗に覆われようと。どれだけ強靭な筋肉を鍛え上げようと。内側というのは弱点なのだ。

 

 

眼球も、その例には漏れることはない。

形状変化によって針のように尖った水晶は魔猪の眼球を貫き脳漿に到達する。

内部に入ってしまえばこちらのものだ。水晶に再び魔力を送り、針の先を急激に膨らませると、魔猪は断末魔もそこそこに崩れ落ちた。

 

 

では次だ。

大口を開けて飛びかかってきた猪の口に、許容魔力を越えた小石程の水晶を放り込み。頭蓋を両足で踏みつける。

 

水晶の破裂によって頭が弾けとぶ。

爆発の勢いのまま木の枝に捕まり。敵の位置を探ろうと方々へ視界を巡らせている猪へ直下型ライダーキックを眉間にお見舞いする。

脳震盪の起こしている間に口をこじ開け、今度は水晶を杭のように形状変化させ、口内に突き刺す。

 

いまだに姿を見せないゴーストを釣るためにも、この猪には餌になってもらおう。《死》の匂いに敏感なヤツらなら生命力を楽に吸い取るために群がって来るだろう。

 

足に掛けていた強化魔術を全身に回し猪棒を地面に突き立てる。

すると、強化魔術による光でこちらの位置がばれてしまったようで、残りの猪が突進してくる。

 

 

正面に一匹。左方に一匹。ここに着くのは正面の方が先だろう。素早く目測を終えると、真上に水晶を投げ上げる。

右足を大きく引き下げて、腰を落とす。左手を標準代わりに向け、狙いを定めると、右手で拳骨を作り大きく引き絞る。

 

そして、猪の眉間。落下してきた水晶。左手を直線に正眼で捉えると、左手と入れ替わるように強く出した右手で水晶を振り抜くと共に、強化魔術を水晶に掛け、強度を上げる。

 

強化魔術をかけた全身での一撃は水晶を弾丸の如く打ち出し。猪を貫いた。

 

 

すぐ側まで迫ってきていた最後の一匹の牙を掴んで飛び乗り。耳へと水晶を突き刺し。すぐさま飛び降りる。猪は鼓膜から鼓膜までを直線に貫かれ、慣性の法則にしたがって勢いのまま前方へ崩れて行く。

 

 

これで猪は全て片付けたな。残ってるのはゴーストだけだが、これが一番面倒だ。

ゴースト。正確には魔力によって一時的な器を手に入れた幽霊だが。ヤツらを倒すには手段が限られてくる。

 

例えば。聖水や塩、錫杖といった除霊にまつわるものが挙げられるのだが、手持ちには無い。

 

 

かといって、取れる手段が無いわけではないのだ。好き好んで使うわけでも無いし、他に手があるなら選びはしないが。ごく一部の存在だけが取れる手段がある。

 

ゴーストの霊ではなく、器。魔力に作用することで器を壊し、ゴーストとして存在させなくする方法がある。

 

 

それが俺の場合、魔眼による吸魔で魔力を吸い取ってしまう。というものなのだが、これの反動がいかんせん強すぎる。ただ宿っているのではなく、既に形を持っているモノを強引に奪うことになるのだから当然ではあるのだが。

 

 

取れる手段がある以上、それを使わないで無理ですなんて言えないし、やるしかない。

 

 

嫌だなー、嫌だなーと溢しながらも、先ほどのハンゴロ猪のもとに着くと。五匹のゴーストがうじゃうじゃとまとわりついていた。正直言ってキモい。とっとと終わらせよう。そうしよう。

 

 

そうと決まれば魔眼を起動させるとしよう。

眼を閉じて、眼球へ魔力を送り視力強化を施す。次に眼球の魔術回路を起こし、眼球自体の魔力を全体に行き渡らせ、前準備を終える。

 

眼を開く。平時よりも鮮明な視界。そして、猪の死体から溶け出す淡い光。そしてそれを吸うのは、ベールのような帯を頭に掛けた下半身の無い骸骨。

 

それ自体も淡い光を放っており、それが魔力を帯びていることが解る。………俺には、だが。

 

 

吸魔の魔眼の効果は、実像を結べるほどハッキリと《見える存在》の《保有する魔力》を空気中に溶かし、それを魔眼を通じて《魔術回路に取り込む》だ。その行程に詠唱は必要ない。触媒も、術式すら必要としない。

 

魔眼始動

 

ただ、視られたものは奪われる。

 

 

それだけに、反動は仕方ない、仕方…ない…………

 

 

 

 

 




魔猪5体の無力化につぎ、ゴースト5体の消滅を確認。同時にマスター候補生藤見練の意識消滅を確認しました。
ドクターロマン。至急バイタルチェックに来て下さい。
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