開けるならこっちにしてください!
冗談でも薄い本でもありませんから!!
部屋に着いた途端にレオナルド・ダ・ヴィンチもとい先生が発した「さぁ、宝探しといこうじゃないか!」という言葉に、俺は尋常ではない危機感を感じた。
決して紳士の嗜み的な物証が露になるのではとか、魔術の秘匿とかではない決して。
ただ、危険物の存在を思い出しただけだ。
端的に言って浮かれていた。希代の天才、かの有名なダヴィンチに魔術を習うことができる。その奇跡に、その誉れに舞い上がっていたのだ。え?そんな素振りはなかった?
ソンナコトナイヨ、ヒャッホウ!
分かりやすく言うとアレだ。
勉強嫌いなあの子が赤点ギリギリでもないのに予習をしてるわ!まぁ!復習まで初めちゃったわ!!
みたいな?今まで必要最低限しかやってなかったのにめっちゃやる気出てる感じ。
俺の場合は魔眼があったから、「魔術を使えないと魔術師に殺されるぞ?あと、魔力制御がしっかり出来ないとお前の場合ウッカリで人殺しになるんだぞ?」と両親に何度も言い聞かせられて育ったこともあって。
必要最低限は魔眼を完全に支配下に置くことと、魔猪位は片手間に倒せる程の技量の習得だった。
それが出来るまでは我が家御用達であるガイア眼鏡なる眼鏡をかけ。登下校は麓まで親に担がれて山を越えていた。
徐々に魔術や魔眼の特訓を兼ねながらの登校になっていったから、学校に着いたら既にボロボロの日もあった。
そういえば、破けた制服を縫ってくれた女子がいたな。男子より活発で、情に厚くて可愛くて、生活力の高い。ラノベのヒロインみたいな女子。
あの子は今、元気にしてるだろうか。笑顔が似合う子だったから、平穏無事に暮らしていて欲しいんだけど。
いや違う。現実逃避してんじゃねぇよ俺。今は人より自分の心配しないと。
問題はその必要最低限の途中で読み漁った魔術書がギッシリ詰まった段ボール箱や、俺の魔力ストックに使ってる魔術鉱石の入ったトランク。
藤見家は他の魔術師みたいな秘匿するべき魔術式みたいなものは魔眼位なものだし見られて困る物はない。
だが。魔術書とトランクは駄目だ。いや、魔術書は正直どっちでもいいんだけど。トランクは駄目だ。
そのなかにはサイコロ状にした鉱石が隙間なく入っており。それらは形状が崩れないギリギリを攻めに攻めた魔力蓄積量の、謂わば魔製手榴弾とも呼べる危険物なのだ。杜撰な管理だと言ってくれて構わない。俺もそう思う。
トランクを開き、もし衝撃を与えたなら爆発は爆発を引き起こし、原子爆弾さながらに火力は上昇するだろう。
絶対に阻止しなければ。
「先生、今時お宝なんて現物で残しませんよ。だからその強化魔術でガチガチに固めた段ボール箱の解体初めないで下さい」
「いいや、最初はそのつもりだったんだけど。この段ボール箱がどうやって梱包されているのか気になってね。凹まないどころか傷ひとつ付きやしない、ガムテープで縛られてもいないし、魔術の痕跡は強化魔術がかかっているだけ。どうやって梱包しているんだい?」
そういいながら杖でコンコン叩いて見せる先生。叩く場所を変えたり、力を込めてみたりと試しているが段ボールはズリリと動かされるだけでその形を変えない。
「その段ボールに鉱石でコーティングしてあるんです、強化魔術は鉱石の方にかけてます。そうすれば中の本が痛むことは無いので」
「成る程。段ボールの硬度を上げるのではなく鉱石を利用することで段ボール自体は緩衝材としての役割を失わない訳か。そういえばシミュレーションの戦闘を観たけど、藤見家は宝石魔術を使うのだったかな?そういった話は聞いたこと無いけど」
よし、話はそれた。まぁ、偶然ではあるけどトランクは無事だろう。
「使うのは自分だけです。というより、家族で共通して使う魔術は強化魔術位なものですね」
「うん?ちょっと確認させてほしいんだけど。君の家族は何人中何人が魔術を使うんだい?」
「?四人全員ですが。それがなにか………あー両親が共に魔術師で、魔術刻印を継承したのは妹です」
「え?君が藤見家を継ぐんじゃないのかい?」
「当主を継ぐのは自分です。魔眼持ちなので魔術刻印を継承しなくても魔眼の神秘だけで十分ですし。藤見家の魔術刻印は魔眼特効というか、抑止力のようなものなので。第一子が魔眼持ちだったら必ず第二子以降に継承されるんです」
もちろん、生まれ持った魔眼のランクが低かったりすれば刻印を継ぐことになっていただろうが。俺が魔術回路を開いて、魔眼を持っていることが分かったのは4歳の頃だったし。その2年後に妹が開いた魔術回路は俺より何本も多かったのだから、両親からすれば俺達兄妹は悩みの種そのものだっただろう。
「魔術師の家系は魔術を教えるのは一人だと聞いていたんだが、変わっているのは家系?それとも両親かな?」
「どちらもでしょうね。魔眼を持つかどうかを他の家では考慮しないでしょうし、親も魔術師っていうよりは魔術使いの考えに近いですから」
「そういえば、オルガマリーが君の両親と話をしてから様子がおかしい、というか面白いことになってたそうだけど。何か心当たりはあるかい?」
面白い?そういえば家を出る頃に可笑しなことになってたな。親父の話だと一日目は特に問題なく過ごしたようだし、何かあるとすれば二日目か。
確か母さんと妹の部屋で一緒に寝たはず。家に客間は無いし、かといってリビングや物置小屋に客を寝させるわけにはいかないとか言ってた。となると朝のしたくとか結構な間一緒に居ただろう。家の家電は全部俺が魔術道具として作り変えたから、使い方も解らないだろう…し…
あれ?神秘の秘匿ってなかったっけ。あった気がする。山が神秘だし目も神秘だから気にしてなかったけど、普通の魔術師からしたら卒倒ものなのでは?
「朝起きると、家電が全て魔術道具だった。つまり一家全員魔術師だと気づいて、その上神秘の秘匿について話を聞いたら歩いてきた山が神秘だった」
「彼女、ぶっ倒れたんじゃない?」
ックシュン!誰かが噂でもしてるのかしら?でもこのカルデアで私の噂なんて、ろくでもないものばかりでしょうけど。……というか、見られて無いわよね?