マシュが呆れながらも体調の心配をしてくれる。その事に感謝すると共に、申し訳なく感じてしまう。
マジギレ所長と見知らぬ美少女。俺のストレスマッハでSAN値がピンチ。発狂しないでいられるのは、間違いなく彼女のお蔭だ。けれどこの赤面は体調不良ではなく、ただ美少女の顔が眼前にあるという、生まれて初めての経験にドギマギしているだけ。
優しさが胸を抉るの。女性経験皆無のチキンで申し訳ない。小学生の頃ならこんなに動揺することもなかったはず………いや、単純に好みのタイプとか皆無だっただけですね。フェミニストの極みというか、人類皆友達みたいな無垢がオーバーフローしてただけだわ。
目の前にある顔を絶対に見ないよう、瞼を閉じて。次に赤面を押さえるために、今日の戦闘訓練で脳漿をぶちまけた魔猪の姿を鮮明に思い出す。
………キッモ。ただでさえ魔術鉱石の形状変化に流体操作の魔術と投影魔術を使い続けてるのに、想像なんてするんじゃなかった。無駄に鮮明なのがイメージ出来てしまった。
「赤面したかと思えば遠い目をして、今度は青ざめるなんて、やっぱり体調が優れないのではないでしょうか?」
「いいえ、大方ファルムソローネの顔を見てドギマギして赤面して、現実逃避で昔を思い出して遠い目。最後は無理矢理平常心を保とうとして、赤面とは逆に青ざめるような想像をしたら思った以上だった。というところでしょう」
所長が呆れたような、いや呆れてる口調で俺の状態の説明をする。一から十まで合ってるんだけど。
「なんでそんな完璧に言い当てられるんですか」
「貴方の反応がロマニとそっくりだからよ。それとファルムソローネ、もう結構よ。ありがとう」
「………いえ、感謝される程の事ではありませんから」
そう言って美少女はようやく俺の顔から手を離して下がっていった。見つめられていた魔眼の魔術回路がやっと反応して、閉じることが出来た。
シュフェンアウフがどう言った意味かは解らないが、彼女の魔眼による影響であることは確からしい。発動してからずっと俺の魔眼を見ていたが、目を逸らしたら効果が消えるような仕組みなのだろうか。
家にあった魔眼に関する書類は読み漁ったけど、あんなに綺麗な色になる魔眼は記されてなかったな。そうなると宝石クラスの貴重な魔眼、またはそれ以上になるんだが。
「それでは、藤見練」
「はい」
所長の呼び掛けに返事をすると共に速やかに土下座へと移行する。魔眼を使ってたのバレたし、やっぱり食堂は使用禁止なんだろうか。
「脱線はしましたが、本来。貴方をここに呼んだのは、貴方が持つ魔眼についてです。その効果、発動条件。リスクや、貴方がその魔眼をどのように扱っているか。改めて書類に起こして、後日所長室へ持ってくるように」
「了解です」
「それと、共同エリアでの魔眼の使用を今後一切禁止します。それと、魔眼殺しは早急に用意して着用するように。食堂等の利用時は必ず着用すること、いいですね?」
「はい」
「これでもう用件はありません。退室しても結構よ」
「了解です」
食堂を利用するには魔眼殺しの着用が必要か、最近は魔眼殺しに頼らないで、魔力コントロールで制御してたから。久々にかけるな。
カルデアの制服のポケットから、魔眼殺しのレンズを取り出し、魔術鉱石を流体操作と投影魔術を併用してメガネのフレームを形作って着用する。
「それでは、失礼しました」
「ちょっと待ちなさい」
正直、レンズさえ持ってればすぐにかけれるから身に付けてなかっただけで、必要ならかけますとも