就職したら世界が滅びそう   作:高菜チャハーン

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死にたくない、殺してしまいたくない。そんなことを考えて人と接するようになって十数年。魔眼を開眼してからの訓練や修行は、そんなエゴイズムに満ちていた


16話 死んでもいいわ

「その眼鏡は何?もしかして、ずっと持っていたのかしら?」

 

所長の呼び掛けに振り返るととてもイイ笑顔をしていた。青筋が出ており激オコである。弁明しないと危険が危ない

 

 

「わ、我が家の家訓に常在戦場というのがありまして。いつでも戦場にいる心構えで事をなせ。という意味なのですが、両親いわく魔眼殺しを常用は甘え。とのことで、普段から魔眼を手足の様に扱えるよう鍛えるために、魔眼殺しをかけないようにしているんです」

 

所長の顔から怒気が薄れていく、代わりにジト目になったけど。まぁ、聞いてやろう。ということか?

 

 

「加えて、藤見家は代々魔眼を有する人間が多く生まれているのでそれに群がるクズども、もとい魔術師に狙われて来たんです。それに対抗するために、自らも魔術を習得したり山奥に移り住んだ訳です」

 

「あぁ、あの山。濃霧に大幅な気温の変化、磁場の乱れ。まるで迷宮だったわ、聞けば神秘を有していたとか。日本によくそんな場所が今まで残ってたわね」

 

うんざりというか、呆れるような声色で所長がため息混じりに呟く。普段はあまり運動はしないのだろう、思い出すだけで疲れが滲み出る。といった感じだ

 

 

「元はただの山でしたが、認識阻害とか人避けを先祖がかけたらしいです。そこに神秘が宿って、罠は自分が」

 

しまった。所長がすごい睨んできた。そんなに堪えたんですか。制作者としては嬉しい限りです。

 

 

「ま、まぁ、そんなこんなで山に神秘が宿り。魔猪やゴーストが自然発生するようになり。藤見家の人間は狙ってくる魔術師の他に、エネミーとも戦う日々を過ごしてきた訳です」

 

「それでやけに戦い慣れていたのね………?…っ!」

 

所長が我が家に着くまでの間に魔猪に襲われる可能性があったことに気づいてしまった。まぁ、所長達が通ってきた道は魔猪の縄張りから遠いし、大丈夫。

 

 

「そんな、魔術師から狙われ続けた一族としてはこのカルデアはまさに戦場。魔眼殺しなんてかけてられないんです。素材にはなりたくないですし」

 

隣で聞いていたマシュの顔に緊張が走る。ファルムソローネさんは途中で気付いていたか?包帯でしっかりと魔眼を覆っているのは、魔眼の力を抑えるためだと思うが。同情の眼差しで軽く頷いているので、機会があれば魔眼保持者の苦労について愚痴り合いたいものだ。所長は何かを考えているようで、目を伏せ、顎に手をやっている。

 

 

「つまり、カルデアで襲われる可能性が無くなれば良いのね?」

 

「自分から喧嘩売るような真似はしません」

 

根源に興味もないし、そんな時間があったら自分の魔眼の分析でもした方がよっぽど良い。こっちから手を出す理由もないし。

 

 

「所で、貴方のシミュレーション室での戦績だけど、マスター候補生の中でもどのくらいの成果だと認識してるかしら」

 

「は?いや、中頃ですか?…えっと?なんの質問ですか」

 

成績が悪いとか毎日通ってるわりに目に見えた成果が挙がっていないとか、貴方真面目にやってるの?的な確認だろうか。ふと、進捗どうですかとかいうフレーズが頭をよぎった。なんだか無性に嫌な予感がする。

 

 

「今後行われるオーダーではAチームを現地での活動要員とし、カルデアがこれをバックアップ。Aチーム以外のマスター候補生は万一に備えての鍛練やカルデアスタッフとしての勤務。そうロマニから聞いたわよね」

 

「そうですね。また、Aチームのメンバーは既に決定済みで、ファルムソローネさんもその一員だと聞いています」

 

というのも、ダヴィンチ先生から授業を受けているときに魔眼保持者が俺の他にも所属していると言っていたからだ。聞けば魔術搭の学生だったとか、よく生きてたなと思わず溢してしまった程だ。

 

 

「あの、話が見えて来ないんですけど」

 

「ここで話を戻しましょう。貴方の戦績についてよ、まずAチーム以外のマスター候補生。つまり今の貴方と同じ立場の者達ね。この中でも殲滅速度やコストパフォーマンス、魔力の制御力は郡を抜いているわ」

 

……お、おう?誉められたのか?それとも他のマスター候補生の出来が酷いのか、こんなこと言われたこと無いから反応に困る。………取り敢えず頷いておこう。

 

 

「なんて顔してるの、しゃんとなさい!貴方の実力を認めているということよ、そしてそれはAチームにも迫る、いえ戦闘力に限ればトップクラスよ?大体、サーヴァントさえ倒しかねない魔猪を倒すなんてこと自体本来異常なの。そんな貴方に手を出すような身の程知らずはカルデアには居ないわ」

 

それなら一安心。久々に魔眼殺しをかけれるってものだ。家訓はあるが、所長にマナーとして指示されたならかけるべきだろう。魔眼の制御に回してた意識を他の事にも使える分、より細かな造形を魔術鉱石で出来るかもしれない。

 

 

………つーか誉められてました?誉められましたか?俺としては死にたくなかっただけで、ただの結果だが。こうして認められるのは初めてだけど悪くない、むしろ良い。死んでもいいわ?いや良くない。口元は弛んでくるし、何なら泣きそう。一生貴女に就いていきます。どんな仕事でも任せてください

 

 

「あの、先輩の戦績は多くの方々が閲覧なさっていて。他のマスター候補生の方の参考や刺激になっているとドクターが仰っていました。無茶な体の動かし方をするから湿布の補充が間に合わないとも、嘆いておられましたが」

 

「…Aチームでも時折話題に挙がるわ。ペペが楽しげに話すものだから、少なくとも皆名前は知ってると思うわよ。私自身、興味がないわけではないもの」

 

 

所長の言葉にマシュ、ファルムソローネさんが続く。さらっと言ったけど戦績の閲覧ってなに?そんな話聞いてないよ?体の動かし方ってことは全部動画に納められてたの?俺の場合は単純な魔術しか使ってないけど、そんな事したら解析される奴居るんじゃないの?あと、ファルムソローネさんは思わせ振りな言い方しないでくれます?ドキがムネムネしちゃうでしょ?

 

 

「誤解の無いように言っておくけれど、戦績の開示がされているのはレオナルドが許可を出した者だけよ。本来なら当人の許可も取るのだけど、貴方の場合は……何も説明が無かったのね」

 

「結果としてカルデアで襲われる事は無いだろうって分かったんですけど………釈然としませんね?」

 

感謝すべきだとは思うんだけど、こう。やっぱり一言くらい言ってくれても良かったんじゃないかなぁ?

 

「…まぁ、一言くらい文句を言っても良いんじゃないかしら。話は以上よ。魔眼についての報告書、魔眼殺しの着用。忘れないようにすること、良いわね」

 

「了解です」

 

 

所長から許しも出たし、早速明日の講義で問い詰めよう

 

 

 

 

 




あ、忘れてた。てへっ☆

許した
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