就職したら世界が滅びそう   作:高菜チャハーン

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ありがとうマギマリ、大好きだぜマギマリ。まさか職員さんもファンだったとは思ってなかったぜマギマリ。やっぱりサブカルは世界を繋ぐんだなぁ。


4話 おはよう

カルデラの職員さんといつの間にか話を付けていた親父曰く。

 

 

「お前、今日の昼には出発な。それまでに荷物まとめとけよ」

 

 

それを聞いたとき、頭がフリーズした俺を責めるやつはいないと思う。いや、最初の予定では12月30日くらいには到着しとけばいいみたいな話だったじゃん?

 

まぁ、わかるよ。そんな年末に行っても居づらいし。それよりは早く向かうつもりだったけどさ。唐突過ぎない?今日だよ、今日。一ヶ月前の予定が半年前になるなんて想像出来ないだろ。

 

そんな感じて文句を垂れると、意外にも親父はこの状況を説明してくれた。多少は同情していたのだろうか。珍しい。

 

話は昨日に遡る。

 

 

 

 

 

「では、入社一ヶ月前に我々が改めて藤見練さんを迎えに来るということで宜しいですか?」

 

「え。また、登って来られるのですか?」

 

 

と困惑したのも束の間

 

 

「あの子のために態々山登りする必要なんかありませんよ。明日、ここを発たれてカルデアに戻られるのでしょう?それなら、その時に連れていってくださいな」

 

 

と妻が言い。

 

 

「えっと、我々は問題ありませんが、藤見練さんにも準備とか……」

 

 

とオルガマリーさんが戸惑い。

 

 

「でしたら是非!あの子はあれでも部屋は綺麗ですから準備に手間取ることもないでしょう。私物も少ないですし」

 

 

と妻が食いぎみで後押ししたことで

 

 

「そ、それでは、明日の昼頃に練さんを連れてカルデアへ向けて帰投ということで」

 

「はい!ではそのように!」

 

 

オルガマリーさんが妻の勢いに押され、練の出発が瞬く間に早まった。妻が台所に行った後、ほ、ほんとに良かったのかしら。とオルガマリーさんが溢していたので、練は上司に恵まれたなぁと安心して、当の本人に伝え忘れt「オラァ!」

 

 

「何しやがる!」

 

「何しやがるじゃねぇよ!それ昨日の夕方の話だろ!もっと早く連絡しろや!報、連、相!社会人の常識じゃねえのか!」

 

「魔術師がまともな社会人なわけねぇだろ、何言ってんの?」

 

「そういうことじゃねぇ………まぁ、いいや、俺も職員さんに態々山登りさせたくねぇし。準備も大体済んだようなもんだからな」

 

「ん?いつの間に準備してたんだ?お前の場合、魔術道具の素材とか、いろいろ時間かかりそうなのに」

 

「それなら問題ない。触媒の金属は板状にしてあるし、宝石類、まあ、ただの水晶だけど。それは魔力操作で四角にしてトランクの中に入れてあったし、使い魔も分解すればリュックの中に収まるだろ」

 

「本は置いていくのか?」

 

「んなわけないだろ、全部持ってく」

 

「ふーん、まぁ、昼には準備出来るか、カルデアの人に挨拶しとけよ。随分と長旅らしいから、な」

 

 

 

そう言うと親父は何がおかしいのか爆笑しながら自室へと向かっていった。いや、ほんとに何がおかしいのかわからないから無性に腹が立つ。殴りたい、その笑顔。

 

さて、俺も挨拶したらさっさと準備しないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、彼は我々が責任を持ってお預かり致します。しばらく声を聞くことが出来なくなると思います。何か伝えたいことがありましたら、今のうちに」

 

 

 

「随分遠くらしい。ホームシックになっても帰れないからな!我が家の恋しさにむせび泣くがいい!」

 

と指を指して爆笑する親父

 

 

「仕送りはするから………ところであんた英語喋れるの?」

 

と心配を装って小馬鹿にする母さん

 

 

「給料貰えるんだよね、じゃあお年玉くれるよね!今のうちにちょうだい!!」

 

欲望のままに金をせびる妹

 

 

 

いや、感動の別れとかは望んでないし、期待もしてなかったけどさ。思わぬ反応にオルガマリーさん固まってんじゃん。

 

とりあえず親父よ。俺が居ないと家族内ヒエラルキー最下位だな、ざまぁみろ。

 

母さん、それは中高6年間ずっと英語の成績が悪かったのを知った上での発言ですね?

 

妹、一年間は帰ってこないの確定でねだるのやめて。てゆうか、君の方が俺より小遣いが多いの、お兄ちゃん知ってるよ

 

 

「じゃあ、ロマンさんよろしくお願いしますね。帰りは練が案内するので来たときよりは楽に変えれると思います」

 

「はい、任せてください。医療部門の名に懸けて。無事練くんを藤見家に帰すその日まで、責任をもってお預かりします」

 

 

いまだに爆笑している親父を放って母さんとDrは真面目な話をしていた。ちなみに、妹は親父に冷たい視線向けており。オルガマリーさんはまだ固まっている。うちの家族が一般的な魔術師と比べてかなり変わっているのはわかるが、そこまで固まらなくてもいいじゃないか。

 

 

「……はっ!……私は何を?確か、藤見家の皆さんが挨拶をし、て……?……挨拶?」

 

 

どうやら記憶が混濁しているらしいオルガマリーさんを近くへ寄せてDrが真面目な顔になる。そろそろ出発するのだろう。

 

 

「それでは。ご英断、感謝します。しばらく練くんをお預かりします。一晩お世話になりました。いくよ、オルガマリー。いつまでも固まってないで、挨拶して。練くんもね」

 

 

「え?あぁ、この度はお世話になりました。久々にのんびり出来ました。ありがとうございます」

 

 

完璧に誰これである。目の焦点も合ってないし、そんなにショックでしたか。そうですか。

 

 

「じゃあ、今度会うのはいつになるかわかんないけど。死なないように頑張るわ、そんな状況になんかならないだろうけど」

 

 

そんなことになったら、魔眼を使わないといけないかもしれないし。こんな俺でも、死にたくは無いからな。

 

Drとオルガマリーさんも出発の準備は出来ているようだし。

 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず帰ったら、親父ぶん殴る。

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