機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜 作:剣舞士
第9話!
ようやくユニウスセブン編が終わりだーーー!!!
戦場から見えるように放たれた信号弾。
赤、青、緑の三つの光が、ガーティー・ルーから発射された。
それは、艦からの帰艦信号を意味する。
カオス、ガイア、アビスの三機は、それを確認すると急いで戦線を離脱……。
その場に取り残されたザフト軍MS部隊も、完全な戦線離脱まで、三機を見送った。
「ルナっ、大丈夫っ?!」
「ええ、なんとかね……でも……」
ルナマリアの赤ザクに近づくアリサ。
ガイアとの戦闘で、ルナマリアのザクは中破した。
バックパックのガナーウィザードを破壊され、右脚も被弾。
お返しに、ガイアのビームライフルをビームトマホークで斬り裂いてはやったが、戦況的には、ルナマリアの負けということになる。
アリサもアリサで、スナイパーライフルの《ファルコン》をガイアのグリフォンブレードに斬り裂かれた。
それに、ガイアに対して放ったスナイパーライフルの弾丸は、一度もガイアにヒットさせられなかった。
「っ……ごめん。私がもっと、あいつを撃てていたら……!」
「なに謝ってんのよ……。アレを狙い撃とうしているあんたが凄いんだから……」
ガイアのMA形態は、四足歩行の獣形態。
ザフトのMSの中にも、地上をキャタピラーで滑走する『バクゥ』や《砂漠の虎》という二つ名を持ったザフト兵、アンドリュー・バルトフェルトが搭乗していた『バクゥ』の上位機にあたる『ラゴゥ』などがあるが、ガイアはそれを元にインパルスの地上戦での援護機体として開発された機体。
ならば、先のデブリ戦でもそうだが、ユニウスセブンなどの足場が多く存在するこの戦場では、ガイアの真骨頂を発揮しやすい場所……ということになる。
そんなアウェーの中で、正確に狙い撃てというのがそもそも難しい。
「とりあえず、ルナはミネルバに戻ったほうがいいわ……! このままだと……」
「そうね……ごめん先に戻ってるわね。あとはよろしく」
「了解……。気をつけてね」
「それはこっちのセリフでしょ?」
幸いなことに、背部のスラスターには損傷が一切ないため、その場から撤退するのに、なんの障害もなかった。
ルナマリアはその場から撤退し、アリサはそのまま戦線復帰する。
未だにメテオブレイカーを運ぼうとしているゲイツ部隊の援護へと回った。
そして、その信号弾を確認していたのは、ユニウスセブンにいるMS部隊だけではない。
後方から見ていたミネルバも、この信号弾を確認した。
初めは、こちらが電文で伝えた言葉を信じてくれたのかとも思ったが、どうやらそうではないと、艦長であるタリアが言う。
「我々も、命を選ばねばなりません……助けられる命と、そうでないと命を……!」
「艦長……」
タリアの言葉に、ギルバートは呟く。
そしてタリアは、艦長席を回転させて、ギルバートに面と向かって進言する。
「こんな状況下で申し訳ないのですが、議長方は、急ぎボルテールへお移りいただけますか?」
「え……?」
「これよりミネルバは、大気圏に突入し、ギリギリまで艦首砲によるユニウスセブンの破砕を行いたいと思いますっ……!」
「ええっ!!? 艦長、それは……!」
いくらなんでも無茶というものだ……。
アーサーはそう言いたいだろうが、もはや撤回を求めることもできない。
そんなアーサーを放っておいて、タリアはギルバートにさらに進言する。
「こんな状況……私も見ていることなどできませんし、なにより、出来るだけの力があるのに、それをやらずにただ見ているだけだなんて、後味悪いですから……」
「タリア……しかし……」
「これでも私は運の強い女です……っ! どうか、お任せを……!」
「ん…………わかった、ありがとうタリア……すまない」
「いえ……。議長も、お急ぎください!」
最後にタリアは、ギルバートに敬礼し、再びクルー達に指示を飛ばす。
「ボルテールにデュランダル議長の移譲を通達! MS隊にも帰艦信号を!」
「あぁ、そうだタリア」
「はい?」
「君のところのMSパイロットの、イチカ・ラインハルト君を、ちょっと私に貸してくれないだろうか?」
「え?」
議長の申し出に、その場にいたメンバーは疑問に思った。
イチカとギルバートは、ほとんど接点がなかったはず……なのに、どうしてイチカを……?
「貸す……というのは、一体どういうことですか?」
「言葉そのままの通りだよ……こんな状況なのに、わがままを言ってしまって申し訳ないのだが、彼に、渡したい物があってね……。
その渡したい物も、プラント本国に戻ってからでないと…………だから頼む、タリア……」
「………………わかりました。メイリン、イチカに通信で伝えて、議長と共にボルテールへと移譲せよ、ってね……」
「は、はい!」
ミネルバから発せられた通信による指示は、ユニウスセブンにいるザフト軍MS全てに通達された。
ミネルバがユニウスセブンとともに地球へと降下しながら、艦首砲による破砕作業を行う……それに伴い、MS隊は随時帰還せよ。
との通達だった。
「ミネルバが艦首砲を撃ちながら、共に降下するっ……?!」
「「「っ……!!??」」」
ミネルバとともに破砕作業に向かったボルテールとルソーはナスカ級宇宙用戦闘艦。
なので、基本的に大気圏内での活動はしない。
そのため、この場にいる戦艦の中で、大気圏に入れるのはミネルバのみ……。
その事態に際し、大気圏降下可能なミネルバのみが、この作戦を実行できる唯一の艦になる。
その命令が、展開していたザフト軍MS隊に全て伝わり、イザーク達はその場から即座に撤退する。
また、レイやアリサ達、ミネルバのMS隊も撤退を始めた。
そんな時、メイリンからの直接回線で、イチカは呼び出された。
「えっ? 俺だけ、ボルテールに乗れって?」
『うん。議長からの通達で……。イチカ・ラインハルトはそのまま、ジュール隊が搭乗するナスカ級《ボルテール》に、デュランダル議長と共に移譲してください。
既にボルテール側にも、その事は通達してあるから、入れてもらえると思います』
「……了解した。イチカ・ラインハルト、これよりボルテールへと移譲する」
イチカの灰ザクも、その場から離れていき、ユニウスセブンから少し離れた場所にいるボルテールへと向かった。
『イチカっ!』
「っ……アリサ……」
と、向かう途中で、通信と同時に左側から赤紫色のザクウォーリアが近づいてきた。
『ボルテールに移譲って、どういう事っ?!』
「あぁ、なんでも議長からの命令みたいだ……まだ内容は聞いてないんだけど。
悪いな、だから一緒には帰れないみたいだ」
『そんな……』
通信越しに映るアリサの顔は、とても寂しそうで、今にも抱きしめたくなるような表情だったが……。
そういう訳にもいかないので、イチカはザクの左腕を伸ばして、アリサのザクの右肩部分を触れる。
「大丈夫だって。俺はプラントに戻るだけみたいだから……。それよりも、そっちの方が心配だぞ……。
一緒に降下しながら、ユニウスセブンを破壊するって……! 下手したら、ミネルバごと落ちる可能性だってあるのに……っ!」
『…………』
そんな危険を冒してまで、しなくてはならない事……。
客観的に見れば、やらなくてはならない事なのだろうが……しかし、アリサや、他の乗組員達が危険に晒されるようなことになると考えると、自分だけが安全な場所へと退避するみたいで、すごく嫌な気持ちになる。
『多分、大丈夫でしょ!』
「はい?」
『ミネルバだって、そんなやわな構造してないし、あくまで遠方から《タンホイザー》を撃つだけみたいだし……。
無事に地球に降りられたら、連絡するわ……!』
「…………あぁ、わかった。連絡、待ってるな? それじゃあ、気をつけて……幸運を祈る……!」
『えぇ……。イチカも、もしも家に帰る事があったら、ママによろしく伝えておいて』
「了解だ……じゃあな」
『うん……またね』
二機のザクが離れていく。
アリサのザクの背中を見送りながら、イチカもナスカ級《ボルテール》へと移動を開始する。
「こちら、ミネルバ所属のMSパイロット、イチカ・ラインハルト。デュランダル議長の勅命により、議長とともに貴艦への乗艦を願います」
『こちらボルテール……了解した。こちらの誘導に従い、乗艦してくれ』
イチカかボルテールへと乗ろうとしている最中、ミネルバでも、議長がシャトルに乗り、ミネルバのカタパルトから出て行く。
そのには本来、もう一人乗るべき人がいるはずたったのだが……。
「では、姫……参りましょうか?」
「っ…………」
数分前の出来事だ。
メイリンがイチカに、ボルテールへの移譲を通達していたくらいの時間……。
ギルバートは、共に避難するようにと、すぐ近くに座っていたカガリに手を差し伸ばした。
たしかに、今から危険な賭けに出ようとしているミネルバ内に、他国の国家元首を載せておく訳にもいかない。
そのため、共にボルテールへの乗り移り、プラント本国から、オーブへと帰国しようというのだが……。
当の本人は、首を横に振って、ギルバートの申し出を断る。
「私も……ここに残る」
「え?」
「アスランがまだ戻らない……! それに、この事態に、ミネルバがそこまでしてくれるというのならっーーーー」
「はぁ……姫がそうお望みなのでしたら、私は構いませんが……」
ギルバートの言葉に、艦長であるタリアは小さくため息をついた。
そこはもっと説得して、共に下艦してもらいたかったところだったのだが……。
しかし、今はそう時間を費やしている余裕はない。
ミネルバも、大気圏降下シークエンスを開始し、迫り来る地球の重力をその船体に受け始めていた。
そして、次々にミネルバ所属のMS達が帰艦をし始めた。
先に入っていたルナマリアを除き、アリサ、レイが順番に入って行く。
一方ボルテールの方も、イチカのザクが入って行くのを確認し、さらにギルバートが乗ったシャトルが入って行くのも確認できた……。
しかし、まだ戻っていないメンバーが二人いる。インパルスと、緑色のザクウォーリアの二機が、まだ戻っていない。
「…………ん?」
その二機は、今もなおユニウスセブン内部にいた。
命令により、その場を離脱しようとしていたシン……しかし、インパルスが捉えた視界の先には、いまだにメテオブレイカーの取っ手を握り、作動させようと試みるているアスランのザクウォーリアの姿があった。
「っ……何してるんです! 帰艦命令が出たでしょう、通信も入った筈だ!」
「っ……あぁ、わかってる。君は早く戻れ……!」
「一緒吹き飛ばされますよっ! いいんですかっ?!」
「……ミネルバの艦首砲といっても、外からの攻撃だけでは、確実とはいかない……! だから、これだけでもっ…………!!!」
「っ……!!」
頑なに手を外そうとしないアスランのザク。
それを見かねたのか、シンはインパルスを操作して、反対側の取っ手を握る。
「んっ……?」
「っ…………貴方みたいな人が、なんでオーブになんか……っ!」
「っ…………」
二年前のあの大戦で、プラントはコーディネーターこそが、人類として最も優れた種であると定め、ナチュラル達を滅ぼそうとしていた、父・パトリック・ザラの手中にあり、また連合側も、コーディネーターを忌み嫌うブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルの手中にあった。
そんな中で、オーブその信念を全うし、最後まで抗い続けた中立国だった。
そんな時に、連合側でもプラント側でもない、第三の勢力として戦うことを、アスランさ決めた。
何が正しくて、何が間違っているのか……?
軍の命令で敵を撃ち、滅ぼしてもなお、戦争は終わらない。
一体自分たちは、何と戦い、何のために戦えばいいのか……それすらも分からなくなっていた。
しかし、その時に出た思いは、親友を……そしてその仲間達を、絶対に死なせたくはない……そんな思いだった。
だからこそザフトを抜けて、オーブの軍勢として戦った。
そして、愛する人ができた。
また、その人から逃げずに生きろと言われた……。
だからこそ、今でもオーブに残り、そんな彼女を支えようしていたのだ……。
しかし、その事を知らないシンからしてみれば、なぜアスランが、よりにもよってオーブにいるのか……それが分からないでいたのだ。
しかし、そんな二人に対して、攻撃を仕掛けてくる者たちがいた……。
ビーム兵器である緑色の閃光が、シンとアスランと近くを通り、地面へと着弾し、大きな衝撃音を立てる。
「っ!!?」
「んっ?!」
「うおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!」
「はあああぁぁぁぁっ!!!!!」
「これ以上はやらせんッ!!!」
今回のこの事態を引き起こしたテロリストたちだった。
向かってくるのは三機のジン。
しかし三機とも中破しているのか、リーダーであるサトーの乗るジンは、ディアッカとの戦闘で右脚を撃ち落とされ、そのサトー機の後ろからくるジン二機も、左腕をそれぞれ失っている。
しかし、そんな状態になろうと、彼らは退く事をしない。
むしろ、ここで朽ち果てても構わないとさえ思ってる者たち……テロリストなのだ。
「こいつらまだっ……!!」
こちらへとやってくる彼らの行動を確認、認識した瞬間、シンは操縦桿を動かした。
インパルスはメテオブレイカーの取っ手から手を離し、すぐにバックパックに装備してあるビームサーベルを手にしてそれを抜き放ち、向かってくるジンに対して、こちらも接近戦を仕掛ける。
そして、アスランもザクを操縦し、盾の中に格納しているビームトマホークを取り出して、思いっきり振りかぶる。
しかし、その状態を見て、サトー達はビームカービンを撃つ。
狙いはインパルスやザクではなく、その後ろにあるメテオブレイカーだった。
「っ〜〜〜〜!!!?」
放たれたビーム砲弾は、メテオブレイカーに直撃こそしなかったが、地面を抉り、固定していたメテオブレイカーの足場を崩す。
その隙に、インパルスとジンが交戦に入る。
「我が娘のこの墓標ッ! 落として焼かねばッ、世界は変わらぬッーーーー!!!!!!」
大きく振り上げた斬機刀。
しかしそれよりも速く、インパルスのビームサーベルがジンの胴体を斬り裂いた。
コックピットブロック近くを斬られ、爆散までしてしまったら、もはや助かる見込みはない。
しかし、最後に残したジンのパイロットの言葉が、シンとアスランを動揺させる。
「娘……っ?!」
「なにをっ……!」
娘の墓標……。
このユニウスセブンは、たしかに墓標とも呼べる存在だ。
アスランにとっては、母親の墓標とも言えるだろう……。
だが、問題はそこではない。
もしもその理由が……今回このような事件を起こしたのが、彼らのように愛する者達を失った者の集まりで起こした事件だとすれば、これは明らかな、地球国家……強いてはナチュラルに対する憎悪によって引き起こされた事件という事になる。
驚愕するアスランの元へは、サトー機が斬機刀を振り下ろす。
アスランは斬機刀を左肩にあるシールドで受け止め、こちらはビームトマホークを振り抜こうとするも、相手のシールドによって阻まれる。
そのまま鍔迫り合いが続くと思いきや、今度はサトーが声を荒げる。
「ここで散った命の嘆き忘れッ! 撃った者らとなぜ偽りの世界で笑うかッ、貴様らはああぁぁぁッーーー!!!!」
「「っ!!??」」
「軟弱なクラインの後継者に騙されッ、ザフトは変わってしまったっ!!」
平和を求めたラクス・クライン。
しかし、彼らの憎しみ、妬み、憤りは、決して平和など望んではいなかった。
一度鍔迫り合いを弾いたサトーは、再びアスランのザクに斬りかかる。
「何故気づかぬかあぁッ!!!」
「っ!」
振り下ろされる斬機刀。
それを再びシールドで受け止める。
「我らコーディネーターにとってッ、パトリック・ザラのとった道こそがッ、唯一正しきものとおぉぉッーーー!!!!!」
「っ……ぇっ!?」
ーーーーナチュラル共を滅ぼしてしまえばっ、戦争は終わるッ!!!
そんな言葉を言った前プラント最高評議会議長……パトリック・ザラは、ヤキン・ドゥーエのすぐ側に建造した超巨大砲塔『ジェネシス』を使い、侵攻する地球軍の艦隊やMS、MA部隊を殲滅し、さらに月面にある地球軍基地『プトレマイオス基地』まで破壊した。
この大戦で、両軍共に甚大な被害を受けた。
血で血を洗うとは、よく言ったものだ。
殺られたから殺り返す……そんなことの繰り返しだった。
しかし、あの大戦が停戦という形で終結して、二年も経っている。
だと言うのに、この者達は……。
「っ…………!!!!」
思わぬところで聞いた名前。
アスランの意識は一瞬だけフリーズした。
その瞬間に、ジンがザクを弾くとまたしても斬機刀で斬りかかる。
本来のアスランならば容易く躱すか、それともまた受け止めれたかもしれない……しかし、今の状態では、まともに避けられなかった。
ビームトマホークを持っていた右腕を、肩から斬り落とされる。
「ぁっ……!!」
その瞬間を見たシンは、すぐさまアスランをフォローするために、サトーとアスランの元へと向かう。
だがそこに、残っていたもう一機のジンが接近してきた。
手に持っていた斬機刀を振り上げ、左サイドから振り下ろそうとしてくる。
しかし、インパルスはそれを飛び躱すと、ジンの背後に回り込んでビームサーベルを一閃。
ジンの残っていた右腕を斬り落とす。
すでに破壊されていた左腕と、右腕を失ったジンではもう何もすることはできない。
そう思っていた……しかし、ジンはスラスターと両脚を動かして、インパルスに組み付いた。
「てえやあぁぁぁぁ!!!!」
ーーーーバアアァァァァァンッ!!!!
「うわあああぁぁぁぁっ!!!!?」
「シンっ!!?」
組み付いたジンは、あろうことか自ら自爆した。
コックピットからパイロットが出た様子はなかった……つまりは、自爆テロと同じ……。
自らの命と引き換えに、相手も巻き込んで倒す、あるいは殺す。
かつてそれは、アスランも行った作戦だ。
しかし、あの時乗っていたイージスとジンは、機体性能や装備、武装がなにもかも違うため、インパルスをも巻き込んで爆破するには、火力が足らなかった。
ジンは木っ端微塵になり、インパルスはVPS装甲によって傷はついたが、大した損傷はなかった。
ジンの胸部から頭部に至るまでのパーツが、固定中のメテオブレイカーに接触、爆破する。
その反動でメテオブレイカーは作動し、ドリルが地中を深く掘っていく。
しかし、ユニウスセブンの破片が割れることはなかった。
そして、ユニウスセブン本体は、大気圏へと突入した。
「降下シークエンス、フェイズ2に突入っ!」
「艦長っ、このままでは、すぐにでもフェイズ3に入ります! フェイズ3ではタンホイザーを撃つ事は出来ませんよっ」
「っ……インパルスと、彼のザクはっ?!」
「ダメです! 位置、特定できません!」
「アスランッ!」
その頃ミネルバでは、着々と降下と同時の破砕砲撃の準備が行われていた。
新造艦ミネルバは、大気圏内での活動も可能なため、大気圏への降下も可能だ。
開いていた主翼を閉じて、船体を地球が下になるように向ける。
その近くに、崩れながら共に落ちるユニウスセブンが見えた。
しかし、タンホイザーを撃とうにも、シンのインパルスとアスランのザクがまだ帰投していなかった。
このまま撃ってしまえば、二人を巻き込みかねない。
しかし、そこで撃たなければ、ユニウスセブンが落下し、地球は壊滅的被害を被る……これではテロリスト達の思うツボだ。
「っ…………タンホイザー起動」
「っ!!?」
「ぁ……っ!!?」
「し、しかし、艦長っ……!?」
「二人の事もあるけど……っ、このままでは、地球はもっと大勢の人たちが死ぬことになるわ……!
それを阻止するためにっ、私たちがやらなければならないのよ……っ!」
「っ〜〜〜!!!!」
アスランが戻らない……あのシンという少年も……。
しかし、それを待っているわけにもいかない。
カガリもわかっていた。
しかし、どうか…………。
「我らのこの想いッ!! 今度こそナチュラル共にぃぃぃぃッ!!!」
「なっ……!?」
一方、ユニウスセブンの破片付近にいたアスラン達は、このまま大気圏へと共に落ちていく事になる。
早くこの場から離れないと、ミネルバが艦首砲を放ってくる……。
それに巻き込まれて死ぬか、ユニウスセブンと共に落下して死ぬか……その選択は選びたくはない。
故にその場から離れようとしたが、サトーの乗ったジンは、アスランの乗るザクへと接近すると、絶対に離さないとばかりに右脚に抱きつく。
しかし、そこに飛来してくる一つの機影。
インパルスだった。
ビームサーベルを振り下ろし、ザクの右脚を斬り裂いた。
そしてジンを蹴り落とすと、ザクの手を取り、背部のスラスターを全開にしてその場から離れる。
「あああああああッーーーーーー!!!!!!???」
インパルスに蹴られた衝撃と、地球の重力が伴い、蹴られたジンはそのままユニウスセブンの破片へと勢いよく飛ばされた。
やがてかつては地面だったところにぶつかると、機体を損傷し、それによって引き起こした誘爆で機体は大爆発を起こした。
その衝撃によって、二つに別れたユニウスセブンは、さらに半分に割れて、さらに小さくなる。
「くっ、ぅぅ〜〜!!」
「っ〜〜!!!」
その間、インパルスとザクは、出来るだけユニウスセブンから離れていくものの、その地点はすでに、かなり地球に近づいていた事もあり、二機はそのまま大気圏へと落とされていった。
「ぁ……っ!!」
「ぐあああぁぁぁぁっ!!!!??」
そして、そんな事を知らないミネルバでは、すでにタンホイザーが起動。
エネルギーの充填を開始し、照準を合わせる。
「右30度回頭っ! 目標っ、右舷前方、巨大構造物っ!!!」
ミネルバの艦首が右へと回っていき、タンホイザーの砲口が、ユニウスセブンへと向けられた。
そして、エネルギーの充填が臨界点を突破し、放たれる。
「撃てぇぇぇぇぇっ!!!!!!」
凄まじい威力を誇る艦首砲。
それを直接コロニーの外壁に撃つ。
しかし、それだけでは表面の岩塊を撃ち崩しただけで、完全破壊までには至らなかった。
しかし、さらにエネルギーを充填し、再び砲撃を行う。
飛び散った岩塊は、衝撃と圧縮空力加熱で粉々になり、大気圏の熱で自然消滅する。
まさに流星と同じ原理だ。
そんな中を、インパルスは一緒に落ちて行っていた。
「っ〜〜〜〜!!!!」
体にも直に感じる重力、大気圏の灼熱……そして機体から発せられる警告音。
どれもこのままでは死んでしまうような要因ばっかりだ。
シンは急ぎ、インパルスにも大気圏へと降下シークエンスを作動させた。
「排熱システム、オンッ! 突入角オーケーっ、機体制御バランサー作動! 全システムクリアッ!!!」
降下する機体のバランスを整え、左手に持っていた盾を前面に出して、大気圏の熱を拡散させる。
そして機体が受ける熱量を逐一排熱させ、コックピット内の温度も少しずつ下げていく。
「あの人は……っ?! ぁ……!」
共に落ちているのなら、どこかにいるはず……。
そう思ってあたりを見回してみると、インパルスが降下している地点よりもさらに低い位置、左下前方に、突入していくザクの姿があった。
体を左肩に装備している盾に隠すように体勢を変えて、インパルスと同じように降下していった。
しかし、インパルスのとは違い、ザクのシールドは、今にも取れてしまいそうな音をかき鳴らしていた。
しかも、あまりの熱量と重力に入る衝撃でそうなったのか、バックパックのブレイズウィザードのスラスター一基が、分離・爆発してしまった。
「くっ……損傷のせいか、右脚の温度上昇が速いっ……! いけるかっ!?」
必要な犠牲だったとはいえ、そこから引火して、爆発しないかと、常に死と隣り合わせの状態が続く。
そして無事大気圏を抜けたとしても、ザクでは空中飛行ができない上に、二基あるスラスターの内の一基は、爆発してしまったために、普段よりも推力が落ちている……。
これでは、その重力の力を増大させ、水面に激突し、ただでは済まないだろう。
そんな中でも、ミネルバは着々とエネルギーを充填し、タンホイザー を連射する。
「撃てえぇぇぇぇッ!!!」
タリアの声を合図に、再び砲撃が行われた。
大きかった破片は、タンホイザー の衝撃によって粉々になり、地球へと落ちていく破片は、徐々に小さくなっていっている。
しかし、そんなミネルバも、限界が来た。
「フェイズ3っ、突入しましたッ!!!」
「っ……!」
「ぬぅぅぅ……っ!!」
「っ〜〜〜〜!!!」
大気圏降下に伴い、活動できる時間も限られていたミネルバ。
ここへ来て、とうとうタイムリミットが訪れたようだ。
正面のモニターは白黒の嵐画像へと変わり、大気圏突入時にかかる圧力と衝撃が、クルーたちにも押し寄せる。
そしてミネルバは、粉々になったユニウスセブンと共に、地球へと降りていった……。
そして、その事態の情報は、すでに地球側へも通達されていた。
『ユニウスセブンの破砕には成功しましたが、破片の落下がありますので、海岸線にお住いの住民は、急ぎ高台へと避難してください。
また、都市部のシェルターなどは、随時解放しておりますので、近くのシェルターへの退避を勧告します』
テレビから流れてくるアナウンサーの声。
淡々と、今現在知り得ている状態を公開する。
しかし、その表情は非常に張り詰めており、事の重大さが見ているだけでわかる。
そして、オーブの海岸線に住んでいたある少年たちは……。
「さぁ、皆さん行きますわよ」
「ねぇー、ドコいくのぉ〜?」
「あっ! わかったっ、おつかいだぁー!」
「えぇ〜……! もっとあそびたいよぉ〜〜!」
「あらあら……」
10人くらいはいるであろう子供達と共に、盲目の男性とピンク色の鮮やかな色をした長い髪を持つ少女。
先に行って先導していた青みがかった紫色の長い髪をした女性もそこに加わり、子供達を避難させようとしていた。
「ん? …………キラ?」
ピンク髪の少女は、海岸の浜辺を見渡しながら、ある人物を探す。
すると、その探し人は、打ち寄せる波のギリギリのところに立って、空を見上げていた。
「………………」
茶色の髪に、アメジストのような色をした優しげな瞳を持つ少年。
そんな少年が見上げた空の彼方には、赤く燃え上がるユニウスセブンが飛来してくる光景が写っていた。
「ぁ………………」
これより起こることは、また世界を混沌の闇へと誘う一大事なのではないか……。
そんな予感が、少年、キラ・ヤマトには伝わって来た。
これから先に起こる事……それが、再び世界中の運命を左右することになろうとは、この時までは、誰も予想だにしていなかった……。
この後は、再び世界を巻き込んでの開戦に入ります!
イチカはプラントに戻るゆえ、開戦に参加する流れにしたいと思います!
感想よろしくお願いします!