機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜 作:剣舞士
ユニウスセブンが終わり、今度は開戦を行います。
ミネルバによる艦首砲の砲撃。
何度も撃たれる《タンホイザー 》……その度に、ユニウスセブンの岩塊は粉々になっていき、やがて大気圏の圧縮空力加熱にさらされる。
しかし、そこで時間切れだった。
ミネルバも大気圏突入シークエンスのフェイズ3に突入し、身動きが取れない状況となった。
また、ミネルバに帰投できなかったインパルス、ザクの二機も独自に大気圏へと突入。
ユニウスセブンと共に地球へと降り立った。
そして、落下した破片とは別に、ミネルバは大気圏を突破……大気圏内へと入ったのだ。
「艦長っ、空力制御可能範囲へと入りました!」
「主翼展開! 操艦慌てるな」
「主翼展開! 以後、大気圏内推力へ移行!」
操舵士のマルクへと指示が飛ぶ。
そしてタリアはそのままメイリンの方へと視線を向ける。
「通信、センサーの状況はっ?!」
「ダメです! 破片落下の影響で、電波状態がっ……」
「レーザーや熱センサーでもいいわ! インパルスとザクを探して!」
「ぇ……っ?!」
タリアの言葉に、カガリは俯いていた顔を上げる。
「彼らも無事に降下していると……?」
「…………平気でタンホイザーを撃っておいて、今更だけどね……信じたいわ」
あの時、本来ならば、インパルスとアスランの搭乗したザクを回収して、危険がないことを確認した状況で、タンホイザーを撃つべきだった。
しかし、時間がある限られたていたこと、ユニウスセブンがあのまま落下していた後のことを考えると、撃たないわけにはいかなかった。
そして、破片が散らばった今、インパルスとザクの二機が、無事に大気圏を突破したという確率は、限りなく低いと言ってもいいだろう……。
しかし、信じたい。
彼らが、無事に降下してきているという事を……。
「っ……!」
そんな心配をされている中で、ザクが一機……ボロボロの状態で大気圏内を降下していた。
右脚、右肩から下を損傷し、背部のバックパックであるブースターも、大気圏突入の際に破損した……。
そんな状態で、重力が重くのしかかる空中を降下していた。
それはさながら、スカイダイビングのようであった。
ザクのパイロット、アスラン・ザラは、神妙な面持ちで操縦桿を握り、目の前にあるパラメーター機器を見ていた。
大気圏突入時の心配事はクリアした……しかし降下した後にも、注意すべきことがある。
その注意事項のことがあるため、未だに気を抜くわけにはいかない。
しかし、そんな時に限って、その心配が的中する。
これまで大気圏を無事に降下してきた際に使っていた、ザクの左肩のシールドが、ついに限界にきたのか、気流に当てられ破損してしまった。
その衝撃により、ザクの体勢は崩れて行き、錐揉み状に落ちていく。
「くそっ! やはりブースターがなければ、大気圏は……っ!!」
ザクは大気圏内での空中機動力がない。
バックパックのブレイズウィザードは、多くのスラスターを搭載しているとはいえ、インパルスのように、大気圏内で高機動の行動ができるわけではない。
故に、かつてのジンやシグーが大気圏内で活動する際に使用していた大気圏内活動用のブースター『グゥルー』を使用しなければならない。
だが、今はそんなものがあるはずもなく、ザクはただ、海面に向かって落ちていくのみだった。
しかし、そこに通信が入った。
『アスランさんっ! アスランさんっ!!!』
「っ……! シンっ、君かっ?!」
『アスランさんっ、待っててください! 今行きます!』
「よせっ! いくらインパルスのスラスターでも、二機分の落下エネルギーはーーーー」
そこまで言いかけた時だった。
機体全体に衝撃が走った。
初めは何事かと思ったが、すぐにそれが、インパルスによる救援だという事に気がつく。
『どうしてあなたはっ、そんな事ばっかり言うんですかっ……!』
「じゃあ、何と言えばいいんだ……?」
『んっ…… “俺を助けろ、この野郎っ!” とか…………』
「…………ふっ、そう言われたいのか?」
『違いますっ……ただの例えですよ……!』
インパルスはザクを抱えたまま、少しずつ降下しながら、空中を飛び彷徨う。
そんな時、ミネルバでも接近する熱源を探知した。
「本艦に接近する熱源有り! 6時の方向!」
「「「「「ッ!!!!!!???」」」」」
「インパルス? いや、これは…………」
「高画映像っ、出せるっ?!」
「は、はい!」
タリアの指示に、メイリンが急いで端末を操作した。
すると、ミネルバの船体にあるカメラが、こちらに接近してくるインパルスとザクの映像を捉えていた。
「「「おおおっ……!!!」」」
「インパルス!」
「ザクも無事だっ!」
「っ…………アスラン……!」
二機の無事に、ブリッジにいるクルー達、そしてカガリから歓喜の声が上がる。
そしてタリアも、一安心したのか、体全体から力が抜けるような感覚を覚えた。
そして、すぐさま索敵員であるバートンと、操舵士であるマルクに指示を出す。
「バード、発光信号で合図して」
「ハッ!」
「マルク、艦を寄せて。あのままじゃ、いずれ二機とも海面に激突するわ」
「了解!」
ミネルバからの発光信号が放たれ、シンとアスランは、その光が放たれた方へと向かう。
すると、雲の切れ間から見慣れた船体の影が見えてきて……。
「ぁ……」
「ミネルバ…………!」
シンは左舷カタパルトデッキの上に着陸し、ザクをその場に寝かせるようにして置いた。
その後、二機はカタパルトデッキから艦内へと入り、無事に帰還した事を実感した。
損傷したザクのコックピットが開き、中からザフトの赤いパイロットスーツにつを包んだアスランが降りてくる。
そしてその下には整備班のメンバーや、班長のマッド、それにルナマリアが待ち構えていたのだが、そこに慌てて走ってきたカガリも加わる。
「アスランッ!!!」
「っ……!」
「ぁっ……!?」
あまりの慌てように、ルナマリアの肩にぶつかったが、それすら気にも留めないほどにカガリはアスランの事で頭がいっぱいだった。
慌てるカガリに、アスランは優しく声をかける。
「カガリ……」
「アスランお前っ……はぁっ……はぁっ……お前っ、何にも言ってなかったからっ……!」
「すまない……勝手なことをしてしまって……」
「あぁ、すごく心配したぞっ……!」
「あぁ、本当にすまなかった……」
「いや、いいんだ……私も、お前と同じ立場だったら、同じことをしていたと思うし……ありがとう、むしろお前が出てくれて、良かったと思っている」
「…………」
カガリの言葉に、アスランは浮かない表情をしたが、カガリはそんな表情をしていたアスランに気がつかなかった……。
そして、ミネルバが無事大気圏に入り、シン、アスラン両名が無事帰還した時……。
地球側では、色々と情報が錯綜していた。
ユニウスセブン落下の報道から、ユニウスセブンの破砕完了と、破片の落下による大規模な被害の予測へと、情報は移り変わった。
地球に住む人々は、皆シェルターへと避難して行く。
しかし、中には避けられない死と絶望に負けて、自分の家で最後の日を迎えると言い出す人々も……。
巨大な塊として落ちなかっただけでも、被害は最小限に抑えられて入るものの、砕けた破片の中には、大気圏の圧縮空力加熱で燃え尽きなかったものが、地球へと落ちていく。
主に落下による被害を受けたのは、ローマ、パルテノン、上海、北京、ゴビ砂漠、フィラデルフィアなどなど……。
おもに赤道付近が特に被害が大きかった様だ。
そして、直接落下はしていないものの、海に落ちたことによって、津波の被害にあった地域も多かった。
ポーツマスを含むサウスカロライナからメイン州一帯、フォルタレザ、サルヴァドール、スリランカなどなど……。
この一帯は、非常に強く、高い津波が押し寄せ、街は壊滅的な打撃を受けた。
この事態に際して、プラント最高評議会議長であるギルバート・デュランダルは、即座に救援隊を派遣。
迅速な救援活動を命じた。
しかし、そんな一大事に、暗躍する者たちもまたいるのだった。
『そちらの被害はどの程度だったのだ?』
『どうもこうもない。津波による被害が酷すぎる……』
『パルテノン宮殿が吹っ飛んだわ……』
『こちらとて、歴史的な文化遺産を破壊されたよ……こんな状態では、民衆の不満が爆発するのも時間の問題だ』
モニター越しでの会話であるが、その話の内容はとても重苦しい雰囲気を漂わせる……。
彼は大西洋連邦に属する幹部の者たちだ。
今回のユニウスセブン落下事故における、各国の被害を改めて話し合っていた。
しかし、そんな彼らの会話は上がる様に、また新たな人物の声が聞こえてきた。
「あんな古いだけの建物なんて、壊れてしまっても問題はありませんよ」
『『『っ……!!?』』』
『ジブリール』
「さて皆さん、今は混迷を極める状況ではありますが、これから先の話をしようではありませんか……」
ただ一人、多くのモニターがある部屋の中央でソファーに踏ん反り返り、今ある情報とその状況を見届けている人物。
白髪の短髪を整えたいかにも紳士を彷彿させる人物。
しかし、この男こそ、ブルーコスモスの母体とも言える組織『ロゴス』のリーダーであるロード・ジブリール氏なのだ。
「じきにみなさんのお手元にも届くとは思いますが、ファントムペインが大層面白い物を送ってきてくれましたね……」
そう言って、ジブリールは自分の座っていた椅子の肘置きに付いている端末を操作する。
すると、ロゴスメンバーに見えるように、数枚の映像が映し出された。
『『『っ……!!!!』』』
『こ、これは……っ!』
『なんだ?』
『フレアモーターっ?!』
『なるほど、やはりそう言う事だったか……』
その写真に写っているのは、まぎれもないジン部隊とザフト軍MSの戦闘記録の映像だった。
さらに太陽風を利用して作動させる『フレアモーター』が多数見て取れる。
ということは、これは自然現象で起きたものではなく、何者か……明確に言えば、コーディネーターによって引き起こされたテロ事件ということになる。
「これは絶好のチャンスなのですよ……。こんな事をされて、許せる人間などいるわけもない。
今度こそ、コーディネーターどもを滅ぼせと、民衆は思うでしょうね……。ならば、我々は、その火蓋を切って落とさねばならないっ……!
今度こそ…………青き清浄なる世界の為に……ね」
そう言いながら、右手に持つワイングラスをクルクルと回し、赤ワインを口にするジブリールの顔は、誰が見ても、歪んだ微笑みをしている感じるような笑みを浮かべていた……。
「…………」
「ミネルバが気になるかね?」
「え、いや、その……」
「そんなに遠慮することはないよ。私も心配だ……艦長はああ言ったが、やはり無茶な事を頼んでしまったと、私も今になって思ってしまう……。
ましてや君にとっては、大切な仲間や同僚、家族もあの艦になっているわけだからね……」
「はい……まぁ、そうですね……」
プラント本国。
ユニウスセブンから離れ、本国へと帰還したギルバートは、早速プラント最高評議会のメンバーを呼びかけ、今後の対策を練っていた。
一つは、すでに行われている救援活動。
宇宙から大気圏を降下して、作業支援に使う機材や、ライフラインとなる食料や水、電力を賄うための発電機や、毛布、生活必需品といったものまで、できるだけの支援をしようと言う事……。
そして他には、この事件が、単なる自然現象によるものではなく、前議長パトリック・ザラを信仰するザフトの脱走兵たちによるテロ行為だった事について……。
一番被害にあっている地球側……つまりは、連合側とは、今は停戦状態にあるものの、その停戦協定が、今回の事件で破綻する可能性は大いにある。
となると、まずは各国から今回の事件に対する詳細な情報追求や、民衆が納得させられるだけの弁解の言葉の用意……そして今回の事の次第が、自分たちザフト軍の意思とは全くの無関係であると言う事を明確にしなければならない。
しかし、今は情勢が情勢だけに、非常に厳しいだろう……。
そんな中、ギルバートは議長室にこもり、今後のことを考えていた。
そこにイチカも一緒にいて、ギルバートと話しているのだ。
「しかし、とんでもないことになってしまったな……」
「自分たちが、もっと作業に当たれていたら、こんな事には……本当に申し訳ありません……!」
「いやいや、謝る必要はないよ……イチカ君。君も、それに他のパイロットのみんなも、あの状況の中でよく頑張ってくれたと思っている。
私だって、あんな事になっているとは、夢にも思っていなかったからね……。
しかし、これからが厄介だ……」
「っ…………やはり地球軍側が、こちらに対して報復をしてくると、議長はお考えですか?」
「うむ……。確証はないが、おそらく高確率で、なんらかの動きを見せてくるだろうね……。
出来るだけ争いではなく、話し合いで解決できればと思うが、それも難しいだろう……」
「っ…………」
そうなれば、まず間違いなく停戦協定は破棄され、開戦へと至るだろう。
そして、地球軍が真っ先に狙ってくるとしたら、それはザフトの本拠地でもあるここプラント本国へ向かってくるはずだ。
「あの、議長」
「ん? 何かね?」
「自分は、どうすればよろしいのでしょうか……もしも地球軍が、ここプラントに攻めてくる様な事があれば、自分も出撃の許可をいただけますか?」
「あぁ、無論、君にも出てもらう事になるだろうね……。君には別件でここに来てもらったのだが、もしそうなってしまったら、その時は頼むよ」
「はい……! そのために、日々訓練してきましたから……っ! ですが、その別件とは……?
自分は、なぜ招集されたのですか?」
「おっと、まだ話していなかったね……。いや、申し訳ない。帰ってきたからと言うものの、話す余裕すらなかったよ」
「いえ、議長のお立場でしたら、それも当然でしょう」
「まぁ、それは仕方がないとは思っているが、申し訳なかったね……。
君をわざわざミネルバからこちらに呼んだのは、君に渡したい物があったからなんだ」
「渡したい物……?」
「あぁ……。これから先、君の役に立ち、さらには我がプラントにも役立ってもらうための物なんだ」
「はぁ……」
一介のザフト兵であるイチカに対して送る物……と言うと、あまり想像はつかなかったのだが、この話の流れだと、答えは絞れてくる。
「早速それを渡していきたいと思うんだがね、あいにくと、まだ渡せる状態ではないとの事なんだ……だから、もうしばらくだけ待ってくれないだろうか?」
「はい、それは構いません」
「ありがとう……。あぁ、それから君の今後のことなんだが……」
「はい……」
「君には、別命があるまでジュール隊の指揮下に入ってもらおうと思っている」
「ジュール隊……イザーク・ジュール隊長の指揮下に?」
イザーク・ジュールとは、先のテロ事件の際に共に戦った。
しかも、ギルバートとともにプラント本国に戻った際には、彼らの乗るボルテールに乗船させてもらい、一応、挨拶は交わしていたが、それ以外に会話らしい会話はしていなかった。
「あぁ……。彼らは基本的に月軌道の警戒に当たっているのでね……今回も一番はじめに動いてもらうのは、彼ら月軌道を担当している者たちなのだよ……。
元々ミネルバも、月軌道での活動をしてもらう予定だったし、君のMSパイロットとして技術を信じて、そこでともに警戒に当たってくれると嬉しい……!」
「っ……! もったいお言葉です」
「なに、謙遜する事はないさ。君のMSパイロットとして腕も、レイやインパルスに乗るシン・アスカ君と同等だと聞いている。
正直インパルスを渡すのも、シン・アスカ君か、レイか……もしくは君か……上層部もだいぶ悩んだいたみたいだしね」
「そ、そうなんですか……」
それは初めて聞いた……。
しかし、合体・分離機構を持つインパルスの操縦は、かなりの技術が必要だと思っていた。
それを可能にしたのは、間違いなくシンの腕がいいからだろう……。
イチカ自身は、ザクファントムでも十分だと思っていたのだが……。
『議長、そろそろお時間です』
「あぁ、わかった。すぐに行こう」
と、そんな時。
外部からの呼び出しがかかった。
「すまないイチカ君。これから私も会議があってね」
「いえっ、自分もお忙しい中、ありがとうございます」
「あぁ、ジュール隊の方には、私の方からすでに通達している。早々に合流してくれたまえ」
「はい! それでは、失礼いたします」
「あぁ、武運を祈る……」
イチカは議長室を出て、そのままイザーク達がいるであろう軍の戦闘艦が停留している港の方へと急いだ。
「ふむ……実際に会って話してみないことには、人の本質を知ることなどできん……か……。
たしかに、その通りかもしれないな……」
議長室では、会議に出席するための準備を行っていたギルバートが、一人端末を動かしてあるファイルに目を通す。
「彼は不思議な人間だと思っていたが……ここまで興味深い人物だったのはね……」
端末に写っていたのは、イチカ・ラインハルトの入隊記録や、パーソナルデータが登録されているファイルだった。
「シン・アスカ……イチカ・ラインハルト……今年のザフトの軍人は、本当に豊作だな……」
端末を切り、ギルバートは立ち上がった。
そして、イチカの出ていたドアと同じ方向へと歩み始める。
そんな彼の口元は、ゆるりと微笑んでいた。
「ならば、早急に完成を急がせなければね……イチカ・ラインハルトの技量に見合う、最良の機体を……っ!!」
一方、地球へと降り立ったミネルバは、カガリ、アスランがいるため、そのままオーブへと向かっていた。
オーブ政府への連絡も取れ、ミネルバはあと少しでオーブ領海へと入ろうとしていた。
そして、パイロットたちはというと……
バンッ…………バンッ…………バンッーーーー!!!
ピー…………ピー…………ピー……。
「ん?」
外へと出れる通路から顔を覗かせるアスラン。
するとそこには、ベランダのようになっている区画で、射撃訓練をしていたMSパイロットメンバーと、オペレーターのメイリンの姿があった。
ちなみに、今撃っているのは、ルナマリア、レイの二人だった。
三台並べてある射撃用の的の内、中央をルナマリアが、右側をレイが撃っている。
メイリンは姉の射撃を見ながら、左側へと立っていた。
そこに、アスランは後ろから近づいて、その様子を見ている……。
「ぁぁ…………」
一通り撃ち終わったルナマリアは、自分の射撃を振り返り、ため息混じりに言葉を発する。
まぁ、的を見た限り、あまり成績が芳しくなかったのだ。
隣で撃っているレイを見る。
するとレイは淡々と撃ち続けているが、その全てが、人の形を模した的の顔と胸の部分にある的の、ど真ん中あたりを撃ち抜いている。
着弾場所が散らばっているルナマリアとは、雲泥の差という結果になった。
そんな結果が面白くないのか、ルナマリアが渋い顔をしていると、後ろにいるアスランに気がついた。
「あら……」
「訓練規定か……」
「ええ。どうせなら、外の方が気持ちいいって事で……。でも、今日は調子が悪いわ……」
「ふっ……」
「調子が悪いのはいつもじゃなかったっけぇ〜?」
「むうっ……! 何よぉっ、調子が良ければもっといい点行くわよっ!」
入り口から、もう一人出てくる。
長い銀髪に、蒼い瞳が特徴的な少女……。手にはルナマリア達と同じ銃が握られており、首にヘッドホン、頭には目を守るためのメガネをかけている。
入り口から出た途端、アスランと目があったアリサは、いきなりだったこともあり、少し戸惑いながら、その場に立ち止まってしまった。
「あ……」
「あぁ、すまない。訓練しているところをたまたま見かけてな……。気にしないでくれ」
「え、あ、はい……」
アリサはよそよそしくアスランの前を通り過ぎる。
そして、メガネをかけ直し、銃のカートリッジを一度抜いて、再び差し込むと、左側にいるメイリンの方へと近づく。
「メイリン終わった? まだなら待ってるけど」
「あ、ううん。私さっきもやってたし、どうぞ」
「そう? じゃあ、失礼して……」
メイリンは後ろに下がり、代わりにアリサが射撃ポイントにおいてある台に近づく。
そこに埋め込まれてある端末を操作して、ヘッドホンを耳にかけて、銃を構える。
バンッ、バンッ、バンッ、バンッーーーー!!!
ピー、ピー、ピー、ピー…………。
先ほどのルナマリアと違い、一定のリズムで引き金を引くアリサ。
それも、その射撃精度は思いの外高く、レイ同様に的のど真ん中あたりを次々に命中させていく。
「ふっふ〜ん♪」
「はいはい、あんたの方がうまいうまーい……」
「あらら……拗ねちゃった?」
「拗ねてないわよぉ〜!」
「思いっきり拗ねてるじゃないのよ♪」
「アリサァ……!」
「きゃあぁぁ〜〜♪ 怖いお姉さんが近づいてくるぅ〜♪ メイリンっ、ガード!」
「ちょ、ちょっとアリサっ?!」
和気藹々……といった雰囲気に包まれている女子メンバー。
そんな様子を見て苦笑しているアスランと、気にせず淡々と銃を撃ち続けるレイ……。
なんだか、シュールすぎる光景だった。
「もう、まったく……」
ルナマリアが銃を再び構えようとした時、ふと閃いたとばかりに、アスランの方を向く。
「一緒にやります?」
「えっ……いやぁ、俺は…………」
何の気なしに言うルナマリア。
しかし、アスランは当然それを断る。
まぁ、今はオーブの要人警護をしている身であるため、他国の軍人の訓練に参加するなんて、普通はあり得ない。
そんなアスランを見て、ルナマリアはさらに続けた。
「私たち、本当はもう、あなたの事知っているんですよ……」
「…………」
「元ザフトレッド、クルーゼ隊。戦争終盤では、当時地球軍最強と言われていたストライクを撃退し、その特務隊『FAITH』に所属。
ZGMF-X09A《ジャスティス》のパイロットの、アスラン・ザラでしょう?」
「え……? あ、いやぁ……」
「…………お父さんの事は、あまり知りませんけど……その人は、私たちの間では英雄だわ……」
「…………」
過去にどんな事があったのか、それを知るのは、当時の関係者と当人達だけだ。
だからこそ、わからないこともあるが、わかっていることもある。
ルナマリアは、ただそれが言いたかった。
それだけ言うと、ルナマリアは自分の持っていた銃を、アスランの方に差し出す。
「射撃の腕も、かなりの物だと聞いていますよ?」
「ん…………」
「お手本……。実は私、あんまり上手くないんです……」
「…………ふっ」
アスランは観念したのか、ルナマリアから銃を受け取ると、先ほどまでルナマリアが撃っていた中央の射撃台の前に立つ。
ちょうどそんな時に、遅れてやってきたシンも加わり、みんな射撃をやめて、アスランの射撃を見学する。
台にある端末を動かして、カートリッジを挿入し、銃を構える。
そして次の瞬間だった…………。
バンッ、バンッ、バンッ、バンッバンッ、バンッーーーー!!!
ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッピーッ、ピーッ…………
「ぁ……」
「ぇ……」
「うそ……」
「っ……」
「な……っ!」
アスランの射撃は、今までルナマリア達がやっていた射撃とは違い、的自体がランダムに動き回るものだった。
その動き自体も速いにもかかわらず、アスランの放った銃撃は、的確に頭、または胸の的のど真ん中を撃ち抜く。
ルナマリア、メイリンの姉妹、アリサ、レイ、シンの誰もが、アスランの射撃技術とその正確性に目を見張り、驚きを隠せなかった。
その後も撃ち続けるアスラン。
その全てがど真ん中……命中率はほぼ100パーセントといっても過言ではなかった。
「うっそっ!? 同じ銃で撃ってるのに、なんでぇ?!」
「…………銃のせいじゃない。君はトリガーを引く瞬間に、手首を捻る癖がある。
だから着弾の時に散らばってしまうんだ……」
ものの数発しか撃っていなかったにもかかわらず、アスランは瞬時にルナマリアの欠点に気がついたのだ。
さすがと言うか、なんというか……。
あまりの神業的な射撃と観察眼にルナマリアは感激し、隣で見ていたアリサは驚愕した。
「さすがは元エース……といったところですか……」
「ん?」
「私も射撃は得意ですが、あんな風にされると……少しばかり対抗心が燃えてきますね……っ!」
不敵に笑うアリサ。
その笑みに、アスランは苦笑した。
かつてアスランは、同じような経験をした事があった……。何を隠そう、士官学校での事だ。
同期であるイザークやディアッカ達とは、無論同じ訓練を受けてきたのだ……ならばその結果で、イザークから執拗なまでに睨まれたり、妬まれたりした事があった。
それもまた、懐かしい記憶ではあるが……。
そんな風に物思いにふけっていた時だった……艦内の廊下を歩いていたカガリと目があったのだ。
カガリは上の階を歩いていたため、声は聞こえなかったが、口の動きと表情から察するに、「アスラン……?」と言ってるようだった。
その時の彼女の感情や気持ちが、一体どういうものだったのか……それは、本人にしかわからないが、あまり彼女を心配させるわけにもいかない。
「ま、まぁ……こんな事ばかり得意でも、どうにもならないがな……」
そう言いながら、アスランは銃をルナマリアに返した。
「そんな事ないですよぉ。これだけの腕があれば、自分や仲間を、敵から守ることが出来るじゃないですか……!」
「はは…………」
まぁ、それは当然だ。
だが、それならば…………。
「敵って……誰だよ?」
「え……?」
敵から自分や、仲間を守ることが出来る。
では、撃つべき敵とは……倒すべき相手とは……一体何者なのか?
こんな事態になって、一体それは何なのかと、アスランは問う。
しかし、ルナマリアからは、その答えが返ってこなかった。
アスランはそのままミネルバ艦内へと入っていこうとすると、今度はシンが話しかける。
「ミネルバはこのまま、オーブに向かうみたいですね……」
「あぁ……」
「あなたも戻るんですか……あそこに……」
「あぁ……」
そう、戻る。
いや、戻らなければならない……。
あそこには、大切な人たちがいるのだから……。話しておかなくてはならない事がいっぱいある……。
「そこで何をしているんですかっ、あなたはっ……?」
「…………」
アスランは何も答えなかった。
いや、答える事ができなかったのかもしれない……。
一体自分は、あの国で、オーブで何をしているのだろうか……?
いつくらいから出せるかわかりませんが、オリジナルガンダムを出そうと思います。
(まぁ……オリジナル……にはなるかなぁと思いますが……)
感想よろしくお願いします!!