機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜   作:剣舞士

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お久しぶりの更新となります。

最近バイト生活が忙しくて更新が滞っていますが、なんとか書き進んではいるので、ご安心を( ̄∀ ̄)




第11話 束の間の平穏

ミネルバはオーブ領海内へと侵入。

本来ならば、国防軍の艦隊が展開して、ミネルバを包囲するところだが、今回はわけが違う。

ミネルバ艦内には、自国の代表でもあるカガリと、その護衛として乗っているアスランがいるため、オーブ行政府も、ミネルバを歓迎していた。

 

 

 

「やれやれ、こんなご時世にザフト艦を招き入れる事になるとはな……」

 

「仕方ありませんよ、父上。あの船には代表もいらっしゃいますし、それにその身を呈して、地球に降下しながらもユニウスセブンの破砕を行った勇敢な船を、おいそれと跳ね返すような事なんて出来ませんよ…… “今は” ね……」

 

「あぁ、今は……な」

 

 

 

 

港のすぐ近くで、政府関係者と、オーブ軍の軍服を纏った人々が整列して出迎える中で、ミネルバはオーブ港に停泊した。

紫色の長い髪を後ろで一つに結んだ髪型をしている若い男性は、父親と呼ぶサングラスをかけた禿頭の男性と話していた。

そんな二人の会話が、他の人に聞こえているわけもなく、ここにもまた、暗躍するような、不穏な感じが流れ始めていた。

しかし、そんな思惑があるとは知らずに、ミネルバはオーブ内へと入った。

かなり損傷を受けているため、オーブからモルゲンレーテ社の技術スタッフを借りての修復作業してもらえる事になった。

無事停泊したミネルバ。

艦長であるタリアと、副長のアーサー、そしてカガリとアスランが船から降り立つ。

 

 

 

「っ……カガリィッ……!!」

 

「っ……ユウナ……うぅ?!」

 

 

 

紫色の髪をした男性、ユウナ・ロマ・セイランは、ミネルバから降りてくるなり、いきなりカガリに駆け寄ってきて、勢いそのままハグまで交わした。

その様子に、タリアはアーサーは驚きを隠せずにいて、またアスランは、顔を渋めて視線を逸らした。

 

 

 

「全くもうっ、本当に心配したんだよ? 一緒に船に乗って、共に大気圏に降りるなんて……!」

 

「いやぁ、あの、それは本当にすまなかった……! と、とりあえず離してくれないか?」

 

 

 

 

いきなりの事にカガリ自身も驚いている中、今度は禿頭の中年男性が、ユウナの後ろからやってくる。

 

 

 

「これユウナ……ザフトの方々が驚いていらっしゃる。気持ちはわかるが、今は控えなさい」

 

「おっと、失礼……。見苦しいところをお見せしました」

 

「ミネルバ艦長、タリア・グラディスであります!」

 

「副長の、アーサー・トラインであります!」

 

「オーブ宰相のウナト・エマ、セイランと言う。遠路はるばるご苦労であった。

それに我が国の代表をここまで送り届けてくれた事、感謝申し上げる」

 

「いえ……。我々こそ、アスハ代表を危険な目に合わせてしまい、申し訳ございませんでした」

 

「はは……。まぁ、立ち話もなんです。今はゆっくりと休まれてはいかがですかな。

船の整備には、我が国随一の技術スタッフ達を派遣させますので」

 

「感謝致します」

 

 

 

そこまで話すと、ウナトは視線をタリアからカガリへと移した。

 

 

 

「代表、帰国して早々に申し訳ないのですが、急ぎ行政府の方へときていただけますかな?

火急の知らせが入ってありまして、今からでも議会を開きたいと、市長たちから要請があります」

 

「あ、あぁ、わかった……すぐに向かう。アスーーーーうわぁっ?!」

 

「はいはい、カガリ……急いで向かおうか」

 

「いや、ちょっと、待っーーーー」

 

 

 

話の途中にもかかわらず、ユウナは強引にカガリの肩を抱いて、用意されている要人用の車へと移動させられる。

だが、途中で足を止めるユウナ。

振り返って、アスランの顔を見る。

 

 

 

「ここまでご苦労だったね、“アレックス”」

 

「っ…………」

「君も大変だっただろう? 今夜はゆっくりと休んでくれたまえ……」

 

「はい…………」

 

「あぁ、ちょっと、ユウナ、あの私は……!」

 

「「…………」」

 

 

 

 

まるで嘲笑うような……そんな雰囲気を含んだ言葉だった。

ましてや、オーブ政府が、アスランの事を知らないはずもない……それなのに、あえて『アレックス』と呼んだ。

そして、代表であるカガリとの間に、何かある事くらいは、タリアとアーサーも見て取れた。

故に、あんなに強引に連れて行く姿を見させられて、アスランの表情は暗く、渋くなっている。

その後、諸々の手続きを済ませて、ミネルバは修復作業へと移ることとなり、アスランはそのまま、オーブ政府の施設へと戻っていった。

一方その頃……。

プラント本国にいるイチカはというと……。

 

 

 

 

 

「ミネルバ所属、イチカ・ラインハルト、入ります」

 

「あん?」

「ん……お前って、ミネルバの……」

 

 

 

港に停泊しているナスカ級《ボルテール》へと入ったイチカ。

入り口にいた兵士に事情を説明して、ボルテール内へ入れてもらい、艦橋内にいるイザークの部屋へと入る。

そこには、イザークだけではなく、ディアッカまでいた。

 

 

 

「あぁ、そういえば、一時的に貴様を指揮下に入れろと、議長からの指令があったな。

俺はイザーク・ジュール。一時的ではあるが、俺がお前の上司だ。俺の命令には従ってもらうぞ」

 

「へぇ〜。お前アレだろ? スラッシュザクファントムに乗ってた……ディアッカ・エルスマンだ、よろしく……! いいねぇ〜、優秀な新人って事だろ? ザクファントムに乗ってるってことはさ……! しかもイザークとは違って、アックスじゃなくて剣で戦ってただろう? お前」

 

「はい! ユニウスセブンでの戦闘、しかと拝見させていただきました。

やはり、幾多の戦場を潜り抜けてきたみなさんの戦いっぷりは、とても勉強になりました!」

 

「ふんっ……」

 

「いやぁ〜、それほどでもぉ〜……あるかなぁ〜」

 

 

 

イチカの言葉に、イザークはそっぽを向き、ディアッカは大いに照れている。

相反するような性格である二人だが、ユニウスセブンでの連携は、本当に見事だった。

 

 

 

「しかし、お前だけが残ったとは知っているが、なにかの指令か?」

 

「はい……。なんでも、議長が渡したい物がある……ということでしたので、自分だけが本国に……」

 

「ほほう?」

 

「…………」

 

 

 

なにかを見定めるような視線を向けるイザーク。

イチカは少々たじろいでしまうが、そこへディアッカが横から入ってくる。

 

 

 

「はいはい、隊長。あんまり新人をいじめんなよ」

 

「誰もいじめてなどおらんわ!」

 

「あぁ、気にすんなよ? こいつは昔からこうだからさ。よくアスランとそういうので揉めてたし」

 

「ふんっ! あいつとは色々と反りが合わんだけだ!」

 

「あっはは……」

 

 

 

彼らのアカデミーの頃の出会い方は、どうだったのだろうか……。

イチカたちの出会いは、ただ単純に、同じ班で任務をした事だった。

シンとは同じオーブの出身ということで、過去の事、そしてプラントへ来た経緯などを互いに話し合って、それからは、なんだかんだで意気投合した。

レイに対しては、まぎれもない優等生だという認識が強く、訓練の結果や受けた試験の成績が、常にトップクラスだったのも理由の一つ。

偶然パーティーを組んでの連携訓練をした時には、レイの戦術と指揮のおかげで、優秀な成績を取れた。

そこからよく一緒につるんだり、飯を食べるようになったり、MSの戦闘訓練でも一緒に組んだりしていった。

ルナマリアとは、アリサが意気投合したみたいだった。

それと、ルナマリア自身の性格や行動力も相まって、自然と五人で過ごすことが多くなった感じだ。

 

 

 

「やはり、お二人はアスランさんの同期……だったんですね?」

 

「ふんっ……」

 

「まぁね。最初はいけすかない奴って思ってたけどねぇ〜」

 

「へぇ〜? でも、ユニウスセブンの時には、ジュール隊長とエルスマンさんの二人とは、息ピッタリでしたよ?」

 

「ディアッカでいいよ……。まぁ、これでも戦場には一緒に出たことがあるからな。

イヤでもあいつとは息が合うさ……なぁ、隊長?」

 

「いちいち奴のことで俺に話を振るな……! とにかく、今はユニウスセブン落下の影響で、どうなるのか分からん……!

月の地球軍艦隊は、まだ動きを見せてはいないが、奴らがどう動いてくるかによって、今後の活動が決まる。まぁ、このまま引き下がれば、それでいいが、そういう訳にもいかんだろう……!」

 

「だな……。しかも自然に落下したんじゃなくて、仕組まれていたことだしな……。

それが向こうに知れ渡ったら、まず間違いなく決起するだろうな……!」

 

「そうなったら……開戦……ですかね……」

 

「「っ…………」」

 

 

 

イチカの言葉に、表情が暗くなるイザークとディアッカ。

 

 

 

「そうなったとしても、俺たちのやる事は一つだろう……!」

 

 

 

そう言ったのは、イザークだった。

その表情は、隊長としての顔というよりは、一人の軍人……一人の一プラント市民としての表情にも見えた。

 

 

 

「俺たちの目的は、プラントを守る事だ。二年前にもプラントに危機が迫ったが、それをなんとか退けて、俺たちはこうやって生きている……!

ならば、また同じように、守り抜くだけだっ……ミネルバの小僧も、それだけは覚えておけっ、いいなっ?!」

 

「ハッ!」

 

 

 

 

 

歴戦の猛者。

そんな言葉が頭に浮かんだ。

そして、このイザーク・ジュールという人物の、プラントに対する想いの大きさに、イチカは感服させられた。

ディアッカやアスランとも同じ、二年前の大戦を経験し、多くの仲間や友人達を失った筈だ。

その経験があるからこそ、大切な物を知っていて、それを守る為に戦えるのだ……。

イチカはイザークの言葉を聞き、改めて再確認した。

自分が戦う理由とは、一体なんなのか……。

 

 

 

(義父さん……っ、俺は守るよっ、義母さんとアリサをっ……!そして、大切な仲間達をっ……!!!)

 

 

 

その、たった一つの約束だけで、戦うには十分だった。

 

 

 

「ボルテールもじきに整備を終える。俺とディアッカ、それからお前も、機体ごとゴンドワナに移動する。

月の地球軍艦隊が攻め込んでくる前に、なんとしてでも防衛準備を完了させておくぞ?」

 

「はいよ!」

 

「了解です!」

 

「では準備を開始しろ! すぐにでも出るぞ!」

 

 

 

 

 

部屋から出たイザーク達は、それぞれが自身の機体の下へと向かった。

また戦争が始まる……。

そう思いたくはなかったが、それが避けられない状態にまで来ている……。

ならば、大切な物を奪われない為に、己を鍛えて、戦い、守り抜かなくては……。

イチカは改めて決心し、自分の愛機へと向かっていった。

そして、同じ頃オーブでは、ミネルバの修復作業に取り掛かっている時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「外装はともかく、内側は、流石にこちらでやっておかなくちゃね……。

モルゲンレーテが、資材や機器を貸してくれるそうだから、中はあなた達の出番よ?」

 

「はい、了解しています。では、さっそく作業を開始したいと思います」

 

「ええ、よろしく」

 

 

 

 

タリアの指示のもと、マッドたち整備班は主にミネルバの艦内設備、火器やエンジンといった、重要機密の高いものの修復を、そしてモルゲンレーテから派遣された技術者達は、外部装甲や迎撃用CIWSなどの修復、外部からのエンジン修理や物資搬入などを主に活動し始めた。

 

 

 

「艦長」

 

「ん? どうしたの?」

 

 

 

と、そこへ副長のアーサーがやってくる。

 

 

 

「いやぁ、修復作業を手伝ってもらうのはありがたいですけど、やはり、カーペンタリアに戻ってからの方がよろしいのでは?

外装だけの作業とはいえ、他国の整備班に、ミネルバの船体を見せるのは……」

 

「あなたの気持ちもわかるけど、でもしょうがないでしょう? ミネルバが航行可能といっても、あれだけ損傷を受けていたら、非常時の対応がしにくくなるわ……それにーーーー」

 

「船の修復……特に戦闘艦は、やはり信頼できる状態でないと、いけませんものね」

 

「「っ?」」

 

 

 

二人の会話に、割って入ってくる人物。

タリアとアーサーは、近づいてきたその人物の方へと試験を向けた。

帽子に半袖シャツ、下は作業用のツナギ着といういかにも整備班のかっこうした女性だった。

艶やかな長い茶色の髪に、美人と言い切れるほどの美貌。そして何より、豊満なバストに、視線が吸い寄せられそうになる。

現にアーサーは、そんな彼女に見入ってしまったのか、鼻の下を伸ばす始末だ。

タリアはそんな彼の左耳タブを引っ張って、現実に引き戻すと同時に、現れた女性に対して、警戒の眼差しを見せた。

 

 

 

「あなた、誰?」

 

「ぁ…………モルゲンレーテより派遣された造船課Bの “マリュー・ベルネス” です。よろしくお願いします!」

 

「…………艦長のタリア・グラディスよ。よろしくね」

 

 

 

一瞬だけ、女としての感……いや、それだけではなく、戦闘艦を任された軍人としての感も働き、目の前の女性、マリューの事を警戒した。

彼女の発言は、ただ単に船の整備を行ってきただけの者たちの言葉とは、到底思えなかったのだ……。

まるで、戦場を知っているような、歴戦の猛者のような感覚に似ていたのだ。

しかし、それも杞憂だったのかもしれないと、タリアは胸を撫で下ろした。

そして、ミネルバの船体修復作業が、本格的に始まり、停泊させていた港から、造船所へと船体が少し移動して、外壁のようなシャッターが閉められ、様々な機器を用いて、ミネルバの船体の修復作業が本格的に開始される。

そんな作業場を見ながら、マリューとタリアは、少し離れた場所で、その様子を眺めていた。

 

 

 

「ミネルバは、進水式前の艦だと伺っていたのですが……なんか、もう “歴戦の艦” って感じですね?」

 

「ええ……。私自身も、まさかこんなことになるなんて……思ってもみなかったわ……。

でもしょうがないわよね……こうなっちゃったんだもん……」

 

 

 

タリアは肩をすくめて、マリューに対して戯けたような表情をする。

それを見て、マリューも微笑む。

他国の艦長と、他国の整備班……としてではなく、同じ女性として話しているようだった。

 

 

 

「ほんとこれから先、どうなるのか……全くわからないものね……」

 

「…………」

 

 

 

それは、ザフトの一軍人として、戦闘艦の一艦長としての言葉だった……。

ユニウスセブンが落下したことによって、これからの時世がどうなるのか、本当にわからない。

世界はまた再び、戦乱へと戻るのか……。それとも、安定的に収束し、事なきを得るのか……。

 

 

 

「ええ、そうですね……」

 

「…………」

 

「でも、みんな同じですわ」

 

「っ…………」

 

「やはり先の事は分かりませんから、我々はただ、今できる事を懸命にやっていくしかないです……」

 

「…………」

 

「まぁ、それが間違ってたんなら、もう一度そこから考えてやるしかないんですけどね?」

 

「……ふふっ、そうね。私もそう思うわ」

 

 

 

 

この時、彼女があの、『不沈艦』という異名を持つ大天使の艦長を務めていた女性だと、タリアは知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

ーーーー何故気づかぬかッ! 我らコーディネーターにとってっ、パトリック・ザラのとった道こそが、唯一正しきものとッ!!

 

 

 

 

「っ……!!」

 

 

 

 

自室で一人、シャワーを浴びながら、今日起きた出来事を思い出していたアスラン。

今更になって……二年も経って、よもや父の名を聞くとは思っていなかった……。

それも、かつてナチュラルを全て滅ぼすと……自分たちコーディネーターは、進化した新たなる種なのだと唱え、先導していた父の名を……。

テロリストとなった彼らは、そんな父の声に陶酔し、支持した。

しかし大戦は終わり、曲がりなりにも世界は平和を維持し、静穏な日々を送っていた。

だがそれは、彼らにとって、呪われた様な日々だったのだろうか……。

憎むべき敵がいるのに、それらとともに生き、笑い、生を謳歌している。

偽善で、欺瞞で、嘘で塗りたくられたような世界……それが憎かったのだろうか……。

 

 

 

「くそっ……!」

 

 

 

アスランは浴室の壁を拳で叩いた。

気持ちが晴れないまま、アスランは浴室を出て、また外に出るために、再び黒いジャケットに袖を通す。

オーブの宿舎から出て、自分の車へと乗り込む。

スポーツカーに分類される高級車だ……。

キーを指して、エンジンを回す。ヴォン! っという馬力音が鳴り、ギアを上げてアクセルを踏む。

施設から出て、ある場所へと向かってハンドルを切った。

一方、行政府にいるカガリ達は……。

 

 

 

 

 

「大西洋連邦との新たなる条約の締結? 一体何を言っているんだっ、こんな時に……!」

 

「こんな時だからですよ、代表」

 

「っ……」

 

 

 

行政府にて、カガリと宰相のウナト、ユウナに、オーブの市長達が集い、今後の対策を練っていたのだが、市長の間で出された議題が、コレだった。

 

 

 

「さきほど大西洋連邦から、こんな資料が送られてきましてね……」

 

「ん?」

 

 

 

ユウナが手元にある端末を動かし、全員のPC端末の画面にあるものが映し出された。

 

 

 

「こ、これは……っ!?」

 

 

 

そこに映っていたのは、一連の事件を起こした脱ザフト軍のテロリスト達の乗るジン・ハイマニューバⅡ型と、それと交戦するザフト正規軍と、強奪されたカオス、ガイア、アビスの地球軍強奪部隊との戦闘映像だった。

 

 

 

「先ほども言いましたが、これは大西洋連邦から届いたものです。そしてプラントもまた、この映像が事実だと概ね認めました」

 

「なっ……!?」

 

「これにより、大西洋連邦から各国に対して、協同声明が出されたのですよ……。

プラント及びザフト軍に対して、我々地球国家は、最重要危険指定として、プラントに対する今回の出来事の情報開示と然るべき責任の追及をするべきだと……」

 

「っ……そ、そんな馬鹿なことがあるかっ!? だいたい、そんな条約に参加する前に、今は被災した地域に対する対応を急がねばならんだろうっ!?

プラントの方で支援物資の輸送をしてくれているんだ! 我々も今出来ることをやっておかなくてどうする!」

 

「条約の中には、被災地へ対策・対応に関する条例も含まれております。

それよりも今は、もっと考えなくてはならないことがあるのではないですか?」

 

「っ……」

 

「代表……。条約には参加される形で検討していただけないでしょうか?」

 

 

ユウナが念押しするような形で、カガリに問いかける。

しかし、カガリはそんなことに納得できなかった。

 

 

「ダメだダメだ! そんな条約っ、呑めるわけがないだろう!」

 

「ではどうするのです?」

 

「っ?! そ、それはっ……オーブは、今まで通り中立を貫いて……っ」

 

「そして、また国を焼くつもりですか? 前代表、ウズミ様の様に……」

 

「っ……なんだと……っ!?」

 

 

 

市長の内の一人の言葉に、カガリは怒りを覚えた。

二年前は、大西洋連邦による進軍により、オーブは壊滅的被害を被った。

国は焼かれて、軍のマスドライバー施設、モルゲンレーテ本社を地球軍に渡してはならないと、前代表であるウズミと、市長会の面々は、共に炎に焼かれていった。

それから二年……。ようやく復興の目処が立ち、軍も今まで以上に国防力をつけて、元の姿へと戻っていった。

しかしまた、同じ事を繰り返すのか……市長たちは、その事を問いたかったのだ。

かつてのウズミ代表の様に、地球軍に対抗する形をとらなければ、もっといい方向に戦況が傾いたのではないかと……?

 

 

 

「代表……お気持ちはわかりますが、今は冷静になってください。我々オーブとて、かの事件で被害を受けました。

幸い高波が押し寄せてきた程度で収まりましたが、他の地域では、大変な被害を被ったところだってあるのです。

代表は宇宙にいらっしゃていたので、知らないかと思いますが……」

 

「くっ……!」

 

「それに、一連の事件がテロリスト達のものによる犯行だと知れば、民衆は黙ってはいないでしょう。

にもかかわらず、オーブは同盟に参加せず、プラントに味方するとおっしゃるんですか?」

 

「っ、誰もそんな事は言っていないだろう! プラントが悪だとっ、早々に決めつけてしまうのはどうかしてると言っているんだ!

現にユニウスセブンと共に降下しながら、命がけでアレを破砕したのはっ、他ならないザフト艦なんだぞっ!?」

 

「それは分かっています。しかし、だからといって全ての人々がそれを信じるとお思いですか?」

 

「っ……それは……」

 

 

 

市長達の意見に、何も言い返せないカガリ。

しかし、それではまた、以前の繰り返しだ。

連合か、プラントか……コーディネーターか、ナチュラルか……。

そんな人種の差別的意識が、前の大戦を引き起こした。

泥沼と化した戦争を経験し、もう二度と同じ事は繰り返さないと……誰もが誓った筈だ。

しかし、今はどうだろうか……?

パトリック派のコーディネーター達によって、ナチュラルや、停戦協定に賛同したコーディネーター達を皆殺しにしようとしていたテロリスト集団の様に、未だに遺恨を忘れられず、今回のような暴挙に及ぶ者たちや、ブルーコスモスのように、この機会に再びコーディネーターを倒そうと画策している者たちまで出てくるだろう……。

そんな中で、オーブは一体、どのようにすればいいのだろうか……。

 

 

 

「代表……。代表の言い分も、全て我々は承知済みです。しかし、これでは国の行く先が不安で仕方がない。

近くの国を敵とみなし、遠く宇宙にある国を味方につけるのは、今後の我が国にとって、どんな意味をもたらすと言うんです?」

 

「それは……」

 

「また大西洋連邦……強いては地球軍に攻められれば、また同じことの繰り返しではないのですか?」

 

「それは……っ!」

 

「国を焼かない為にも、今の取れる最善の策を……! 代表……!」

 

「っ〜〜〜〜!!!」

 

 

 

国を焼かない為に……。

そうだ……以前国を焼いたせいで、彼は……シン・アスカの家族は……アリサ・ラインハルトの父親は、帰らぬ人となった。

国を焼いた責任として、前代表のウズミと、市長たちも逝ってしまった……。

また、あの様な悲劇を繰り返してもいいのか……?

彼らの憎しみに染まった顔と、殺気の混じった視線が、今もカガリの脳裏に焼き付いて消えなかった。

結局、この日の会議では、今後の対策として、大西洋連邦から出された条約に加盟するかどうかは決め切れなかった。

ただ、オーブでも被った高波による被害に対する措置は取られる事だけ、早急に執り行われるのであった。

そして、オーブの宿舎を出て行ったアスランは、オーブの海岸線へとやってきていた。

黒いスポーツカーのアクセルを踏み込み、高速で移動する車。

それによって感じる海風は、どことなく爽快に感じた。

すると、車道のすぐ近くにある浜辺で、複数の子供たちと戯れているピンク髪の少女と、茶髪の少年の姿が見えた。

 

 

 

「っ……!」

 

 

 

アスランはブレーキを踏み、車道の側に車を止めた。

そして、エンジンを切る前に、クラクションを鳴らす。

クラクションの音に気づいた一行は、その音の発生源へと視線を向ける。

たくさんの小さな子供達も、ピンク髪の少女も、茶髪の少年も……。

そして、茶髪の少年が、その車に乗る人物の姿を捉えた。

 

 

 

「っ…………アスラン?」

 

「あー、アスランだぁー!」

 

「違うよっ、アレックス!」

 

「アスランだよぉー!」

 

「ち・が・う! アレックスだってばっ!」

 

 

 

子供たちがアスランの元へと駆け寄ってきた。

それに続いて、茶髪の少年とピンク髪の少女も、アスランの元へとよっていく。

 

 

 

「おかえりなさい、アスラン」

 

「おかえり、アスラン」

 

「あぁ、ただいま。ラクス、キラ……」

 

 

 

ピンク髪の少女の名は、ラクス・クライン。

前プラント最高評議会議長で、アスランの父親であるパトリック・ザラよりも、一つ前の評議会議長を務めていた、シーゲル・クラインの一人娘であり、世界的に有名な歌姫である。

かつてはアスランと婚約者の関係にあったが、プラントでスパイ容疑をかけられて以降、アスランとの婚約関係は一度白紙に戻された。

その後、当時ザフトの最新鋭艦として開発された戦艦『エターナル』に乗り、アンドリュー・バルトフェルドやクライン派と呼ばれるザフト兵達と共にヤキン・ドゥーエの包囲網を突破。

アークエンジェル、クサナギと共に三隻同盟を結び、混戦極まるプラントと地球軍の戦場に介入し、先の大戦を停戦に導いた人物の一人である。

そして、その隣にいる茶髪の少年。

名をキラ・ヤマト……。何を隠そうアスランの親友であり、アスランの駆っていたジャスティスの兄弟機であるフリーダムのパイロットであり、先の大戦を終結させた立役者である人物。

オーブの代表であるカガリとは、血の繋がった姉弟であり、その出生は、特殊かつ極秘事項に匹敵するようなものだった。

遺伝子操作によって、大病になるのを防ぎ、肉体的・頭脳的に優れた人間を産むというのが、第一世代のコーディネーターのあり方だった。

そしてその中でもキラは、何十、何百という兄弟達の犠牲のもとに生まれた、最強のコーディネーター。

またの呼び名を、スーパーコーディネーターと呼ばれる人物だ……。

二年経った今、プラントからお尋ね者状態であるラクスと、恋人関係になった彼らは、オーブで静かに暮らしている。

アスランもカガリと共に……キラ、ラクスとも一緒に過ごす事を決意し、平和なひとときを享受していた。

 

 

 

「大変でしたわね」

 

「あぁ……。君たちこそ大丈夫だったか? 家流されて、こっちに越してきたって聞いたから……」

 

「そう! おうち流されてっちゃったの!」

 

「見てないけどっ、タカナミってのが来たらしいだ!」

 

「それでねっ、オモチャとかも全部流されてちゃって!」

 

「あ……あっ、はは……」

 

 

 

アスランの足元に集まって来た子供達が、次々に声を上げて話していく。

こんな時になっても、子供たちは元気いっぱいだ。

アスランが慌てていると、ラクスから助け舟が出された。

 

 

「あらあら……これではお話ができませんわね。皆さん、あちらでもう少し遊びましょう?」

 

「はーい!」

 

「いくいく!!」

 

「もっと遊びたい!」

 

 

 

子供は元気が一番だ。

ラクスと共に、子供たちは再び浜辺へと戻っていき、砂場や波打ち際で遊び始める。

残されたアスランとキラは、そんな様子を見ながら、話し始めた。

 

 

 

「カガリは?」

 

「行政府だ……。中々忙しいみたいでな、早々に連れて行かれたよ」

 

「そう……ほんと、大変だったね?」

 

「あぁ……でもお前たちも無事でよかったよ……」

 

「うん……すぐにシェルターに逃げてたから」

 

「そっか……」

 

「キラァ〜!」

 

「「??」」

 

「先に戻っておいてください! 私は子供たちと浜から戻りますわぁ〜!」

 

「うんっ、わかった! 気をつけてね!」

 

「はーい!」

 

 

 

浜辺から手を上げて叫んでくるラクス。

おそらく、彼女なりの気遣いなのだろうと、アスランもキラも察した。

アスランとキラは、車に乗り込み、先に家に戻っていった。

アスランがエンジンを再び回して、キラを家まで送り届ける。

その道中、アスランは今回の事件の事について、どうしても話しておかなくてはならないと思っていた。

 

 

「あの落下の真相は、もうみんな知っているんだろ?」

 

「……うん」

 

 

ユニウスセブンの落下は、ただの自然減少ではなく、ナチュラルや今のこの世界に不満を抱かずに、偽りの平和を享受している者たちを憎んでいたテロリストたちの仕業だと……。

 

 

 

「連中の一人が言ったよ」

 

「え?」

 

「撃たれた事の嘆きを忘れて、何故撃った者たちと偽りの世界で笑うんだ、貴様らは……ってな」

 

「…………戦ったの?」

 

「っ…………ユニウスセブンの破砕作業を手伝いに出たら、彼らがいたんだ……っ!」

 

 

 

ほんと、大変な一日だった。

アーモリーワンの新型機強奪事件から始まり、デブリ帯での戦闘、ユニウスセブンの落下テロ事件と、事件続きだった。

そしてアスランの車は、キラ達の新しい家の駐車場へと入り、そこでエンジンを止めた。

家の中には、キラの母親と、導師と呼ばれているマルキオがいる。

駐車して、車で二人、アスランとキラは黙ったまま座席に座っている。

そして、アスランの方から口を開いた。

 

 

 

 

「俺、お前に聞いたよな……やっぱり、このオーブで」

 

「…………」

 

 

 

 

ーーーー俺たちは本当は、何とどう戦うべきだったんだろうな……?

 

 

 

二年前の、オーブ解放戦線でのことだった。

敵戦力は多く、オーブが落ちるのも時間の問題だとされていた。

そして、ブルーコスモスが支配する地球軍と、父・パトリック・ザラが主導するプラントの両軍によって対立している世界構造。

そんな時世で、自分たちはどうあるべきなのか……?

自分たちのやるべきこととは何か……?

自分たちは、一体いつまで戦い続ければいいのか……?

そんな思いが、ずっと膨れ上がっていた。

そんな時に、親友であるキラと、同期であり仲間であったディアッカに、ふと尋ねた言葉だった。

 

 

 

「そしたらお前、言ったよな……それも、みんなで探せばいい……ってさ」

 

「うん…………」

 

 

 

そう、そのキラの言葉で、少しは救われたような気がした。

あんな状況の中でも……たとえ父親と対峙する状況だったとしても、戦える気がした。

しかし、今回の一件は、その父親の思想、まるで怨念のような言動によって唆され、大事件へと発展した。

本当に、どうしてこんなことに……何故あんなことを……そんな思いが、アスランの頭から離れない。

 

 

 

「けど、まだ見つからない……っ!」

 

「っ…………」

 

「キラ、俺はプラントに行こうと思ってる」

 

「え?」

 

「このままこうしてちゃいられない……! 俺も、何かをしようと思っている……」

 

「アスラン……」

 

「改めてカガリにも伝えるが、お前の方も、カガリの事を頼んでもいいか?」

 

「……うん、わかった」

 

「ありがとう、キラ……」

 

 

 

またあんな血みどろの戦いの日々になる前に……。

キラもアスランも、そしてカガリやラクス達だって、同じ気持ちのはずだ……。

だが、現実は理想と異なる……。

のち、再び戦乱へと変わる世界のことを、今のキラとアスランは、知る由もなかった。

 

 

 






次回は、オーブでの一日……そして、できるのなら、開戦まで行きたいですね( ̄∀ ̄)


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