機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜   作:剣舞士

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ようやく更新できたぁ〜( ̄∇ ̄)


第13話 開戦

地球軍アルザッヘル月面基地。

そこでは今、着々と軍事侵攻の為の準備が整えられていた。

次々と搬入される武器弾薬。

そして、戦闘準備を整えている戦闘艦《ドレイク級》、《ネルソン級》《アガメムノン級》などには、多数のMSが搬入されていく。

そして、その武器弾薬を格納するところには、赤色と黄色で記している危険物を意味する武器が多数搬入されていた。

そう、彼らの目的は、今や敵対国家となりつつあるプラント本国への攻撃だった。

そしてその動きは、当然プラント側も把握しており、早急な対応を急がせている。

プラント最高評議会も、今まさに今後についての対応を話し合っていた。

 

 

 

 

「一体どう言ってやれば、彼らに伝わるのかね……!」

 

「こちらの話なんて初めから聞く気はないんじゃないですかね?」

 

「しかし、これはあまりにも一方的過ぎますよ!」

 

「そうですっ! 一度はこちらの監査報告を、連合側も了承したではないですかっ!

なのに何を今更、テロリストグループの逮捕引き渡しなんて……!」

 

「彼らテロリストはその全員が死亡したという報告を、連合の理事会も了承していたはずですのに……」

 

「その上、こちらに対する要求以外にも、現政権の解散に賠償金、武装の解除、そして理事会直属の調査団の派遣とはね……」

 

「大方、これを好機と思い、我々を好ましく思っていない者たち……我々を討ちたくて仕方のない連中が煽っているのでしょうよっ……!

宇宙にいるのは、自分たち人類の敵である化け物だと……!」

 

「確かにな……」

 

「しかしっ、連合は本当にこのまま戦端を開くつもりなのでしょうかっ?!

こんな一方的なやり方では、むしろ彼らの方が被害を被りますよっ?!」

 

「何を言ったって無駄さ……っ! そうやって声を荒げているのは、ユーラシアの連合国と大西洋連邦だ。

主に今回のユニウスセブン落下に伴った被害を受けているのは、赤道上にある国ばかり……ユーラシアや大西洋連邦の本拠地なんかはそんなに被害は出ていないっ、ほんと、元気なものさっ!」

 

「だとしてもっ、こんなやり方ではあまりにも無謀です!」

 

「それも仕方のないことさっ! 今回の事件で、多くの命が失われたのは事実。

そしてそれを匿い続けていると扇動されていては、民衆の心を変えることも困難を極める。

それに、こういう時の戦争は、始めるのは簡単だが、止めさせるのは容易ではない……っ!

討つべき敵が定まっており、今も上から見下ろされてるいると言われれば、人は容易く叛旗を翻す……! 昔から変わらない、人の性だよ……!」

 

 

 

 

人の歴史は、戦いの歴史だと言える。

人が知性を持ち、村を形成し、やがて国を作っていく……。

そして、お互いの利益のために、人は争い、それを奪い合ってきた。

知性を持ってしまったが故に、相手の行動を、心を理解する事を躊躇い、疑念を抱き、それが争いの種になる。

 

 

 

「市民たちへの通告はーーーー」

 

「ですが、やはりなんらかの会談の場を設けるべきではーーーー」

 

「だが、状況は間違いなくレベルレッドだーーーー」

 

「…………みなさん」

 

「こちらからも打って出なければーーーー」

 

「やられる前に、臨戦態勢をーーーー」

 

「どうか落ち着いてください、みなさんっ……!」

 

 

 

評議会議員のメンバーの討論が熱を帯び、戦いへと誘いそうな雰囲気になっている中、それを制止した人物が一人……。

その人物こそ、プラント最高評議会議長の、ギルバート・デュランダルその人だった。

 

 

 

「みなさんのお気持ちはわかります……。しかし、そうして我らまで乗ってしまっては、また同じことの繰り返しです。

我々はあくまでも、話し合いによる解決というものを、模索していかなければなりません……。

そうでなければ、先の大戦でお亡くなりになられた方たちも、浮かばれないでしょうからね」

 

「「「………………」」」

 

 

 

議長の言葉に、話を進めていた者たちは鎮まり、神妙な面持ちで俯いている。

だが、そんな悠長なことを言っていられる場合でもないため、すかさず軍部の議員から、議長に対して進言が入る。

 

 

 

「それは分かっているが、今の状況でそれを言い出されては困る」

 

「…………」

 

「今のこの状況……間違いなくレベルレッドだ。それに地球軍の月艦隊が、なにやら動き出しているのも確認されている。

ならば、こちらも然るべき対応をせねばなるまい……。理念も良いが、それだけでは撃たれるっ……!」

 

「分かっています……。しかし、だからと言って、我々がそこに乗ってしまっては、また我々は、かつての過ちを繰り返してしまうばかりで、それ以上の事はなにも起きないでしょう……。

故にやはり、我々は出来るだけ、話し合いでの解決に、努めなければならないのです……!」

 

「「「………………」」」

 

「ですが、それも難しいですかね……」

 

「「「っ…………」」」

 

「我らの中には、まだあの『血のバレンタイン』の事も、記憶に残っている者もいますからね」

 

「「「っ!!!!???」」」

 

 

 

ギルバートの言葉に、その場にいた全員の顔色が変わった。

『血のバレンタイン事件』。

C.E.70年……ナチュラルとコーディネーターの戦争が勃発するきっかけとなった事件だ。

それも、農業用プラントであり、今回のこの一連のテロ事件の舞台ともなった『ユニウスセブン』に、地球連合軍のMA部隊が、核ミサイルを撃ち、コロニーを崩壊させた事がきっかけだ。

今回もまた、『ユニウスセブン』による事件で戦端が開かれようとしている……。

 

 

 

「たしかに連合の動きは、我々に対する敵意に満ちている……。我々とて、ただ黙って撃たれるわけにもいかない……!

それ故に、防衛策を取らないといけないのは重々承知ですが、あくまでも我々は、話し合いでの解決に勤しむことを忘れないでいただきたい!」

 

 

 

 

議長の言葉に、議員らは賛同の意を込めて、互いに頷きあう。

 

 

 

「防衛策については、国防委員会にお任せします! その間我々は、出来うるだけのことをしましょう!

あらゆる筋から、どうにかして連合と交渉できないか、当たってみてください!」

 

「「「ハッ!!!!!!」」」

 

 

 

 

会議は終わり、プラントの軍部は慌ただしく動いている。

外では、軍部の港から戦闘艦が次々に発進して行き、ナスカ級、ローラシア級を含めた主力艦隊のほかに、宇宙戦闘用空母《ゴンドアナ》まで出撃した。

そして、そのゴンドアナには、ジュール隊隊長であるイザークを始め、ディアッカ、イチカの機体も内部に格納されて行く。

その後、三人はゴンドアナの艦橋へと向かい、ゴンドアナを実質的に指揮している代表者への移譲報告と挨拶を済ませて、用意された部屋で待機していた。

 

 

 

 

「はぁ…………」

 

 

 

誰もいない部屋に一人。

部屋の大きさは、一人用の部屋という事もあり、ミネルバの自室に比べると小さいが、一人で過ごすには丁度いいくらいの大きさだ。

目の前には、机があり、左へと視線を移せば、簡易的なベッドもある。

宇宙にいるため、気だるさなどはあまり感じないが、今は気分がどんよりと重くなっている。

本来はできないのだが、今はベッドに向けて思いっきり飛び込みたいくらいある。

 

 

 

 

「戦争か…………」

 

 

 

 

二年前……戦争によって、プラント・連合両陣営は多大なる犠牲を被った。

地球軍の核攻撃と、プラントの大量殺戮兵器『ジェネシス』の撃ち合いで、地球圏内だけではなく、宙域での戦闘たくさんの命が散った。

兵士も、そうでない一般市民も……。

 

 

 

「なんでこうも、人は戦いたがるんだろう…………」

 

 

 

相手との違い……力の差、無力感、危機感……単純な違いが、人を惑わし、そして暴走させるのだ。

コーディネーターだって、一人の人間だ。

他の人々となんら変わりはない。ただ、病気に強い体など、普通の人間では出来なさそうな事はあるかもしれないが、だがそれだって、本当は大した理由ではないのに……。

今また戦争が起きようとしているこの瞬間にも、イチカは考えてしまう。

もっと、ほかにやるべき事はないのか……戦わない選択肢もあるはずだと…………。

しかし、もはやこの流れは止められないだろう……。

相手の動き次第で、こちらの対応も変わる。向こうがなんの躊躇いもなく撃ってくるのなら、こちらも撃って出るだけだ。

 

 

 

「義父さん……必ず約束は守るよ……!」

 

 

 

家族を守る。

義母のユリス……義姉のアリサ……。

生き残っている大切な家族を、もう二度と失わないために……戦う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、地球圏の某国某所。

普通の一般人では決して入ることのない地下区画にて、ある一人の男が、その場に設置してあった椅子に腰をかけ、優雅に座っている。

その男の膝の上には、彼の飼い猫でろう、大きな黒灰色の猫がいる。

 

 

 

「それで? どういう状況になっているんです? 正確には攻撃はいつ始まるのですか?」

 

『そう急ぐなジブリール……。せっかちだなぁ、君も』

 

「ふっ……」

 

 

 

ロード・ジブリール。

実質的なブルーコスモスの盟主だ。

今回のユニウスセブン落下テロ事件を利用して、プラント本国への侵攻作戦を言い渡した張本人である。

彼の率いるロゴスとは、ブルーコスモスの盟主を含めた10名の幹部によって設立している秘密結社だ。

その歴史は古く、有史以来からずっと暗躍し続けているとも言われている。

また、幹部のメンバーの中には、軍や経済界にも精通している者達も

いるので、今回の侵攻作戦を起こすのは容易かった方だ。

 

 

 

『あのテロ事件のおかげで、こちらも対応で大忙しだというのに、君が言うから強引に同盟条約を急がせたんだぞ?』

 

「ふんっ……しかし後になってみればどうです? みんな同盟に参加しているではないですか……。

どこもかしこも、みんな宇宙にいるコーディネーター達に恨みを抱いているんだ……これは滅多にないチャンスなんです……っ!」

 

 

 

彼が話しているのは、大西洋連邦をまとめている大統領……ジョゼフ・コープランドその人だ。

しかし、彼はただのお飾り的な存在だ。

実質的な統治者はロゴスの盟主であるロード・ジブリールだ。

 

 

 

『しかし、本当にこんな事になってしまって良かったのかね? たしかにプラントに対する請求は必要だが、これではあまりに強引だと言わざるを得ないぞ……!』

 

「何度も言わせないでくれませんかぁ……これはまたとないチャンスなんだと私は申したでしょう?

だいたい、今回のこのテロ騒動の原因はなんです? 我々の頭上に落ちてきた物は?

コーディネーター共が宇宙にあんな物をドカドカと作るから、こんな事態になったんです。

民衆は分かっていないんですよ……我々とコーディネーター……あんな化け物共と共存できるなどと夢物語を……。所詮我々は違う人種……住むべきところが違うのですよ。

ならば、早々にそう言う外敵は、滅んでしまった方がいいではないですか」

 

『だが、あまり強引にし過ぎても、民衆が跳ね返らないか?』

 

「おやおや、全く何を恐れているというのです、あなたは? 同盟への参加を拒んだ勢力ですか? スカンジナビア王国ですか?

…………あぁ、怖いのはオーブですか……」

 

『あの国は…………まぁ、な』

 

「ふんっ、あんなちっぽけな国っ…………」

 

 

ジブリールはそう罵倒し、その場から離れて特注で作らせた酒瓶に入った極上のブランデーをグラスに注ぐ。

それを持ちながら、ジブリールは改めてジョゼフに語る。

 

 

 

「いいですか? 人は綺麗なものが好きなんです……自分の家の庭には、綺麗な花を植えたいものです。

雑草は引き抜いて……綺麗な物ばかりで埋め尽くしたいでしょう? 雑草を生やしたままで、それを『美しく』と思いますか?

それを『自由』と言いうのならばそれでいいでしょう……しかし結局、人はそれを許さずにはいられない……」

 

『ジブリール……』

 

「世界はね、システムなんです。誰かが庭を管理してあげないと、人は満足に幸福を得られない。

だから、我々がそのシステムを作ってしまおうではないですか! 我々ロゴスが創り上げる美しく庭……新たなる世界秩序の始まりだ……! これはその第一歩なんですからねぇ……っ!!!!」

 

 

 

 

不気味に笑うジブリールの顔は、まさしく悪役に等しい表情だった。

一方、戦闘開始が刻一刻と迫って来ている中で、オーブに滞在していたミネルバは、束の間の安息を謳歌していた。

艦長室でコーヒーの旨味と余韻に浸っているタリアや、今もなおブリッジでなんらかの指令を待っているアーサー達。

自室で静かな寝息を立てているMSパイロット達……しかしこの後、とんでもない報せが入って来ることを、この頃はまだ知りもしなかった。

またそれは、新たなる新居へと移っていたキラやラクス達……オーブ官邸の自室で、今は遠い空の向こうに行ってしまった、アスランの安否を気にしているカガリだって同じだった。

カガリが見つめる空の向こう側には、プラント本国があり、今そこには、アスランが向かって行っている。

時間的に言えば、もうプラントの宇宙港に着いた頃だろうか……。

アスランの安否の事や、これからどうなっていくのかわからない世界情勢に、カガリはただ、不安に包まれていった……。

そしてその頃、カガリの予想通り、アスランはプラントの宇宙港へとたどり着いており、プラント側の外交官とであっていた。

 

 

 

 

「アレックスさん!」

 

「っ……!」

 

 

 

外交官……また、カガリの護衛係としての名前で呼ぶスーツ姿の眼鏡をかけた男性。

この人物が、プラント側から派遣された外交官だ。

 

 

 

「すみません、こんなお忙しい時に……。それで、状況はどうなっていますか?」

 

「よくありませんね」

 

 

 

アスランの問いかけに、男性は何の戸惑いもなくそう答えた。

つまり、それだけ状況が切迫しているという事なのだろう。

 

 

 

「今回の連合側からの物言いに、プラント市民たちはみんな怒っています……。

ある意味一方的とも言えなくない連合側からの要求に、プラント政府も今は頭を抱えているみたいで……」

 

「そうですか……」

 

「しかし議長は、それでも話し合いによる解決を模索し続けると言っています……ですが、それを弱腰だと言っている市民や議会もいるようで……」

 

「…………」

 

「オーブ政府……強いては、アスハ代表の特使という事で、会談の要請を出してはいますが、この状況下だと、ちょっと分からないですね……」

 

「そうですね……わかりました、ありがとうございます」

 

 

 

 

アスランと外交官は、コロニー中央部からエレベーターシャフトで降りていき、今もなお混乱している議会のある政府関係の建物が密集している行政区画へと向かったのだった。

しかしその頃、地球連合軍の艦隊には、ある宣言が発令された。

それは大西洋連邦大統領からの勅命であり、国からの指示でもある。

それを受け取った艦隊の総司令官は、各艦に合図して、そのまま行動に移した。

 

 

 

 

 

『これより私は、全世界のみなさんに対して、重大かつ残念な知らせを、話さねばなりませんーーーー』

 

 

 

 

大西洋連邦大統領の口から、そんな前口上から始まり、世界は再び、混迷の道を歩み始めた。

月のアルザッヘル基地から発進した地球軍艦隊は、推力最大で、プラントに向けて発進した。

そしてその事態を、プラント側でも把握しており、早急のMSの発進が行われた。

 

 

 

「そうだ! 予備機も全て戦闘ステータスで起動させておけ!」

 

「武装のチェックは終わっているのかっ!?」

 

「急げ! モタモタしてたらやられるぞっ!」

 

 

 

艦内に響く声。

整備班の乗組員たちは、慌てて発進作業へと入る。

そして、そのMSに搭乗するパイロットたちも、急いで部屋を出て、自分の機体へ移動する。

 

 

 

「くそっ、やっぱり撃って来やがったのか……!」

 

「おい! ミネルバの小僧!」

 

「っ?! ジュール隊長!」

 

「モタモタするな! 急いで発進準備にとりかかるぞ!」

 

「はい!」

 

 

 

廊下に出た途端、その廊下を慌ただしく移動するザフト軍関係者、イチカもその流れに乗って、格納庫へと移動する。

控室にあるパイロットスーツに着替えて、整備し終えた自分の愛機へと向かっていった。

そしてそれは、地球連合側も同じ。

次々にMSを発進させ、艦隊の前へと展開させた。

 

 

 

『第44戦闘団は、搭載機全ての発進を完了した! オペレーション《フォックスノット・ノベンバー》発令! 以後、作戦はフェイスシックスに移行する』

 

『全機武装展開、オールウェポンズフリー!』

 

 

 

 

地球軍側からは、バックパックを取り付けたダガーLや、バックパックを何も装備せず、単体でやってくるダガーLなどが多数発進していき、対してザフト軍側からは、ジン、シグー、ザクウォーリア、ザクファントム、ゲイツRなど、用いられる機体は全て発進した。

その中に一機、オレンジ色に染まったザクファントムが、先行して進んでいく。

 

 

 

 

「ヴェステンフルス隊各機に告げるっ! 日頃の訓練で培ってきたスキル、今日、ここでナチュラルの馬鹿どもに見せる時が来たぜぇっ!」

 

『『『おおっ!!!』』』

 

「遠慮はいらねぇ……派手にぶちかましなっ!!」

 

『『『イエスっ、サァーーーー!!!』』』

 

 

 

 

ザフト軍、地球連合軍……双方はもう相容れない敵性国家同士になってしまった。

すでにその指をかけた銃の引き金を、離すことはもう出来ないだろう……。

 

 

 

 

『ーーーーしかし、未だなんの解答もいただいていないこの状況下に際し、我々地球連合各国は、プラントを極めて悪質な敵性国家として認知し、これを武力を持って排除するということを、ここに宣言いたします』

 

 

 

コープランド大統領の宣言は、世界中に轟いた。

地球連合側はもとより、宇宙のプラント本国、そして、中立国オーブの首長官邸や、港に停泊していたミネルバにも……。

 

 

 

「メイリン、コンディションイエローを発令。以後、関係者以外の立ち入りを禁じます」

 

「は、はい!」

 

 

 

やはりこうなってしまったか……。

そう言わんばかりに、タリアはおもむろにため息をつくと、メイリンに指示を出し、ミネルバ本艦も、厳戒態勢が敷かれた。

 

 

『コンディションイエロー発令! コンディションイエロー発令! 艦内警備、以降、関係者以外の乗艦を禁じます!』

 

 

 

オペレーターであるメイリンから発せられたコンディションイエローの発令。

それにより、眠りについていたミネルバクルー達は、一気に起き上がった。

 

 

 

「か、開戦……っ?! そんな……」

 

「シン、いくぞ」

 

「なぁ?! ちょっと、待てってレイ!」

 

 

 

先に着替えていたレイか部屋を後にする。

その後を追って、シンも制服に着替えて部屋を後にした。

 

 

 

「っ……開戦……イチカ……無事だよね……?!」

 

 

 

別の部屋では、イチカのベッドで横になっていたアリサが飛び起き、急いで制服に袖を通した。

プラント本国に戻ったイチカは、おそらく戦線に参加させられているだろう。

赤服を着ている上に、最新型の量産機であるザクファントムを駆るイチカを、軍が特別待遇するはずもない。

ならば、今この時も、戦場に出ているはず……。

 

 

 

(イチカっ……お願いっ、無事でいて……!!!)

 

 

 

 

部屋を出て、皆が集められているブリーフィングルームへと向かうアリサ。

しかし、そんな願いとは裏腹に、宇宙では激戦が起こっていた。

 

 

 

 

「結局はこうなるのかよっ、やっぱりっ……!」

 

 

 

宇宙艦空母《ゴンドワナ》。

そのカタパルトデッキに、水色のザクファントムが現れる。

背中に取り付けたアックスとビームガトリングガンのバックパック……カタパルトに足が固定されて、発進準備が整った。

 

 

 

『シエラアンタレス1 発進スタンバイ、推力正常、システムオールグリーン!』

 

「こちらシエラアンタレス1! ジュール隊、イザーク・ジュール! 出るぞっ!」

 

 

 

高速で射出されるザクファントム。

そしてその後ろから黒いザクウォーリアが現れた。

背中には高出力長射程砲を装備し、カタパルトに足を固定する。

 

 

 

「ジュール隊、ディアッカ・エルスマン! ザク、発進する!」

 

 

 

高速で射出されるザクウォーリア。

発進してすぐに、手持ちのビーム突撃砲を腰にマウントして、長射程ビーム砲《オルトロス》を展開して、先行するイザークの援護に入る。

そして、その後ろから、再びザクが現れた。

 

 

 

「開戦……避けられないってわかっていても、やっぱり憂鬱だな……」

 

 

 

灰色のザクファントム。

その背中には、イザークと同じビームガトリングガンが装備され、腰の両側には、カスタム機として用意してもらった対艦刀《オーバーエッジ》と、先のユニウスセブン落下テロ事件で、テロリスト達がのっていたジン・ハイマニューバⅡ型の近接格闘武器である《斬機刀》がマウントされていた。

 

 

 

「まぁいい……とにかく、俺はプラントを……義母さんを守るだけだっ……!」

 

 

 

プラントの首都《アプリリウス》には、イチカとアリサの母親がいる。

おそらく避難勧告に従って、シェルターへと避難しているだろうが、万が一撃たれるようなことがあれば、脱出が間に合わずに、そのまま全員死亡だろう……。

 

 

 

 

『カタパルト推力正常、システムオールグリーン!』

 

「ジュール隊! イチカ・ラインハルト、ザクファントムっ、行きますッ!!」

 

 

 

 

高速で射出されたザクファントム。

そのまま前線へと一直線で飛んで行った。

一方、すでに発進が完了していたザフト軍のMS部隊は、迫り来る地球軍MS部隊と交戦を開始。

ジンの持つ拠点制圧用の武装……手に持っている大型のランチャーミサイルや、ジグーのマシンガンやガトリングガンの弾幕、そしてザクやゲイツRが持つビームライフルや突撃砲の光弾が、一斉にダガーL部隊へと降り注がれる。

その一方で、地球軍側も負けじとダガーLが所有するビームカービンライフルの光弾や、バックパックとして装備してきた二連装レール砲が大量に放たれる。

先ほどまで静かだった宙域には、人の命を絶つ武器の光がほとばしる。

ビームライフルの光弾が機体に当り、コックピットもろとも爆破する。

また、逆にコックピットを集中的に狙い、即座に敵を仕留めようとする。

そんないつ死んでもおかしくない戦場に、イチカは入って行ったのだ。

 

 

 

 

「くっ、これはっ……!」

 

 

 

現れるのは敵ばかり。

ビームカービンライフルでこちらを狙ってくるダガーLの小隊。

イチカは咄嗟に回避行動をとり、ダガーの攻撃を躱して、その後ビーム突撃砲と背部のガトリングを起動。

放たれたビームの光弾とガトリングの弾雨がダガーを捉え、複数のダガーを爆散させる。

 

 

 

「悪いが、ここで倒れるわけにはいかないんでなっ!」

 

 

 

なおもイチカの灰ザクめがけて攻撃を仕掛けてくるダガー部隊。

今度はビームを肩に付いているシールドで受け切り、右手に持っていたビーム突撃砲を左手に持ち替えると、左腰に差していた《斬機刀》を右手に抜く。

 

 

 

「せええやああああッ!!!!!」

 

 

 

一気に肉薄し、ダガーの間合いへと入り込む。

ダガーは近づいてくるイチカの灰ザクに向けてなおも射撃を行うが、すでにイチカの間合いだ。

 

 

 

「はああぁっ!!!」

 

「だあああっ!!!??」

 

 

 

斬機刀の一閃が閃いた。

鋭い刃はダガーの機体を袈裟斬り気味に斬り裂き、左肩から右脇へと振り抜かれる。

斬り裂かれたダガーはそのまま爆散し、イチカは次の敵を見定める。

 

 

 

(凄いっ……斬れ味だけなら、オーバーエッジよりも上だな……!)

 

 

 

斬機刀は、ロストテクノロジーの一つで作られたものだ。

はじめに作られたのは、二年前らしい……。

もともと、ジンの持つ重斬刀はその斬れ味と、エネルギーの消費がない武器としてかなり重宝されていた。

ザフトのMSパイロットには、もっとも信頼が寄せられている機体であるだけに、ハイマニューバ化された物も開発された。

そんなリペアした機体が、よりにもよってテロリストに渡っていたとは、それを思うと残念でならなかったが……。

そんなロストテクノロジーの技術を織り込んで作られた刀の威力に、イチカは惚れ惚れとしてしまう。

 

 

 

 

「ふっ……さぁ、かかって来いよっ、こいつの錆になりたい奴はなぁっ!」

 

 

 

スラスターを全開に、イチカは迫り来る敵へと肉薄して行く。

イチカを狙いに来ていたダガー隊は、即座にイチカに照準を合わせた。

 

 

 

「来たぞっ!」

 

「撃てぇぇッ!」

 

 

 

10機以上はいるのではないかと思う小隊の一斉掃射。

周囲を囲まれており、イチカは即座に機体を動かし、一斉掃射から逃れようとする。

 

 

 

「チィッ……!」

 

「逃すかっ! 追えぇッ!」

 

 

 

一旦距離を取り、イチカは再びビーム突撃砲と背部のビームガトリング《ハイドラ》を放つが、その光弾を浴びたのは二、三機程度。

撃墜したのは一機だった。

 

 

 

「ちっ、こいつらっ……一体何なんだっ?」

 

 

 

戦闘開始からそこまで時間は経っていない……むしろ数十分にも満たないくらいの時間だった。

なのに、ダガー隊は執拗にイチカの灰ザクを狙ってくる。

初めは疑問に思っていたのだが、考えている余裕すらなくなって来た。

 

 

 

「このぉっ……!!」

 

『何をもたついているっ! ミネルバの小僧!!』

 

「あっ……!!?」

 

 

 

通信から入ってきた声とともに、水色のザクファントムとゲイツRか二機、こちらに近づいてくる。

 

 

 

「ジュール隊長!」

 

『なんだ? 最新鋭艦の赤服パイロットの実力は、その程度かっ!?』

 

 

 

そう言いながら、イザークの乗るザクファントムは、背部のビームアックスを手に取ると、慣れた手つきでそれを振り回しては、敵のダガーを袈裟斬りに斬り捨てた。

 

 

 

「すみませんっ、助かりました!」

 

『ふんっ……死にたくないなら、もっと周りを見て戦況を分析しろ! 止まっていては良い的だぞ!』

 

「はい!」

 

 

 

 

イザークの支援もあり、一時的に窮地を脱したイチカ。

しかし、それでもなお、ダガー隊からの攻撃はやまない。

 

 

 

「チッ、こいつらぁ……!」

 

「うおおおっ、くたばれっ! 宇宙のバケモノがあっ!!!」

 

「くっ!」

 

 

 

一斉射撃を行ってくるダガー隊の中から、ビームサーベルを抜いて、イチカに接近してくる者が一機。

イチカもそれに対応して、二機は互いの刃を合わせて、鍔迫り合いの状態になった。

 

 

 

『その武器っ、貴様、テロリストの生き残りかぁっ!!!』

 

「っ?! 通信が……!」

 

 

 

敵機と接触したからなのか、それともなんらかの方法で通信を繋いだのかはわからないが、おそらく今鍔迫り合いをしているダガーのパイロットの声と思しき物が聞こえてきた。

 

 

 

「誰がテロリストだっ! あんな連中と一緒にすんなっ!!」

 

『ふざけるなっ! その武器は、テロリスト達の乗っていた機体の武器だろうがっ! いくら機体を変えようが、そんな物を持っている以上、俺たちの目は誤魔化せねぇんだよッ!!!』

 

「っ?!!!!」

 

 

 

 

そう、斬機刀はテロリスト達の乗っていたジンハイマニューバⅡ型のメインアーム……。

それを持っていなくても、イチカのザクファントムは対艦刀を所持しているため、その似通った武器を見た連合パイロット達は、イチカをテロリストの仲間だと誤解しているようだった。

 

 

 

「ふざけてんのはそっちだろうがッ!! 強引に開戦して、攻め込んできておいて言うことがそれかっ!!」

 

『黙れッ!! 元はといえば、貴様らがあんな物を落とした頃から始まっているんだっ!

今更釈明なんざしても遅いんだよっ!!!』

 

「知るかっ! テロリストの感情なんて、一ミリも理解出来ねぇんだよっ! そんな中で開戦したお前らの方が、よっぽどテロリストに向いてるじゃねぇかっ!」

 

『貴様らとて同じだろうが! 同じ穴のムジナがッ!!!』

 

「お前らと一緒にするんじゃねぇッ!!!!!!」

 

 

 

拮抗していた鍔迫り合いを、イチカは強引に引き剥がして、距離を開ける。

 

 

 

「逃すかぁっ!!!」

 

「くっーーーー!!!!!!」

 

 

 

 

さらに追撃しようとするダガー。

大きく振りかぶったビームサーベルを、そのままイチカのザクに振り下ろそうとする。

が、それよりも早く、イチカのザクが動いた。

 

 

 

「遅せぇぇッ!!!」

 

「グハァアッ!!??!」

 

 

 

一瞬の出来事だった。

振り下ろそうした瞬間を、イチカはカウンターの要領で胴体を一閃。

コックピットブロックを横薙ぎに斬り裂いた。

その後、ダガーは爆散し、当然パイロットも死んだだろう……。

 

 

 

「くそっ、マックがやられた!」

 

「あの灰色の奴だっ! 奴はテロリストの生き残りだっ!」

 

「奴を討てッ! 家族の仇をっ、仲間の仇を取れぇ!!」

 

 

 

さらにダガー隊がやって来る。

ビームカービンで狙い撃ちにしてきて、避けように避けられない。

動き回って的を絞らせないようしてはいるが、徐々に包囲されてきている事も分かっている。

 

 

 

「チッ、こいつらっ……!」

 

 

 

縦横無尽に飛び回り、放たれるビームの光弾を躱していく。

だが、両サイドからビームサーベルを抜き、迫り来るダガー二機。

イチカはとっさに、左手に持っていたビーム突撃砲を投げ捨て、左手で《オーバーエッジ》を抜いた。

 

 

 

「そんな事でッ!!!」

 

 

 

左右から挟撃する形で斬り込んで来るダガーに対して、両手に持った双剣で応じる。

ビームの刃と実体剣が斬り結び、激しい閃光を放つ。

三者の力は拮抗しており、その場で鍔迫り合い状態になる。

そんな状態のイチカは当然動けるはずもなく、離れた場所から別のダガー二機が射撃体勢に入っていた。

 

 

 

「くっそぉっ……!!」

 

「死ねぇっ、テロリストォォッ!!!」

 

「消えろバケモノォォッ!!!」

 

「くっ!!」

 

 

 

 

ダガー二機から放たれたビームの光弾はまっすぐイチカの乗る灰ザクのコックピットブロック付近へと向かっていく。

しかし、イチカはとっさに力を緩めて、鍔迫り合いを中断。

体勢をわざと崩して、ビームから逃れようとするが、一歩遅かったのか、放たれた光弾の内の一発が、右脚に着弾。

装甲を貫き、爆発を起こした。

 

 

 

「ぐうっっ!!!?」

 

「もう一発だ!」

 

「舐めんなよッ!!!」

 

 

 

さらに狙おうとしているダガーがいたが、イチカは咄嗟に左手の《オーバーエッジ》をそのダガーに向けて投擲。

《オーバーエッジ》の切っ先が、胸部に深々と刺さり、小さな電流を流した。

 

 

 

「うわわぁぁ……っ!」

 

 

 

パイロットの声が聞こえたが、その声も爆発によって掻き消えた。

 

 

 

「ハリーッ!!」

 

「貴様よくもっ!」

 

 

 

すでに三人……イチカに倒された。

まだ数機はイチカを取り囲んでいるとはいえ、包囲しているにも関わらず、まだイチカを落とせていない。

仲間を撃たれたという怒りと、イチカを倒せていないという焦りが、ダガー部隊のパイロット達の心に渦巻いた。

 

 

 

「なんでもいい! 奴を早く倒せ!!」

 

 

 

ダガーのパイロットの誰かがそう叫んだ。

さらにイチカに対する攻撃は強まっていく。

放たれビームが今度は左腕に着弾し、肘関節から先の部分が爆散した。

 

 

 

「くそっ、これ以上の損傷はっ……!」

 

 

 

一旦距離を置き、背部のビームガトリングを連射。

一発の威力は大したものではないが、その連射性能から、満遍なくビーム弾を撒き散らす。

その攻撃で倒せた者もいるが、ほとんどは防がれた。

 

 

 

「まだだっ、こんなところで、倒れるにはっ……!」

 

 

 

義父との約束。

アプリリウスにいる義母を守るために……。

 

 

 

「落ちろコーディネーターッ!!!」

 

「チィッ!!!」

 

 

 

斬りかかるダガー。

それを斬機刀で真っ向から迎え撃つ。

しかし、損傷が激しいため、押されるイチカ。

そんな姿を見てか、背後に回っていた二連装砲を背部に装備していたダガーが、その巨大な砲身をイチカに向けていた。

 

 

 

「もらったッ!!!」

 

 

 

ドンッという音を鳴らし、二連装砲の砲口から砲弾が放たれた。

狙いに狂いはなく、そのままイチカの灰ザクの背中に向けて真っ直ぐ飛んでいく。

 

 

 

ピーッ! ピーッ! ピーッ!ピーッ!

 

 

 

「くっ……?!」

 

 

 

機体から発せられる警告音。

飛んでくる砲弾も、その目で確認した。

避けられない…………避けられなければ、待っている結末はただ一つ……『死』だ。

 

 

 

 

 

ーーーーこんなところで、死ぬのか……?

 

 

 

 

約束も果たせないまま。

 

 

 

 

ーーーー冗談じゃないっ! 俺には、待っている人が、守りたい人がまだいるんだッ!

 

 

 

アプリリウスにいる義母・ユリス。

そしつ、今もなお帰りを待っているアリサ。

 

 

 

ーーーーまだ何もできていないっ、何も果たせていないのにっ……

 

 

 

心の中から叫びたくなる……そんな思いが、まだある。

 

 

 

「こんなところでっ、死ねるかあああッ!!!!!!」

 

 

 

ッーーーー!!!!!!!!!

 

 

 

 

イチカの中で何かが弾けた。

その瞬間、イチカの頭の中は、驚くほどクリアになっていった。

全てがスローモーションのように見えてきて、次に何をすべきなのか、何をしたらいいのか、瞬時にそれを判断した。

 

 

 

 

「フッーー!!!!!!」

 

 

 

鍔迫り合っていたダガーの勢いを利用してあえて力を抜き、ダガーの体勢を崩した。

崩されたダガーはそのまま前のめりになり、さらにその後ろから、イチカはダガーの背中に蹴りを入れた。

 

 

 

「ぐああっ?!!」

 

「ッーー!!!」

 

 

 

蹴られたダガーはさらに体勢を崩され、その放たれた砲弾の餌食になる。

砲弾が着弾したと同時に爆散。

あまりに突然だったため、ダガーのパイロット達も唖然としていた。

そんな中、悠然と佇んでいる灰色のザクファントム。

コックピットのイチカの表情も、ただただ毅然としていた。

その目に光はなく、冷たい視線を、モニター越しに映る敵機に向けていた。

 

 

 

「イチカ・ラインハルト……敵を駆逐するッ!!!!!!」

 

 

 

 

 





お待たせして申し訳ありませんでした!

リアルが最近忙しくて、中々執筆できずにいたもので……(><)
本当に申し訳ないです。


感想よろしくお願いします!!

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