機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜   作:剣舞士

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今回で開戦は終わりですね。


第14話 驕れる牙

「イチカ・ラインハルトッ……敵を駆逐するッ!!!」

 

 

 

ザクファントムのモノアイが光る。

背部のスラスターを全力で噴かせて、イチカはダガー隊に向かって突っ込んでいく。

 

 

 

「きっ、来たぞっ!?」

 

「撃てっ! 撃ち落とせッ!!!」

 

 

 

 

わざわざ離れていた距離を詰めてくるイチカの行動に、ダガー隊のパイロット達は疑念を抱いたが、これは好機と思い、一斉にイチカの灰ザクに向けて射撃を行う。

放たれる光弾は高速でイチカのザクめがけて飛んでいくが、イチカは大きく軌道を逸らすことをしなかった。

 

 

 

「ッーーーー!!!!!!」

 

 

 

さらに操縦桿を動かす。

機体は錐揉み状の軌道を描いて飛び、向かってくるビームを完璧に躱していく。

 

 

 

「なにっ?!」

 

「狼狽えるな!」

 

「よく狙えっ!!」

 

 

 

さらに射撃の感覚が短くなり、イチカに向かっていくビームは、まるて光の雨のようだった。

しかし、それでもイチカは止まらない。

わずかな隙間を見つけ、そこをかいくぐり、一歩先へと突き進んでいく。

 

 

 

「よく見てっ、よく感じてっ、疾く駆けるッーーーー!!!」

 

 

 

まるで自分に言い聞かせるように、イチカはそう叫んだ。

かつて、剣をそうやって習っていた事を思い出すかのように……。

そして、一瞬にして一機のダガーの間合いに入った。

 

 

 

「なっ?!」

 

「おおおおおッ!!!」

 

 

 

 

銃口を向けてくるダガーの腹部めがけて、残っていた左脚で蹴りを入れる。

そして、そこから反転し、近くにいたダガーに向けて跳躍。

通り過ぎる一瞬の隙をついて、イチカはダガーの胴体を横薙ぎに一閃。

ダガーの上半身と下半身が一刀両断にされた。

 

 

 

「な、なんだこいつっ!? 急に動きがっ!」

 

「このっ!」

 

 

 

咄嗟のことに反応が遅れてしまったが、気を取り直して再びイチカに斬りかかる。

しかし、それよりも速く閃く斬閃。

振り上げたビームサーベルがヒラヒラの宇宙へと投げ出される。

振り上げていた腕ごと斬り落としたのだ。

そして、返す刃でコックピットブロックを刺突……斬機刀の切っ先がコックピットハッチを貫き、胴体を通って背中を貫いた。

ダガーの機体がガクガクと痙攣をしているように振動する……その後、イチカのザクは足の裏でダガーを蹴り、斬機刀を引き抜いた。

ダガーは爆散し、その場に爆破によって生まれる装甲の破片や金属片をまき散らした。

 

 

 

 

「な、なんなんだっ?! なんなんだよこいつはっ!!?」

 

「このぉっ、バケモノがッ!!!」

 

 

 

 

バックパックの二連装砲と手持ちのビームカービンを撃ちまくるダガー。

しかし、それすらもイチカのザクは躱し切る。

その動きはとても損傷した機体とは思えない機動力で、だ。

 

 

 

「あの機体で何故あんなに動けるっ?!!」

 

「だが、あの状態でいつまでも動けるわけがない!!」

 

 

 

 

出来うる限りの動きで、イチカは宇宙の戦場を駆け抜ける。

その様子を見ていたイザークとディアッカも、内心驚きを隠せなかった。

 

 

 

「おいおい……なんか、あいつすげぇ事やってねぇか……?」

 

「なんだ……あいつは……」

 

 

 

戦慄……。

そんな言葉にも例えられるような感覚。

そしてイザーク達は、あの戦闘力を、以前体感していた。

 

 

 

(まるで、ストライク……キラ・ヤマトと同じ……っ!)

 

 

 

かつての仇敵、キラ・ヤマトとその彼が乗っていた機体《ストライク》の動きにも似ていた。

元々赤服を着るだけの実力があったのだから、このくらいの操縦ができてもおかしくはないはずだが、それだけでは説明がつかないほどの戦闘力。

二年前、連合の最新鋭のMSを奪取し、それ使って連合を撃ってきた。

しかし、その奪った機体である《デュエル》《バスター》《ブリッツ》《イージス》の四機で畳み掛けても、《ストライク》とその母艦である《アークエンジェル》は沈まなかった。

最終的には、《イージス》に乗っていたアスランが自爆を使って道連れにするかのように倒したと聞いたが、それでも落としたとは言い切れなかった。

イザークの目に映るイチカの戦い方は、まるでかつてのストライクを見ているようだった。

 

 

 

「どうする隊長? 俺たちは?」

 

「ふんっ、あんなヒヨッコだけにいい顔されても堪らんからなっ、俺たちもモタモタしている暇はないぞっ!」

 

「はいよっ……。そんじゃあ戦艦の一隻や二隻、落としとくかねっ……!」

 

 

 

背部のスラスターを噴かせ、イザークとディアッカも加勢に入る。

イザークのスラッシュザクがビーム突撃砲を放ち、イチカの灰ザクに迫るダガーを撃ち抜き、ディアッカのガナーザクが、オルトロスを構えて、背後にいた戦艦を撃ち抜き、爆散させる。

 

 

 

「ミネルバの小僧っ! 貴様は損傷が激しいだろうがっ、さっさとゴンドアナに戻れ!」

 

『まだやれますッ!!!』

 

「なにっ?! あっ、ちょっと待て貴様っ! おい、ミネルバの小僧ッ!!!」

 

「あ〜らら……。隊長さん、あんまり人望ないのかな?」

 

「ディアッカっ、貴様ぁ……っ!!」

 

「冗談、冗談〜♪ それより、援護に行った方がいいんじゃねぇの? あいつやる気はあるみたいだけど、このままじゃ不利なのは変わんないんだしさ」

 

「分かっているっ! ったくどいつもこいつもっ〜〜〜!!! 人の言う事を聞かんバカどもばかりだっ!

あのミネルバの小僧といいっ、アスランといいっ!!」

 

「いや、アスランは今関係ないんじゃね?」

 

「うるさいっ!! あの小僧もアスランに感化されたいるに違いないッ!!!

全ての元凶はあいつだッ! 今は俺が隊長なんだぞっ、それをまた性懲りも無くッ!!!」

 

 

 

イザークのザクはスラスターを全開にし、腰にマウントしていたビームアックスを取り出す。

頭上でクルクルと回し、アックスを構える。

すると、目の前からビームサーベルを抜いたダガー隊か現れた。

 

 

 

「どけっ、雑魚どもッ!! 貴様らに用はないッ!!!」

 

 

 

向かってくる敵を容赦なく一刀両断。

さりげなくディアッカもオルトロスでダガーを二機まとめて撃ち抜いた。

 

 

 

「やれやれ……すぐ頭に血がのぼるからなぁ〜……うちの隊長さんは……」

 

 

 

獅子奮迅と言わんばかりにアックスを振り回して敵を両断していくイザークのスラッシュザク。

その後ろを飛びながら、援護していくディアッカのガナーザク。

しかしいつの間にか、イザークはイチカと競うかのように接近戦にシフトチェンジ。

奇しくも二人がつけているバックパックはスラッシュウィザード。

同じザクファントム。

イザークのビームアックスが強引に敵機を斬り裂くのに対して、イチカの斬機刀はまるでバターでも切るかのように装甲を斬り裂く。

その戦闘の様子は、ほかのザフト軍パイロットにもはっきりと写り、その姿に鼓舞された。

 

 

 

 

「おいおい、なんだよありゃ……!!」

 

 

 

 

複数のザクウォーリアと共に、連合軍の戦艦を落としたオレンジ色のザクファントムのパイロット……ハイネ・ヴェステンフルスは、イチカとイザークの戦闘を目撃した瞬間に、自分の内から湧き出る興奮を抑えられなかった。

 

 

 

「ハッハハっ!! おい、見ろよお前らっ! イキのいい奴らがまだいるぜっ!」

 

『俺たちも負けられないなっ、隊長!』

 

「応よっ! ダテに先陣切ってねぇんだ……お前らっ、まだまだやれるよなぁっ!」

 

『『『『応ッ!!!』』』』

 

「俺たちは俺たちで、敵を堕としまくるぞっ! 全力全開で行くぜッ!!」

 

『『『イエスッ、サァーーッ!!!』』』

 

 

 

背部のブレイズウィザードのスラスターを全開に噴かせる。

迎え撃ってくるダガーに対しても、容赦なく撃って出るヴェステンフルス隊。

戦況は圧倒的にプラント側に傾き始めていた。

一方、プラント本国……アプリリウスにある最高評議会の議員たちは、議長室に集まり、緊急対策本部を設立。

各都市のとの連絡や、避難状況などの確認・把握に尽力していた。

 

 

 

「現地で指揮を執っている者は誰だっ?! 最終防衛ラインの配置はっ?! 戦況がどうなっているのか、逐一報告してくれ!」

 

「全市、港の封鎖を完了しました!」

 

「一般市民の避難シェルターへの収容、90パーセント完了しているそうです!」

 

「警報の発令はっ?!」

 

「シェルターの射出っ、いつでもできるようにしておいてくれ!!」

 

 

 

 

ゴンドアナ内に設立されている防衛作戦本部と連絡を取りながら、刻々と変わっていく戦況を見極めていく。

そんな中、議長室の椅子に腰をかけ、今この時も移り変わる状況を見定めている議長ギルバートは、静かに言った。

 

 

 

「脱出したところで、我らに行くところなどないのだっ……!!」

 

「ぁ……」

 

「んっ……!」

 

「くっ…………」

 

「なんとしてもっ、プラントを守り抜くんだ!!」

 

「「「「ハッ!!!」」」

 

 

たとえここで、コロニーに住む人々が全員助かったとしても、コロニーが全て破壊されてしまえば、市民全員が行き場を失うことになる。

一応、カーペンタリアとジブラルタルは、ザフト軍が駐留しているため、そこに行けばなんとかなるかもしれない……。

そのほかにも、今現在ミネルバが停泊しているオーブや、同じ中立国であるスカンジナビア王国など、探せばほかに出てくるかとしれないが、今のこの状況下で、全ての避難民を受け入れてくれるところなどないはずだ。

故に、この戦いにおける最重要課題は、プラントを絶対に死守することである。

しかし、そんな激しい戦闘が続く中で、もっとも犯してはならない事を企む連中もいる。

 

 

 

 

 

「時間だ。先行部隊もうまく引きつけてくれているな……よし、行くぞっーー!!!」

 

 

 

一人の指揮官が発した言葉で、戦線から遠く離れた位置にいた連合軍の別働隊は、艦隊全てに打診。

それこそが、今回連合側のとった作戦だった。

複数のドレイク級戦艦などのメインスラスターが点火し、高速で移動を始めた。

そして、その戦艦の中……つまりはMS格納庫でも、慌ただしく作業を始めてていた。

 

 

 

『作戦は最終フェーズに移行! この青き清浄なる世界に、コーディネーター共の居場所などないとっ、今度こそ知らしめてやるのだッ!!!』

 

 

 

艦内に響く声。

そして格納庫内には、搭載されていた全ての《ウィンダム》のバックパックに、超大型のミサイルケースが装備された。

搭載しているウィンダム全機にパイロットが乗り込み、ウィンダムのメインシステムを起動し、カタパルトデッキへと移動。

発進シークエンスが進み、20機ほどのウィンダムが発進した。

そしてそのウィンダム全てに、超大型のミサイル二基が装備されている。

ウィンダム部隊は別軌道からプラントへと侵攻を開始した。

しかもその軌道は極軌道であり、前線から遠く離れた位置にいる。

前線で戦っている味方を囮とし、こちらが本命の攻撃作戦なのだ。

一方、宙域の作戦指令本部となっている宇宙空母ゴンドアナでも、様々な指示が飛んでいた。

 

 

 

 

「奴らの目的は、やはりアプリリウスか……っ!」

 

「まだわからん!」

 

「哨戒機は、どんな小さなことでも見逃すな!」

 

「この戦いの勝敗が、今後の我々の命運を決めると思えっ!」

 

 

 

 

指揮官クラスの軍人たちが必死になって知恵を絞り、連合軍の目的、攻撃目標など、色々と探っていく。

そしてオペレーター達もまた、錯綜する情報を整理し、重要な情報を引き出している。

そして、その哨戒機が、極軌道からやってくる連合の別働隊をほそくした。

岩陰に隠れて、左肩に付いている大判の索敵レーダーで敵の姿を捉える。

多くのウィンダムが、今まで見たことない武装を装備して、プラントへと向かっていく。

その武装を拡大した瞬間、哨戒機のパイロットは息を飲んだ。

 

 

 

「っひ……!! あ、あいつらぁ……っ!!!?」

 

 

 

画面に解像度最大で表示された、ミサイルケースと思しき装備に記されていたマーク。

赤色と黄色の二色で彩られ、おそらくこの地球上でもっとも破壊力のある最強の兵器。

かつて農業用コロニー《ユニウスセブン》、宇宙要塞《ボアズ》すらも壊滅させたミサイル。

それは………。

 

 

 

 

 

「極軌道哨戒機より入電!! プラント直上、極軌道より進軍するMS部隊にマーク5型……っ、核ミサイルを発見っ!!?」

 

「なんだとっ?!!」

 

「数はっ!!?」

 

 

 

核ミサイル。

その言葉が出た瞬間に、作戦本部は凍りついた。

二年前の大戦でも、プラントに向けて核ミサイルは撃たれた。

しかしあの時には、ミーティアを装備したフリーダムとジャスティス、カガリが登場していたストライクルージュの迎撃により、プラントへの直撃は免れた。

しかし、今回の戦闘では、そのような第三勢力はいない。

故に、対応も迅速にしなければならない。

 

 

 

 

「わかりません!! しかし、かなりの数のミサイルケースを確認したとの報告です!!!」

 

 

 

オペレーターの女性からの声が、作戦本部全体に響き渡る。

指揮官達は、急ぎこの情報をプラントにいる議長へと伝えた。

そして、この戦場にいる全ザフト兵に、通達される。

 

 

 

「核攻撃隊っ?!! 極軌道からだとっ?!」

 

「って事はこいつらっ、全て囮かよっ!」

 

「っ!!? 義母さん……っ!!」

 

「おいっ、ミネルバの小僧っ!!!」

 

 

 

 

情報が伝わった途端、イチカは血相を変えてきた道を逆走するかのようにスラスターを全開に噴かせる。

その後を、イザーク、ディアッカ達後方にいた部隊が急いで戻っていく。

 

 

 

『宙域にいるザフト全軍に告ぐっ! 奴らは核を持っている!! なんとしても、これを迎撃せよ! 一つ足りとも、プラントに撃たせるなっ!!!』

 

 

 

ゴンドアナの司令官の叫びが、戦闘を行っている全パイロットたちに届く。

すでに動き出していたイチカ達の後を追うように、核ミサイルを迎撃しようとするMSか増えていく。

 

 

 

 

「頼むっ! 間に合ってくれっ!!!」

 

「くっそおぉぉぉぉっ!!」

 

 

 

プラントを守るため、ザフトの宇宙戦力のほとんどを前線に配備した。

しかし、それがいま仇となり、手薄になっているプラント直上から、すでに核ミサイルを搭載したウィンダム部隊が近づいて来ていた。

一方その頃、プラントでは、そのウィンダム部隊に対抗するかのように、宇宙戦闘艦であるナスカ級が三隻、発進していた。

 

 

 

 

「艦長! 核攻撃隊の前方に、ナスカ級3 ! しかし、一隻は、見慣れぬ装備をつけています!!」

 

「なにっ?」

 

 

 

 

連合艦隊ドレイク級の艦長が、モニターに映し出されたナスカ級の映像を見た。

 

 

 

「な、なんだっ、あの装備は……っ?!」

 

 

 

艦長が驚いた理由。

それは紛れもなく、ナスカ級が今までに装備したことのないものが付いていたからだ。

ナスカ級は、ザフト艦の中でも高速艦として知られているため、その分武装面に少し弱点がある。

最近では、その弱点を補うために、少し改良を施したという情報を聞いたことがあったが、それでも今までに見たことのない装備なのは確かだった。

ナスカ級の中央部、本来ならばMSの発信進路をとるための場所に、巨大な砲塔が設置されていた。

中央にそびえる砲塔と、その左右に展開する六枚二対……計十二枚のブレードのようなもの。

一体どうするつもりなのか、皆目見当がつかない。

 

 

 

 

「いいかっ、一発勝負だからなっ……! ギリギリまで引き付けろっ!!」

 

「プライマリー兵装バンク、コンタクト! 出力向上! 《ニュートロンスタンピーダー》、起動します!」

 

 

 

 

《ニュートロンスタンピーダー》

それがナスカ級に取り付けられた兵器の名前だった。

砲塔の左右に展開する十二枚のブレード状の電磁波放射装置《量子フレネル》が、起動と同時に電磁波を発して、攻撃態勢に入る。

そして、核攻撃を行うウィンダム部隊も、ミサイルの射程内にプラントを捉えた。

 

 

 

「そぉら行けッ! 今度こそっ、青き清浄なる世界の為にッ!!!」

 

 

 

その言葉とともに、二基あるミサイルケースから特大のミサイルが放たれた。

それを皮切りに、搭載していた核ミサイルを、ウィンダム全機が放った。

そしてそれを、イチカ達は必死に撃ち墜とそうする。

 

 

 

 

「くそっ! 間に合わんっ!!!」

 

「当たれぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」

 

 

 

 

背部のビームガトリングガンを放ち、大声で叫ぶイチカ。

そのほかにも、手持ちのビーム突撃砲やビームライフルで迎撃を行うザフトのMS達。

しかし、その攻撃は一発も当たることなく、ミサイルはさらに加速していく。

 

 

 

「ぁっ……!!!」

「なっ……!!」

 

「くそっ! くそっ、くそっ、くそっ!!!!」

 

 

 

 

誰もが諦めてしまう中、イチカだけはなおも撃ち続ける。

 

 

 

 

「やめろっ!! やめてくれっ……!!!」

 

 

 

ミサイルが刻一刻と迫っていく。

義母ユリスのいる、アプリリウスへ。

 

 

 

「義母さあぁぁんっ!!!!」

 

 

 

 

イチカが叫んだその時……。

ナスカ級が動いた。

 

 

 

 

「目標捕捉っ! セーフティー解除っ!!」

 

「スタンピーダーっ、掃射ッ!!!」

 

「掃射ッーーーー!!!!!!」

 

 

 

 

量子フレネルが最大規模で稼働し、巨大な電磁波を放射した。

電磁波は核ミサイルを包み込むと、核ミサイルはまるで自ら自爆するかのように爆ぜてしまった。

《ニュートロンスタンピーダー》の効力は、原子核の成分である中性子を意図的に暴走させ、強制的に核分裂を起こさせることによって、核ミサイルを自壊させることができる。

それしてそれは、ミサイルに限ったことではなく、核をエネルギー源とするMS……つまりは、フリーダムやジャスティス、プロビデンスなどの機体にも有効な兵器だ。

もっとも、使える場所が宇宙空間だけというのと使える回数が一回限りという事があるため、そう便利に使えるというわけでもないが……。

しかし、スタンピーダーが放った電磁波は、核ミサイルを消滅させた後、そのままミサイルを放ったウィンダム部隊を包み込む。

ミサイルケースにまだあった核ミサイルが、強制的に核分裂を行い、ウィンダム部隊も同じように自爆した。

そしてその消滅報告は、後ろからやってきていた連合艦隊へと伝わる。

 

 

 

 

「第一攻撃隊っ、消滅っ!!」

 

「なにっ?! どういうことかっ!?」

 

「わかりません! あのナスカ級から何かーーーー」

 

 

 

 

連合の艦のオペレーターがそこまで言った瞬間、スタンピーダーの電磁波が艦隊を捉えた。

艦内に残っていたミサイルが反応して、またしても自爆する。

核ミサイル、核ミサイルを放ったMS部隊、そのMSを搭載していた敵艦隊。

たった一発の攻撃で、全てが宇宙の塵になってしまった。

 

 

 

「一体、何が起きている…………?!!」

 

「こ、これは……!?」

 

 

 

 

呆然とするイザーク達MS部隊。

それを間近で見ていたイチカもまた、言葉を失っていた。

一方、ニュートロンスタンピーダーの使用を許可したプラントにいる議長は、その様子をモニターで確認していた。

議長室に集まっていた評議会の議員たちも、映像を見て、ホッと一息をついていた。

 

 

 

「目標、完全に消滅しました!」

 

「スタンピーダーは量子フレネルを蒸発させ、ブレーカーが作動。艦内機能も、一時停止しております」

 

「やったっ……核を完全に消滅させたぞっ!!」

 

「よくやってくれたっ!」

 

「スタンピーダーが間に合ってくれて、本当に良かったですわ……!」

 

「あぁ、確かにな」

 

「だが、虎の子の一発だ……次はこうは行かんだろう……」

 

「ええ、そうですね……これで終わってくれるといいんですが……とりあえずは」

 

 

 

歓喜に沸く議長室。

しかし、議長本人は、周りの者たちに比べてどこか落ち着いている。

鋭い視線をモニターに移し、今後の対策を思案する。

一方で、核攻撃隊が消滅し、連合艦隊が月基地へと撤退するという情報を聞いたジブリールは、モニターがたくさんある自宅の特設ルームにいた。

 

 

 

「なにっ?! 全滅しただとっ?! 一体どういう事だ!!」

 

『ハッ、しかし、本当に全滅したんです。攻撃に向かったMS部隊および、核攻撃艦隊もろともに』

 

「くっ〜〜〜! こんな、こんな事があってたまるかっ!!!」

 

 

 

思いっきり振り上げた拳。

それを近くにあった机に叩きつける。

ジブリールの表情はみるみる歪んで行き、やがてその憎しみの込められた怨念の眼光は、モニターに映るプラントのコロニーへと向けられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 

オーブ沿岸部。

その場所の一角に、大きな家がある。

海からそう遠くない場所なため、周りには街灯などの灯りしかなく、星空が綺麗に見える。

テラスで一人、不意に空を見上げていた青年…キラ・ヤマトは、空の彼方にある宇宙……強いてはプラントの方を見ていた。

何かを感じた……というような感覚に近いのか、不意に目覚め、なんとなく星空を見上げでいた。

 

 

 

「キラ?」

 

「ん……ラクス」

 

「どうされました? 眠れないのですか?」

 

「うん……なんか、寝付けなくて……それで、星、見てた」

 

「ふふっ…………綺麗ですわね」

 

「うん……」

 

 

 

 

キラの後ろからやってくる女性。

ラクス・クラインは、寝間着姿で現れた、キラの隣へと歩み寄ってくる。

愛する人と共に、平和な世界を生きている……それだけで幸せに思うことを、ラクス自身も体感してきた。

二年前の大戦で、キラも、自身も、大切な人たちを失った。

多くの犠牲を出しながら、仮初めとはいえ、平和を掴んだ。

しかし今、再び戦乱が舞い戻ろうとしている……おそらくキラも、そんな予感を感じ取ったのかもしれない。

ラクスは静かにキラの隣へと立ち、そっと寄り添う。

すると、そんな二人の間に、子供の声が聞こえてきた。

 

 

 

「んん……なに? 何かあったの……?」

 

「ぁ……」

 

「あらあら、起こしてしまいましたわね。ごめんなさい」

 

「どうしたの?」

 

「なんでもありませんわ。綺麗なお星様を見ていましたのよ」

 

「うわぁ〜〜!!! 綺麗だねぇ〜!」

 

「ええ、本当に綺麗ですわね♪ でも、もっと静かに、ね? みんな起きてしまいますわ」

 

 

 

 

 

昔では考えられなかった。

幼い子供達と一緒に過ごすというこの時間は、プラントにいたままでは、味わえなかっただろう。

共に過ごしている子供達のほとんどは、戦災孤児であり、導師マルキオの元へと集まり、生活していた子達だ。

それからは、キラにラクス、カガリにアスラン、マリューにバルトフェルドが加わった事で、子供達も、少しずつ子供らしい一面を持って生活する事が出来た。

キラもラクスも、今の生活は非常に楽しいと感じている。

これから世界がどうなってしまうのかはわからないが、せめて今ある平和を、壊されないようにしたいものだった。

 

 

 

「ああっ!!」

 

「ん? どうしました?」

 

 

 

子供が不意に、空に向かって指をさした。

キラとラクスも、その指先に視線を向けた……その瞬間、二人は息を飲むことになる。

 

 

 

「っ…………!!!」

 

「ぁっ……あれは……っ!?」

 

 

 

 

満天の星空の中から突如として現れた爆発的な光。

妖しい色合いを帯びた閃光は、一直線上へと光っていき、やがて消えていった。

その光を見た瞬間、キラの表情は険しくなり、ラクスも表情が強張った。

 

 

 

「あれは…………核の光だ……!」

 

「そんな……っ!!」

 

 

 

もう二度と目にすることもないと思っていた。

だが、再びプラントに向けて核が放たれたのだと、キラは悟った。

そう思った瞬間、一人の男の顔が浮かんだ。

かつてこの世界を憎み、その元凶である人類を全て滅ぼそうとした者……己の運命を呪い、世界を絶望で染め上げようとした者の事を思い出した。

白い仮面をつけ、嘲笑い、世界を混沌へと導こうとした者……元ザフトの軍人であり、キラの宿敵……ラウ・ル・クルーゼ。

 

 

 

 

 

ーーーー私にはあるのだよっ!! この世で唯一、人類を裁く権利がなッ!!!!

 

 

ーーーーもはや止める術はないっ!! 地は焼かれ、涙と悲鳴は新たなる争いの狼煙となるッ!!!!

 

 

 

 

「くっ…………!!」

 

 

 

 

核の光を見つめるキラ。

これから先に起きる事……大戦へと繋がる運命。

キラは何か良くないことが起こると、この時感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

一方、プラントにいたアスラン。

ギルバートとの会談の為、早朝にオーブを出て、早々プラントへとたどり着いた。

しかし、状況が悪化していった為、長々と別室で待たされていたのだ。

ソファーに座り、いつ終わるかわからない戦闘を待つ。

その彼の後ろを、時計を見ながらうろちょろとする外交官。

 

 

 

「…………ふぅ〜……」

 

 

 

アスランは一度呼吸を整えると、そのまま立ち上がる。

 

 

 

「っ……どうかされましたか?」

 

「いえ、ちょっと顔を洗ってきます」

 

「あ、はい。わかりました」

 

 

 

外交官にそれだけ言って、アスランは別室を出てお手洗いに行く。

洗面台に向き合い、その下にある蛇口に手をかざすと、自動で水が出てくる。

それを両手で水を掬って、顔を洗う。

その行為をあと二回ほど繰り返すと、アスランは目の前のガラスに映る自分の顔を見る。

 

 

 

 

(このままじゃ……また、繰り返す……)

 

 

 

この戦いの果てに待っているのは、果てない荒野と憎しみにまみれた世界だけだ。

誰もが世界を変えようと戦う聖戦でもない……大義名分もない……ただの憎しみのぶつけ合いだ。

だからそうならないように、ギルバートと話し合いにきたのだ。

 

 

 

 

「はぁ〜……」

 

 

 

色々とやらなくてはならないことが多く、アスランも気が滅入っていた。

無意識にため息を漏らしながら、アスランはお手洗いを後にした。

だが、そんな時…………。

 

 

 

 

「じゃあ、急いで向かった方がいいんですわよね? リハーサルもあるし〜」

 

「ん?」

 

 

どこかで聞いたことのある声が聞こえた。

アスランは慌てて近くを見回すと、階段を登った先に、見慣れたピンク色の長い髪を見つけた。

 

 

 

「っ……!? ラクス……?」

 

「ん……? ぁっ!! アスランっ!!」

 

 

 

ピンク髪の少女は、アスランの姿を見ると、満面の笑みを浮かべ、アスランの元へと駆け寄ってくる。

階段を一段飛ばしで降りながら、着々とアスランの元へと向かってくる。

その後ろを、赤色のハロがピンク髪の娘を追いかけてくる。

やがて一階に降りるとアスランめがけて一直線に走る。

そのままアスランの胸元へとダイブし、両手いっぱいに抱きしめる。

 

 

 

「あ……えっと……えぇっ?!」

 

 

 

姿、顔立ち、声……どれを取ってもラクス・クライン……彼女だった。

しかし、その彼女が着ている服装はあまりにも過激で、ラクスがその手の服を着ることなんてほとんどなかった。

常に可憐で清楚なイメージのある服を着ていた……。

故に、今の彼女の姿に違和感を感じた。

それと、今の彼女は、オーブの沿岸部に住んでいるはず。

プラントにいる方がおかしいのだ。

 

 

「ラクス様、そろそろ移動しませんと……」

 

「えぇ〜!! もう〜?」

 

「お願いします」

 

「はぁ〜い」

 

 

 

後ろからやってきた黒服の男たちに囲まれ、メガネをかけていたモジャモジャ頭の男がラクスと呼ばれた少女と話している。

 

 

 

「ではまた、会いましょう! アスラン!」

 

「ぁ……ぁぁ…………」

 

 

 

 

先ほどのはしゃぎようは何処へやら……。

悠然とその場から立ち去って行くラクスと黒服のボディーガード達。

アスランはその後ろ姿を呆然と見るとしかできなかった。

 

 

 

 

「おや、アレックス君?」

 

「っ!? ぎ、議長……」

 

 

背後から声をかけられる。

咄嗟に振り向くアスラン……するとその場に居たのは、会談を要請した人物。

ギルバート・デュランダルその人だった。

 

 

 

「あぁ、君との会談もあったね。いやぁ〜すまないね、少々こちらも慌ただしくしていてね。

もう少し時間をいただけるかな?」

 

「えっと……あの……」

 

「ん? どうかしたのかな?」

 

「あ……いえ……なんでもないです」

 

 

 

まるで夢でも見ていたかのようなになったが、気を引き締め直して、ギルバートと向かい合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回からはプラントで過ごすイチカとアスランのことを書こうかなぁって思います!


感想よろしくお願いします^_^

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