機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜   作:剣舞士

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ええ、今回は前回の続きですね。
後半の方にはストライクルーチェの簡単な機体説明をしてます。

それでは、どうぞ!




第16話 光の剣

ギルバートからの突然の誘い……。

最新鋭の高性能機を託したい……それはつまりザフトへの復隊を意味している。

元々は確かにザフト軍に所属して、特務隊である『FAITH』にまでなった。

しかし、今はオーブの要人警護係の一般市民に過ぎない。

そんな今の自分が取るべき行動とはなんなのだろうと、アスランは戸惑いと迷いを抱えていた。

とりあえず、あのまま格納庫に留まっているわけにもいかず、残っていたザフト兵の案内の元、プラントの市街地へと降りた。

その後、手配してもらっていたホテルへと向かい、フロントへと入ったアスラン。

すると、機械音声でありながら、明るくハツラツとした声が聞こえた。

 

 

『HALLO HALLO!』

 

「ん?」

 

「ああっ……!!」

 

 

 

機械音声が聞こえてきた方へ視線を向けると、なんと、先ほどラクス・クラインを演じていた少女がこちらに向かって走ってきた。

その少女は勢いよく走ってくると、そのままアスランに抱きつく。

 

 

 

「えっと、君っ……?!」

 

「ミーアよ、ミーア・キャンベル! でも、他の人がいるときは、『ラクス』って呼んでね♪」

 

「ぇえ……?!」

 

「うふふっ♪」

 

 

 

何を考えているのやら……。

こんな所にいては、絶対に注目を集めるだろうに。

アスランはため息をついてその場を離れようとする……が、即座にミーアに左腕を思いっきり引かれてしまった。

 

 

 

「のわああぁっ?!」

 

「ご飯まだでしょう? まだよね? 一緒に食べましょう♪」

 

「ええっ?! ちょ、ちょっと君……!」

 

「アスランはラクスの婚約者なんでしょ?」

 

「いやぁ、それはもう……」

 

 

 

何を言っても聞いてくれなさそうだった為、アスランはそのままミーアに腕を引かれたまま、ホテルのレストランへと足を運んだ。

出てくる料理はコースであり、ホテル自体が要人なども泊まる有名ホテルの為、コース料理もそれに見合うものを取り入れている。

メニュー表を見ているミーアを、アスランはただじっと見つめていた。

その姿は、かつてプラントで共に過ごしたラクス本人と遜色なかった。

 

 

「ん? 何を頼むか決めました?」

 

「え? あぁ、いや……すまない、まだだ」

 

「うふふっ……」

 

 

 

楽しそうに笑う。

そんな姿を、ラクス本人はあまり見せてはくれなかった。

確かに笑いはした。

しかし、どこか落ち着いているような笑い方だ。

年頃の女の子のように、思いっきり笑ったりはしなかった。

 

 

 

「あっ! そういえば、私の演説っ、見ていただけました?」

 

「え? あ、あぁ……」

 

「その、私似てましたか? ラクス様に……。ちゃんと、ラクス様になりきれてましたか?」

 

「…………あぁ、なりきれていたと思うよ……ほんと、姿も声も、彼女のまんまだった」

 

「っ〜〜〜!!! よかったぁぁ〜〜!!!! あのときは、リハーサルをしていたけど、とても緊張してて、もしも失敗したらどうしよう〜って思ってたんです」

 

「…………君は、いつからこんな事をしているんだ?」

 

「え? えっとぉ〜、数ヶ月前ですかね? 政府の人が、いきなり私のところに来て、この話を持って来てくれたんです!

声は元々、昔から似てるねってよく言われてたから!」

 

「………………」

 

「いやぁ〜、いきなり黒服さん達が来た時にはびっくりしたなぁ〜!

その後に議長に会ってぇ〜、君の力が必要だって言われて、それで私ーーーー」

 

「君の力じゃない……。皆が求めているのは、ラクスの力だ」

 

「ぁ…………。そ、そうですよね……はい、分かっています……」

 

「ぁぁ…………」

 

 

 

アスランの言葉に、ミーアは少し落ち込んでしまった。

確かに、必要なのはラクス・クライン本人であって、ミーア・キャンベルという人物ではない。つまり、彼女はラクスの代役でしかないのだ。

アスランも少し言いすぎてしまっただろうかと思い、謝ろうとしたが、すぐにミーアは気持ちを切り替えて、再びアスランに向き直る。

 

 

 

「でも、いいんです! それで、プラントの皆さんが元気になってくれるなら!」

 

「………………」

 

「私、昔からラクス様のファンだったんです! 小さい頃からラクス様の歌ばっかり聴いてて……その頃から、声は似てるねってよく言われてて……!」

 

「…………」

 

 

 

つまり、偽物だと分かっていて、それでも彼女はプラントの人々と為に、自分ができる事をやろうと……。

少なからず貢献しようとしているのだろう……。

それなのに、自分は何をしているんだろう……そう思うアスランだった。

今の自分には、できることは何もない。

自分はただの護衛役。

オーブの国家元首を守護する者の一人に過ぎない……そんな男がやれることなんて、あるのだろうか?

ここ最近は、こんなことばかり考えている。

ふと窓の方へと視線を向けるアスラン。

すでに暗くなったコロニー内の空を見上げる……そんな時に、再び議長の言葉が蘇った。

 

 

 

ーーーー君に出来る事、君が望む事……それは、君自身が一番よく知っているはずだ……!

 

 

 

(俺が、望んでいる事……出来る事…………)

 

 

 

議長の言葉と共に、あの機体……最新鋭機であるセイバーが映った。

自分に出来る事……それは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン。

 

 

 

「あら? 誰かしら、こんな時間に?」

 

 

 

アプリリウス市内……。

郊外から少し離れた住宅街の一軒に住む女性。

ユリス・ラインハルト。

そのユリスの住む家に、誰かがやって来た。

外はもう夜で、誰かが訪ねてくる予定もない……。

不思議に思いながら、ユリスは玄関の扉を開けた。

 

 

 

「はあーい?」

 

「あ、えっと…………」

 

「え?」

 

 

扉を開けてすぐそこには、年若い男性が立っていた。

ユリスのゆるふあ茶髪は違い、艶やかな短い黒髪の少年。

 

 

「ただいま……義母さん」

 

「イチカ……? っ!!!? イチカっ!!?」

 

「う、うん……その、ただいま……義母さん? 大丈夫か?」

 

「うわあああ〜〜〜〜!!! おかえりぃ〜〜〜っ、イチカァァァ〜〜〜!!!」

 

「のわああぁっ?!」

 

 

 

 

およそ大人の女性とは思えないほどハイテンションかつハイジャンプでイチカに抱きついてくるユリス。

イチカも慌てて体勢を整えてたので、転ぶことは無かったが、下手すればそのまま仰向けに倒れこんでしまいそうだった。

 

 

 

「ほんとにぃっ! ほんとにイチカなのねっ?! おかえりなさい〜〜〜!!!」

 

「お、おうぅ、ただいま……。えっと、とりあえず中に入らない?」

 

「あっ、そうね! ごめんなさい、ささ、上がって!」

 

 

 

リビングへと促すユリス。

しかしその左脚は、通常の人よりは、なんだかぎこちなく歩いている。

その原因は、二年の侵攻作戦の時。

大木に両脚を下敷きにされて、左脚は腱が切れてしまった為だ。

プラントへと移った時に、手術をして、その結果なんとか腱の修復もできたが、即座に歩くことは困難であり、今もリハビリを続けている。

 

 

 

「脚、大丈夫?」

 

「ええ。これでも進歩した方よ! お医者さんも、回復が早いって褒めてくれたわ!」

 

「そっか……でも、まだ補助具はつけとかないと……何があるかわからないんだからな?」

 

「わかっているわよ……そんなことより、ご飯は食べた? それともお風呂入る?」

 

「うーんご飯食べたいかなぁ〜。でも、こんな時間だけど大丈夫?」

 

 

時間的にはまだいけるかもしれないが、おそらくユリスも夕食は済ませているだろう。

 

 

「大丈夫大丈夫〜! あっ、昨日作り置きしておいたビーフシチューがあるわ!」

 

「マジっ?! でもなんでビーフシチューを作り置き?」

 

「明日ママ友たちと女子会♪」

 

「あー、なるほど」

 

 

 

オーブにいた頃も、同級生のお母さんたちと友達になり、よく家でお茶会をしていたのを思い出した。

それはプラントに来ても変わらんらしい。

 

 

 

「でもまあ良かったよ……俺もアリサも居ないから、義母さん寂しがってるんじゃないかって思ってた……」

「ええ、おかげさまで。職場の人達にもよくしてもらってるわ」

 

 

 

アプリリウスでは、もう教職には就ていないものの、それなりに収入のある仕事に就けたようで、私生活に困ってはいない。

 

 

 

「それより、いつ帰って来たの? 連絡くれたら、迎えに行ったのに……」

 

「帰って来たのは、二日前くらいかな? ちょっと軍の要請で、戻って来いって言われちゃってさ……」

 

「あらあら……何か問題でも起こした?」

 

「んなわけないだろう? まぁ、なんていうか、悪い事をしたわけじゃないから大丈夫だよ」

 

「そう? なら良かったぁ〜」

 

 

 

そう言いながら、二人はリビングへと入っていく。

イチカは軍服ではなく、プライベートで着る私服を見にまとっている為、荷物をテーブルの下に置いてから、そのまま椅子に座る。

ユリスはそのまま台所に行き、コンロの上に置いてあったビーフシチューを再び温め始めた。

 

 

 

「あなた一人ってことは、アリサは帰って来てないの?」

 

「うん。アリサは、今たぶんオーブに居ると思う」

 

「オーブっ?! なんでまた……」

 

「えっとだな……」

 

 

 

不安な表情を浮かべるユリス。

イチカは機密事項に触れない程度に、説明した。

ユニウスセブン落下事件の際に、破砕作業の支援に出向き、そこで戦闘があって、ユニウスセブンを地球なら降下しながら破砕した事。

その時、アリサ達はそのまま地球に、イチカだけが、プラントに呼び戻された事を……。

 

 

 

「そう……アリサもだけど、艦に乗っている人たちは大丈夫だったのかしら?」

 

「全員無事にオーブにたどり着いたって、連絡が入って来てたから、問題ないと思うよ?

だけど、アリサとシンはなぁ……」

 

「…………辛い思いをしてなければいいんだけど……」

 

 

 

 

アリサやシンのことだ、なにかと思いつめていなければ良いのだが……。

おそらくは今艦内で過ごしていることだろう……。

地球軍による一方的な開戦により、中立国のオーブとて、警戒心を露わにしているはずだ。

友好国であるザフトの戦艦が停泊していては、地球軍側からなんらかの圧力があってもおかしくはない。

だがそこは、オーブの代表であるカガリがミネルバに手を出させないだろう。

仮にも、わざわざミネルバに乗せてオーブまで送って行ったのだから……オーブ政府にとっても、今ミネルバに何かしようとはしないはずだ。

 

 

 

「まぁ、オーブなら大丈夫じゃないかな? あそこは中立国なんだし……」

 

「そうよね。そっかそっかぁ〜、はあぁぁ〜〜安心したぁ〜! あっ、もうそろそろ出来るわよぉ〜♪」

 

「おお! いやぁ〜、義母さんのビーフシチュー久しぶりだなぁ〜!」

 

「そういえば、あなたとアリサは大好きだったもんね」

 

「あぁ、そりゃあもう! 美味しいからね!」

 

「あらそうぅ〜? お母さん鼻が高いわぁ〜♪」

 

「アリサに自慢してやろうかなぁ〜」

 

「あの子、きっと拗ねるわよぉ〜」

 

「だな……あっはははっ」

 

「ふふふっ」

 

「っと、じゃあいただきます!!」

 

「はぁーい!」

 

 

 

 

久しぶりの家庭料理。

いつも軍で食べるものは、最低限栄養がある取れる物ばかり。

そりゃあ、色々とバリエーションが豊富ではあるが、どうも味気ない物ばかりでいけない。

たまには自分で作ったりしたいものだが、流石に艦の厨房を借りるわけにもいかない……。

それに、家庭の味という物は、その家の子供ならばどんな料理にも勝る料理だ。

食べ慣れた味……それは自分の好みの味と言っても過言ではない。

その料理が美味しければ、なおのこと良い。

 

 

 

 

「んんっ! 相変わらず美味いなぁ〜!!」

 

「ふふっ……。いっぱいあるから、たんとお食べ♪」

 

「あぁっ、そうさせてもらうよ!」

 

 

 

 

家のビーフシチューには、フランスパンのバケットが付いている。

昔、日本にいた頃には、当然のごとく白米だったのだが、オーブならともかく、プラントに米はあまり見かけない。

売ってないこともないか、ほとんどの人はパン派らしい……。

しかし、ユリスのビーフシチューは、どちらでもいける。

ご飯と混ぜても食べてみたいし、パンを浸せば、パンがビーフシチューのルーを吸って、より美味しくなる。

そうこうして食べているうちに、いつのまにか完食し、お代わりをしてはまた完食。

久しぶりのご馳走に、イチカと満足し、そのイチカの食べっぷりを見ていたユリスも、ニコニコと笑っていた。

 

 

 

 

「洗い物は俺がするよ?」

 

「いいのよ……これも料理を作って、食べてもらう人の特権みたいなものよ」

 

「そういうもんかな?」

 

「そういうものなんです」

 

 

 

たしかに、昔は姉の千冬によく料理を作っては、美味しいと言ってもらって、完食したお皿を洗うのが、時々嬉しく思ってたっけ……?

ふと思い出す昔の思い出……。

今、姉はどうしているだろうか……?

ちゃんと食べているのだろうか?

幼馴染や、学校の友人達は……?

おそらく、自分と同じ16歳になっているのなら、高校生になっているはず……。

中学最後の年、高校受験に勤しんで、辛く苦しい受験勉強を頑張った結果が、今の時期に現れる。

新たな新生活の始まりでもある。

そんな風に物思いに耽っていると、洗い物を終えたユリスがリビングにやってきて、テレビのリモコンを手にする。

電源を入れると、ちょうどニュース番組が放送していて、その報道内容は、昨日の開戦に関することと、それが終わって、連合側が今どのように動いているのかという内容だった。

 

 

 

 

「怖いわねぇ、ほんと……」

 

「あぁ…………」

 

「このまま、また二年前みたいな事にならないかしら……」

 

「っ…………正直、わからないね」

 

 

 

二年前の大戦の時は、父・アッシュを亡くしている。

それはつまり、ユリスにとっては最愛の人を亡くしているのと同義だ。

あんな大変なことがあって、沢山の物を失ったというのに、また戦争をしようとしている……。

 

 

 

「連合も、これがどれほど無茶な事なのか……わからないのかしら?」

 

 

 

ユリスは元々教職に就いていた身だ。

それも、まだ幼い初等部の子供達に教養を教えないといけない立場たった。

だからこそ、正しいこと、間違っていることに対しては、厳しく教えてきた。

そんな彼女だからこそ、今回の連合の行いには不信感を抱いているのだろう。

 

 

 

「問答無用で核を撃ってくる辺り、おそらくはブルーコスモスか関与してんだろうさ……」

 

「ブルーコスモス……ね……」

 

 

 

オーブにいた頃から、ブルーコスモスの存在は知っていた。

ただ、オーブは中立国で、コーディネーターとナチュラルが普通に共存していたため、コーディネーターを排斥しようとするナチュラルの思想があまりわからなかった。

だが、プラントにやってきてからというものの、連合からの圧力にも似た物を感じるようになり、やはりコーディネーターとナチュラルとの間にある格差は、とても根強い物なのだとわかる。

 

 

 

「開戦時には、俺も出撃したけど……あいつら、ほんとやばかった」

 

「っ?! 出撃したのっ?!」

 

「まぁ、俺もMSパイロットだし……守るために戦ったんだよ」

 

「っ…………」

 

「っと、ごめん……こんな話、聞きたくないよね」

 

「ううん……あなたとアリサが軍人になるって聞いた時から、覚悟はしていたけど……実際に聞くと、ね……」

 

 

 

我が子が戦場に行く。

それは、いつの時代であろうとも辛く、悲しいことだろう。

もしかしたら、イチカとアリサも死んでしまうかもしれないのに……そうなれば、ユリスは一人になってしまう。

 

 

 

「大丈夫だよ、義母さん。俺は死なないし、死ぬつもりもない」

 

「イチカ……」

 

「俺には約束がある……義父さんと交わした約束が……。家族を守る……だから俺は強くなるし、絶対に死なない。

アリサと義母さんは、絶対に守るからな……っ!」

 

「…………」

 

 

 

 

無理にでも笑って、ユリスを安心させようとするイチカ。

そんなイチカを見て、ユリスはそっと、イチカの手を取った。

両手で包み込むように、イチカの右腕を握る。

 

 

 

「私はあなた達を失いたくはない……! どうなろうと、何処にいようと構わない……あなた達が生きてさえいてくれれば、母さんはそれでいいから…………!」

 

「ぁ……!」

 

 

 

ぎゅっと右手に力が込められていく。

それは、母ユリスの願いだ。

父アッシュとした約束に、母からの願いも託された。

 

 

「わかった。必ず生きて帰るよ……今度はアリサと一緒に、義母さんのところへ」

 

「ええっ……! 約束よ、イチカ」

 

「あぁ、約束だ」

 

 

 

 

イチカが右手の小指を出すと、ユリスも小指を出した。

オーブにいた頃に、イチカがみんなに教えた物だった……。

『指切り』というこの行為は、ユリスは好きだった……可愛らしさのある誓いの行為。

当時は、学校の生徒ともやった事がった。

こうしてイチカは、もう一つ……約束を交わした。

父と母の思いを胸に、再び戦場に赴く覚悟を決めた。

 

 

 

(ストライクルーチェ……俺の機体。今度は、守ってみせる……!)

 

 

 

かつてオーブの侵攻作戦の時に戦ってくれた、国防軍の人たちや、あのフリーダムのように……。

 

 

 

 

「あ、ところで、一つ聞きたいことがあるんだけどぉ〜?」

 

「ん? なんだよ、改まって……」

 

 

 

神妙な表情から一転、ニコニコとしながらユリスは問う。

 

 

 

「あなた達、子供はいつ作るの?」

 

「ぶうふうううううッ!!!!!??!?!」

 

「あらあら、大丈夫っ?」

 

「いや、こどっ、は、はあぁっ?!! 義母さん、一体何をっ?!!」

 

 

いきなりの問いかけに、思わず吹いてしまった。

 

 

 

「え? あなたとアリサは付き合ってるんじゃなかったの?」

 

「は……?」

 

「ん?」

 

 

思いもよらぬ発言に、イチカは頭が真っ白になってしまった。

当のユリスは、何か変なことでも言っただろうか……? というような表情で、イチカを見ている。

 

 

 

「えっと……その……」

 

「ん〜……あぁ、なるほど。私があなた達の関係に気づいていないと思ったわけね?」

 

「え? あ、あぁ……まぁね……」

 

「うふふっ、気づくに決まってるじゃないの〜♪ なんたって私たちの子供なのよ? 気づかない方がおかしいわよ♪」

 

 

 

右手を口元に当てながら上品に笑うユリス。

それを見ると、とても顔をあげられない気分になる。

 

 

 

「その……いつから……?」

 

「アリサがイチカの事を好きになっている頃からだから、二年前からかしらね?

関係を持ったのは、こっちに来てからかしら?」

 

「っ〜〜〜〜〜」

 

 

 

母、恐るべし。

見事に当たっている。

アリサがイチカに好意を持っていたのは、オーブにいた時からだ。

しかし当のイチカは、ご自慢の鈍感唐変木朴念仁を絶賛発動中だった為、アリサのそういった好意を知ることがなかった。

しかし、プラントに来てからというものの、突然の戦火に巻き込まれた事で、思考回路も色々と飛んでいたところに、アリサからの誘惑。

元々女性として魅力的になっていたアリサの存在をその時になって初めて体感して、そのまま…………。

 

 

 

 

「その、さ…………義母さんは、おかしいと思わないのか? それとか、変、だとかさ……」

 

「ん? 変って……何が?」

 

「何がって……。一応さ、血が繋がってないとはいえだぞ? 姉弟は姉弟じゃんか……。

そんな俺たちがさ、そんな関係なったら……」

 

「別に問題は無いんじゃないから? 血が繋がっていたら、また別の話になるとは思うけど、血は繋がってないんだし、お互いが好き同士なら、お母さんは喜んで祝福するわよ?」

 

「いやでもさっ!」

 

「あら? イチカはアリサが嫌い?」

 

「うぅっ……」

 

 

 

困ったような表情で上目遣いにこちらを見てくる。

こういうところはアリサと似ている……。

いや、ユリスの遺伝子が、アリサに移ったのだ。

ということは、誘惑がうまいのは、ユリスの遺伝ということか……。

 

 

 

「さすが、この親にしてこの子有り……だな」

 

「あらやだ、褒めないでよ♪」

 

「褒めてない……呆れてるだけだよ」

 

「でもまぁ、本当に好きなら、そのまま付き合っちゃってもいいんじゃないかしら? 私は問題ないわよ?」

 

「ん……本当にいいんだろうか?」

 

「私にとっては、別に何ら変わりはしないわよ。あなたが養子として家族になるか、婿養子として家族になるかの違いだもの♪」

 

「まぁ、たしかに……それもそうか」

 

 

 

変に納得してしまった。

いやもう、逆らうのはやめようと思ったのだ。

このまま行ってしまったら、また変にからかわれる……。

 

 

 

「お母さん、早く孫の顔が見たいなぁ〜〜♪♪」

 

「んくぅ〜〜っ……」

 

 

 

わざとらしく甘い声色で迫ってくるユリス。

いやまぁ、いずれは家庭が持てたならとは思っていたが……。

 

 

 

「男の子が生まれたら、イチカの様な活発な男の子になるのかしらねぇ〜?

あ、でも男の子ってお母さんに似るっていうし、アリサ似の美形少年になるかしらね♪」

あーん、でもでも、女の子もいいかしらねぇ〜……イチカみたいに凛々しい女の子が生まれてくれたらぁ〜、お母さん色々お世話したいのよねぇ〜」

 

「おばあちゃん、気が早いよ」

 

「おばあちゃんなんてもうぅ〜!! やめてよぉ〜〜♪」

 

 

 

 

皮肉のつもりだったのだが、ユリスは思いのほか乗り気な様だ。

 

 

 

「………………とりあえず、風呂入ってくる」

 

「はぁ〜い、ごゆっくりぃ〜♪♪♪」

 

 

 

もうこれ以上話していると、ユリスのペースに引き込まれてしまいそうなので、早々に退散することにした。

久々の我が家……浴室へと繋がる廊下を歩いていると、見慣れた部屋を目撃する。

扉にはコルクボードで作られた『ICHIKA』の文字と、反対側には『ARISA』の文字がつけられているボードが掛けられている。

 

 

 

(部屋……そのままにしててくれたんだな……)

 

 

 

今はイチカとアリサもいないこの家で、ひとりぼっちなユリス。

近所のお母様方との交流があるとはいえ、それでも寂しいものは寂しいはずだ。

 

 

 

(今度からは、出来るだけ帰ってこよう……)

 

 

 

 

ユリスの事を思うと、一人にさせておくのもなんだか嫌だった。

今度帰るときには、アリサと一緒に帰ろうと、改めて心に決めたイチカだった。

その後、イチカは久しぶりの我が家の風呂を堪能した。

タイミングよくお風呂が沸かしてあると思ったが、どうやら先にユリスが入っていたみたいで、これはこれでいいタイミングで帰ってきたみたいだ……。

だいたい20分弱……そこまでの長湯ではないが、風呂を堪能し、明日も軍の施設で用事があるため、早めに寝ようとするイチカ。

久しぶりの自室に入り、ベッドで寝ようとするのだが……。

 

 

 

 

「…………なんでこうなるの?」

 

「何が?」

 

「何がじゃないよ義母さん……なんで同じベッドで寝るんだよ……?」

 

 

 

 

寝間着に着替えて、明日も作業があるからと、寝ることにした。

それをユリスに言うと、自分もそろそろ寝ようと思っていたと……。

そこまではいい……しかし何故か、一緒に部屋に入ってきて、同じベッドに横たわってくる。

もう、自然な流れでこうなったので、つっこむのも遅れた。

 

 

 

「いいじゃない……アリサとは、昔こうやって一緒に寝たことあるんだし♪」

 

「俺とはないでしょうっ?!」

 

「固いこと言わないの! 親子水入らずの時間なんだから、誰も文句は言わないわ」

 

「ただ横になって寝るだけだよねっ?!」

 

「別にそれでもいいのよ! 私はイチカと一緒に寝たいのっ!」

 

「子供かっ!」

 

「そう! お母さん、夜は寂しくて寝られないのぉ〜♪」

 

「…………はぁ……」

 

 

 

もうどっちが子供で、どっちが大人なのかわからなくなる。

だがまぁ、久しぶりに会えて、本当に嬉しかったのだろう……。

まぁ明日もあるし、今日ばかりは大目に見よう。

 

 

 

「わかったよ……それじゃあ、電気消すよ?」

 

「はぁーい」

 

「ふっ……」

 

 

 

普段は真面目で、怒ると怖い人なのだが、見るからに子供だ。

電気を消して、毛布にくるまる。

すると、ユリスは楽しそうに微笑みながら、イチカの背中にピッタリと寄り添う。

 

 

「イチカ、明日はどうする予定なの?」

 

「とりあえず、軍の施設でやらなきゃいけないことがあるから、それをやった後は、とりあえず命令があるまでは暇かな?」

 

「そうなのっ? なら、明日は買い物に付き合ってくれないかしら?」

 

「いいよ、お安い御用だ」

 

「ふふふっ、楽しみだわ」

 

「寝られないとか言わないでくれよ?」

 

「うーん、じゃあ、絵本でも読んでもらおうかしら? それか、子守唄?」

 

「子供が親に子守唄や絵本って…………絶対周りから笑われるからやらないぞ?」

 

「えぇ〜?」

 

「えぇ〜? じゃない。ったく、義母さんキャラ変わってるぞ?」

 

「だって……久しぶりなんだもの、あなたがこの家にいるのは……」

 

「っ…………」

 

「今度は、アリサと一緒に寝ようか……な……」

 

 

 

それだけ言うと、ユリスは静かに寝息を立てる。

 

 

 

「寝ちゃったか……」

 

 

 

それほど寂しい思いをさせてきたと言うことだろうか……。

何だかんだ言ったって、まだ16歳のイチカとアリサが、いきなり自分の手元から離れて、MSの乗って戦場に行くなんて、親からしてみればどう映るのだろう……。

親が軍人だったなら、それは立派な事だと褒めてくれていたかもしれないが、ユリスは一般市民。

こうして、普通に生活できたなら、それが一番良いに決まっている。

 

 

 

「ごめんな、義母さん……」

 

 

 

イチカは寝返って、ユリスの寝顔を見ながら、そう呟いた。

伸ばされた右手をイチカは両手で優しく包むように握り、イチカも睡魔に身をまかせる。

そんな中でも、ユリスと交わした新たな約束も、絶対に守ると改めて誓ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

「はぁーい! 行ってらっしゃい!」

 

「特に予定もないし、夕方前には帰ってこれると思うから、終わったら連絡するよ」

 

「わかったわ。気をつけてね?」

 

「はいよ」

 

 

 

 

翌朝。

周りが明るくなら始めている時間に起きた。

他の人たちは、まだ寝ているくらいの時間だろうか……。

そんな時間に、イチカは早速昨日受け取った機体のチェックを始めようとしていた。

いつ命令があってもいいように、早めに準備して起きたかったというのもあるが、内心では心踊っていたのだ。

自分にも、シンと同じ新型機が渡されたのだ……。それも、あのフリーダムとジャスティスの両機の性能を目指した機体が……。

もう16歳だというのに、子供のように興奮している自分がいる……。

タクシーを拾い、軍の施設へと入る。

そこで軍服に着替えて、昨日入った格納庫へと向かう。

 

 

 

 

「ふぅー…………」

 

 

 

格納庫が近づくにつれて、心臓が高鳴る気がした。

それをどうにかして落ち着けて、イチカはついに格納庫に入る。

無重力空間であるため、スムーズに流れて行く体を近くにあった手すりにつかまって姿勢を制御する。

 

 

 

「っ…………ストライクルーチェ」

 

 

 

 

イチカの目の前に佇む灰色の機体。

緑色のツインアイカメラは、紛れもなくインパルスやカオスなどと同じセカンドシリーズの新型機と同じものだ。

イチカは通路を飛び越えて、一直線にストライクルーチェのコックピットへと向かった。

その中に入り、システムを起動させる。

 

 

 

G.eneration

U.nrestricted

N.etwork

D.rive

A.ssault

M.odule Weaponry

 

 

 

ジェネレーション・アンレストリクレット・ネットワーク・ドライブ・アサルト・モジュール・ウエポノリー。

 

セカンドシリーズの機体のOSに記載されている言葉だ。

『無制限のネットワーク駆動世代の強襲モジュール兵装』の意味がある。

実際には『Weaponry』は表示されてないが、かつて何度かカオス、ガイア、アビスのOSを見たことがあるため、ストライクのOSもやはりセカンドシリーズとして共通の物だった。

 

 

(凄いな……改めて見てみると、やっぱりこの機体は、凄い……!!)

 

 

 

ザクウォーリアやザクファントム……それらのOSを見て、チェックなども度々していた。

だからこそわかる……インパルスと同様に、このストライクは凄い性能を秘めている。

背部のバッグパック『ウェポンバインダースラスター』……ジェットエンジン二基と高出力ブースター二基の計四基をメインスラスターとし、その両サイドをアームで繋がれたウェポンバインダー二基が接続されている。

基部にもバーニアスラスターが一基ずつ装備されており、全部で六基のスラスターが、ストライクルーチェの高機動化を担っている。

そして、バインダーの先端部には……

 

 

 

「形状は異なるけど、アビスに搭載されている『バラエーナ改』が四基……。それに、砲身自体が基部で開閉できる可変式機構……なるほど、これでウイングスラスターの代わりをしているのか……!」

 

 

 

基部はアームで繋がれているため、ある程度可動域が設けられている。

バラエーナ改は、砲身であると同時にフォースシルエットの主翼同様に、大型の可変主翼として能力も持っているようだ。

 

 

 

「この砲身の展開における高機動モード……『ハイマットモード』。フリーダムやジャスティスに備わっていた機構か……」

 

 

 

機動力だけではなく、バラエーナ改の誇る攻撃力は、アビスと直接対峙しているため、理解できている。

さらには、ストライクルーチェを近接格闘型の機体だと言わしめる武装。

銃剣一体型武装『クラウ=ソラス』の存在。

白銀の刀身を持つ実体剣型の装備だ。

ジンの重斬刀を元に新造された武装らしく、ビームライフルと実体剣の即時切替が可能だ。

ライフル形態になると、手に持っている柄の部分が折れ曲り、銃形態を取り、刀身が回転して平行になることで、ライフルモードへと移行できる。

また、ビールサーベルの展開も可能なため、PS装甲を持つ機体相手でも遅れをとることはないだろう。

盾は、インパルスが装備しているものと同じ『機動防盾』だった。

おそらく、二刀状態と一刀状態とで、盾の形状を変えて戦うのだろう……。

それに付け加え、バッグパック基部には、フォースインパルス同様に『ヴァジュラビームサーベル』が二基装備され、また腰部のスカートアーマーの後方にも、『ヴァジュラビームサーベル』が二基装備されているため、計六本の近接格闘武器を搭載していることになる。

たしかに、ジャスティスの格闘性能を受けながら、フリーダムの運動性能を両立させていると言える。

 

 

 

「ザクファントムよりも、数倍のパワーがある……! それに、パワーエクステンダーの主動力に、デュートリオン送電システムも可能となると、俺もインパルスの様に戦えるって事になるのか…………」

 

 

 

ザクでは空中戦は向かない。

もしもするとなれば、ベースジャマーに乗らなければ、十分な空力を得られない。

今ミネルバは地球にいる。

もしもこのまま重力下にある地上での戦闘が続くのであれば、空中戦闘ができるのは、インパルスだけだ。

レイ、ルナマリア、アリサはザクに乗っているため、空中戦はできない。

ここにイチカがストライクで加わるのは、ミネルバにとっても有益な戦力となるだろう……。

 

 

 

「これが……俺の新しい機体なんだな……!」

 

 

 

これから先、戦いは激化していくかもしれない。

そんな時に、今度こそ守れる力が欲しかった……これはある意味、運命的な巡り合わせだったのかもしれない。

 

 

 

「頼むぞ、ストライクルーチェ。今度こそ、俺は、俺の大切な物を、絶対守りたい……!!」

 

 

 

そっとシステム画面に触れるイチカ。

その心の内に秘めていた思いを、相棒となる機体に語りかけたのだった…………。

 

 

 




ええ、最後の方にイチカの乗るストライクの簡単な説明をしましたが、あまり想像がつかなかった方もいらっしゃると思います。
ので、簡単に説明します。


機体はそのままストライクです。
変わっているところといえば、腰部両サイドのアーマーシュナイダーを格納する部分が取り外され、『クラウ=ソラス』をマウントするパーツになった事と、本来ストライクに装備されていなかったビームサーベルを装備した事。
あとは、通常のストライクと同じです。
続いてバッグパックは、想像しづらかったと思いますが、簡単に言うと、アメイジングストライクフリーダムのバックパックである『ヴレイブバインダーウェポン』です。
本来ならば、ビームキャノンが二基付いていますが、それを外してビームサーベルをつけた状態……というのが、私の考えたバックパックです。
バラエーナ改は、ストフリのドラグーンと同じ形状のものを使ってはいますが、ドラグーンシステムがあるわけじゃないので、オールレンジ攻撃はできません。
イメージ的には、ダブルオーライザーの様な戦闘イメージです。

本作のイチカなら機体は、ストライクで決めていたのですが、肝心のバックパックをどうしようか、すっごく悩みました。
インパルス同様に、シルエットシステムを使うか……それともフリーダムの様に翼を持たせるか……または、ジャスティスのファトゥム00の様な感じにするか……。
最終的に、ダブルオーライザーのようなイメージで出来るものとして、アメイジングストライクフリーダムを思い出したので、今回はこんな感じになりました( ̄▽ ̄)


と、簡潔に説明しましたが、ちゃんと伝わったかな?


感想よろしくお願いします!


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