機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜   作:剣舞士

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ようやく書き終えた……。


第20話 明日への出航

真夜中の襲撃事件が終息し、一同はもはや廃墟となってしまった邸宅の周りを見て回っていた。

 

 

 

「うわぁ〜……」

 

「またお家なくなっちゃったぁ〜」

 

「オレの部屋どこだぁ〜?」

 

「危ない! ダメよ、そんなところに行っちゃあ!」

 

 

 

 

MSの攻撃に晒されて、シェルターの外壁を壊すほどの集中砲火に見舞われた邸宅は見るも無残な姿に……。

破壊と同時に火災も起こった為、中は所々焼けてしまい、焦げ臭い匂いも。

また、壊された家の家財なども吹っ飛んでいるので、何かの拍子に崩れたり、残り火で爆ぜてしまった時は危険極まりないため、キラの養母であるカリダが子供たちの行動をしっかりと見張っている。

元気一杯な男の子たちと、目の見えないマルキオ導師の側にピッタリとくっつき、共に砂浜をあるいている女の子たち。

ここにいる全員が、キラの出撃によって助けられたのだ……。

そして、当の本人と、その愛機たるフリーダムを隠れて格納していたメンバー達は、格納庫に戻したフリーダムの前に集まり、今回の襲撃事件の事を振り返っていた。

 

 

 

「アッシュ?」

 

「あぁ。まだデータでしか見たことがなかった機体なんだがねぇ……。

最近ロールアウトしたばかりの機体だったはずで、まだ正規軍しか持っていないと思うんだが……」

 

「ならば、ますますあの襲撃者たちは、ザフトの特殊部隊であるという事が分かるわね……でも、だからこそ分からないことが……」

 

「あぁ……そんな連中が何故……」

 

「何故、ラクスさんを襲ったのか……」

 

「「っ…………」」

 

 

 

バルトフェルドとマリューの二人で考察しながら話している。

その二人の視線が、まっすぐラクスに集まり、ラクスもまた謎めいた恐怖と不安を、その身に受けていた。

そんな彼女の肩を、キラは優しく抱きながら自身に引き寄せた。

 

 

 

「どうも胡散臭くなってきたぁ〜……これじゃあ、プラントへお引っ越しって言うのも、改めなきゃならなくなったかな?」

 

 

 

襲撃者の目的がなんだったのかは分からないが、それでもラクスが撃たれたとあっては、疑念が膨らむばかりだ。

彼女はプラントとっては象徴的な存在だ……。その言葉や行動が、民衆の動きや考え方を変えるほどの影響力を持っている。

平和の象徴であり、先の大戦ではザフト・連合との血みどろな戦火を止めようと、クライン派と呼ばれる第三勢力として終結に尽力したことが、民衆達の中では更なる美化を生んだのだろう……。

だからこそ、今回の襲撃はおかしいと思うのだ……。

 

 

 

 

「でも、これからどうしましょうか……」

 

「とりあえず、子供達は次の隠れ家へと移すとして……俺たちはどう出るよ……?」

 

 

 

軍人であるマリューとバルトフェルドが話を進める中、海岸沿いを探索していた子供達の元へ、ある女性が現れた。

 

 

 

「まぁ〜! まぁ〜まぁ〜!!」

 

「「「んっ?」」」

 

「だれぇ〜、あのおばさん……?」

 

「あなたは、マーナさん?」

 

「ああっ! カリダ様! 良かったです! しかし、これは一体……?」

 

「えっと、詳しい事はわからないんですが……えっと、ご用があったのでは?」

 

「ああっ!? そうでした! このマーナ、カガリ様より文を預かってきておりまして……その、キラ様達は?」

 

「えっと、あの家の奥に……」

 

 

 

カリダが指差す先には、破壊された家と、その奥にある格納庫。

その後、子供達とともに歩き出した女性……マーナは、カガリの世話をする侍女である。

少々ぽっちゃりとした体型ながら、優しい性格の持ち主であり、幼少の頃からカガリの事を見てきた人物でもある。

子供達の先導で、マーナは格納庫の前まで歩いていく。

 

 

 

「まぁ〜! まぁまぁ〜!!」

 

「「んっ?」」

 

「えっと、マーナさん?」

 

「っ!? キラ様!!」

 

 

 

格納庫前で四人で話し合っていたところへとマーナが現れる。

そして、用件であった手紙を、キラに渡した。

 

 

 

「これを……カガリお嬢様から、キラ様にと……」

 

「えっと、カガリは?」

 

「カガリお嬢様は、もうこちらへは自由に行き来できなくなってしまいましたので……マーナがこっそりと、その手紙を預かってまいりました」

 

「えっ?」

 

「どう言うことですか?」

 

「カガリさんは、ご病気なのでしょうか?」

 

 

 

マーナの言葉に、一番付き合いの長いキラ、マリュー、ラクスが心配になって問いただす。

 

 

 

「いいえ、お嬢様自身は元気でいらっしゃいますよ? ですが、セイラン家との結婚が決まり、急遽あちらの家に入られて、身動きが取れなくなってしまいまして……」

 

「「「「えええええっ!!!??」」」」

 

 

 

結婚……。

その言葉を聞いて、四人はとんでもなく驚いた。

無論、カガリが幼少の頃より、セイラン家の嫡子ユウナ・ロマ・セイランと婚約する間柄だと言うのは知っていたが、それでもカガリには、アスランという想い人がいる。

それに、カガリもユウナの事を少々苦手としているのは知っていたし、何せ大西洋連邦から提示された世界安全保障条約機構に加盟すると宣言したのがつい先日だ。

これはあまりにも早すぎる展開だと思ったのだ。

キラはマーナからもらった手紙を開き、中に書いてあったカガリからのメッセージを朗読する。

 

 

 

 

キラ、急な手紙ですまない。

本当はちゃんと会って、相談したかったのだが、どうやら、それも叶いそうにない。

知っていると思うが、オーブは大西洋連邦から提示された世界安全保障条約機構に参加する事を表明した。これでオーブは中立ではなくなり、地球連合軍の側についたことになる。

オーブはその理念と戦力をもって、今まで平和の国を築いてきたが、それも、今では難しくなってきつつある。

私も頑張って、色々と足掻いてみたが、オーブの今後の事を考えて、こういう結論に至った。

色々と考えて、思案してみたが、オーブがこの先、生き残っていくには、大西洋連邦との条約を交わす必要がある……もう二度と、オーブを戦火に巻き込まないためにも、私は決断した。

私は、ユウナ・ロマと結婚する。

同封した指輪は、アスランからもらったものなんだが、もう持っていること出来ないし、取り上げられるのも嫌だ。

だけど、今の私には、捨てることも出来なくてな……。あいつが帰ってきたら、お前から渡してほしい。

本当にすまん、ごめん……。

本当は相談もなしに、こんな事、嫌なんだけどな……。

この先、オーブがどのような行く末を辿るのかはわからないが、私は、私の信念に賭けて、このオーブという国を、皆が平和に暮らせる様に守っていく。私も頑張っていくから……。

 

 

 

 

「っ…………」

 

 

 

カガリからの思いが書き記された手紙。

同封されていた指輪を右手の手のひらに乗せ、じっと見つめるキラ。

恐らくは、アスランもわずかながらの抵抗という意味で渡したのかもしれない。

オーブへ来てからというものの、元ザフト軍であり、前議長パトリック・ザラの息子であるということもあり、オーブの行政府の幹部メンバーからは、あまりいいように思われていなかったのは知っている。

アスランという本名を隠し、アレックスとして生きていくと決めた彼の心情はどういうものだったのだろうか……。

しかし、たとえどんな姿であっても、今はカガリのそばにいて欲しかったと言うのが、キラの本音でもあった。

自分もカガリの事を助けてやりたいという気持ちもあったが、所詮は一国民……政治の世界で動く手腕があるわけでもない……。

 

 

 

 

「っ……カガリ……!」

 

 

 

だが、キラのその目は、まだ諦めの色は浮かんでいない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

オーブ国内は、代表であるカガリの結婚というめでたい話で盛り上がっていた。

オーブの庁舎は勿論の事、そこから結婚式を執り行う神聖な祭壇へ行くまでの道のりには、沢山のオーブ国民が集まっていた。

そんな中、カガリは純白のドレスに身を包み、新婦が被るヴェールから覗く表情からは、とても晴れやかな表情などなかった。

結婚すると決意を決めたものの、いざとなると心にはまだ迷いがあった。

オーブにいた頃は、父であるウズミの言葉と行動の違いに、腹ただしく思っていた……。

平和を愛するがゆえに、中立という形でオーブを導いてきたが、その実、裏では資源衛星コロニー《ヘリオポリス》にて、連合国の開発した新型MSの開発に協力をしていた。

そのことが許さず、開発を止めるために単身ヘリオポリスへと向かい、そこでキラと出会った。

そんな時にアスランたちザフトの強奪部隊が強襲。

ヘリオポリスは完全に崩壊した。

その後、アークエンジェルが宇宙から地球へと降下し、アフリカのサハラ砂漠に不時着。

そしてカガリもまた、その時はサカキとともにレジスタンスとして活動していた。

その理由は、他でもないウズミから言われた一言だった。

 

 

ーーーー戦争の芽を学べ、カガリ。

 

 

その言葉の通り、カガリは武装勢力へと協力し、ザフトの地上部隊を率いていたバルトフェルドと対立していた。

その後、バルトフェルド達を退けたアークエンジェルは、アスランたち強奪機部隊から再三にわたる攻撃を受けながらも、無事にオーブへとたどり着き、そのまま数日滞在することに……。

その前に、カガリはアスランと出会っていた。

水中型MSグーンと飛行型MSディンの空水両方面から強襲されていた時だった。

ムウとともにスカイグラスパーに乗り、敵母艦を強襲しようとしていた時に、母艦の撃沈には成功したものの、カガリの搭乗機は被弾し、アークエンジェルへと帰投する途中アスランが載っていた輸送機と遭遇……。

ともに不時着し、同じ島に上陸していた。

それも今では運命だったのかもしれないと思う。

互いに敵同士で、銃を向けあっていた二人。

だが、アスランの圧倒的な身体能力の前に、カガリは成すすべなくと囚われてしまうが、状況が状況だったため、武装を解除されると、誰もいない無人島で二人っきり夜を明かした。

 

 

 

ーーーーお前っ!

 

ーーーーご、ごめんっ! でもっ、アレはまた、地球を攻撃するんだろっ!!?

 

ーーーーっ……?

 

ーーーー人を殺すんだろっ!!?

 

ーーーー…………なら撃てよ……その引鉄を引いているのは俺だ

 

ーーーーくっ……!!

 

 

 

 

オーブの技術協力によって作られた新型MS『G兵器』。

その内の一機である『イージス』に、アスランは搭乗していた。

そんな機体に乗って戦うアスランと、平和の国で育ち、地球を攻撃することをやめさせたいカガリ。

立場の違う二人は言い争って、少しだけ互いの思いの丈をぶちまけた。

そして、朝が訪れて……二人の救援に来たニコルとキラの元へ帰ろうとした。

 

 

 

ーーーーカガリだっ!! お前はっ!?

 

ーーーー……アスラン!!

 

 

 

 

地球軍でもないのに、カガリはザフトと戦っている。

そしてそれは、当時アスランたちと対立していたキラも然り。

そんな者たちのことを思い、アスランも複雑な心境だった。

しかし、その後に起きた出来事が、そんなアスランの心境を粉々にぶち壊した。

それは当然、仲間だったニコル・アマルフィの死だった。

それも、親友だったキラの手によって……。

二人は壮絶な戦いの果てに、イージスは自爆し、ストライクはその衝撃によって機体を損傷。

調査に来ていたカガリたちオーブ軍の手によって、ストライクは回収されて、カガリ達は浜辺に打ち上げられていたアスランを見つけた。

そして、そのアスランの口から、キラを殺したという言葉を聞いた…………親友で、幼馴染である事も……。

それ故に、カガリは信じられなかった……そんな間柄にある二人が、なぜ殺し合わなきゃいけないのか……と。

 

 

 

 

ーーーーあいつはニコルを殺したッ!! ピアノが好きで、まだ15で……それでもプラントを守ろうと必死に戦っていたあいつをっ……!

 

ーーーーキラだってっ、守りたいもののために戦っていただけだっ! なのにっ、なんで殺されなきゃならないんだっ! それも、友達のお前にっ!

 

ーーーーっ〜〜〜〜く、くうぅっ…………!!!

 

ーーーー殺したから殺されて、殺されたから殺してっ……それで最後は平和になるのかよっ!! ええっ?!!

 

 

 

その時、アスランは答えることができなかった。

ただ、軍の命令に従って戦い、自分の仲間や家族、住んでいる場所を守れれば、それでいいものだと思っていた。

しかしそのために、親友に銃を向ける事が、本当に正しいのか……?

戦争に対する認識が、この頃から少しずつ変わって来ていた。

何のために戦い、それによって何を得るのか……?

戦うという行為は、一体何のためにしているのか……?

根本的な問題に、アスランは直面していた事だろう。

そんな昔の思い出が、今のカガリの脳内に不意に浮かび上がった。

 

 

 

「カガリ様、お時間です……よろしいでしょうか?」

 

「っ…………!」

 

 

 

外から声をかけられて、気を引き締め直すカガリ。

たとえ望まぬ者との結婚だったとしても、それで、オーブを守れると言うのならば……。

外に出たカガリは、侍女達に連れられて階段を降りていく。

下では、同じように身支度を整えていたセイラン家の者達が集まっていた。

皆、カガリのドレス姿に色めき立ち、わあっと驚くような声を漏らす。

普段は凛として、軍服や政務を行う時の制服を身にまとっているカガリだが、元々の美形な顔と、整っているスタイルが、ドレスを着飾る事で一層強く際立っているのだろう。

階段を降りてすぐに、これから自分の夫となるユウナがカガリに近づいて来た。

 

 

「準備できたんだね、カガリ」

 

「…………」

 

「うーん、やっぱり君にそのドレスは似合っているねぇ〜、綺麗だよ?

ただ、髪はちょっとねぇ〜……今後は伸ばすといいよ、僕はその方が好きだからね」

 

「ふん…………」

 

 

 

まるでマニュアルを読んでいるかのような褒め言葉。

ユウナの目には、本当にカガリを愛していると言うような感情が見えてこない。

どちらかと言えば、ようやく自分の物にできた……と言うような、勝ち誇ったような嫌な目だ。

二人セイラン家を出て、玄関に要されていた白いリムジンに乗り込む。

すでに道に沿って多くの関係者や国民が、ずらっと並んでおり、車が走り出すとそれに合わせて歓声をあげる。

誰もが皆、カガリの結婚を祝福しているのだろう。

国民にとって、カガリとは自国の顔……それも、18歳の少女でありながら、国という重い物を背負ってより良い国にと、日頃から尽力を惜しまない。

そんな姿が、国民の目にも見てとれているためなのか、皆カガリのことを信頼し、心の底から喜んでいるのだ。

カガリ様、おめでとう……と……。

 

 

 

「ほら、カガリ……」

 

「え?」

 

「ちょっとは国民に対して応えてやってもいいだろう……今は国民も、マスコミも大勢来てるんだ……」

 

「あ、あぁ……」

 

「元気がないな……体調でも悪いのかい? それとも喉が渇いたのかな……何か飲むかい?」

 

「いや、いい……心配するな……」

 

「…………はぁ〜……」

 

 

 

ユウナはおもむろにため息をつくと、リムジンのドアに隠れていた小さな冷蔵庫からグラスと酒、氷を取り出し、自分用の酒をそそぎ入れる。

そして徐に不機嫌な口調でこう言った……。

 

 

 

「『いいえ、大丈夫です。心配いりませんわ』……だろ? しっかりしろよ……ったく……」

 

「っ…………」

 

「僕たちの行動は、今後のオーブの未来とも言っていいんだよ? 今は情勢が不安定なせいで、国民もみな動揺している……そんな時に僕たちの結婚というめでたい報告ができるんだよ?

もう少し愛想良くできないもんかねぇ〜……」

 

「………………」

 

 

 

ユウナの言葉はたしかに正しい……。

それは、カガリも覚悟を決めてのことだった筈だ。

しかし、自身の中に、それを認めないとする存在がいるのも、確かだった……。

 

 

「っ…………」

 

「カガリさまぁ〜〜!!!」

 

「おめでとうございますぅ〜〜〜!!!」

 

「キャアァァァーー!!! 素敵ぃ〜!!!」

 

「ぁ…………」

 

 

沿道からかけられる声。

国民はみな、この結婚が一体どういう意味を持っているのか、そんなこと知るはずもない。

だが、その歓声は、心の底から喜んでいると分かるほど、歓喜に満ちていたのだ。

そんな国民からの歓喜の声が、再びカガリの思い出を呼び覚ます。

 

 

 

ーーーーどうあって世界を二分したかっ! 大西洋連邦はっ! 彼らは敵だからとっ! 我々オーブは、連合の言う敵と言う者たちを、ただ討ち亡ぼすだけの存在に成り下がるのかっ!!

 

 

ーーーーさすが綺麗事はっ、アスハのお家芸だなっ!!

 

 

ーーーー想いを継ぐ者無くば、全て終わりぞっ!! 何故それがわからんっ!!

 

 

ーーーー俺の家族はっ、アスハに殺されたんだッ!!

 

 

ーーーーあなた達の理想の過程で、失った人たちがいる事をもう少し考えなさいよっ!!

 

 

ーーーー何もわかってない様な奴にっ、偉そうな事言わないでもらいたいねっ!!

 

 

ーーーーカガリに会えて、本当に良かった……。

 

 

ーーーー君は、俺が守る……!!!

 

 

 

 

全ての記憶が、走馬灯の様にカガリの脳内を駆け巡った。

父から学び、戦場に出て体感して、最愛の人と出会った。

しかし、その理想の果てに、失った物も確かにあった。

自分の父、家族同然だった氏族の長たち、MSに乗って共に戦い、戦場に散って行ったかけがえのない友達。

そして、唯一抱いていた理想のために、家族を失った者たちからの恨みや憎しみ……それらの最終たる怨恨、憎悪といった感情を見せられた。

これで正しかったのか……これでオーブは良かったのか……世界は、どうなっていくのか……。

何もわからない……自分には、何の力もない……ただただ無力な自分に、喜びの声をかけてくれる国民の優しさや、愛しさがこみ上げてきて、これまでの思い出と共に、カガリの心に突き刺さる。

カガリの目からは涙が溢れて、笑顔とも泣き顔とも言えない、憂いを帯びた表情。

そんな思い出に浸っていると、リムジンは式の会場へと到着。

ユウナから先に降りて、続いてカガリ。

純白のタキシードを着込んだユウナと、清廉なドレスに身を包むカガリの姿に、式場にも押し寄せていた国民たちの歓声が上がる。

カガリは頬を伝う涙を指で拭い去って、毅然と振る舞おうとするが、そんなカガリにユウナが声をかける。

 

 

 

「嬉し泣きだろうね……その涙は……」

 

「っ……ふんっ…………」

 

 

 

澄ました顔で悠々と話しかけてくるユウナに、カガリはそっぽを向いた。

とてもじゃないが、これから結婚して夫婦になる様な二人には見えなかった。

おそらく、ユウナはカガリのことなんて愛してはいないだろう。

ただ、自分にとって都合のいい操り人形が手に入ったと思っているはずだ……。

何せ、相手は国家元首だ。

立派な代表と言っても中身はまだ18歳の少女だ。

大人たちの複雑な思惑が渦巻く混沌とした世界をまだ充分には知らない……。

だからこそ、自分が導くんだといい、都合のいい傀儡にしてしまおうと……。それを分かっていても、国のことを考えれば、そうせざるを得ないと言う考えに至ったのだが……。

 

 

 

 

 

一方、カガリ達がセイラン家から出て、リムジンでオーブの主街区を移動している時だった……。

オーブの某所、昨晩MSアッシュによって壊滅的被害を被ったキラたちの居住地区では、マリューとキラが、どこかの地下施設へと入っていく。

地上から地下へと進むエレベーターの中で、二人は話していた。

 

 

 

「本当に……こうするしか、道はないのかしらね……」

 

「わかりません……正直言って、僕だって、何が正しいのかなんて、全然わからないんです……けれどーーーー」

 

 

 

キラの発する言葉……その口調には、確かに迷いがあった……しかし、どことなく覚悟を決めたと言わしめるような、そんな雰囲気を纏っていた。

エレベーターがようやく止まり、扉が開いた。

そして二人の視界に現れたのは、巨大な白と赤の戦艦だった。

マリューとキラにとって、その戦艦は命を預けた戦友とも言える存在。

幾多の混戦をかいくぐり、激戦を耐え抜き、先の大戦を生き抜いた大天使。

アークエンジェル級一番艦『アークエンジェル』。

大戦後は、そのままオーブの領内へと保管されていたが、軍部の中でもアークエンジェルのことを知っている人間は少ない。

一部の……カガリ達の息のかかった面々にしか、その所在を明らかにしていなかったのだろう。

今再び、目の前の艦に乗ろうとしている。

再びその手に剣を握り、混沌と化す前に、世界をあるべき日常に戻すために……。

 

 

 

「諦めちゃったら、ダメでしょう? 間違ってるって……わかっているのに、止めないのは……ダメでしょう?

間違って進んでいった先が、どうなったのか……僕たちもう、知っている……」

 

「…………」

 

「だから、止めなきゃいけない……っ! また、あんなことになる前にっ……」

 

「…………ええ、そうね」

 

 

 

 

そうだ……間違ってしまっていた……。

二年前の大戦……それを、繰り返さないために……。

するとまた、二人が使っていたエレベーターが動いていて、再び地下区画で止まる。

その扉が開いた瞬間、二人の男性の姿が見えた。

それも、とても懐かしい人物二人だ。

 

 

 

「「ぁ……!」」

 

「よぉ! 久しぶりだな坊主、それに、艦長も……!」

 

「お久しぶりです、お二人とも」

 

「ノイマンさんっ……マードック曹長……!!」

 

「お久しぶりね、二人とも!」

 

 

 

アーノルド・ノイマン。

かつてアークエンジェルの操舵士として乗艦していた軍人だ。

その操縦の腕は卓越しており、アークエンジェルの『不沈艦』という異名をつけるに至った功労者の一人だ。

そしてもう一人……。

コジロー・マードック。

アークエンジェルの整備士長。

職人気質の叩き上げ軍人という印象が強く、キラやアスラン、カガリとも親しみを持って接してくれていた、良き理解者、人のいい大人……と言ったところだろうか。

この二人も、キラとマリューの二人が信頼を置いているメンバーだ。

 

 

 

「呼びかけに応じてくれて、ありがとう……! でも、本当にいいの? 二人とも……その、また戦場に出ることになるけど……」

 

 

 

そう言ったのは、艦長として共に過ごしてきたマリューだった。

まぁ、彼女の気持ちもわかる……ようやく手に入れた平和……仮初めのものだったとしても、かつては何度と死線をかいくぐらせてしまった……。

そんな彼らに、もう一度戦場に戻ってくれた頼むのは、本当のところ、心配だったのだ……。

しかし、そんなマリューの問いかけに、二人は何を今更と言った感じで言い返した。

 

 

 

「おいおい、そりゃあ今更ってやつだぜ? 艦長……」

 

「自分も、正直いまの情勢には、不信感を持っていましたから……また、同じ艦で戦えること、光栄ですよ」

 

「そうだぜ……っていうかよ、声かけるのが遅ぇのよ。しかも何だぁ〜? アスハの嬢ちゃんはいきなり結婚ときたもんだ……おい、坊主っ、お前さん聞いてなかったのか?」

 

「ええ……まぁ……僕も、昨日知ったばかりなので……」

 

「やれやれ……。まぁ、どの道オーブが世界安全なんちゃら条約に入っちまった以上、プラントとの関係性は悪化するだろうな……そうなりゃあ、中立国じゃ無くなったオーブは……」

 

「戦場にもなりかねませんからね……また……」

 

 

 

ノイマンの言葉に、その場の全員が空気を重くした。

 

 

 

「まあ、なんだ……またよろしくだ、お二人さん!」

 

「ええ……!」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

「ふっ……それでは、我々も準備してきます」

 

 

 

そう言って、ノイマンとマードックは艦内へと入って行った。

それを見送った後、マリューとキラも艦内に入っていき、用意していた軍服に着替える。

かつては、地球連合軍の制服だったのだが、今もう違う。

アークエンジェルは、あの大戦後、正式なオーブの戦闘艦として登録していた為、今はオーブ軍の制服に袖を通す。

そして、マリューはブリッジへ、キラは、外でアークエンジェルの発進準備の様子を見ていたカリダとマルキオ、子供達の元へと向かっていった。

 

 

 

「さぁ〜てと、耐衝撃ダンパーっ、70パーセントでホールド! 各部武装、異常なし! 生命維持装置っ、正常に作動中!」

 

「各所ステーション、発進準備よーし!」

 

「対空装備のチェック、重点的お願いします!」

 

 

 

ブリッジでは、バルトフェルドを始め、ノイマンたちクルーたちも発進準備を急いでいた。

そんな中、制服に着替え終わったマリューは、艦長席の付近でせっせと準備を進めていたバルトフェルドの後ろ姿を見ていた。

 

 

 

「あのー……バルトフェルド隊長?」

 

「んー?」

 

「そのぉ〜、やっぱり、こちらの席に座りません?」

 

 

 

そう言って、マリューは自身の隣にある艦長席を手で示した。

 

 

 

「いやいや、元より人手不足のこの艦だ……それに、状況によっちゃあ僕は出ちゃうしねぇ……やっぱりそこはあなたの席でしょう…… “ラミアス艦長” !!」

 

 

バルトフェルドの言葉に、その場にいたクルーたちは皆、優しい微笑みで迎え入れる。

そう、アークエンジェルの……不沈艦と言われた大天使の主人は、やはり彼女なのだ……。

 

 

 

「ふふっ……では、改めて……みんな、よろしくね!!」

 

「「「「はい!!!!」」」」

 

「アークエンジェルっ、発進準備!!」

 

「了解! アークエンジェルっ、発進準備!!」

 

 

 

着々と準備が進められていく中で、キラはカリダ達としばしの別れを告げていた。

 

 

 

「母さん……ごめん、僕はまた……」

 

「いいのよ……あなたが決めた事だもの……でも、これだけは忘れないで……」

 

「ん……?」

 

「あなたの家は、ここにあるわ……だから、ちゃんと帰ってきてね……!」

 

「母さん……!」

 

 

 

抱き合った二人は、約束を交わした。

その後、キラはアークエンジェルへと乗艦し、全てのクルーが乗り込んだことを確認して、アークエンジェルの格納庫に海水が流れ込む。

 

 

 

 

「注水、始め!」

 

「注水っ、始め!」

 

 

格納庫内がすべて海水で満たされていく。

 

 

 

「50……70……注水率、100パーセントに到達、120……」

 

「アークエンジェル、迎撃システム稼働率異常なし……ラミネート装甲内通電完了……」

 

「各セクション問題なし、アークエンジェル、全システムオールグリーン」

 

「注水率、180……190…………フルゲージっ!」

 

「メインゲート開放……!」

 

「メインゲート、開放!」

 

「拘束アーム、解除」

 

 

 

目の前のゲートが四方斜めに広がっていき、目の前に進路が現れた。

アークエンジェルの船体をつなぎとめていた大型の拘束アームが外され、海中に浮くアークエンジェル。

 

 

「アークエンジェル、機関始動を確認」

 

「機関出力20パーセント! 前進微速」

 

「機関、出力20パーセント! 前進微速!」

 

 

ノイマンがエンジンレバーを起こし、全体の20パーセントの速さでアークエンジェルは前方の水路へと向かって進んでいく。

その側では、アークエンジェルの発進を見守るカリダとマルキオ、そして子供達の姿が……。

 

 

 

「水路離脱後、上昇角30、海面を出たと同時に、機関最大!」

 

「了解!」

 

 

ゆっくりと進んでいくアークエンジェル。

そして、大きな岩肌に偽装して作られていた発進口から、アークエンジェルの姿が見えると、一気に海面から飛び立つために、上昇角を開けていく。

上へ上へと登っていくアークエンジェルはやがて海面に接する程までに上がってきた。

水しぶきが上がり、空の青さと太陽の光が差し込んできた……。

それを合図とするように、マリューは高らかに宣言した、

 

 

 

「離水ッ! アークエンジェルッ、発進っ!!!!!」

 

 

 

バーンッ、と大きく跳ね上がる水しぶき。

海面から飛び出した大天使が、再びその翼を広げ、大空に向かって飛び立った瞬間だ。

太陽の光が反射し、その白い巨体を輝かせる。

こぼれ落ちる海水がキラキラと煌めくその絵面は、どこかの絵画にでも出来るような光景でもあった。

飛び立ったアークエンジェルは、そのままオーブ本島のカガリがいる結婚式会場へと向かう。

一方でカタパルトデッキでは、搭載したキラのフリーダムが、発進準備を行なっていた。

 

 

 

『まぁ、お前さんの事だから心配はいらねぇと思うが、気をつけて行けよ?』

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 

 

一新された新しいオーブ軍のパイロットスーツ。

それのキラをイメージしたカラーバリエーションである青と赤のラインが入ったスーツ。

それに身を包んでいるキラは、着々とフリーダムの発進準備のためのシステムを構築していた。

今アークエンジェルに搭載しているMSはとても少ない。

キラのフリーダムに、バルトフェルドが乗る専用のムラサメが一機、そして、カガリの専用機であるストライクルージュ。

この三機だけだ。

そして、全ての準備が整った。

安定飛行を続けているアークエンジェルの右舷カタパルトデッキが稼働し、MS発進の準備を整えた。

 

 

 

 

「フリーダム発進、よろしいですわ」

 

「了解! キラ・ヤマトッ、フリーダム、行きます!!」

 

 

 

 

高速で射出される機体。

発進と同時にPS装甲が展開され、青い翼に、白い装甲を浮かび上がらせた自由という名の天使が、オーブの主街区の上を目指して、超高速で飛行する。

一方で、自国の代表とその補佐との結婚というこの日に、いつも以上にピリピリとした雰囲気に包まれている国防本部では、オーブ領海内に突如として現れた戦艦と、そこから出てきたMSの反応を捉えて、パニックを起こしていた。

 

 

 

「班長!」

 

「ん? なんだ?」

 

「オーブ領海内に、所属不明の戦艦が……!」

 

「なにっ!? すぐにスクランブルを発動させろっ! 今はカガリ様の式が行われているのだぞ! すぐさま敵を捉えろ!」

 

 

 

 

ーーーースクランブル発令! スクランブル発令! Unknownが接近中! 繰り返すUnknownが接近中!

 

 

 

「Unknownって言ったって……これ、アークエンジェルだよな?」

 

「あぁ……それにフリーダムだ」

 

 

 

国防本部のオペレーター達の中には、アークエンジェルとフリーダムの存在を知る者は多い。

故に、アークエンジェルが正式なオーブ軍の戦艦登録をしていなかったとしても、敵であると認識することはまずなかった。

そして、すでにオーブ本島の主街区の上を通り過ぎていくフリーダムもまた、自国を守って戦った英雄として映っている者が多い。

そんなアークエンジェルとフリーダムが危険のあるUnknownだと言われても、どこかしっくりこない……。

しかし、一応はスクランブル警報が発令されているため、MS部隊も出動しないわけにはいかない。

オーブの新型量産機《ムラサメ》が発進して、すでにその場から遠く行ってしまったフリーダムを追いかけるようにして飛んでいく。

 

 

 

「アマ姉っ! スクランブルだって! 出なくていいのっ?!」

 

「無茶言わないでよぉ、私の機体だって、まだ全部の整備終わってないんだよ?」

 

「うぅ……私のも、まだかかりそうだから出られそうにないし……」

 

 

 

一方、MSの格納庫付近では、ある姉妹がそんな会話をしていた。

同じ艶やかな黒髪。姉の方が長くて、妹は短い。

この二人がのちに、イチカ達の好敵手になるとは……この時は、誰も知らなかった……。

そして、フリーダムはそんな軍部の対応に気にすることなく、オーブ本島の市街を抜けて、一気に式場へと向かう。

それを追う形で、新型量産機『ムラサメ』二機が発進して、オーブ領海で佇んでいるアークエンジェルに対しては、護衛艦軍が出動。

アークエンジェルを包囲しようと動いていた。

一方、そんな事態になっていることに気づいていないカガリ達、式の現場にいる関係者各位は、いよいよ大詰めとなっていく式に集中していた。

 

 

 

 

「今ここに、改めて問う。互いに誓いし心に、偽りはないか……?」

 

「はい」

 

「…………」

 

 

 

神父からの投げかける言葉。

結婚式ならば誰もが聞く言葉だろう……。

互いに助け合い、愛し合うこと……その心に誓いの言葉を秘めて、改めて神に婚儀を納める。

しかし、その言葉に、カガリからの返事はなかった。

ユウナの即答とは裏腹に、カガリは未だに捨てきれずにいるのだ……アスランのことを。

しかし、そんなカガリの思いに応えるように、式場が急に慌ただしくなってきた。

 

 

 

 

「ダメですっ! 軍本部からの迎撃、間に合いませんっ!!」

 

「市民の避難とっ、カガリ様をっ!!」

 

「敵機っ、急速で接近中!!」

 

「え…………?」

 

「な、なんだっ?!!」

 

 

 

 

祭壇の下層で、慌ただしく動き回るオーブ軍の将校達。

そしてその声は、上層部にいたカガリとユウナ、神父たちの耳にも届く。

 

 

 

「カガリ様を守れっ! 迎撃っ、迎撃ぃぃぃッ!!!!」

 

 

 

指揮官の指示に従い、式場に護衛として立っていた四機のM1アストレイが、一斉に上空に向けてビームライフルを向ける。

だが、その引き金を引くよりも早く、相手側から放たれたビームが銃身や右手そのものを撃ち抜く。

 

 

 

「きゃあああっ!!!!?」

 

「退避っ! 退避ぃぃぃっ!!!」

 

 

 

突然の急襲に、慌てふためく式の参加者たち。

そんな会場に、一機の天使が舞い降りた。

蒼い翼を羽ばたかせて、カガリたちの立つ祭壇の前へとゆっくり降りてくる。

 

 

 

「っ!!!? フ、フリーダムゥっ!!!?」

 

「ひ、ひいぃぃ〜〜!!! カ、カガリィ〜〜!!!」

 

 

 

フリーダム……その機体は、すでに大破して、その後どうなっていたのかはカガリも知らなかった。

それが今この場にいて、それを扱うパイロットなど、容易に想像できた。

カガリはその場で立ち尽くし、ユウナはなんとも情けない悲鳴をあげると、まるでカガリを盾にするようにフリーダムから隠れようとする。

そして、降り立ったフリーダムは、ライフルを腰にマウントすると、空いた両手をゆっくりとカガリの元へと動かす。

 

 

 

 

「ひ、ひひぃぃぃ〜〜〜!!! うわぁはあぁぁぁぁっ〜〜〜!!!?」

 

「うっ……?!」

 

 

 

 

大きな機械の手が迫り来るその光景は、なによりも圧倒されそうなものだ。

そんな圧力に耐えかけたのか、ユウナは即刻その場を離れて逃げる。

新婦になるはずのカガリを置いて……。

そして、フリーダムの両手がカガリを包み込むように握ると、そのままカガリを持ち上げる。

 

 

 

「おいっ、何をするっ?!! こらっ、キラァっ!!」

 

「ふふっ……」

 

 

 

まるでイタズラをした弟、それを叱りつける姉……という構図にも見えるが、キラはカガリからの言葉をそのまま流して、振り向くと、フリーダムの翼を大きく広げ、その場から飛び立った。

 

 

 

「なっ、何をしているっ!! は、早く撃てっ、馬鹿者っ!!」

 

「っ!!?」

 

「カ、カガリはっ、カガリはぁ〜〜っ!!」

 

 

 

その場にいた将校に食ってかかるように懇願するユウナ。

 

 

 

「は、はい! いえっ、しかし、下手に撃てば、カガリに当たる可能性がっ……」

 

「へぇ……っ?!」

 

 

 

そう……すでにカガリはフリーダムの手の中にある。

それはつまり、人質を握られているのと同じだ……それもカガリは、自分たちの国の長……国家元首だ。

いくら助けるためとはいえ、銃でも撃とうものなら、最悪銃弾がカガリに当たってしまう可能性が高い。

すでにカガリを捕らわれてしまった時点で、オーブ軍のできることは無くなっていたのだ。

 

 

 

「くっ、うう、うううぅぅぅ〜〜〜〜っ!!!!!!」

 

 

唇を噛み締めて、言葉にならない言葉を垂れ流すようにして唸るユウナ。

その場にいたのは、大事な花嫁を奪われた、哀れな男の姿だった。

 

 

 

 

 

「おいっ、降ろせっ!! 何をやってるのかわかっているのかっ、お前はっ!! おいっ、降ろせったら、キラァッ!!!」

 

 

 

一方、フリーダムの手の中に収まっているカガリは、あまり身動きが取れないにもかかわらず、必死にキラへの抗議を続けていた。

式場から飛び立った後、同じように式場から飛び立った白い鳩たちと共に、優雅に海の上を飛行している。

そんな時、フリーダムのコックピットに、警告音が鳴り響いた。

 

 

「ん?」

 

 

キラは確認すると、今まさに出撃したムラサメ二機が、フリーダムの前方からやってくるのが見えた。

 

 

 

『カガリっ、ちょっとごめん!』

 

「あうっ……!」

 

 

 

キラの言葉の後、急にフリーダムの両手が動く。

両手をコックピットの方へと移動させると、コックピットが開き、中からシートに座った状態で現れたキラ。

 

 

 

「さあっ!」

 

 

 

両手を伸ばしてくるキラ。

おそらく、コックピットの中へと誘導するためだろう……。

カガリも両手を伸ばし、なんとかキラの手を掴む。

するとフリーダムの両手が離れていき、カガリはキラの胸元へとダイブ。

そのまま受け止めたキラは、シートに付属しているボタンを押し、再びコックピットの中へと入った。

 

 

 

「うわあっ! すごいねっ、このドレス……!」

 

「っ〜〜!!! お前なぁっ……!!」

 

「ちょっとごめん……少し黙ってて、カガリ。掴まっててよっ!!」

 

「うわぁっ?!」

 

 

 

 

カガリの無事を確認して、キラはフリーダムをさらに加速させる。

すると目の前からやってくるムラサメから、通信が入ってきた。

 

 

 

『フリーダムっ、直ちに着陸せよ! フリーダムっ、直ちに着陸せよ!!』

 

 

 

当然、ムラサメから撃つことはできない。

 

 

 

「ごめんね……」

 

 

 

キラはそういうと、一気にフリーダムのブースターを噴かせて、ムラサメ二機に肉薄する。

そして、ビームサーベルを抜き放つと、すれ違いざまに二機のムラサメの主翼を斬り裂く。

主翼の片方を斬られたムラサメ二機は、体勢を崩して、海面へと落ちていく。

 

 

 

「うわあぁぁ〜〜!!!」

 

 

 

急な機動からの急旋回。

無茶をする弟に、姉は悲鳴をあげる。

しかしキラは悪びれもせずに、カガリに話しかける。

 

 

 

「ほら、カガリ。あそこを見て」

 

「あぁ? なんなんだよっ、一体…………」

 

 

 

コックピットのメインモニターに映る景色。

そして、その視線の先……海上に浮かぶ一隻の戦艦と、それを取り囲むように配置しているオーブの護衛艦群。

 

 

 

「なっ!? あれは、アークエンジェルっ??!!」

 

 

 

白い巨体を持つ戦艦を目にして、当然驚いたカガリ。

そんなカガリを尻目に、キラはアークエンジェルへと近づいていく。

アークエンジェルの左舷カタパルトが開き、フリーダムはその中へと入っていった。

そしてその様子は、そのアークエンジェルを包囲していた護衛艦群の操舵室にいた者たちも目にしていた。

 

 

 

「艦長っ、右舷前方より、フリーダムが……!」

 

「ん……」

 

 

護衛艦群の旗艦に乗り込んでいたトダカ一佐は、この行動にどうしたものかと、頭の中で思案していた。

しかしそこに、国防本部から追加の情報が入ってきた。

 

 

「本部より入電! フリーダムは、式場にてカガリ様を拉致っ、対応は慎重を要するっ……とのことです!」

 

「はぁ?」

 

「カガリ様をっ?!」

 

「フリーダムが?」

 

「撃方待てっ!!」

 

 

艦の主砲を向けていた護衛艦群全艦に、待機命令が行き渡る。

 

 

 

「敵戦艦を包囲して退路を塞ぎ、カガリ様を引き渡すよう宣言。対応は、慎重を要する……とのことだそうです」

 

「慎重に……と言われてもな……」

 

「あぁ、少し難しいかもしれんぞ?」

 

 

 

無論、国防本部の言いたい事は分かってはあるが、すでに状況のイニシアチブは向こうが握っているのだ。

この状況を覆すのは、ほぼほぼ無理な状態だ。

そして、アークエンジェルの方も、フリーダムの帰艦とカガリの奪取成功に、当初の目的を達して、皆の士気が高まりつつあった。

 

 

「フリーダム収容完了! カガリさんも無事ですわ……!」

 

「よぉーし! さぁ、出発と行きますか、ラミアス艦長?」

 

「ええっ……! ベント開け! アークエンジェル、急速潜行!」

 

 

 

海水を一時的に艦の一部に吸い込ませて、アークエンジェルは急速に海中へと潜行していく。

当然、カガリを乗せたままの状態であるため、護衛艦群も動こうとする。

 

 

 

「アークエンジェル、急速潜行へと入りました!」

 

「トダカ一佐! 砲撃を! このままでは逃げられてしまいます!」

 

 

 

このまま逃すわけにはいかないと、艦のクルー達は砲撃をしようと言い出した。

しかし、カガリの事を第一にという命令がある。

 

 

 

「対応は、慎重を要するんだろ?」

 

「っ……くっ……!」

 

 

 

艦長であるトダカの言葉に、砲術士達は押し黙るしかなかった。

 

 

 

「…………っ!」

 

「「「「っ????」」」」

 

 

 

すると突然、トダカはアークエンジェルに対して、砲撃の指示ではなく、敬礼したのだ。

それを見ていたクルー達も、なぜそんな事をするのかと、少し困惑したが、そんなトダカの姿を見て、ほかの副官たちと同様に、アークエンジェルへと敬礼した。

 

 

 

(頼んだぞアークエンジェル……! カガリ様とオーブを……いや、この世界の行く末をっ、どうかっ…………!!!)

 

 

 

トダカ達の敬礼で見送られたアークエンジェルは、海へと完全に潜行していき、もはや誰にも追いかけることなどできなくなった。

この行動により、式場より報告を待っていたユウナは、思いっきり憤慨したのは、言わずもがな……というやつだった。

世界が再び移ろい行く中で、自分たちはどうするべきなのか……その答えを見出すために、白き大天使は、一人世界へと羽ばたいていったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 






ようやくオーブを出港したカガリ達アークエンジェル一行!

それとはすれ違いに、オーブへとやってくるイチカとアスラン。
次話は新キャラと新機体を出して、イチカの新型機ストライクルーチェの戦闘描写も書いていこうと思うので、気長にお待ちください^^


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