機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜   作:剣舞士

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今年中の投稿・更新はこれだけになるかなぁ〜……





第23話 インド洋の死闘

ミネルバに、新たなメンバーが加わった。

と言っても、全くの新顔というわけではない。

しかし、だからといって、そこら辺のただのパイロットというわけでもない。

かつて二年前の大戦の折、最新鋭機であったZGMFーX09Aジャスティスを駆り、ザフト軍特務隊『FAITH』に所属していたエースパイロットである、アスラン・ザラの復隊だ。

それも、かつてと同じ『FAITH』としての立場で、ザフト軍の開発した最新鋭機であるセカンドシリーズの機体ZGMFーX23Sセイバーのパイロットとして、これからはミネルバクルーのメンバーとして戦う。

そして、機体だけで言えば、もう一人。

イチカ・ラインハルトの機体……かつての最新鋭機にして最強のMSだと言わしめたZGMFーX10Aフリーダムと、アスランの搭乗していたジャスティスの二機の性能データをもとに開発された新型機ZGMFーX15Sストライクルーチェ。

これにより、新型機あったインパルスを含め、量産機であるザクファントムとザクウォーリア四機で編成されていたミネルバに新たな戦力が加わったことになる。

ましてや、対空戦のできる機体が増えたことは、ミネルバにとっては大きいだろう。

インパルス、セイバー、ストライクルーチェ……どれもガンダムタイプの新型機であり、その性能はほかのMSを凌駕する。

そんなミネルバの艦内では、整備班のメンバーが慌ただしく作業をしていた。

先の連合軍艦隊との戦闘において、初の大気圏内戦闘となったために、宇宙空間と大気圏内での戦闘の違いを痛感した。

そのため僅かながらだが、各種装備や装甲の整備に、新しく入ってきた武装や弾薬のチェックに、今回から参加となったセイバーとストライクルーチェの性能チェックや機体状況などのチェックも行わなければならない。

そんな中、浮かない表情のアスランは、ゆっくりとした足取りで自身の機体へと向かっていた。

艦長であるタリアへの報告が終わり、次の作戦行動に向けて、機体の整備チェックをしておかなくてはならないのだが、アスランの頭の中には、連れ去られたカガリの事や、それを行なっていたキラ達のことでいっぱいだった。

 

 

 

「はぁ…………」

 

 

 

思わずため息が漏れる。

気持ちを切り替えなければと思うが、そんな簡単にはいかない。

すると、目の前に一つの人影が……。

 

 

「ん……」

 

「ぁ……」

 

 

 

赤色の短い髪と、モデル並みの整った顔立ち……軍人としてはどうなのかと疑いたくなる様な短いスカートをはいている女性軍人。

ザフトレッドという呼び名である赤服を着ているMSパイロット……ルナマリア・ホークが、目の前で立っていた。

彼女の見ていた視線の先には、アスランが搭乗する機体、セイバーがその場に佇んでいる。

VPS装甲は、今は起動していないため灰色の装甲となっているが、起動すれば、ザフトレッドと呼ぶに相応しい赤色へと展開する。

そのセイバーの様子を見ていたルナマリアは、背後からくるアスランに気づいて視線を送るも、アスランはその視線から目を背けて、そのまま機体の方へ……。

 

 

 

「むぅっ……!」

 

 

 

その反応が面白くないのか、ルナマリアは頬を膨らませる。

そのままアスランは機体に乗り込むためのリフトに乗り、上に上がろうとするが……。

 

 

 

「無視しないで下さいよぉ〜!!」

 

「えっ?」

 

 

後ろからルナマリアがいきなり飛び込んできた。

咄嗟のことで驚き、そのまま上昇ボタンを押してしまったアスラン……自身のすぐ近くに、ルナマリアが飛び立っているため、リフトには、アスランとルナマリアの二人がくっついて乗っているようにも見える。

 

 

 

「あぁ、いや、その……ごめん、そんなつもりはなかったんだけど……。

ちょっと、考え事をしていただけだよ……」

 

 

 

そう言って、アスランはセイバーのコックピットの中へと入っていく。

アスランは座席に座り、セイバーのメインシステムを起動させると、それぞれのチェックに入る。

ルナマリアはコックピットの入り口で、それを見ながらアスランに問いかけた。

 

 

 

「そんなにショックだったんですか? アスハ代表の結婚?」

 

「っ!!? いやぁまぁ、それは……」

 

「まぁ、たしかに、がっつり政略結婚ですもんねぇ〜……私だったら、絶対にそんなの嫌だけど……」

 

「はぁ……うん……っていうか、君なに? 俺になんか用か?」

 

 

明らかに苦手意識を持った受け答え。

しかし、ルナマリアの方はそんなこと一切気にせずに、果敢にアスランへと話しかける。

 

 

 

「あっ! 私、ルナマリアです。ルナマリア・ホーク! ザクウォーリアのパイロットです!」

 

「あ、あぁ……」

 

「それにしても、この機体は? 最新鋭の機体ってことですけど……」

 

「あぁ、まぁね……」

 

「うわぁっ! 最新の機材ですよねっ、これ! ザクなんかとは比べものにならないなぁ〜! インパルス……いや、カオスとかと同じ?」

 

「座ってみたいか?」

 

「いいんですかっ!!?」

 

 

 

アスランの提案に、ルナマリアは食身を乗り出して食いつく。

 

 

 

「どうぞ……だけど、変なところは触るなよ?」

 

「わかってますよ…………わぁ〜! さすが最新型! ザクにはないパネルがいっぱい! あっ、ここのシステムが違うんだぁ〜!」

 

 

 

できたばかりの新型機に搭乗していることに興奮するルナマリア。

それをコックピットハッチのところで見ていたアスランは、ふとセイバーの足元から、こちらを見上げている人物の視線に気がつく。

 

 

「ん……?」

 

「………………」

 

 

短く切りそろえられている黒髪に、真紅の瞳が特徴の少年。

敵意……というほどではないが、穏やかではない視線をこちらに向けているのは、インパルスのパイロットであるシンだった。

なにを思っているのか? また、何か言いたいのかと思いたくなるような視線だが、なにも言うことなく、シンはその場を去っていく。

アスランもアスランで、どう対応したものかと、ある種の悩みの種が増えてしまった……。

そしてその様子を、隣で目撃していた人物が二人……。

ちょうど気づいたのは、ルナマリアがアスランと共にセイバーのコックピットに入っていくところだった。

 

 

 

「あれは……アスランさんとルナか?」

 

「あらら〜……ルナったら、早速手を出しに行ったかぁ〜……」

 

「え、ええ? 手を出す?」

 

 

 

隣で機体のステータス画面を開いていたイチカは、コックピット内でアスラン達の様子を見ていた。

イチカも機体の状況と、自分にあったステータス設定をするために、機体に乗り込んだのだが、そこには、ルナマリア同様、機体を見上げるアリサの姿があったのだ。

二人はリフトに乗り込み、コックピット内へ。

イチカが座席に座って、アリサはその隣で、作業を見ていた様だ。

ルナマリアのアスランに対する感情や態度を見ていて、初めからピンっと来ていたアリサは、とうとう行動に出たかと言う第三者の目で見ていた。

 

 

 

「手を出すって……まさかルナがアスランを? そんな事って……」

 

「あら? イチカは本国に戻ってたから知らないかもだけど、ルナったら、やたらとあの人関わろうとしてたのよ?」

 

「ヘぇ〜……しかしまたなんで?」

 

「興味本位……ってな感じだと思うけど……でもなぁ〜……」

 

「ん?」

 

 

 

ただ単に興味本位だと言うのなら、あんなに過剰な接触はしないだろう。

士官学校時代から、ルナマリアは誰にでも似た様に接する感じだったが、アスランに対してしてる様に、露骨な接触はしなかった。

 

 

 

「うーん……やっぱり、あの人に気がある様にしか見えないけどなぁ〜」

 

「マジか……! でもアスランさんには、アスハ代表があるはずだし……」

 

「それでも、今は遠く離れた存在じゃない……。それに、アスハ代表は、セイランの御曹司と結婚したって聞いたけど?」

 

「あぁ……それルナに聞いたよ。俺もビックリしたぜ……!」

 

「まぁ昔から、婚約者みたいな関係だったってのは聞いてたけど、まさかあんな気持ち悪い男となんてねぇ〜……」

 

「まぁ、そのセイランの御曹司の事はともかくだ……アスハ代表、誰かに攫われたって言う話なんだろう?」

 

「うん……私もそう聞いてる。これって、ちゃんと結婚したことになってるのかしら?」

 

「いやぁ、多分なってないんじゃないか? 籍を入れてるならともかく、まだそんな事聞いてないし……」

 

「まぁ、何はともあれ……どこに行ったのかもわからない立場の違う恋人と、現場で共に過ごすことになる女……どっちがより男の心をくすぐる思う?」

 

「アリサさん……そんな昼ドラみたいなこと言わないの……」

 

「事実よ。事実から目を背けるのは、よくないことでしょう?」

 

「まぁそれはそうだけど……」

 

「私たちだって似たようなものだしね」

 

「…………」

 

 

 

全くもって他人事じゃない気がするから不思議だ。

一応血は繋がっていないから、結婚はできるのだが……。

 

 

 

「あのさ……アリサ」

 

「なに?」

 

「その……本国に戻った時な、義母さんと話したことがあるんだけど……」

 

「うん……なに?」

 

「その……」

 

 

 

何かを言いたそうだが、言いずらそうな表情をするイチカ。

アリサはアリサで、自分の母親が関わっている事なので、気になってしょうがない。

 

 

 

「そのさ……義母さんがさ、俺たちのこと、気づいちゃってた……んだよ」

 

「…………え?」

 

「だから、俺とアリサが、ただの家族としてではなく、その……恋人としての関係にあるって、義母さん、気づいてたみたいなんだ」

 

「ぁ、ぁぁっ〜〜〜〜!!!?」

 

 

 

顔全体が真っ赤になり、湯気でも出そうな勢いで暑くなるアリサ。

元々が色白の肌ゆえに、赤くなっていくのが目に見えてわかる。

 

 

「な、なななんでっ!? なんでママは……!」

 

「その、アリサの態度でわかったんだって……」

 

「っ〜〜〜〜〜〜!!!?!???!!!?」

 

 

 

もはや言い逃れはできない。

すでにイチカが認めてしまい、それを母・ユリスに話してしまっている以上、アリサが何を言おうが、誤解だといい含めるのは至難だ。

 

 

 

「その、ママは、他にも何か言ってた?」

 

 

 

両手で顔を隠していたアリサ……恐る恐ると言った感じで、イチカを見ながら尋ねたら、イチカもイチカで、微妙な表情に……。

 

 

 

「えっとだな……落ち着いて聞いてくれよ?」

 

「…………うん」

 

 

 

一瞬間があったが、コクリと頷くアリサ。

 

 

 

「えっと、俺たちは、いつになったら子供を作るのか……って」

 

「………………こっ、こぉっ!??!!?」

 

 

ボフッ! と湯気でも吐き出したかのような反応。

頬が目に見えて赤くなっていくのがわかる。

 

 

 

「落ち着け、アリサ。気持ちはわかる……でも、一旦落ち着いてくれ……」

 

「ううぅぅ〜〜〜!!!」

 

 

両手で顔を隠しながら、イチカの胸に飛び込むアリサ。

イチカはそれを抱きしめて、頭を撫でる。

 

 

 

「子供……かぁ……」

 

「うん……なんか、突拍子もなく言われたからさ、俺も何て答えていいのかわかんなかったよ……」

 

「まぁ、ママらしいって言えば、ママらしい……のかな」

 

「うん……」

 

 

 

抱き合う二人の姿は、ほかの者たちには見えていないが、それはそれでまたしても背徳感に襲われる。

 

 

 

「子供……作る?」

 

「うへっ?!」

 

「………………」

 

 

胸にうずくまっていたアリサの顔が、上目遣い気味にイチカの顔を覗き見る。

赤く染まった頬に、潤んでいる瞳……艶やかになっている唇に視線が行ってしまう。

 

 

 

「ま、まぁ、そうだな…………でも、今は戦争中だから……それが終わってから……な」

 

「…………そう、だね。今は、戦わなくちゃね……」

 

「あぁ……。それに、もしも本当に子供ができた時にさ、今の戦争が続いていたら、悲しいと思う……」

 

「……悲しい、か。うん、そうだね……生まれてきてくれるなら、平和な時代がいいよね……」

 

「あぁ、そうだよ……それがいい……」

 

 

 

 

しばしの無言……静寂が二人を包んでいた。

そして、気づけば二人の顔は、徐々に徐々に近づいていき……。

 

 

 

「ん……」

「んちゅ……」

 

 

 

キスしていた。

 

 

 

 

「さっきもしなかったか?」

 

「し足りないの……」

 

「寂しかったのか?」

 

「すごく……寂しかった」

 

 

 

たった二日三日離れていただけだろうに……とは、言えなかった。

なんせ、自分もそうだったからだ。

そんな相手と、結婚しようってのを飛び越えて、子供作ろうとしているのだから、嫌いなわけないし、嫌いにはならないと思う。

二人はいい雰囲気につつまれそうになったが、突然機械音がコックピットの中でなった。

 

 

 

「んっ?!」

 

「ひゃっ!?」

 

 

何事かと思い、音の発信源を探すと、目の前にあったパネルからだった……。

どうやら、システム構築の途中だったため、作業が滞っているという知らせを発しているのだろう。

 

 

「はぁーー……」

 

「びっくりした……」

 

 

驚く二人だが、姿勢はちゃんと抱き合ったままだ。

それから数分して、二人でクスクスと笑い合う。

なんの気ないひとときの穏やかな生活が、今は戻ってきたかのようで、少し落ち着けた。

 

 

 

「さてと、ちゃっちゃと終わらせますかねぇ〜」

 

「ねぇ、イチカ。システムの構築が終わったら、あとで私にもそこに座らせてよ」

 

「おう、いいぜ。けど、変なところ触るなよ?」

 

「大丈夫よ。子供じゃないんだから」

 

「それもそうか」

 

 

 

その後、イチカは慣れた手つきで、ストライクルーチェのメインシステムや火器制御や駆動系の制御システムの再設定と構築を行い、座っていた席をアリサに代わる。

アリサはシートに座ると、両手に操縦桿を握り、まるで子供のようにはしゃいでいる。

本当に久しい平穏な日々……MSのコックピットの中にいるというのは少し違和感だが、それでも今は、この平穏を享受したいと思ったイチカだった。

そして、時間は過ぎて、夜。

カーペンタリアの軍司令部にも、プラント本国からの作戦命令が下った。

 

 

 

「明朝ですかっ?!」

 

「ええ、カーペンタリアの軍司令部にも、正式な指令として下ったそうよ。

ボズゴロフ級を一隻、私たちにつけてくれるらしいわ」

 

「は、はあ……」

 

「はぁ……じゃないでしょっ、アーサー! 全艦に通達!」

 

「は、はい!」

 

 

 

ミネルバ艦長であるタリアに指令が下り、それをアーサーに伝令。

そして、アーサーからメイリンへと伝令が下り、全艦のクルー達に行き渡った。

明日の朝をもって、ミネルバはカーペンタリアからスエズへと向かう。

新たなる旅立ちを前に、パイロット達は皆、明日に備えて静かに休んでいた……。

そして、明朝になったその日……一隻の艦艇がカーペンタリアの領海ギリギリの位置を航行していた。

 

 

 

「ふぅ〜……ようやく見つけたぜ、可愛い子猫ちゃん……!」

 

 

 

黒い画面を被り、不敵な笑みを浮かべる男。

ようやく見つけた恋人に対するような言葉をささやくその男は、待ちわびたかのように感情を昂らせる。

 

 

 

「さて、どう攻めたものか……いや、やっぱり網を張るしかないかね……?」

 

「その方が得策でしょうな」

 

 

 

仮面の男、ネオ・ロアノークは、地球連合軍籍の海上空母『J.P.ジョーンズ』に搭乗している指揮官と共に、ミネルバを討つ作戦を立てていた。

 

 

 

「まぁ、そうだよなぁ〜……。出てきてくれると嬉しいんだが……」

「しかしロアノーク大佐。この戦力では、心許ないのでは……?」

 

「あぁ、そのことなんだけどな? 確かこの近くに基地の建設予定地かあっただろう?

そのにもMS部隊があると聞いたんだが?」

 

「ハッ、ウインダムの地上戦闘用の装備をつけた部隊が駐留しております」

 

「うんうん……まさに、その部隊にも協力を仰ごうと思っている。この間もらったオーブ沖での戦闘データを見るに、ミネルバ本体もそうだが、あの新型MSに乗ってるパイロットも、かなり成長しているみたいだしな……。

やるなら、万全の状態じゃないと……」

 

「では、かの艦が領海から出た瞬間を叩くという流れでよろしいので?」

 

「うん。それで行こう! 作戦決行は、相手の動き次第だ……それまではみな待機! それまでにMS部隊の整備チェック、怠るなよ?」

 

「「「ハッ!!!」」」

 

 

 

 

再び戦火が吹き上がるような気配を漂わせて、その日一日は過ぎ去った。

そして、次の日の朝……。

 

 

 

 

「ミネルバっ、発進完了! 針路、異常ありません!」

 

「了解。ミネルバっ、発進する! 微速前進!」

 

 

 

ミネルバは指令通り、カーペンタリアを出港。

そのミネルバの護衛として、ボズゴロフ級潜水艦『ニーラゴンゴ』が付いてきてくれることになった。

何か不吉な予感を漂わせながらも、ミネルバは針路をスエズへと向けた。

そのミネルバ艦内では、非常時に備えて、MSパイロット達には待機命令が出ていた。

格納庫近くの待機室では、すでにシンとイチカが待っており、そこに、紫を基調としたパイロットスーツを着たアスランがやってくる。

 

 

 

「ん……」

 

「あ、おはようございます」

 

「…………」

 

 

 

部屋を入ってすぐ、アスランの目に留まったのは、ソファーに寝転んで雑誌を読んでいるシンと、その向かいのソファーに座り、コーヒーを飲んでいたイチカの二人。

イチカは座ったままだが、コーヒーの入った紙コップを机に起き、お辞儀とともにアスランへ挨拶。

シンはアスランの入室に気づくも、すぐに雑誌へと視線を移す。

 

 

 

「あぁ、おはよう。何があるか分からないから、二人とも、用心だけはしておけよ?」

 

「了解です」

 

「…………はい」

 

 

 

イチカは普通に受け答えし、シンも寝そべっている状態ではあるが、一応返事はした。

そしてアスランはそのまま、格納庫が一望できるガラス窓の方を向き、何か考えふけっていた。

 

 

 

(カガリ……キラ……アークエンジェルが動いているとなれば、おそらくラミアス艦長やバルドフェルト隊長……それに、ラクスも……)

 

 

 

プラントでは、偽のラクス・クラインことミーア・キャンベルが活動しているため、ラクス自身は表舞台に出づらいはずだ……。

故に、彼女がオーブいた事も伏せている……。

アークエンジェルが行くとすれば、水中航行もできるため、海底を進んでいるに違いない。

そうなると、見つけるのは困難だろう……。

 

 

 

(まぁいい……あいつらと一緒なら、カガリは大丈夫だよな……。どのみちオーブには戻れないんだし……)

 

 

 

カガリ不在のオーブの情勢が気になるが、すでにオーブは連合側に属しているため、ザフト軍に復隊したアスランは戻れない。

ならば、遠くどこかにいるであろう思い人のことを、アスランは心から案じていたのだった。

そして、ミネルバは順調に海路を進んでいたが、カーペンタリアから出航して数時間後……。

インド洋へと入った瞬間に、時は動いた。

 

 

 

 

「ザフト軍艦ミネルバ! こちらでも捕捉できました!」

 

「よぉーし! それじゃあ始めようか! カオス、ガイア、アビスを出撃用意! 俺も出る! 機体を準備させといてくれ!

あぁ、あとそれから! 駐留軍の指揮官に通信を繋いでくれ! 大至急だ!」

 

 

 

 

連合の海上空母『J.P.ジョーンズ』は、捕捉したミネルバを逃すまいと、早々に戦闘準備に入る。

ネオは地上へと連れてきたステラ、スティング、アウルの三人を招集して、戦闘準備をさせる。

そして、ネオは艦内のオペレーターに通信を支持し、近くにいる駐留軍の指揮官宛に通信を繋いだ。

 

 

 

「やあやあどうも、司令官殿」

 

『ネオ・ロアノーク大佐……でしたか。我々になんのご用が?』

 

「まぁまぁ、そんなこと言わずに……。今こちらは、カーペンタリアから出港したミネルバというザフト艦を包囲しつつあるんだが、こちらとしてはまだ戦力が乏しくてねぇ……。

ついては、今そちらにいるウインダムを全機出して欲しいんだが?」

 

『なっ?! 何をバカなこと言っている! 我々には、対カーペンタリア用の前線基地建設という重要な任務があるのだぞ!

我々がここにいるのは、その軍事基地を作るための任務だから! その任務もままならないまま、貴官らにMSを貸し出すなんてっ、できるわけがないだろう!!』

 

「その基地も何も、全てはザフトを討つためだろう? それに、オーブ沖海戦のデータ、あんた見ていないのかっ?!

そうでなくても、落とせるかどうかわからない船なんだぞっ?!」

 

『そういう事を言っているのではない!! そちらに全ての戦力を投じてしまっては、こちらの任務に支障をきたしてしまう! そうなってしまってはーーーー』

 

「とにかくっ! これは命令だ! そっちの基地の守備には、ガイアを置いてやるから! いいな!?」

 

 

 

ガチャ! とネオは強制的に通信を切った。

その後、ジョーンズの艦内でも、戦闘配備の発令が出されて、艦内は大慌てだ。

エクステンデッドと呼ばれる強化兵のスティング、ステラ、アウルの三人も、パイロットスーツに着替えて、待機していた。

そしてネオも、MS格納庫へと降りて、自分の機体を確認する。

 

 

 

「いきなり大気圏でジェットブースターって……! ファントム・ペインも無茶するよなぁ〜!」

 

「あぁ……あの三人なんて、相当ヤベェ〜って話だぜ?」

 

「エクステンデッド……連合が新たに作り出した強化兵だったか……」

 

「怖えよなぁ……」

 

 

 

格納庫内はMSの最終チェックを行なっている整備班が慌ただしく動いており、強奪した機体であるカオス、ガイア、アビスの三機に加え、大気圏内用の装備に換装したウインダムやダガーL……そして、ネオ専用の紫色のウインダムも戦闘準備が整いつつあった。

そんな中、機体のすぐ近くで待機していた三人の少年少女。

パイロットスーツに身を包んだスティング、ステラ、アウルの三人だ

 

 

「いいなぁ〜みんな……ステラだけお留守番」

 

「しょうがねぇじゃん……ガイア飛べねぇし、泳げねぇし」

 

「まぁ……海でも眺めて待ってろよ……好きなんだろ? 見るの」

 

「うん……」

 

「たしかに、ステラと一緒に出撃できないのは、俺も悲しいかな?」

 

「「っ……」」

 

「っあ……! ネオっ!」

 

 

 

自分たちの直属の上司であるネオの登場に、ステラは顔を綻ばせて、彼に抱きつく。

 

 

 

「おっとと……まぁ、そんな残念そうな顔するなよ、ステラ。いい子にして待ってろよ?」

 

「ぁぁ…………うん……」

 

 

 

頭をそっと撫でられると、ステラはまたしても俯いてしまった。

そして、ネオの登場……ということで、いよいよ作戦決行の合図。

ネオとともに、スティング、ステラ、アウルは、それぞれの機体に乗り込み、機体のメインシステムを起動させる。

そして、各機の出撃準備が整い、ジョーンズの格納庫のハッチが開いた。

中からまず、カオスとアビスがコンベアで移動して現れ、発進準備が出来た。

 

 

 

「スティング・オークレー、カオス、発進する!!」

 

「アウル・ニーダ、アビス、出るよ!!」

 

 

 

カオスは上空へと飛び去り、アビスは一度上空へと飛ぶと、すぐにMA形態に変わり、そのまま海中へと入った。

海中はアビスの、上空はカオスの独壇場だ……。

元々ザフト軍で設計されていた、インパルスの支援するための機体設計が、今ここで仇となるとは、誰も思っていなかっただろう……。

そして、ガイアに乗ったステラは、そのまま島へと上陸して、海上を急速で渡っていくジョーンズの船体を見ていた。

 

 

 

「さてさて……これで沈められれば、御の字……だけどな」

 

 

 

続いて、ネオの乗るウインダムと、そのほかに連れてきた部隊のメンバーが乗る機体が、次々に発進していく。

 

 

 

「ネオ・ロアノーク、ウインダムっ、出るぞ!!」

 

 

二年前……連合最強とまで謳われたストライク。

そのバックパックである『ストライカーシステム』は、ザフトだけではなく、連合にもその技術革命をもたらした。

大気圏内で高機動の出力を生んでいたバックパック『エールストライカー』を改良して開発された『ジェットストライカー』。

それを装備したウインダムやダガーL、そしてカオスを含めた連合の機体が数十機。

そして、建設中の基地施設から飛び立ったウインダムが数十機。

全部で三十機の部隊が、ミネルバに迫ろうとしていた。

そしてその情報は、当然ミネルバも捉えている。

 

 

 

「んっ……?」

 

 

 

索敵担当のブリッジクルー、バートが近づいてくる敵影を捕捉したとの情報を伝える。

 

 

 

「敵機っ、本艦に向け急速に接近中! 11時の方向、数は30!」

 

「30っ?! 付近に母艦は?」

 

「ありません!」

 

「っ、またミラージュ・コロイドかっ?!」

 

「海で? そんなわけでないでしょう」

 

「あ、あぁ……そうですよね……」

 

 

 

バートの情報を元に、あらゆる推測をするタリアとアーサー。

しかし、なぜそんなにも多くの戦力が、このカーペンタリア付近で発見されることなく、ここまでの部隊を保有して入られたのか……。

 

 

 

「接近してくる機影の熱紋照合……これは、ウインダムです! しかし、その内一機は、カオスです!」

 

「っ……あの部隊だというの……?!」

 

 

 

カオスが配属されている部隊。

それは、この世界の混乱の始まりととも言っていい部隊の存在を意味していた。

地球軍内でのコードネームは、第81独立機動軍……通称『ファントム・ペイン』。

ユニウスセブン落下のあと、どこへと姿を絡ませたのかと思っていたが……よもや、こんなところで再び合間見えるとは思っても見なかった。

 

 

 

「まったく……こちらがどんなに考えても、結論は出ないわね! ブリッジ遮蔽! コンディションレッド発令! 対MS戦闘用意!」

 

「ブリッジ遮蔽! コンディションレッド発令! パイロットは、搭乗機にて待機したください!」

 

 

 

 

タリアの指示により、ブリッジがCICと一体化し、艦内にはメイリンのオペレーションとともに、コンディションレッドが発令され、艦内のクルーたちは、より一層慌ただしくなっていた。

 

 

 

 

「CIWS起動! 対MS戦闘用意!」

 

『グラディス艦長』

 

「え?」

 

 

 

戦闘準備を行なっている最中、モニター越しにアスランの顔が写り、音声が聞こえた。

パイロットスーツに身を包んでいることから、おそらくは待機室にいるようだ。

 

 

 

『地球軍ですか?』

 

「ええ……。また待ち伏せられていたみたいね。毎度毎度、人気者は辛いわね……」

 

『…………』

 

「本艦すでに戦闘態勢に入っているわ……戦闘の回避は不可能よ。あなたは?」

 

『え?』

 

「…………私には、あなたに対する命令権はないわ。つまり、あなたはあなた自身で判断できるってわけ……それで? どうするのかしら?」

 

『っ……私も出ます』

 

「……いいの?」

 

『たしかに指揮下にはないかと思いますが、今では私も、この艦の搭乗員です。

残念ながら、私もこの戦闘は不可避と考えます』

 

「そう……なら、発進後のMSの指揮を、お任せしても?」

 

『了解しました』

 

 

 

『FAITH』となった二人は、独自の命令権を持つことができる。

プラント最高評議会直属の特務部隊。

その階級は普通の上官クラスよりも上であり、独自行動や作戦の立案まで可能なのだ。

それ故に、プラント最高評議会の方からプラントのために尽力し、戦績著しく、その能力に才アリと評価された者のみしか、その称号を得られない。

そんな二人の会話が終わると、タリアはすぐにメイリンに指示。

対空戦のできるインパルス、セイバー、ストライクルーチェに発進命令が下った。

 

 

 

『インパルス、セイバー、ストライク、発進準備! パイロットは搭乗機にて待機してください!

全システムオンライン! ミネルバ、全カタパルトデッキのシステムを起動させます!

気密隔壁閉鎖、非常要員は待機してください!』

 

 

 

 

メイリンのオペレーションによる発進シークエンスに開始される。

中央カタパルトには、合体・分離システムを持つインパルスが、右舷カタパルトには、アスランの登場するセイバーが、左岸にはイチカが登場するストライクが発進準備に入る。

シンはコアスプレンダーに乗り込み、アスランはリフトに乗ると、そのままセイバーのコックピットへ。

そしてイチカもリフトに乗って、ストライクのコックピットに向かおうとした時だった。

 

 

 

「イチカ!」

 

「っ……アリサ、どうした?」

 

 

 

リフトに乗り込む前に、アリサに呼び止められた。

 

 

 

「気をつけてね……」

 

「っ……あぁ、大丈夫。そう簡単にやられたりしないさ」

 

「そうだけど……」

 

「……大丈夫だって。俺だって強くなってるんだ……だから、俺を信じろよ」

 

「…………うん、頑張ってね」

 

「アリサも、な」

 

 

 

それだけ言って、イチカはリフトを作動させて、コックピットへと乗り込む。

 

 

 

『インパルス、セイバー、ストライクの発進シークエンスを開始します。

全システムの起動を確認しました。カタパルト、推力正常、コアスプレンダー、発進位置にリフトアップします!』

 

 

 

インパルスのコアとも言える戦闘機、コアスプレンダーに乗るシン。

そのままリフトアップされていき、発進口である中央カタパルトへと運ばれる。

そんな時に、シンとイチカ宛に、アスランから通信が入ってきた。

 

 

『シン・アスカ……それからイチカも、聞いてくれ』

 

「……はい?」

 

「ん……なんですか?」

 

『発進後の戦闘指揮は、俺が執ることになった』

 

「えぇっ?!」

 

「へぇ〜……まぁ、それも当然っちゃ当然か……」

 

『いいな? 二人とも』

 

「…………はい」

 

「異存はありません。了解しました」

 

 

 

通信が切られ、いよいよ発進準備が整いつつあった。

それぞれのカタパルトデッキが開放され、それぞれが発進位置に着く。

 

 

 

『システム、オールグリーン! コアスプレンダー発進、どうぞ!』

 

「シン・アスカ! コアスプレンダー、行きます!!」

 

 

 

中央カタパルトから高速で滑空するように飛び出す戦闘機。

コアスプレンダーに乗ったシンが一番はじめに飛び出して、そのあとをチェストフライヤーとレッグフライヤー、そして、フォースシルエットが追随して飛翔していく。

 

 

 

『続いて、X23S セイバー、発進準備! 右舷カタパルト、オンライン! 気密シャッターを閉鎖します!』

 

 

 

右舷のカタパルトデッキに運ばれて、気密シャッターで完全に遮断される。

脚部を固定する推進機に降ろされ、発進準備が整った。

 

 

 

『システム、オールグリーン! セイバー発進っ、どうぞ!!』

 

「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!!」

 

 

 

カタパルトを高速で滑り、その機体を大空へと飛翔させる。

背部のウイングが展開すると同時に、錐揉み状に飛翔していき、機体にかけられているVPS装甲が展開。

深紅と黒のツートンカラーに染まった機体が、空中を駆け抜けていく。

 

 

 

『続いて、X15S ストライクルーチェ、発進準備!! 左舷カタパルト、オンライン。気密シャッターを閉鎖します!』

 

 

 

セイバーの発進後、左舷ではイチカの搭乗する機体が運ばれていた。

セイバーと同じように、気密隔壁を完全に閉鎖した後、推進機に脚部を固定……。

カタパルトデッキのシステムが稼働していく。

 

 

 

「さぁ……本格的なデビュー戦だ……頼むぜ、相棒……!」

 

 

 

操縦桿を握り、ハッチから見る空に向けて視線を送った。

 

 

 

『システム、オールグリーン! ストライク発進っ、どうぞ!!』

 

「イチカ・ラインハルト、ストライクルーチェ、行きます!!」

 

 

 

右手に《クラウソラス》を、左手に《機動防盾》を大盾に展開した状態で滑空する。

カタパルトデッキから出た瞬間に、スラスター全開。

両サイドにあるスラスターバインダーを展開、VPS装甲が全身を彩る。

オレンジと黒と白のトリコロールカラーに染まった機体は、フリーダム譲りのハイマットモードを使い、高速で飛翔していった。

シンのコアスプレンダーも、各フライヤーと合体し、フォースシルエットを背部に装備。

《機動防盾》を展開して、セイバー、ストライクルーチェの前を飛翔していく。

 

 

「ザクは別命あるまで待機、《トリスタン》、《イゾルデ》起動!《パルジファル》装填!」

 

「了解!」

 

「味方がいるから、射線には気をつけてね」

 

「ハッ!」

 

 

 

三機のMS発進を、後方から見守るミネルバクルー達。

メイリンも高画映像を使いながら、シンとイチカ、そして、その後方から飛んでいくアスランの機体を見る。

そしてその様子は、地球軍側でも確認しており、MSの集団の中にいたネオも、こちらへと向かってきたMS三機を捕捉していた。

 

 

 

「あ?」

 

「ん? あの機体は……」

 

 

 

ネオのすぐ隣を飛翔していたカオスに乗るスティングも、見慣れたインパルスの後方からくる二機のMSに、視線を移す。

 

 

「また新型か……」

 

 

 

ネオはコックピット内の端末を使い、機体のデータを照合していく。

そして出てきたデータは、昨日オーブでスクランブルをかけられて、ムラサメ三機とサクヤ相手に戦闘を行った時のものが表示されていた。

 

 

 

「しかも、カーペンタリアで? ザフトは凄いねぇ〜」

 

「ふん! あんなものっ……!!」

 

 

 

ネオの言葉に火がついたのか、カオスを駆るスティングか先行していく。

 

 

 

「おいおい、スティング…………まぁ、いいか。さてと、俺は馴染みのあっちをやらせてもらおうかな!」

 

 

 

スティングはまっすぐセイバーの方へと向かっていき、ネオはインパルスの方へと回り込んでいく。

 

 

 

「お前たちはもう一機の新型を包囲しろ……オーブの精鋭達すらも逃した機体だ……慎重にやれよ!」

 

『『『ハッ!!!!』』』

 

 

 

各機は散会し、突撃してくるインパルスを包囲しようとするが、それよりも早く、インパルスのビームライフルが火を噴く。

 

 

 

「でええいっ!!!」

 

 

 

ライフルの銃口から緑色の閃光が閃き、ウインダムの胴体を撃ち抜く。

機体が爆散していく最中、インパルスはそこを通り抜け、次々にライフルを撃ちまくる。

ウインダムもそれに対してインパルスに対抗するように撃ち始めるが、インパルスは軽快に躱しながら逆に撃ち落としていく。

 

 

 

「へっ! そんなもんに当たるかよ!」

 

 

 

一方、向かってまっすぐ攻撃を仕掛けに行ったスティングの乗るカオスと、それを迎え撃つアスランのセイバーは……。

 

 

 

「オラァッ!! 見せてみろ力をっ! この新顔!!」

 

 

 

スティングの猛狂う怒号と共に、カオスは両手をセイバーに向ける。

右手にはビームライフルを、左手には盾を装備している。

その盾には、バルカン砲が内装してあるため、ビームライフルとバルカン砲による直接攻撃を仕掛けてきた。

しかし、セイバーはそれを軽く躱し、雲の中に隠れることで射線から一瞬で外れる。

かと思いきや、再び雲の中から現れ、高速飛行形態であるMA形態に可変。

超高速で飛行し、カオスの隣を横切る。

 

 

 

「ぬっ!? こいつっ、速い!」

 

「チィッ……!」

 

 

 

機体を上昇させ、一気に上空の死角を取ったセイバー。

そのままカオスに向かって突っ込んでいきながら、セイバーのバックパックにそびえる砲塔《アムフォルタスプラズマ収束ビーム砲》と《スーパーフォルティスビーム砲》を連続射撃。

死角からの攻撃にカオスは反撃する間も無く、ただ盾で防ぎ、躱すしかなかった。

 

 

 

「ちっ!」

 

 

 

スティングは苛立ちながら、再び自分の横を横切るセイバーを睨みつける。

 

 

 

「クソがっ、ちょこまかと! 舐めてんじゃねぇーよ!!」

 

 

 

同じ対空戦力として、インパルスの作戦行動支援を請け負う形で製造された機体同士。

その性能は、わずかにセイバーに軍配が上がりそうだが、それよりもまず、パイロットとしての腕に違いが現れているのかもしれない。

そしてインパルス同様に、ウィンダムに囲まれている状態のストライクルーチェはというと……。

 

 

 

「くそっ!」

 

「なんなんだこいつっ、速い!」

 

 

 

一斉射撃で放たれたビームの弾雨。

しかし、ハイマットモードに入ったストライクルーチェの速度では、機体を穿つ事はできない。

まるで針の穴に糸を通しているかのように、弾雨の隙間を掻い潜り、時に盾で防ぎ、時にハイマットモードを解除して減速して躱したり……。

被弾する様子を一切見せない。

 

 

 

「そんな射撃じゃあ、当たらねぇよ!」

 

 

 

弾雨を掻い潜ってすぐ、右手に装備する《クラウ=ソラス》の銃口をウィンダムに向け、その引き金を引く。

放たれたビーム弾は、まっすぐウィンダムのコックピットを撃ち抜き、爆散する。

続けてもう一撃。

さらに方向転換して背後から来る敵を撃ち抜く。

 

 

 

「くそっ、なら接近戦にっ……!!」

 

「バカッ! 不用意に近づくなっーーーー」

 

 

 

ダガーLに乗るパイロットが先行して、背後からストライクルーチェに接近する。

ビームサーベルを引き抜き、迫り来る。

 

 

 

「おおおお!!!」

 

「そんな大振りじゃあーーーー」

 

「なっ……?!!」

 

 

 

右手に装備する《クラウ=ソラス》が可動し、剣の形態を取る。

 

 

 

「ーーーー何も斬れないぜッ!!!!」

 

「ガハァッ!??」

 

 

 

横薙ぎ一閃。

鋼鉄の刃がコックピットを両断し、断ち切られる装甲からは火花が飛び散った。

上半身と下半身へと真っ二つにされたダガーLは、斬られた瞬間に落下し、そのまま爆散する。

 

 

 

「なんだありゃあっ!!?」

 

「剣にもなるのかよっ……!」

 

「距離を取れ!」

 

 

 

初めて見る武装に、連合側は出鼻を挫かれた事だろう。

次第に距離を取っていくウィンダムとダガーL……しかし、それを見逃すイチカではない。

即座にスラスターを全開、逃げるウィンダム相手に肉薄する。

突然のことに対応できない相手に対して、こちらは一切の躊躇はしない。

再び右から薙ぎ払う様に胴体を一閃。

さらに機体を右に回転させて、さらに後方へと逃げていた機体に対して左薙に一閃。

まるで頑丈な装甲がバターの様に断ち切られていく。

 

 

 

「遅いっ!!」

 

 

 

後方からの接近警報。

しかし、振り向くと同時に《クラウ=ソラス》を銃形態にして、引き金を引く。

緑色の閃光がコックピットを撃ち抜き、接近していたタガーLは爆散する。

その他にも、インパルスを包囲していたウィンダム各機も、次々に撃ち落とされていく。

接近してヴァジュラビームサーベルを抜き放つインパルス。

相手の射撃も掠ることなく躱して行き、一気に肉薄する。

上段から振り下ろした一閃は、機体を縦一閃に斬り裂いた。

 

 

 

 

「ふぅーん? たしかに、あの時より腕は上がっているようだな……!

なら、俺もおふざけ抜きでやらんといかんよなぁっ!!」

 

 

 

快調に敵機を撃墜していくインパルスに向かって高速で接近する機影が一つ。

インパルスをロックオンすると、すぐさまビームライフルを射撃し、距離を詰めてくる。

 

 

 

「んっ……!」

 

 

 

放たれたビーム弾は牽制のための一発。

直撃はしなかったものの、インパルスの横を高速で飛翔していくウィンダムに、シンの視線は移る。

 

 

 

(なんだ……? あのウィンダム……)

 

 

 

ほかの機体とは装甲のカラーリングか異なっており、通常の機体は、白に青という機体カラーに対して、紫と黒という、異様な出で立ちの機体。

察するに、あれが隊長機だろうと、シンはすぐに気づいた。

 

 

 

「そっちがその気ならっ!!」

 

 

 

通り過ぎていったウィンダムに狙いを定めて、インパルスはビームライフルの引き金を引いた。

緑色の閃光が飛翔して行き、背後からウィンダムを貫くはずだった……。

だが、ウィンダムは急旋回して、機体を左回転にバレルロール。

それと同時に雲の中に消えて行き、視界からも消えてしまったのだ。

 

 

 

「くそっ、どこに……!」

 

 

ピーッ! ピーッ!

 

 

「えっ……!? こっちっ……!!?」

 

 

 

 

正面から来ると予想していたが、実際にはインパルスの左側面から高速で飛翔してくる。

またしてもライフルで射撃してくるが、インパルスは盾で受け切り、反撃に出るも、またして雲の中へと紛れ込む。

そして今度は真正面から猛スピードで飛翔してきて、またしてもインパルスのそばを通り抜ける。

 

 

 

「なんなんだ、こいつ……っ! 速いっ……!」

 

「あんまり調子に乗るなよっ、ザフトのエース君っ!!!」

 

「チィッ!」

 

 

 

 

高速の空中戦闘が繰り広げられている最中、ミネルバのブリッジでは、モズゴロフ級《ニーラゴンゴ》の艦長とタリアが通信回線を開き、この事態について話し合っていた。

 

 

 

「付近に母艦らしきものの発見はなかったのですか?」

 

『こちらも索敵しているが、何も写っていない! 第一、奴らはどうしてこちらの動向に合わせて奇襲を仕掛けられたんだ?』

 

「こちらの動きを事前に調べていた……としか言えませんね……」

 

『ならばこの部隊量は一体なんなんだ……!!』

 

「空母一隻でここまでの戦力はあり得ないでしょう……! おそらくは付近に彼らの基地か駐屯地があるはずです!

そちらからは何か発見できないのですか?」

 

『この近くでか……? カーペンタリアの目と鼻の先だぞっ?! そんな報告、我々は受けていない!』

 

「では、この部隊編成はどうお考えでっ?!」

 

 

 

タリアと《ニーラゴンゴ》の艦長との間で繰り広げられる質疑応答。

しかし、現状では情報不足のため、正確な回答が得られない。

戦況は今のところこちらが優位に立っているように見えるが、敵である連合側は突然、大部隊での奇襲作戦に打って出てきた……。

まだ何かを隠し持っていないとも言い切れない。

そんな時だった……。

 

 

「ソナーに感アリ!!」

 

「なにっ?!」

 

 

 

潜水艦である《ニーラゴンゴ》はすでに海中を航行していた。

そんな中、海中を動き、《ニーラゴンゴ》に接近してくる物体の振動を感知した。

 

 

 

「これはMS……! アビスです!!」

「ぬぅっ……!!」

 

 

 

海中を高速で移動する機影が一つ……。

その機体データは、当然ザフトも把握している。

なぜならば、その機体は元々ザフトで運用するための機体だったのだから……。

 

 

 

「へっへぇ〜♪」

 

 

 

MA形態となり、海中を高速航行する機体。

セカンドシリーズの最新鋭機である《アビス》。

そのコックピット内で、余裕の表情を見せるパイロット……アウル・ニーダは、前方に見えてきた《ニーラゴンゴ》と《ミネルバ》を射程に収めた。

 

 

 

「おっしゃあ〜〜ッ!!!! ガンガン行くぜぇーー!!!」

 

 

 

 

 





次回はインド洋の戦闘を終わせて、次はガルナハン突破作戦ですかね。
そうなると、新たなメンバーの参加もありますね^_^


今回はここまで。
感想よろしくお願いします!!


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