機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜   作:剣舞士

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久しぶりの更新だぁ〜。

なんかもう疲れて……。
ダラダラと書き続けていました。

それでは、どうぞ。


第24話 勝利の代価

「ソナーに感あり!」

 

「なにっ……!?」

 

「この水流音、MS……! これは、アビスです!!」

 

 

 

海水を斬り裂くような勢いで水中を移動する機体。

ザフト軍最新鋭MS『アビス』。

元々、グゥーンやゾノといった水中型MSの開発により、宇宙戦だけでなく、地上戦においても優位に立っていた。

しかし、連合側もその対応策を講じていた。

二年前に開発されたGAT-Xシリーズの後継機として開発された三機のMSのうちの一機……『フォビデゥン』。

大鎌型の近接格闘武装と、独特なバックパックを装備して、当時連合が開発していた最新技術である《ゲシュマイリッヒパンツァー》を搭載した機体。

その機体をベースに改良された機体、『フォビデゥンブルー』と呼ばれる機体が、これまでのザフト軍における水中戦闘での優位性に陰りをおとしていたのだ。

そのために、最新の量産型機である『アッシュ』を含め、水中のみならず、宇宙での戦闘をも可能となる機体を開発したというのに……。

 

 

 

 

「へっへーん! そぉらあっ! 暴れるぜぇぇぇっ!!!!」

 

 

 

高速で接近するアビス。

両肩の大型シールド上部には、四門のミサイル発射管が内装されており、そこから勢いよく魚雷が発射される。

魚雷はまっすぐミネルバの方へと向かって飛翔していき、爆破。

僅かに狙いが甘かったのか、直撃こそしなかったが、その大きな衝撃は、見えない海中からの攻撃ということもあって、中々に恐怖を煽ってくる。

 

 

 

「っ……アビスからの攻撃! 水中より、アビスが高速で接近中! 距離700!」

 

「くっ……単独で別ルートからっ……!」

 

「艦長っ、どうするんですか?! こちらには、水中で戦えるMSは……!」

 

「仕方がないわ。ニーラゴンゴに要請して、グーンの発進を! こちらも、レイとルナマリアのザクの出撃準備をさせて!

それから、アリサのザクには、甲板からの狙撃を……! 先に出た三機だけで、この状況は覆せるとも思えないしね」

 

「は、はい!!」

 

「ニーラゴンゴに要請通信を送ります!」

 

 

 

ミネルバブリッジ内でも、衝撃と恐怖で慌てふためく者たちも少なくなかった。

メイリンがすぐさまニーラゴンゴへのMS発進要請を送り、その後、ミネルバ艦内のMSパイロット達に通達する。

 

 

 

『ザクファントム、ザクウォーリア、発進準備願います! MSパイロットは、搭乗機にて待機してください!』

 

「っ……!」

 

「そんなに苦戦してるのかしらっ……?」

 

「いや、先程海中からの攻撃を受けていたからな……おそらくは、アビスによる別軌道からの攻撃だろう……。

俺たちはそちらの迎撃に回るってことなんだろう……。とにかく、とっとと準備を済ませるぞ」

 

「りょーかい」

 

「…………」

 

 

 

ミネルバの艦内にあるパイロットたちの待機室。

そこには大型モニターがあり、外の選挙を確認できるようになっている。

モニター越しには、上空で戦っているシンのインパルスとイチカのストライクルーチェ、そしてアスランのセイバーが写り込んでいる。

多数のウィンダムとダガーLを相手に立ち回っているストライクルーチェ……ネオの駆る専用ウィンダムと交戦しているインパルス……カオスと一対一での戦闘になっているセイバー。

様子を見るからに、こちらの方が優勢ではある。

若干シンのインパルスが、相手のウィンダムに踊らされている様な感じもするが、このままいけば、ストライクが全機落として、インパルスに加勢することもできるが……戦場というのは、思い通りにならない事が常だ。

現にいま、アビスによる奇襲を受けている。

アリサとルナマリアは不安をあらわにするが、隣にいるレイの冷静な分析と補足によって、状況は理解している。

レイ、ルナマリアと二人はそれぞれの愛機の元へと向かうが、アリサはじっとモニターを見ている。

 

 

 

(イチカ、待っててねっ……すぐに加勢に行くから!)

 

 

 

モニターに映るストライクルーチェを確認し、アリサはその場から離れて、自分も愛機の元へと駆け出していった。

一方で、ミネルバからの要請を受けていたニーラゴンゴも、即座にMS隊を出撃させる。

 

 

 

 

「すぐにグーンを発進させろ! 相手は新型だっ、決して油断するな!」

 

「グーン隊発進準備!」

 

「アビス、本艦に向けて急速接近! 距離700!」

 

「魚雷を撃ち込め! 近づけさせるな!」

 

 

 

海面ギリギリを航行するアビス。

その速さに、ミネルバ、ニーラゴンゴ、両艦ともにMS発進が追いつかないくらいだ。

すぐさまニーラゴンゴからの魚雷が発射され、照準を定めていたアビスに向けて放たれる。

 

 

「撃てえぇぇぇッ!!!!」

 

 

 

まっすぐ目標に向けて放たれた魚雷。

その後すぐにニーラゴンゴの発進口が開き、そこから二機のグーンが現れ、即座に出撃する。

放たれた魚雷は一斉に起爆して、大きな波と爆音を響かせる。

 

 

 

「やったかっ?!」

 

 

 

波や水圧のよる衝撃が、ニーラゴンゴの船体に伝わってくる。

その衝撃は、確実に当たったと思った……が。

 

 

 

 

「っ……! 敵機の反応、未だ健在!!」

 

「なんだとっ?!」

 

 

水中爆発が起こり、大量の泡が発生しているが、その中から、未だにスピードを緩めないアビスの機影を捉える。

 

 

 

「何ぃっ?! まさか、あの数を全て避けたというのかっ?!!」

 

「アビス、なおも接近中!」

 

「チィッ! グーン隊っ、迎撃!! なんとしてもここで落とすんだ!!」

 

 

 

 

一機のMSに対して、十分な量のミサイルを撃ち込んだと思っていたが、敵機の性能……そして、パイロットの技量が、それを上回っていたのだ。

 

 

 

「そんなもんで沈められるとでもぉ〜? 甘いんだよッ!!!」

 

 

 

近づいてくるアビスのコックピットに座るアウルは、獰猛な獣の様な瞳で、近づいてくるグーン隊を睨みつける。

グゥーンもアビスを射程に入れたのか、両腕に装備しているミサイルを随時発射する。

大量の小型ミサイルがアビスに向けて飛んでいくが、アビスはそのミサイルよりも速く、急速に旋回したかと思いきや、ミサイルを躱して即座にグーンに肉薄する。

 

 

 

「なっ?!」

 

「は、速いっ!?」

 

 

 

グーンのパイロットたちも眼を見張る。

しかし、そんな僅かな隙が、彼らの命取りだった。

近づいたアビスは、即座にMS形態へと移行。

手にしたビームランスを勢いよく振るうと、グーンの胴体を一閃。

グーンは傷つけられたところから爆発が起こり、そのまま機体全体が爆散していった。

 

 

 

「ハッハッハァーッ! ごめんねぇっ、強くってさぁーーッ!!!」

 

 

 

もう一機のグーンに肉薄すると、アビスはビームランスを上段から振り下ろす。

頭上から股下までを一閃され、グーンは爆散。

あっという間に二機のグーンを撃破された。

 

 

 

「おいおい、こんなもんしかいないのぉ〜?」

 

 

 

相手にならないと、アウルは投げやりな言葉でつぶやく。

だが、新手の反応を捉える。

 

 

 

「お? なんだなんだ? 今度は骨のあるやつがいいなぁ〜!」

 

 

 

戦闘……いや、戦争だというのに、とても嬉々としてそれを受け入れ、それをなんとも思わない冷淡さ……。

それが、連合の開発した新たな教科兵……『エクステンデット』。

敵を倒し、敵を殺すために生み出された存在だ。

アビスがグーンを撃破している最中、その交戦の衝撃は、空中で戦っているアスラン達も確認していた。

 

 

 

 

「っ……ミネルバっ! 今の反応はっ?!」

 

『アビスです! 水中にて、ニーラゴンゴのグーンと交戦中です!』

 

「っ……! やはりこいつだけじゃなかったかっ……!」

 

 

 

ミネルバのオペレーターであるメイリンの言葉に、アスランはグッと奥歯を噛み締めて、苦い表情を作る。

その “こいつ” とは、いま目の前でアスランと交戦しているカオスだった。

 

 

 

「くそがっ! いい加減落ちろってんだよっ!!!」

 

 

 

ビームライフルとシールドのバルカン砲を一斉に発射するカオス。

しかしセイバーはそれを悠々と回避して、背部の《アムファルタスプラズ収束砲》の砲口をカオスに向けて伸ばし、それを発射。

高出力のビーム砲撃がカオスに向けて放たれる。

スティングはそれに反応して、機体を反らせる……。なんとか直撃を免れたが、一瞬でも反応が遅ければ、確実にやられていた。

 

 

 

「チッ! 戦闘能力で負けてるっ?! この俺がっ?!!」

 

 

 

『エクステンデット』を養成する施設の中でも、スティングはほぼほぼトップの成績を残していた。

生き残ったアウルやステラにも、正直な話……負けない自信があった。

なのに、初めて見た新型MSのパイロットなんかに押され気味だというこの現実が、スティングの心をかき乱す。

 

 

 

「くそがっ! ナメてんじゃねぇぞっ、新顔がぁぁッ!!!」

 

 

 

同じ高機動機。

互いに顔は知らない者同士だが、そこには譲れない信念や思いがあるのだろう……。

二機は高速で空中を飛び回り、激しい撃ち合いを続けた。

そして、そんな二機の戦闘を見ながら、ミネルバの方でも動きがあった。

 

 

 

「アリサの機体を右舷後方の甲板に! 上空の敵と、場合によっては海中にいるアビスへの狙撃をやらせて!」

 

「は、はい!」

 

「水中戦は、レイとルナマリアで対応させます! それぞれ準備を急がせて!」

 

「了解! レイ機、ルナマリア機は、水中戦仕様の装備に切り替え! アリサ機は右舷後方甲板にて迎撃準備を!」

 

 

 

 

格納庫内にも、メイリンからの通信が聞こえ、整備班は慌ただしく準備を進めていく。

また、パイロット達も機体の状態を確かめ、急ぎ発進準備を進めていた。

 

 

 

「ったくもう〜、水中戦なんて、ほとんどしたことないってのにぃ〜!」

 

「恨み言を言うな、ルナマリア! こうでもしなければ、ミネルバが沈む!」

 

「わかってるわよ、そんなこと!」

 

「ビームライフルではダメだ、バズーカを!」

 

『は、はい!!』

 

 

 

レイのザクファントムと、ルナマリアのザクウォーリアは、バックパックであるウィザードの装備を外して、普段は装備してないジンの装備するバズーカを手に持つ。

そして、右舷側では、アリサの機体に新たな武装を装備させていた。

 

 

 

『アリサ、聞こえてる?』

 

「聞こえてるよー、ヴィーノ。んで、この武装なに?」

 

 

 

コックピットのハッチはすでに閉めているため、通信による会話しているアリサとヴィーノ。

そして、アリサの視線の先には、モニター越しに映る見たことない武装。

一見すると銃の装備なので、新型のライフルなのかと思ったが、それにしては銃身が細長く、片手で持つには扱い辛そうな気をする……。

 

 

 

『こんなこともあろうかと、カーペンタリアにいた時に取り寄せてたらしいよ?

まぁ、実際には試作品だからさ、アリサの腕でその性能を確かめてほしいんじゃないの?』

 

「なによそれ……私は当て馬ってわけ?」

 

『そうじゃないって! 新型装備の試験運用だよ! 前にもやってくれてたろう? それだよ、そ〜れ』

 

「ふぅ〜ん……。それで? これってなんなの? 新型のビームライフル?」

 

『うんにゃ、こいつは、電磁砲型の狙撃銃だよ』

 

「狙撃……スナイパーライフルなの?」

 

『そう! 元々は、偵察型ジンの持つ専用のスナイパーライフルを改良した奴らしいよ』

 

「あぁ……あの威力の凄く弱いやつよね?」

 

 

 

偵察型ジン……正式名称を『ジン長距離強行偵察複座型』。

その装備である専用のスナイパーライフルは、実弾を放つスナイパーライフルで、その機体に積んである専用のセンサーと合わせることで、高い命中率を誇るのだが、唯一の欠点……それは、威力が半端なく弱いことだ。

MSはもちろんのこと、非戦闘用のMAですら撃ち落せないほどの威力で、ほとんどはジンの装備するマシンガンを装備したりしてる。

最近では、ユニウスセブン落下テロ事件に使われたジン・ハイマニューバⅡ型のビームカービンを搭載している機体も出てきているとか……。

当然、スナイパーとしてその手の武装の一覧を、アリサも把握している。

この専用スナイパーライフルが弱すぎるが故に、アリサは新型のビームスナイパーライフルである『ファルコン』の装備を要求したのだ。

 

 

 

「でもヴィーノ、電磁砲型ってことは、これレールガンってことよね?」

 

『そう! アサルトシュラウドのレールガン《シヴァ》の技術を使って、レールガン型のスナイパーライフルにしたんだって!

だから砲身も、《シヴァ》の物と似てるでしょう?!』

 

 

 

 

ヴィーノの指摘で、アリサは再び装備されている新型ライフルに視線を移す。

たしかに、以前資料で見ていたレールガン《シヴァ》を、少し大きくしたような形だ。

しかし、砲身や砲口は《シヴァ》と似ている。

 

 

 

『ただ、《ファルコン》みたいにエネルギーを直接伝えてるわけじゃないから、弾切れしたらカートリッジを交換しなきゃならないからね?』

 

「なるほど、それで左肩のシールドに、そのカートリッジを装備させてるのね?」

 

 

 

ザクウォーリアの左肩のシールドには、いつもはビーム突撃砲のカートリッジが装備されているが、今は違うカートリッジが装備されている。

丸い円盤型のビーム突撃砲のカートリッジではなく、四角いカートリッジが……。

 

 

 

「とにかく了解。これを装備して、上空の敵と、海中にいるアビスを狙撃しろってことね?」

 

『うん、それでいいと思うよ。それじゃあ、気をつけてな!』

 

「了解」

 

 

 

通信を終えて、機体の状態を再度確認する。

目の前では、先に出撃するルナマリアのザクウォーリアが準備を進めていた。

彼女とレイの機体は、海に潜って、アビスと交戦する。

カタパルトが動き出し、発進口を解放する。

カタパルトは使わず、二機はそのまま歩いて、入り口へと立った。

 

 

 

「レイ・ザ・バレルっ、ザク、発進する!」

 

「ルナマリア・ホークっ、ザク、出るわよっ!」

 

 

 

 

海中へと降りた二機。

そして、右舷側では、アリサの機体も発進準備を完了していた。

背部には、引き続きイチカの装備していたスラッシュウィザードが装備されている。

 

 

「アリサ・ラインハルトっ、ザク、行くわっ!」

 

 

 

カタパルトの発進口から直接上に飛び乗り、上空を飛来していくウィンダムめがけて照準を合わせる。

 

 

 

「くっ……!」

 

 

コックピット内のシートの右サイドからせり出してくる精密射撃用の専用カメラを覗き込むアリサ。

多数飛んでいるウィンダムの内の一機を、射程と照準に収める。

 

 

 

「見えたッ!」

 

 

 

引き金を引くと、電磁砲独特の轟音と共に放たれた超高速の弾丸。

見事ウィンダムのコックピットを正確に撃ち抜き、機体を爆散させる。

しかし、撃った感触が気に入らないのか、アリサの表情は曇っていた。

 

 

 

「くっ……! 反動が半端ないわねっ……!

 

 

 

ビームスナイパーライフルの反動は、機体の制御系統システムでなんとかなるようなレベルだが、この電磁狙撃銃は、まるでガナーウィザードのオルトロスと同じくらいの衝撃を伝えてくる。

アリサは前々からオルトロスでの射撃が苦手だった……。

反動は大きい上に、早々に連射ができない。

威力は高いのだが、それならばビームライフルで事足りる。

しかし通常のライフルだと、射程が落ちるため、遠距離からの狙撃ができない。

そのため、専用の装備である《ファルコン》を実装してもらったのに……。

 

 

 

「もうっ……ここに来て、背に腹はかえられないわよねっ……!」

 

 

 

 

スコープを覗き、敵の軌道を予測して、引き金を引く。

ドンッ! という重低音が響く。

高速で射出される弾丸は空を切りながら、綺麗な放物線を描いてウィンダムのコックピットを撃ち抜いた。

 

 

 

 

「さあっ、次っ!」

 

 

 

 

地上からの頼もしい援護を受けながら、上空での戦闘は数的に不利だったミネルバ側が優勢。

一方で、海中で行われていた戦闘はというと……。

 

 

 

 

「っ、ルナマリア!」

 

「ええっ、捉えたわっ!」

 

 

 

すでに水中戦仕様に切り替えたレイとルナマリアのザクが、今もなお交戦しているアビスとニーラゴンゴのグーンの元へと向かっていた。

元々ザクは水中戦闘用のMSではないため、機動力や使用する兵器が限られている。

ジンの装備するバズーカを片手に、近づいていく。

ルナマリアとレイが到着する頃には、もうすでにグーンが倒されていた。

 

 

 

「おらおらっ!!」

 

 

アビスから4発の魚雷が発射。

その魚雷がグーンに命中し、グーンは爆散……これでもう四機目の撃破だ。

 

 

 

「こんのぉ! 調子に乗っちゃってッ!!」

 

 

 

グーンを撃墜された瞬間を目撃したルナマリアが、アビスに対してバズーカを発射。

水中にいるため、バズーカの砲弾は空気中や宇宙空間に比べると弾速が遅くなる。

それに付け加え、水中はアビスの独壇場だ。

 

 

 

「はっ! そんなもんで、この僕を殺ろうって?」

 

 

 

アビスはすぐにMA形態になると、高速航行へとシフト。

縦横無尽に水中を駆け巡り、ザクの放ったバズーカの砲弾を軽々避けていく。

 

 

 

「ナメんなよっ、コラァッ!!!!」

 

 

 

お返しとばかりにシールドの下部に付いている魚雷を放つ。

4発の魚雷が、ゆっくりと近づいてくるザク二機に対して高速で近づいていく。

しかし、ルナマリアとレイだって、それを簡単に受けようとはしない。

即座にスラスターを噴かせて、左右に展開する。

魚雷をギリギリのところで躱した二機は、再びバズーカを構えるが、アビスはその間を高速で移動する。

 

 

 

「チッ……!」

 

「は、速すぎる……!」

 

 

通り抜けた後、連装砲を発射して再度二機を揺さぶるアビス。

そして、二機が離れた瞬間を狙って、Uターン。

旋回して、高速航行をしながら、ルナマリアの乗ったザクの方へと向かっていく。

 

 

 

「っ!? ルナマリアっ! そっちに行ったぞ!!」

 

「うえっ??!」

 

 

 

メインカメラが、近づいてくるアビスを捉える。

アビスはいきなりMS形態になると、ビームランスを振りかざして、その穂先をまっすぐザクに突き出してくる。

 

 

 

「沈んじまえぇぇッ!!!」

 

「こんのぉぉッ!!!」

 

 

 

ルナマリアはとっさに左肩のシールドを突き出し、ランスを真正面から受ける。

しかし、元々の機体性能に加え、水中ということもありルナマリアのザクの方がどんどん押され始める。

 

 

 

「くっ……!?」

 

「はっ、お前に僕が倒せるわけないだろうっ!!」

 

「ぐううっ……!!!」

 

 

 

アビスはランスを振り払い、ザクの体勢を崩すと、ガラ空きになった腹部に渾身の蹴りを入れる。

 

 

 

「あああっ〜〜!!!?」

 

「へへっ、もらいぃーーッ!!!!」

 

 

 

 

体勢を崩したルナマリアのザクに対して、アビスは連装砲の砲口を向けた。

アウルの手に握られている操縦桿の引き金が、今まさに引かれそうなったその時だった。

 

 

 

ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ!!!

 

 

 

「っ、なにっ?!」

 

 

 

アビスから見て10時の方向から、3発の砲弾が飛んできていた。

咄嗟の判断で攻撃をやめ、アビスは防御体勢に入った。

左肩のシールドで砲弾を受け切ってから、撃ってきた方に視線を移す。

すると、そこにはレイの乗るザクファントムの姿があった。

 

 

 

「この野郎ぉ……っ! 邪魔なんだよっ!!!」

 

 

 

今度はレイのザクに向かって攻撃を仕掛けるアビス。

再びランスを突き出し、ザクファントムを貫こうとするが、レイもまた、ルナマリアと同じようにシールドで受けようと体勢を変える。

 

 

 

「はっ! そう何度も同じ手をっ!!」

 

 

 

 

さっきよりも推力をあげ、高速の刺突を放つ。

確実に突き刺した……そう思ったが。

 

 

 

 

「シッーー!!!」

 

「うおっ??!!」

 

 

 

ザクファントムが体勢をさらに変えた……。

正確には、腰を落としたような構えをとったのだ。

そして、それによってランスは芯を捉えることが出来ず、勢いそのままにランスを突き出した結果、ザクファントムのシールドの上を撫でるように通過し、今度はアビスが体勢を崩された。

 

 

 

「こいつっ、うおっ?!!」

 

 

 

体勢を崩した瞬間に、ザクファントムからの蹴りが来る。

そして、追撃の手を緩める事のないレイは、さらにそこからバズーカを連射。

これにはアビスも危機感を覚え、即座にMA形態となり、その場を離脱する。

 

 

 

「野郎っ〜〜〜!!!」

 

「来るかっ……!!」

 

「レイっ……!」

 

 

 

してやられたアウルにとっては、まったく面白くない。

今度こそ叩き潰そうと再び高速航行で迫るのだった。

 

 

 

 

 

 

一方、混戦極まるミネルバの頭上で繰り広げられている空中戦闘では、未だにネロの乗るウィンダムに翻弄されるているインパルスの姿があった。

 

 

 

 

「くそっ! 誘い込まれたっ……!」

 

 

 

当初、ウィンダムを後方から狙い撃ちしていたインパルスだったが、気づけば敵の誘い込みに嵌っていた。

周りからいくつものビームの弾丸を撃たれて、インパルスは躱し、シールドで防ぐのでやっとといった感じだった。

 

 

 

「くっ……こいつらっ……!」

 

『シンっ、何をやってる! 乗せられてるぞ!』

 

 

 

そんなシンに対して、通信越しにアスランの言葉が飛んできた。

そんな彼の言葉に、シンの心は不快感を覚える。

 

 

 

『一旦態勢を整えるんだっ! 八方から狙われているんだぞ!』

 

「っ…………ふんっ! 口だけなら誰だってっ……!」

 

 

 

アスランの指示は戦術としては正しい……。

しかし、シンは彼の言葉にどうしても従いたくなかった。

そんな時、後方から狙われている事を、コックピット内のアラートが知らせる。

 

 

 

「くそっ……!」

 

 

 

機体を反転させ、シールドを向ける。

背後には、ダガーL二機がビームライフルを向けていた。

今にもビーム弾を放たれる……そう思った時、別方向からのビームが、二機のダガーLを貫いた。

 

 

 

「っ?」

 

『シンっ! 無事か?!』

 

「ぁ……」

 

 

 

ビームが飛んできた方向を見ると、そこに映ったのは、オレンジ色に染まったストライク……イチカの乗るストライクルーチェが、両手に《クラウソラス》を装備した状態で接近していた。

 

 

 

「イチカっ!」

 

『蹴散らすぞっ! シン!』

 

「ああっ!!」

 

 

 

受けの体勢に入っていたインパルスも、援護にきたストライクルーチェのおかげで攻勢に変わる。

ビームライフルでウィンダムを次々に撃ち抜き、陣形が崩れたところを、高速で飛翔してきたストライクルーチェが斬り裂く。

両手に装備した《クラウソラス》をソードモード、ライフルモードに切り替えながら多数のウィンダムを撃墜していく。

それに負けじと、インパルスもライフルで敵機を撃ち抜き、ビームサーベルで斬り裂く。

 

 

 

「よしっ、これで、あいつをっーー!!!!」

 

 

 

イチカのストライクの介入によって、ネロのいる場所までの道が切り開かれた。

インパルスは再びネオのウィンダムを追いかけ、撃墜を狙う。

 

 

 

「おおっと、怖いエース君がやって来たなっ……!」

 

 

 

ネオは少しおどけたような口調ながらも、その操縦に油断はない。

ジェットストライカーの推力を上げて、インパルスの追撃から逃れる。

 

 

 

「逃すかっ!」

 

 

 

そして、それを追いかけるインパルス。

そんな二機の様子を、陸上で様子を見つめる機影が一つ。

 

 

 

「ネオ…………」

 

 

 

 

カオス、アビスと共に強奪されたガイアに乗るステラだった。

ガイアは地上戦の際に、インパルスのサポートを行えるようにと開発された機体。

その特徴は砂漠地帯などで大きな戦果を上げてきた四足歩行型MSの《バクゥ》と同じように四足歩行型のMA形態になれる事。

その踏破力と俊敏性は、条件によってはカオス、アビスよりも上だろう。

しかし、欠点があるとすれば、地上では空を飛べないということ。

インパルスのような飛行する上での滑空装備がないため、どうしてもスラスター頼りになってしまう。

そのため、今回の戦闘も前線ではなく、基地建設予定地の護衛という任務を受けている。

だが、そのパイロットであるステラの心情は、穏やかではなかった。

それもそのはず……一番の信頼を置いているネオが、敵であるインパルスに追いかけ回されているのだから、下手をすれば、撃墜されてもおかしくない。

 

 

 

「ネオっ、今いくっ……!!」

 

 

 

その場での待機を優先していたが、ステラは行動に移り、ネオが追われているインパルスを排除しようとMA形態になり、高速で海岸沿いの岩場を駆け抜ける。

 

 

 

 

「くそっ! とっとと落ちろってんだよ!!」

 

 

 

低空飛行しながら、インパルスの追撃を逃れるウィンダム。

海面ギリギリを飛び続け、ギリギリのところでインパルスからの射撃を躱し続ける。

そして、いつの間にか海岸沿いに誘い込まれていた。

 

 

 

「ネオっ!!」

 

「ふっ……!」

 

 

ネオには、こちらにやって来るガイアの姿が見えていた。

そんなことを知らず、シンはネオに誘導されていたのだ。

そして、インパルスのセンサーが、敵機であるガイアの襲来を危機として知らせる。

 

 

 

ピーッ、ピーッ、ピーッ!!!

 

 

「はあああッ!!!!」

 

「っ?! ガイアッ!?」

 

 

 

シンから見て9時の方向……。

左真横からガイアがMA形態のまま突っ込んできたのだ。

その姿は、敵意を剥き出しにした猛犬が飛びかかっていったような光景だった。

ガイアの急襲により、インパルスはそのまま海へと叩き落とされてしまう。

 

 

 

「ぐあああっ!!?」

 

「シンっ!」

 

「くそっ、ガイアもいたのか……!」

 

 

 

カオスと交戦中のセイバーと、残りのウィンダム達と交戦しているストライク。

今すぐに助けに行きたいが、早々には難しい状況。

浅瀬で倒れている二機は、なんとかその場で立ち上がる。

そんな状況を見逃すわけないと言わんばかりに、ネオのウィンダムか後方からインパルスに接近する。

 

 

 

「悪いが、もらったぞ!!」

 

 

 

着々と接近するウィンダム。

勝利を確信したネオは、口元をニヤリと歪め、銃口をインパルスに向けた。

 

 

 

「シンっ!! くそっ……!」

 

 

 

だがその瞬間、アスランが行動を起こした。

しつこく狙って来るカオスに対してプラズマ収束ビーム砲を放ち、カオスを軌道から外させて、一気に加速して横切る。

そして、抜けた瞬間にビームライフルを発射。

撃ったビーム弾は、まっすぐウィンダムめがけて飛んでいき、それに気づいたネオは、咄嗟に軌道を変更……。

インパルスへの攻撃を諦めて、そのまま通りすぎていく。

 

 

 

「チィッ……! あいつもやるなっ……」

 

 

 

 

ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ!!!

 

 

 

「なにっ?!」

 

 

 

攻撃を阻止したセイバーを睨みつけていた瞬間、機体から発せられる警告音。

それを聞いたネオは前方へと視線を移した。

するとそこに映ったのは、大きな実体剣を振りかぶりながら接近してくるオレンジのストライクが……。

 

 

 

「チッ!」

 

「はあああっ!!!!!」

 

 

 

右手に装備した《クラウソラス》を思いっきり振り下ろす。

しかし、ネオはこれに反応して、振り下ろされるよりも前に飛び退いた。

 

 

 

「逃すかっ!」

 

「こいつもっ……! 速い上に接近バカかよ! やり辛いねぇ〜こりゃあ……!」

 

 

 

通常のMSよりも機動力のある機体であると同時に、変形機構を持つ武器なんて物が、そもそもの驚きだ。

そして、それを使いこなすパイロットの腕にも驚嘆させられる。

そんな風に思っていた時だった。

ストライクのサイドバインダーが可変し、バインダー先端部と、両手に装備した《クラウソラス》の銃口がネオを狙っていた。

 

 

 

「っ!!」

 

「フルバーストッ!!!!!!」

 

 

 

イチカの力強い言葉と同時に、全砲門から強烈なビーム砲撃を放つ。

たった一機に対して……と思ったが、ネオはすぐさまジェットストライカーの推力を最大にして、射線から外れた。

すると、その後方にあった多数の友軍マーカーがことごとく消えていった。

 

 

 

「ちっ、おいおいこりゃあ……!」

 

 

 

視線を後ろに向けて見れば、自分の友軍機がことごとく撃墜されているのが確認できる。

黒煙が上がり、爆発音が空に響く。

弾けた機体の破片は、海の藻屑と消えるであろう。

 

 

 

「俺だけを狙って撃ったんじゃなかったわけね……! 全く、ムカつくほど腕が立つじゃないの!」

 

 

 

ネオはウィンダムのライフルを腰にマウントして、ビームサーベルを引き抜いた。

まさかの接近戦にシフトチェンジ。

 

 

 

「っ……!」

 

「そんな大出力砲撃を撃たれちゃあっ、俺たちもやり辛いだろう!」

 

「剣でくるってんならっ……!」

 

 

 

イチカのストライクもまた、《クラウソラス》をソードモードへと切り替え、接近戦にシフトチェンジする。

 

 

 

「望むところだよっ!!」

 

「シィッーーーー!!!」

 

 

 

上空で高速に飛翔し、高いの剣で斬り合うストライクとウィンダム。

鋼鉄の鋼と灼熱のビーム……両者の刃が激しく火花を散らす。

 

 

 

「チッ、なんなんだよあの剣! なんでビームで斬れないんだっ?!!」

 

 

 

 

ネオが驚いているのはその点だった。

ジンやシグーの重斬剣の斬れ味は知っている。

その才能はダガーやウィンダムの装甲をもたやすく斬り裂く事も……。

しかし、ビームやPS装甲を積んだ相手とならばどうなのだろうか……。

量産型の機体ならともかく、カオス、ガイア、アビスなどには、VPS装甲が備えられているし、ウィンダムやダガーにだってビーム兵器は搭載している。

数度の打ち合いならばいざ知らず、そう何度も打ち合って、刃こぼれひとつしないのは……。

 

 

 

(ん? あの刀身……!)

 

 

 

斬り結ぶストライクの《クラウソラス》の刀身の表面が、若干ピンクがかっているのをネオは確認した。

 

 

 

(あれは……ビームの粒子か……? なるほどねぇ〜、あれでビーム兵器やPS装甲を斬っているってわけか……!)

 

 

 

やはり隙がない。

機体の性能もそうだが、パイロットの技量も劣るところなどない。

 

 

 

「くっそぉ〜〜……今回はステージが悪すぎたかな?」

 

 

 

ネオは苦虫を噛み潰したような表情で、その場から離れていった。

一方で、海上にて睨み合うインパルスとガイア。

互いにビームサーベルを引き抜き、互いの動きを見て様子を伺っているようだ。

 

 

 

「お前はいつもっ、いつも私たちの邪魔をする!!」

 

「くそっ、こんなところで、やられてたまるかよっ!!」

 

 

 

《ファントムペイン》にとっては、今ここでミネルバを落としておきたいところだが、ミネルバとその艦に搭載されているMSは、どの機体も手強い。

今ステラが、対峙しているインパルスもその一機だ。

これまで数度に渡って戦闘を繰り返してきたが、必ずその要所には奴らがいる。

 

 

 

「お前っ、今度こそぉぉぉッ!!!!!」

 

 

 

ガイアは背部のスラスターを噴かせ、全力でインパルスに斬りかかる。

そしてインパルスもまた、それを避けるようなそぶりも見せず、受け合うつもりのようだ。

 

 

 

『シンッ! 一旦態勢を整えるんだ!! シンッ!』

 

「うるさいっ!! やれるッ!!!!」

 

 

 

 

通信越しに聞こえるアスランの声。

熱くなっているシンに対しての忠告も兼ねてのことなのだろうが、シンは一切無視。

そのままガイアと正面切って戦う。

 

 

 

「はあああああッ!!!!」

 

「てええええいッ!!!!」

 

 

 

互いの刃をシールドで受け、鍔迫り合いのような膠着状態へ。

激しい火花が散り、このままの状態が続くかと思いきや、インパルスの方が仕掛ける。

体を半歩引いて体勢のバランスを崩すと、ガイアシールドを弾く。

ガイアの体勢が崩れたところで、もう一度ビームサーベルを振り下ろすが、ガイアは反応して後ろに飛び退いた。

空を切ったビームサーベルの刃は、そのまま海面を叩きつけ、ビームの熱で水分が蒸発する。

その蒸発した水分が、霧のように二機の間に広がるとその隙をついてガイアは後方に下がった。

ガイアの背後には、陸地が続いており、そこならばガイアにとっても有効な攻撃手段を見出せると思ってのことだ。

しかし、シンはそれでも果敢に攻め込んだ。

相手の土俵に入り込んで、再びビームサーベルで斬りつける。

ガイアも負けじとビームサーベルを振るいながら応戦するが、その二機の攻防の戦場となった森林地帯は、ビームサーベルによって斬り倒された木々が散乱し、見るも無残な光景だ。

そして、その様子は建設予定地で作業をしている建設途中の地球軍基地の者たちにも知れ渡る。

 

 

 

 

「くそっ! 対空砲を急げっ!! ええいっ! ロアノークのやつ、何をやっているかっ!?」

 

「し、しかし、敵の機体はPS装甲を持っています! 対空砲ではとてもっ……!」

 

「っ〜〜!! そんなことはわかっているっ!! しかし、やらねばならんのだっ!!

このままでは基地は全滅だ! 対空装甲車も出撃!! MS部隊にも応援を要請しろっ!!」

 

「り、了解っ!!!」

 

 

 

基地の司令官の慌てっぷりは、味方の部下たちにも伝染し、周りの者たちも慌ただしく迎撃準備にはいる。

着ても無駄に思えるような防弾チョッキと鉄製のヘルメットを被り、対空砲へと乗り込む者や、MS迎撃用にと用意されていた対空装甲車輌へと乗り込む者たち……。

そして、建設予定地にて奴隷のように働かされている地元の住民と思しき人々にまで、その緊張感は伝わる。

見張りのように立っていた兵士たちはどこかへと走り去り、それを機に掘削機などを放り捨てて、地元民たちは頑丈に建てられたフェンスの方へと走り込む。

 

 

 

「お、おい! 一体どうなってるんだっ?! 助けが来たのかよ?!」

 

「わからないが、今が好機だ! 早くここから逃げるぞ!」

 

「早く離れるぞ! 家族の元へ急ぐんだ!」

 

 

 

 

混乱のさなか、駆け出す地元民の向かうフェンスの向こう側には、働かされていた者たちの家族が待っていた。

頑丈に建てられたフェンスが二枚……。

その間に塹壕のようか深い堀があり、強制労働を強いられていた男達は、兵士たちの目を盗んで掘削していた逃げ穴から次々に脱出し、家族の元へと駆け出す。

 

 

 

「あなたっ!! こっちよ、早くっ!!」

 

「パパァーーー!!!!」

 

「急いで!! 早くっーー!!!」

 

「お父さんっ、急いでっ!!」

 

 

 

フェンス一枚で隔てられた家族。

逃げ出す男達の妻や娘達が、不安に苛まれながらも、久しぶりに見る家族の姿に安堵していた。

しかし、その近くではMS同士の戦闘音が続いており、その爆音が一気に現実を思い知らせる。

未だにガイアと斬り合っていたインパルス……そんな時、突如別方向から機関砲の弾丸が横切る。

 

 

 

「っと、危なっ?! なんだよっ……?!」

 

 

 

砲弾の放たれた方向へと機体のカメラを向ける。

するとそこには、対空砲に乗ってこちらを狙ってくる地球軍兵士の姿を確認する。

 

 

 

「地球軍っ?! なんでこんなところにっ……もしかして、あいつらと同じ部隊の……?」

 

 

 

シンの言うあいつらとは、アーモリーワンから機体を強奪した部隊……『ファントムペイン」の事だ。

だが、それにしたは対空砲を設置するなど準備がよすぎる気もした……。

そう思い、シンはさらに奥の方へと視線を送る。

するとそこには…………。

 

 

 

 

「地球軍基地っ?! こんな場所に……? 建設中か?」

 

 

 

簡易的な施設がチラホラ……軍事基地というにはみすぼらしい外観から察し、シンは基地の方へと向き直った。

どうやらガイアは一旦離れていったようなので、奇襲される心配もない。

基地を建設しているとなると、それは当然カーペンタリア基地への抑止力といって差し支えないだろう。

これでようやく、突如として現れた地球軍MSの大部隊による奇襲というカラクリが判明した。

基地内部では、インパルスの姿を確認したためか、兵士たちの慌てようが目に見えてわかった。

そんな中で、基地から逃走を図ろうとした現地民の姿を確認した一部兵士たちが、逃げ惑う現地民達に向けて銃を乱射。

大口径のアサルトライフルから放たれた弾丸は、無情にも現地民たちの体を貫き、真っ赤な鮮血をその地に流した。

 

 

 

 

「っは…………!!!!!」

 

 

 

 

その瞬間、シンの脳裏にも……かつての光景が浮かび上がった。

無情にも命を散らされた家族……。

鮮血は辺りを濡らし、もはや原型をとどめていない肉体は、ボロ雑巾のように、その場に倒れていた。

人だったものが、ただの物言わぬ肉塊になってしまった……あの瞬間を……!

 

 

 

「くっ……!!! くそ……っ、お前らぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

 

操縦桿を握る両手に、力がこみ上げてきた。

コックピット内で叫ぶシン……その瞬間に、装甲車輌から砲弾を浴びせられた。

機体はVPS装甲があるため、ほとんど無傷に近い状態だったが、それによって生み出される閃光と衝撃が、シンの逆鱗に触れた。

 

 

 

「このっ、くそったれがあぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

 

 

 

シンは迷いなく引き金を引いた。

インパルスの胸部に搭載されている、迎撃用のCIWSが火を噴き、対空砲撃隊や、装甲車輌を勝ち抜き、辺り一面を爆破の炎で包む。

さらに基地内部へと侵入すると、ビームライフルで主要施設と思われるハンガーブロックを狙い撃ち……。

ビームサーベルで発電施設を斬り裂き、再びCIWSで辺り一面に砲弾の雨を降らせる。

その様子をセイバーに乗るアスランと、後から駆けつけたストライクに乗るイチカが目にした。

 

 

 

「っ?! シンっ、何をやっている!!やめろ!」

 

「基地っ?! こんなところに建設してたのかよっ……! だけどその前に……シンっ! やめるんだ! もう破壊する必要はない!!」

 

 

 

二人からの制止の声も聞かず、シンは撃ち続ける。

 

 

 

『シンっ、やめろっ!! もう彼らに戦闘能力はない!』

 

「チィッ…………こんな奴ら、生きていていいものかっ!!」

 

 

 

この場において、隊長であるアスランの指示は絶対だ。

しかし、シンはそれを無視して、さらなる攻撃を続けようとするのだが、インパルスの立っている場所から、約100メートルほど離れた近い位置に、一振りの剣が降ってきた。

 

 

 

「なっ……!?」

 

 

 

銀色に輝く刀身と、鍔の部分がオレンジ色に染まっている銃剣一体型武装《クラウソラス》。

シンは上空を見上げる……。するとそこには、ずっとこちらの動きを観察してるかのように見ているストライクの姿が……。

 

 

 

「っ〜〜! なんだよ、イチカっ……!」

 

『もうやめろって……! 相手に戦う意思はもうないんだぞっ?! それを一方的に……これじゃあ、ただの虐殺と同じだっ!』

 

「っ…………」

 

 

 

イチカの言葉に、シンはハッとさせられたようで、操縦桿のトリガーにかかっていた指を、ゆっくりと離した。

その後、ビームサーベルを戻し、現地民たちのいるフェンス際まで歩いていくインパルス。

イチカは、一体どうするのかと思って見ていると、インパルスは塹壕の中へと入っていき、両手でフェンスの一面を握りつぶすと、そのまま上へと引き上げる。

どれだけ頑丈に建てたものだと言っても、MSの力でやってしまえば、簡単に引っこ抜ける。

その瞬間、現地民の表情からは悲しみが消え、歓喜の喜びと涙が溢れ出てきた。

インパルスの足元付近で抱きしめ合う家族の姿に、シンもまた、少なからず救われた気持ちになっているのだろう……。

 

 

 

 

「よかった……これで、みんな……」

 

『シン、お前……』

 

『………………』

 

 

 

地元民達を解放するインパルスの姿を、地上に降り立ったストライクと、上空から眺めるセイバー。

イチカとアスランから見て、その姿は、どう映ったのだろうか……。

その頃、すでに劣勢へと追い立てられた地球軍は、ネオの指示に従い、海上空母である『J.P.ジョーンズ』と、戦場に展開している全MS部隊へと通信をつないでいた。

 

 

 

「ジョーンズっ! 撤退するぞ! アウル、スティング、ステラ! 終了だっ、とっとと帰艦するぞ!」

 

『っ……ちぃ!』

 

『…………わかった』

 

『ええ?! なんでっ……?!』

 

 

 

 

ネオの指示に従い、ジョーンズは撤退を開始。

スティングのカオスと、ステラのガイアもまた、それぞれ空路と陸路からジョーンズへと帰艦していく。

しかし、アウルだけは、どうやら納得できていないようで……。

 

 

 

『借りた連中が全滅したんだよ。基地の建設予定地にまで、入られるしな』

 

「はぁ〜? 何やってんだよっ、ボケッ!」

 

『言うなよ……。お前だって、大物は何も落とせてないだろう?』

 

「っ…………そうかい。だったら、落としてやるよっ……今からでもさぁ!!!」

 

『あ? おいおいっ、お前まさかっ……!!』

 

「潜水艦くらいは落としとかないとさぁー、こっちがやられるかもしれないだろうっ!!!」

 

『おいっ、アウル!』

 

 

 

 

そこで通信は途切れた。

アウルの駆るアビスは、海中でルナマリアとレイのザクと交戦していたが、MA形態になると、その場から離脱していった。

 

 

 

「なっ、なにをっ?!」

 

「行かせるかっ、ルナマリア!」

 

「え、ええ!!」

 

 

 

圧倒的な推力でその場から離れるアビスに、ザクの心許ない推力で追う。

手に持っているバズーカの引き金を引き、砲弾がアビスに向かって飛んでいくがアビスにその砲弾が当たることはない。高速で海中を動き回り、こちらに連装砲の砲身を向けてくる。

 

 

 

「くっ……!」

 

「あっ……!」

 

「しつこいなぁ! お前らには用は無いんだよっ!!」

 

 

 

ドンッと、海中に響く連装砲の砲撃音。

撃たれた砲弾4発は、アビスを追っていたザク二機へと降り注ぐ。

二機はとっさに回避するも海中ということもあり、宇宙用の機体であるザクは動きが鈍くなる。

レイのザクファントムはギリギリで躱す事が出来たが、ルナマリアのザクウォーリアは一発の砲弾が左肩の装甲に着弾。

肩のパーツが破壊され、体勢を崩す。

 

 

 

「うわあああっ!!?」

 

「チィッ! アリサ! こちらからデータを送る! 甲板からアビスを狙えっ!!」

 

 

 

 

レイの指示が飛んできたのは、アリサが最後のウィンダムを撃ち落とした時だった。

 

 

 

「こいつで終わりっ!!」

 

 

 

右舷甲板から電磁狙撃銃の銃口を向けて、空中を飛んでいたウィンダムに狙いを定めるアリサ。

操縦桿の引き金を引く……。電磁狙撃銃が火を噴き、高速で射出された弾丸がウィンダムの機体を撃ち抜き、空で爆散した。

 

 

 

「よし! これで終わりーーーー」

 

『アリサ!こちらからデータを送る! 甲板からアビスを狙え!!』

 

「うわっ?! ちょっと、ビックリするじゃない……! データ?」

 

『アビスがこちらから離れて、ニーラゴンゴのいる方へ向かった! そちらから狙えるかっ?!』

 

「えぇ……?! って、ここからって言われても……!」

 

 

 

一応レイから受け取ったデータを目にするが、海中という独壇場て動き回るアビスの動きは、アリサが想像していた以上の速さだった。

 

 

 

「こんな奴をどう狙ってのよっ……! まぁ、やるだけやるけどっ!」

 

 

 

データを反映させて、スコープ内に円状の照準センサーを使い、おおよその予測を立てる。

一度だけ目を瞑り、深呼吸をした後に再びスコープからモニター先の海面を見つめる。

 

 

 

「相手の速度……距離……発射から着弾までのタイムラグ……射線軸……オールクリア……射撃、いまッ!!!」

 

 

 

レール銃の引き金が引かれ、銃口から高速で電磁砲弾が放たれた。

砲弾が海中へと入る瞬間、とてつもない衝撃を生みだして海面の水がドッ、と弾ける。

 

 

 

ピーッ、ピーッ、ピーッ!!!

 

 

 

「あん?」

 

 

 

海中を高速移動するアビスのコックピット内では、警戒音がこだましていた。

攻撃がやってくるという警戒……。

どうしてかはわからない……だが、アウルはとっさに操縦桿を横に切った……。

その瞬間……。

 

 

 

ドオォォォォーーーーン!!!!!

 

 

 

 

「おわぁっ??!!!」

 

 

 

 

アビスの右側装甲に直撃。

アビスの機体全体に衝撃が走り、滞りなく進んでいたアビスの針路にが初めて乱れた。

 

 

 

「ああっ?! なんなんだよ!」

 

 

 

センサーで弾道を解析してみて、それがミネルバの甲板から撃たれたことを知るアウル。

 

 

 

「はぁあっ?! あの距離から当てんのっ?! っつーことは、あのスナイパーかよ!」

 

 

 

 

アリサの乗る機体は、一度ユニウスセブンで戦った時にステラのガイアと交戦していた。

その時のデータを事前に把握してはいたが、ここまでの狙撃をするとは予想してなかった。

 

 

 

「チッ、やっぱコーディネーターってムカつくわぁ!」

 

 

 

衝撃は凄まじかったものの、外傷はそれほどでもない。

アウルは再び操縦桿を動かし、アビスの進行を開始。

再びニーラゴンゴへと接近していく。

一方、狙撃した側のアリサ達は……。

 

 

「レイ、どうなった!? アビスは?」

 

『ダメだ! 当たりはしたがシールドの上だった! 大して効いていない!』

 

「くっ……! 手応えあったと思ったのにっ……!」

 

『俺たちが追う!』

 

「ごめん、任せるわ……」

 

 

 

 

唯一の狙撃チャンスだったが、その結果は失敗。

アビスの航行速度を考えると、二発目は確実に躱されてしまうだろう。

アリサはスコープを直し、撃ち損じた見えない標的へと視線を送った。

少しだけ歯を食いしばり、操縦桿から話した両手をギュッと強く握りしめた。

そして、海中から追いかけるレイとルナマリアは……。

 

 

 

 

「急げ、ルナマリア!」

 

「わかってるわよ!! でもこれでスラスター全開なのよ!!」

 

 

 

元々が海中戦闘用の機体ではないため、どうしても駆動系の性能差は否めない。

二機のザクが追いかけていく中、もう相当距離を置いて移動しているアビスは、すでにニーラゴンゴを視界に捉えていた。

 

 

 

 

「くっひひひひ……!」

 

 

 

逃げるようにその場から離れていくニーラゴンゴに、悪魔のような笑みを向けるアウル。

ニーラゴンゴはボズゴロフ級潜水艦として、ザフト軍の地上戦闘には数多く配備されてきた艦だ。

数多の実戦の中をかいくぐり、その性能なども一目置かれているはず……。

しかし、今こうしてアウルの瞳に映る敵影は、対抗する術もなく、ただただ自分から逃げ惑う子羊のようだ。

 

 

 

 

「悪いんだけどさぁー、いっちょ死んでくれよッ!!!!」

 

 

 

そんな残酷な言葉と共に、アビスのシールド上部にある魚雷発射管4門全てから魚雷4発が発射される。

そしてそれは、ニーラゴンゴのほうも捕捉していた。

 

 

 

「アビス接近ッ!!」

 

「魚雷ッ、来ます!!」

 

「機関最大っ! 回避ぃッ!!!!」

 

「ダメですっ! 間に合いませんッ!!!!」

 

 

 

精一杯の足掻きだっただろう……。

しかし、その足掻きは無情にも死の宣告とともにかき消された。

放たれた魚雷はニーラゴンゴの機関部を命中。

大爆発が起こり、同時に機関部を破壊されて、航行不能状態に……。

 

 

 

「機関部大破ッ!!!」

 

「航行不能ッ!!!」

 

 

 

艦内には爆発の衝撃で穴が開いてしまったため、海水が勢いよく入り込み、中にいた乗組員たちはそれに飲み込まれていった。

 

 

 

「そぉーらぁ! もう一丁ッ!!!!」

 

 

 

今の状態でも、十分に大惨事なニーラゴンゴに対して、アビスはさらに追い討ちをかける。

爆発を起こすニーラゴンゴから離脱すると同時に、シールド下部の連装砲か発射された。

今度は4発の砲弾が船体を撃ち抜き、またしても大爆発を起こす。

そして、流石に船体が耐えられなくなり、ニーラゴンゴは船体全てに火の手が上がり、木っ端微塵に爆発してしまった。

 

 

 

「ぬぅっ?!」

 

「ちょ、ちょっとッ!!!!」

 

 

 

海中でずっとアビスを追っていたザク二機。

目の前でニーラゴンゴが撃たれて、爆散したのをその目で確認したが、問題なのはそのあとだ。

爆発した影響で、その水圧や衝撃が二機を襲う。

 

 

 

 

「くうぅぅぅっ!!!」

 

「きゃあああッ!!!?」

 

 

 

 

爆風による水圧によって弾かれるザク二機。

そしてその衝撃は、海上を渡っていたミネルバにも届く。

 

 

 

「ぁ…………っ!」

 

「二、ニーラゴンゴのシグナル消失!!」

 

「「「っ!!!!?」」」

 

 

 

ミネルバの眼前で巨大な水柱が立ち上がったのだ。

それが、ニーラゴンゴの爆発だということは、その場にいる誰もがわかった。

本当ならば、次の目的地までの護衛として共に航行してくれるはずだった……。

それが、突然の地球軍の奇襲に遭い、このような結果になってしまった。

 

 

 

「くっ…………」

 

 

艦長であるタリアは、苦い表情を見せる。

同じ軍の仲間が、戦場で散っていくところは、何度見ても慣れない……。

自分の艦の船員やMSパイロットたちは、誰一人として欠けてはいないが……。

それでも仲間たちの死は確かなものだった。

 

 

 

「はぁ……このままじゃどうにもならないわね。アーサー!」

 

「は、はい! 艦長」

 

「ボサッとしてないで……MS帰投、レイとルナマリアの機体の回収を急いで!

こんなところで足止め食らってる場合じゃないでしょう? 敵勢力は撤退したみたいだけど、またいつどこで奇襲されるか……わかったもんじゃないわ」

 

「は、はい! MS隊に帰投命令を!」

 

「了解! ザラ隊長、帰投願います!」

 

「第二種戦闘配備に移行……警戒は厳にね」

 

「了解しました」

 

 

 

ブリッジでは、少しだけ落ち着かせられたが、まだまだ気を抜くわけにはいかない。

海中から上がってきているレイとルナマリアのザクを回収し、敵基地内にいたインパルス、セイバー、ストライクにも帰投命令が下り、三機はその場から離れ、ミネルバへと帰投を始めた。

そして、甲板にいたアリサのザクは、周囲を警戒しながらレイとルナマリアのザクが収容されるまで見張りを続けていた。

狙撃銃を下ろし、海面を見つめるザクウォーリアのモノアイ。

アリサは操縦桿から手を離すと、被っていたヘルメットを脱ぎ、座席の後ろへと置く。

辺りをセンサーで見回して、ほかに敵影がいないことを確認するが、敵勢力を示すマーカーはどこにもなかった。

 

 

 

(撤退した……と見ていいのよね? なら、イチカ達のところもすでに制圧したってことよね……)

 

 

 

視線を一度だけ陸地に向け、座席の後ろに備え付けてあった小さな引き出しを引く。

とそこに、小さな包み紙に包まれた丸い物を取り出し、両端で締めている紙を解く。

するとそこから、ピンク色のアメ玉が現れた。

 

 

 

「はぁ…………うん、美味しい……」

 

 

 

疲れた脳には糖分が一番。

そういって、アリサはアメ玉を食べる。

今回のように、集中して狙撃をしなくてはならない状況が続いた時には、こうしてアメ玉を舐めている。

しかし、その表情は、あまり優れない。

 

 

 

「……あの時、私がアビスを撃ててれば……!」

 

 

 

海面には、撃墜したウィンダムやダガーの装甲板だけでなく、ニーラゴンゴのものと思われる破片などが浮かんで来ていた。

僅か数センチ……その射線のズレが、味方の生死に関わるのだ。

たしかに命中はした……だが、それでも撃墜できていないのならば意味はない。

 

 

 

「ごめんなさい……みんな…………!」

 

 

 

海に向けて敬礼をしたアリサ。

その後、ブリッジにいるメイリンから格納庫へと収容指示が出たため、アリサは機体を動かす。

カタパルトデッキから入り込み、そのまま歩いて格納スペースへ。

すでに中にはレイとルナマリアのザクが収容されており、その横ではイチカのストライクとアスランのセイバーが収容されようとしていた。

 

 

 

「イチカ……無事でよかった……!」

 

『アリサ……! そっちも、無事よかったよ……』

 

「うん……」

 

『どうした? どこか怪我したのか?』

 

 

 

アリサの声色には普段のような明るさがなく、どこか暗く感じた。

アリサのザクが収容完了したのを確認し、イチカは機体から降りて、アリサの元へと向かう。

その様子を見ていたアリサも、機体から降りてきて、下で待っていたイチカの元へと向かった。

 

 

 

「本当に大丈夫か?」

 

「うん……でも、ニーラゴンゴが……」

 

「…………」

 

 

 

アリサが落ち込んでいる理由を、イチカはなんとなく悟った。

 

 

 

「そうだな……でも、あの状況だったら……」

 

「うん……でも、狙撃はできたはずなのに……」

 

 

 

難しい状況だったのは確かだ。

しかし、そうだったからと言い切るのも、アリサとしては心苦しい思いのようだ。

 

 

 

「アリサ……今回は、失敗したかもしれない……でも、次は必ず仕留めればいい」

 

「イチカ……? でもっ……!」

 

「あぁ……。ニーラゴンゴの船員たちは、残念だけど……。それでも、あの人たちだった軍人なんだ……覚悟はできていた筈だよ。

全ての責任を、アリサが背負いこむ必要はない……」

 

「…………うん」

 

「だから次だ……。俺も、隊長機を逃したからな。これで引いてくれたなら、御の字だけど……。

たぶん、また奴らは仕掛けてくるだろうからな」

 

「そうね……うん、わかった。ありがとう、イチカ」

 

「どういたしまして」

 

 

 

最前線の戦場では、後悔している暇もない。

それが仲間の戦死だったとしても……その次は、自分なのかもしれないのだ。

生き残るために、切り替えは必要だった。

イチカに諭され、アリサの心情も元に定まったところで、格納庫にパチィィンっと、一発の平手打ちの音が響いた。

 

 

 

「「ん?」」

 

「なに?」

 

「アレは……シンと、アスランさん?」

 

 

 

いきなりの音に、レイとルナマリアを始め、アリサ、イチカ……そして、整備班の面々も目を丸くして、音の発信源の方を見た。

そこには、頬を平手で叩かれたシンと、それを行った険しい表情のアスランがいた。

 

 

「っ……! 殴りたいなら別に構いませんけどねっ!」

 

「…………」

 

「俺は別に間違ったことはしてませんよっ! あそこの人たちだってっ、みんなアレで助かったんだっ!」

 

「っ……!」

 

 

 

パチィィン!!

再び頬を平手で打つアスラン。

恨み顔でシンが睨むが、それに臆することなく続けるアスラン。

 

 

 

「自分だけで勝手な行動をするなっ!! 力を持つものならば、それをもっと自覚しろっ!!」

 

「はぁっ?! 意味わかんないですよ! なに言ってんだよあんたは!」

 

「俺は基地を完全に破壊しろなんて命令したかっ? 艦長は? 基地やそれに類するものがないか知らせろとしか言われてなかっただろう!!

それなのに、なんなんだ? 君のあの行動は……!!」

 

「っ…………!!」

 

「俺の指示に従わずに独断専行っ、挙げ句の果てに戦意損失している敵を殲滅っ……これが君の戦い方かっ?!」

 

「っ……あんたに何がわかんだよっ! この間までアスハの護衛やってたやつがっ、いきなり服隊したかと思えば隊長だぁ?

わけわかんない上に、上から目線で暴力かよっ! なんなんだよ、あんたは一体……!」

 

「そんなこと簡単だ……今の俺はFAITHで君の上官だ! 上官の命令には従うのが、軍人なんじゃないのかっ、そんな当たり前のことは士官学校で習っている筈だが?」

 

「くっ…………」

 

 

 

もっともな正論を突きつけられた為、シンは反論できなくなった。そんなシンを見て、アスランはため息をつく。

 

 

 

「とにかく、今回の君の行動は度し難いものだ。今後あのようなことがあれば、俺は何度だって君を叩くぞ」

 

「っ……」

 

「戦争はヒーローごっこじゃないんだ……! 自分のやっていることがみんな正しいなんて思い上がりは、今のうちに捨てておくんだな……っ!」

 

「っ〜〜〜〜!!!」

 

「わかったか、シンっ?」

 

「ふんっ……!」

 

 

アスランの問いかけにも、シンは断固として聞き入れない姿勢をとる。

何があったのかを知るのは、当の本人達と、イチカだけだ。

アスランはそのまま待機室へと向かい、シンはまたアスランと鉢合わせになるのが嫌で、その場に留まり、何があったのかが気になるルナマリアとアリサの二人は、一緒にいたであろうイチカへと説明要求。

レイは一人だけ何事もなかったかのようにその場を後にした。

こうして、突如して起こったインド洋での死闘は、ザフト軍艦ミネルバ勢の勝利に終わった。

しかし、その代価として、尊い命が失われたのも事実だった……。

 

 

 

 






最近仕事しかしていない今日この頃。

寝ている時間の倍以上を職場で過ごしているため、執筆を始めても眠気に負けて爆睡……。
そんな日々が続いておりまして、更新が遅れてしまっています(><)
毎回楽しみにしていただいている読者の皆さんには、大変申し訳ないと思っています!

一応亀更新ななっただけで、生存はしていますので、そのご報告をさせていただきます!

それではまた
感想よろしくお願いします!!

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