機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜   作:剣舞士

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これで、書きだめのプロローグは終了です。


えっと、最後の方はですね…………正直に言いましょう。

書きたかったん、デスっ!! 以上っ!!!!




プロローグⅣ

C.E71年 6月15日。

オーブ連合首長国 オノゴロ島。

この日、このオノゴロ島に住む……いや、オーブという国に住む国民にとって、きっと、一生忘れられない出来事が起こった。

それは、のちに『オーブ解放作戦』という名で呼ばれる、地球連合軍によるオーブ連合首長国に対する軍事侵攻だ。

地球連合軍は、後期のGAT-Xシリーズ……『カラミティ』『フォビドゥン』『レイダー』の名で呼ばれる新型のガンダム三機のMSの性能テストも兼ねて、オーブのマスドライバー施設『カグヤ』の接収を行うため、上記の三機と、多数の『ストライクダガー』を用い、オノゴロ島へと侵攻してきた。

そんな中、オーブ側も、量産機の『M1アストレイ』を投じて、国防戦へと突入。

それに加え、モルゲンレーテ社に匿っていた地球軍艦『アークエンジェル』も戦列に加わり、オーブの海岸線から、領海域に当たる範囲では、大出力の砲弾や銃弾の雨が降っていた。

 

 

 

 

「はっ! はっ! はっ!」

 

「はっ、はっ、はっ……!」

 

「二人とも、急げっ!」

 

「あともう少しよ!」

 

 

 

そんな戦闘が行われている最中に、険しい山道を駆け抜ける、一組の家族が……。

父親と母親の二人が、先に先行する形で、山の急斜面を下りていき、その後ろから、10代前半の少年少女二人が、一生懸命走ってついてきているという形だ。

男の子の方が、女の子の手を握り、一緒に走ってきた感じだろう……。

 

 

 

「はぁ……はぁ……義父さん、この道であっているのかっ?! 見る限り木々しか見えないんだけど……っ!」

 

「あぁ……このまま真っ直ぐ下れば、軍の施設に出られる。ユリス、アリサ、二人とも大丈夫か?」

 

「ええ、なんとか……」

 

「結構っ……キツイ、かも……はぁ……はぁ……」

 

 

 

 

壮年の男性、アッシュは、妻ユリスの手を取りながら、息子と娘に視線を送る。

片や、義理の息子たるイチカは、義姉のアリサの腕を抱えた状態で、息を整える。

地球連合軍の艦隊が、オノゴロ島に侵攻してきて、まだ1時間も経っていないだろう。

海沿いにあったラインハルト家の家は、多分踏み潰されているだろうか……。

もっとも近くを通れる最短ルートで、港にある軍の施設を目指すのだが、そこが一番の激戦地である。

港に行けば、軍の輸送船に乗り、オノゴロ島からの一時退去を行えるかもしれないが、そこにいくまでに、戦火に巻き込まれないという保証もない。

しかし、そこにいくしか、助かる道はないのだ。

 

 

 

「イチカ、アリサの手を離すなよ?」

 

「わかってるさ、義父さん……っ!」

 

「ユリスとアリサも、頑張ってくれ……!」

 

「ええ……」

 

「……うんっ」

 

 

 

 

家族四人は、再び走り出した。

最短ルートで港を目指しているため、海の方がチラチラと視界に入る。

そこには、地球軍の新型量産MSと、オーブの量産MSが激しい戦闘を行なっていた。

そして海上では、蒼い翼を持つMSが、死神を彷彿とさせる大鎌を持った緑色のMSと、大きな鉄球と二砲門の銃を手にしている黒いMSと戦っている。

そこに、地上から大量の重火器で砲撃を行なっている青緑色のMSも加わり、翼を持ったMSは、苦戦を強いられているようだった。

 

 

 

「くそがっ……! なんだって、なんだってこんな……っ!」

 

「イチカ……」

 

 

 

 

走りながら、イチカは毒づいた。

たしかに、MSは戦闘の為に作られたものなのかもしれない。

だが、オーブのように、国防の為に使うことだって出来るはずなのだ。

しかし、今の世界では、プラントと地球……コーディネーターとナチュラルの人種間による戦争が行われている。

今それをやめろと、ここで叫んだところで、やめる者たちなどいない。

そんな毒づいたイチカを見て、アリサも心配そうに見る。

 

 

 

「見えたぞっ! 軍の施設だ!」

 

「「「っ!!?」」」

 

 

 

 

アッシュの声に、希望の光が差し込んだ。

しかし、そんな希望を踏み潰すように、前方には黒い影が広がった。

 

 

 

「っ!? 危ないっ、逃げろっ!!」

 

「「「っ!!?」」」

 

 

 

とっさにイチカが叫んだ。

その黒い影は、どんどん巨大になっていくと、地上に大きな地響きを起こし、巨大な機影へと姿を変えた。

アッシュはユリスを抱きしめ、とっさに左に飛び、イチカもアリサを抱きしめて、後ろに倒れこんだ。

そこに現れたのは、青緑色の装甲と、目に見えるだけで異常なほどの重火器を積んだ新型MS《カラミティガンダム》だった。

M1アストレイ隊を砲撃で駆逐していくと、今度は空を飛ぶ蒼い翼を持ったMS《フリーダムガンダム》を落とそうと、砲撃を集中していた。

そして、フリーダムもまた、砲撃を行なってくるカラミティに対して、手に持っているビームライフルを発射。

たった一発の銃撃だというのに、山の地面は大幅に削られ、大きな爆発を起こす。

 

 

 

 

「きゃああああっーーーー!!!!???」

 

「ぐっーーーー!!!!?」

 

 

 

身にしみる恐怖。

たった一発でも当たれば、それは死を意味する。

空を駆ける機影には、イチカたちの存在など見えていないだろう。

イチカとアリサは、恐怖に打ち震えていた。

今のは偶然に外れただけだ。

そして、今家族が全員無事なのも、ある意味では奇跡に等しいものだった。

目の前では爆発によって、大きなクレーターができていた。

そのクレーターを挟む形で、アッシュとユリス、イチカとアリサと、見事に離れ離れになってしまった。

 

 

 

 

「義父さんっ!」

 

「私たちは大丈夫だ!」

 

「イチカ、アリサ、無事っ!?」

 

「うーんっ! 大丈夫だよー!」

 

「イチカっ、お前はそのまま、アリサと一緒に軍の施設に行けっ!」

 

「「っ!!?」」

 

「私と母さんも軍の施設に向かう! 向こうで合流しよう!」

 

「何言ってんだよ! 今離れ離れなったらっーーーー!!?」

 

「このままでは逃げ切れんだろうっ!! ここを飛び越えている間に、二射目があったらどうするんだ!」

 

「っ……!!」

 

「とにかく、アリサと一緒に行けっ! 大丈夫だ、すぐにまた会える!」

 

 

 

 

 

アッシュの言葉には、なんの確証もない。

だが、この状況下において、まともな判断ができる人間の方が少ない。

イチカもアリサも、正直何も手立てはなかった。

こんな時に、どうやって逃げればいいのか、どうすれば助かるのか、そんなサバイバル経験は皆無。

そのため、今は父、アッシュの言うことを聞くことしかできなかった。

 

 

 

「っ……わかったっ! 必ず、後で会おうっ!」

 

「っ……!」

 

 

 

 

アッシュに約束して、イチカはアリサとともに、下り坂になっている山道を走った。

 

 

 

「イチカっ、本当にこっちであってるのっ?!」

 

「海が見えた方向はこっちだ! 沿岸部に出れば、あとは真っ直ぐ港に向かうだけだ!」

 

「でもっ、戦闘に巻き込まれるよっ!?」

 

「もうここまで近くに来たんだ! 後は、俺たちがどれだけ速く、港につけるかどうかだよっ!

だった、最短距離で向かった方が速い! 義父さんも言ってたじゃないか!」

 

「そ、そうだよねっ……ごめん!」

 

「必ず生き残るぞっ……そして、義父さんと義母さんに会うんだ!」

 

「うんっ!」

 

 

 

 

急な斜面が続く山道。

滑り転げないように、気をつけながらも、その足は前へ前へと進む。

そして、やっと山道を抜け、コンクリートで埋め固めた道に出る。

 

 

 

「見えたっ! 港だ!」

 

「ぁあっ……!」

 

 

 

希望が見えた。

イチカとアリサの顔が綻び、二人は最後の力を振り絞って走っていた。

港では、オーブの海兵たちが避難船に民間人たちを乗船させている途中だった。

そして、曲がり角を曲がり、直線距離だけになった瞬間、二人の背中から、とてつもない衝撃が襲った。

 

 

 

バアァァァーーーーーーンッ!!!!!!

 

 

 

 

「きゃあああああっーー!!!?」

「うわぁああああっーー!!!?」

 

 

 

アリサの手を握っていたイチカは、吹き飛ばされた最中、とっさにアリサを抱きしめ、一緒に地面に叩きつけられた。

 

 

 

「ぐっ、くぅ……!」

 

「っ、イチカっ!? 大丈夫っ!?」

 

「あ、あぁ……なんとか……アリサは?」

 

「あなたがかばってくれたんだもん……大丈夫に決まってはじゃないっ……!」

 

「ははっ、よかった……」

 

「良くないわよっ! 本当に大丈夫っ!? 怪我したんじゃ……」

 

「大丈夫……少し打ったくらいだから、多分打撲程度……にしても、一体何が……」

 

 

 

衝撃が襲って来た方向に視線を向ける……。

すると、そこには、山の斜面が跡形もなく吹き飛び、凄まじい砲撃の後が残っていた。

そして、その巨大なクレーターの前には、黒髪の男の子の姿が。

 

 

 

「今の衝撃は、あれだった、のか……?」

 

「あの男の子、大丈夫なのかな……?」

 

 

 

二人はなんとか起き上がり、男の子の方へと駆け寄ろうとしたが、その男の子には、オーブの軍人が向かっていた。

そして、イチカとアリサのところにも、別の軍人が……。

 

 

 

「君たち、大丈夫かっ!?」

 

「は、はい……なんとか……」

 

「わ、私も……」

 

「よかった……っ! では、急いで避難船に乗りなさい! 急がないと、ここも戦火に巻き込まれるっ……!」

 

「っ!? ま、待ってください! まだ、パパとママがっ!」

「っ……!!!」

 

 

 

 

アリサの言葉に、イチカは背筋が凍るような感覚を感じた。

先ほどの爆発……あの方角は、アッシュとユリスが向かった方向ではなかったか……?

 

 

 

「っ……まさか、嘘だよなっ……!」

 

「あっ! イチカっ!? どこに行くのよっ!」

 

「あ、こらっ! 君たち!」

 

 

 

イチカの後を追うように、アリサも爆心地へと向かう。

しかし、そこで見たのは、先ほど倒れていた男の子の、絶望に満ちた姿だった。

 

 

「っ!!? くっ、うぅ……!」

 

「イチカ? っ……ひぃ……っ!!?」

 

「アリサっ、見ちゃダメだ!」

 

 

 

目の前で見せられていた現状。

おそらく、男の子の家族だろう……その家族が、見る事も出来ないような、そんな残酷なまでの死に様を見せられた。

人は、こういう死に方だっただろうか……そんな問いかけが頭に浮かんだ。

いや、違う……こんな人の死に方はおかしい。

アリサに覆いかぶさるように抱きかかえたイチカもまた、目の前の光景を直視できなかった。

だが、そんなイチカの視線の先に、目を疑いたくなるような光景が……。

 

 

 

「ぁ……はっ……!」

 

「ん? ……どうしたの、イチーーーー」

 

 

 

イチカの狼狽に気づいたアリサは、イチカの見る方向に視線を向けた。

そして、アリサもその目でしっかりと見ていた。

大きな木に、体の右半身を潰された父、アッシュと、大きな瓦礫に脚を挟まれ、倒れている母、ユリスの姿を。

 

 

 

「パパ……? ママ……?」

 

「っ〜〜〜!!!」

 

 

 

あまりの衝撃的光景に、アリサはその場で固まってしまった。

イチカも我を忘れて、一瞬硬直してしまったが、アリサのかける言葉に我に帰り、アッシュの元へと急いで向かった。

 

 

 

「義父さんっ!」

 

 

必死に叫んだ。

体の右半身を木に潰され、意識がない。

イチカは残っていた左半身を揺すりながら声をかけ続ける。

 

 

 

「おいっ、義父さん! しっかりしろっ! 目を覚ませよっ!」

 

「んっ……んんっ……」

 

「義父さんっ!? 義父さん、待ってろ、今助けるっ!!」

 

 

 

イチカはアッシュを上から潰している大木を動かすために、木の下から持ち上げようとするのだが、とても人一人が持てるほどの重さではない。

 

 

 

「ア、アリサっ……!」

 

「っ…………」

 

「アリサァッ!!!」

 

「っ!!? ぁぁ……イ、イチカ……?」

 

「アリサっ、義母さんをっ! それくらいの瓦礫なら、上から退かしていけば……っ!」

 

「マ、ママ……」

 

 

 

アリサの視線が、イチカからユリスの方へと向く。

 

 

 

「うぅっ……ア、リサ……イチ、カ……」

 

「ママッ!」

 

 

 

ユリスの方は、まだ意識がはっきりとしていた。

だが、頭部を強く打ったのか、額からは血が流れ、体を動かす事も出来ないようだった。

アリサもユリスの方へと駆け出し、急いで瓦礫を払い退ける。

 

 

 

「ママっ、待っててね、今助かるからっ!」

 

「ア、リサ……イチカ、は……?」

 

「大丈夫だよ……っ! 今、パパを助けに行ってるからっ……!」

 

「そう……よかった……」

 

「っ〜〜〜〜!!!」

 

 

 

 

こんな状況だというのに……自分の命の方が危ないというのに、それでも母ユリスは、自分の子供たちの心配をする。

アリサは涙目になり、その両目から溢れる涙の雫を拭いながら、瓦礫を撤去していく。

 

 

 

「君たち! 早く船にーーーっ!? これは……っ!?」

 

「おじさんっ! 手伝ってくれっ! 義父さんをっ、義父さんをーーーー!!」

 

「あ、ああっ! こちら沿岸部避難誘導班! B2区にて、要救助者二名を発見! 人手がいるっ、一人でもいいから回してくれっ!」

 

「ママっ、もう少しだからねっ!」

 

「義父さんっ、起きろっ! 死ぬんじゃねぇぞっ!」

 

 

 

駆けつけた軍人は、イチカの方へと周り、イチカとともに大木を退かそうとして持ち上げる。

 

 

 

「う、うぅっ……」

 

「っ!? 義父さんっ!?」

 

「この、声は……イチカか……? 無事だったか……」

 

「あぁ、無事だよっ! 傷一つ負ってないよ! それより自分の心配をしろっ!」

 

「くっ……ううっ……」

 

 

イチカの声に、アッシュは薄っすらと意識を取り戻した。

だが、自分の置かれている現状に気づいたのか、思いため息をついた。

 

 

「くっ……ぐううっ!」

 

「イチカ……」

 

「なんだよっ……」

 

「もう、いい……下ろせ」

 

「はぁっ!? 何言ってんだよ!」

 

「もう、いいんだ……お前たちは、早く、船に……」

 

「ふざけんなっ!! 必ず生きて会おう……そう言ったのは義父さんだろうがっ!!」

 

「だが……もう、無理のようだ…………。先ほどから、右側の感覚を、一切感じないんだよ……」

 

「っ!?」

 

 

 

イチカの手から、力が抜けた。

 

 

 

「おい……本当にふざけるなって……! 死ぬんじゃねぇよ! 約束したじゃないかっ!!」

 

「ああ……だが、今もこうやって、お前と話しているのが……やっと、だ……」

 

「っ〜〜〜〜!!!」

 

「パパっ! しっかりしてよ!」

 

 

 

と、そこにアリサも合流して、今度は軍人さんとアリサで持ち上げようとするのだが、やはり大木は動かない。

 

 

 

「アリサ……義母さんは……?」

 

「さっき来た軍人さんたちに任せた! 担架に乗せてもらったからっ、大丈夫!!」

 

「そ、そうか……」

 

「イチカもっ、手伝って!」

 

 

だが、アッシュはもう限界に近い。

意識が戻ったのは、本当に奇跡に近いものだったのだろう。

今もこうして話ができているのは、本当に奇跡だった。

 

 

 

「イチカ……アリサ……」

 

「っ……なんだ、義父さん……」

 

「パパっ……!」

 

 

 

弱々しく伸ばす左手。

それを掴むイチカとアリサ。

 

 

 

「アリサ……これから先、どんな事があっても……挫けず、前を向いて、生きなさい……っ!」

 

「パパっ!」

 

「イチカ……アリサと、ユリスの事を……頼ん、だぞ? お前は、男の子だ……家族を、しっかり守ってやるんだ……!」

 

「義父さん……」

 

「いいな? 二人とも……」

 

「っ…………うん…………」

 

「あぁ…………約束するよ、必ず、二人は……俺の大切な家族は、俺がっ、守ってみせる!!」

 

 

 

頬を伝って、零れ落ちる涙。

それは何を隠そう、イチカ自身のものだった。

どうしようもない現実に直面して、それを覆すことのできない無力感……今こうやって、死に絶えていくしかない家族の事を、ただ見ていることしか出来ない。

そんな悔しさと、悲しさに押しつぶされそうになる。

 

 

 

「二人とも……ただ、前を……向いて、歩け……そうすれば、いつか、必ず…………」

 

「っ……パパ?」

 

「…………くっ〜〜!!!」

 

「パパッ!!!!」

 

 

 

 

アッシュ・ラインハルト……享年45歳。

それが、目の前で亡くなった、アリサとイチカの……かけがえのない家族の名前だった。

 

 

 

「いやあぁぁぁぁーーー!!!! パパァァァァっ!!!!」

 

「くっ〜〜〜〜ぁぁ……うぅっ……!!!」

 

 

 

 

アリサはアッシュの手を強く握り、大粒の涙を絶えず流し、イチカは力なく膝たちの状態で、涙を落とさないように、大空に向かって、悲しみを露わにした。

しかし、そんな二人の悲しみを吹き飛ばすように、強烈な烈風が吹く。

 

 

 

「きゃあっ!?」

「くうっ!!?」

 

 

 

その烈風を生み出した正体は、今もなお空中で戦闘を行なっている、三機のMS。

それを見る二人の表情は、みるみる変わっていく。

憎しみ、怨み……そんな負の感情を露わにしていくアリサとイチカ。

アリサは両手を地面につけ、地面の土を強く握りしめる。

イチカはイチカで、その場に立ち上がり、溜まりに溜まった怒りと悲しみの感情を、爆発させた。

 

 

 

 

「くっそおおおおおーーーーッ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

悲しみの慟哭。

しかし、そんな叫びすらも、戦場では容赦なく掻き消された。

その後、二人は船へと移った。

先ほど倒れていた男の子も、その船に乗っていた。

黒髪で、真紅の瞳を持つ少年だった。

先ほど見たのは、少年の家族だった。

砲撃によって、父、母、そして、姉か、あるいは妹の三人を失った。

あの戦場で、たった一発の戦火の光が、少年から家族を……イチカとアリサから、父を奪った。

イチカの体に寄り添うように、アリサがしがみついていた。

まだ、涙は枯れない。

アッシュを失った悲しみは、イチカよりも、アリサの方が大きい筈だ。

イチカはただ、そんなアリサを抱きしめることしかできなかった。

腕の中に、アリサがいて、たしかに鼓動を感じる……人としての温もりを感じる……。

今、お互いが生きている事を感じている……。

そんな安心感を抱きながらも、あの戦闘に対する怒りと憎しみは消えない。

どうしてあんなことになったのか……どうして、戦うことしか出来ないのか……。

どうして人が、あんな酷たらしい死に方をしなくてはならないのか……。

 

 

 

 

ーーーーイチカ、家族を、しっかり守ってやるんだ。

 

 

 

 

(ああ、義父さん……約束するよ……。アリサと義母さんは、絶対に守ってみせるっ!!!)

 

 

 

アリサを抱きしめる力が、少し強まった。

覚悟を決めたイチカの表情は、その場にいた誰よりも強く映ったに違いない。

 

 

 

 

 

その後、オーブは住民たちを近隣の国や、中立国に預けて、その後の対応を迫られることになる。

オーブは暫定的、大西洋連邦の監視下に置かれることとなった。

そして、その後の戦況といえば、地球連合軍による『第三次ビクトリア攻防戦が始まり、これは地球軍に軍配が上がった。

狙いは、オーブで奪取できなかったマスドライバー施設の奪取だったのだろう。

そしてその後に、戦場は地上から宇宙へと変わる。

地球軍は月にある『月面プトレマイオス基地』に、戦力を集め、まずはプラント最前線宇宙基地『ボアズ』への侵攻を開始した。

この時、地球軍は核ミサイルを搭載した特別遊撃隊を使用。

再び使われた核ミサイルによって、ボアズは跡形もなく消失したしまった。

しかしこれが、プラントの最高評議会議長であるパトリック・ザラの怒りに触れ、戦況は混沌と化していった。

宙域における最終戦争……『第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦』が勃発。

結果としては、プラント優勢のまま、戦況は進んだが、プラント、連合両陣営の指導者だった、パトリック・ザラとムルタ・アズラエル両名の死亡により、戦争は終結……。

後に、『ユニウス条約』と呼ばれるプラントと連合の間で結ばれた停戦条約を結ぶことになる。

C.E71年……『血のバレンタイン』から始まった、プラント・連合間で起きた戦争は、ヤキン・ドゥーエ宙域戦をもって終結。

世界は、僅かながらの平和を得たのであった。

 

 

 

それから……2年の月日が経った。

C.E73年……某日。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあママ、体には気をつけてね?」

 

『わかっているわ……。私は大丈夫だけど、アリサとイチカも、体には気をつけなさいよ?

それと……無事、帰ってきてね? どんな事になっても、私は、貴方達が無事でいてくれれば、それでいいから……』

 

「ママ……」

 

「大丈夫だよ、義母さん」

 

『イチカ……』

 

「アリサは俺が、絶対に守るから……。必ず、二人で義母さんのところに帰ってくるよ……!」

 

「うん! だから、また『アプリリウス』に戻ったら、会いに行くね!」

 

『イチカ……アリサ……っ!』

 

 

 

通信機器で連絡を取り合うイチカとアリサ、そして、その二人の母ユリス。

最近の通信機器は良い……。話す相手の顔が見えるので、より一層安心できる。

あのオーブ侵攻戦の後、イチカたちはプラントへと避難した。

その首都『アプリリウス』にて、ユリスは治療を受けるため、大きな病院に入院し、イチカとアリサは、仮の住まいを政府から受諾した。

その後、ユリスは意識を取り戻し、その後の経過も良好……しばらくの入院ののち、退院した。

ただ、瓦礫に埋もれていた足は、その回復が望めなかった……。

左脚は腱が切れてしまっていたらしく、補助具をはめている。

右脚も損傷していたが、今は回復に向かっているらしい。

しばらくすれば、今までのように歩けるとのことだった。

そして、イチカとアリサは…………。

 

 

 

『でも、心配だわ……二人が軍に入るって言った時もそうだけど……』

 

「もぉ〜、またその話をするぅ……。大丈夫だって、ちゃんと士官学校出て、訓練を受けて、正式な軍人として認められたんだよ?

それに、私もイチカも、成績は上の方だったんだから!!」

 

「それに、今は停戦状態だから、滅多なことがない限り、また戦争にはならないよ」

 

『そう……そうだと良いのだけれど……』

 

 

 

 

あの後、イチカとアリサは、ザフト軍へと志願したのだ。

言い出したのは、イチカからだった。

そしてアリサが、それに便乗してともに志願した形になる。

 

 

 

『イチカはともかく、アリサまで入らなくても……』

 

「うん……イチカにも言われた。でも、私も、守られてるだけじゃ、嫌だからさ……」

 

「…………」

 

 

 

父、アッシュを失った悲しみ……何もできなかった自分たちの不甲斐なさ……それが二人の心にシコリとして残っていたのだ。

だからこそ、もうあんな思いをしないようにと、イチカたちは強くなることを選んだ。

 

 

 

 

「大丈夫だって、義母さん……。俺もアリサも、しっかりやっていくら……」

 

「そうそう。気にしないでって……ちょっと無理かもだけどさ……私たちは、ママを一人になんかさせないよ?」

 

『っ…………』

 

「じゃあ、もうそろそろ時間だから、切るね」

 

『ええ……二人とも、頑張って……!』

 

「あぁ……じゃあ、またな、義母さん」

 

 

 

 

 

二人は通信を切って……そのまま部屋に備えられたベッドと椅子に座る。

 

 

 

「はぁー……いよいよ明後日、だなぁ……」

 

「そうだね……」

 

 

現在地、プラントにあるコロニーの一つ、軍事工廠コロニー『アーモリーワン』内の工場区。

そこに鎮座している新造艦『ミネルバ』……。

その艦内の一室に、二人は同じ部屋で生活している。

士官学校を出て、二人はザフトのモビルスーツパイロットとなった。軍服は赤色。

ザフトでは、階級制度というものはあまりない。

士官学校時代の上位10位以外は緑色……それ以上を赤色としている。

この色分け自体は、成績順ということもあるので、特に能力値の差というものはない。

だが、上位に入る者たちの中には、突出した才能を持っている者たちもいることもある……。

 

 

 

 

「イチカのザク、整備班の人たちは改良してくれるって?」

「ああ……。俺好みの近接格闘特化にしてもらったよ。マッドさん達はため息をついてたけどな……あはは」

 

「私も似たようなものね……なんか、特注で作ってもらったライフルが思いのほか大変だったって、ヨウランとヴィーノに愚痴られたし……」

 

「あぁ、あれな……。しかし、ザフトの技術力も恐れ入るな……それに、どこからそんな資金が出てくるんだか……」

 

 

 

 

 

イチカとアリサ……二人の士官学校での成績は、例年よりも異常だったそうだ。

まずイチカは、射撃センスはまずまず、といった感じなのだが、格闘戦になると誰も敵わなかった。

逆にアリサは、格闘戦は平均的な成績だったが、射撃……特に遠距離からの精密狙撃には眼を見張るものがあった。

この二人の成績を鑑みるに、ザフト軍でも、イチカには次世代量産機『ザクウォーリア』ではなく、その一つ上にあたる上位機種『ザクファントム』を与えられた。

パーソナルカラーは灰色。本当は白が良かったのだが、先客がいたため、辞退した。

アリサの方は『ザクウォーリア』で、パーソナルカラーは赤色よりも若干明るい赤紫色だ。

特注で作らせたスナイパーライフル型の武装。

これまで実弾式の武装しかなかったが、ビーム兵器へと改良したそうだ。

 

 

 

 

「まぁ、それだけ期待されてるってことなんじゃない?」

 

「……そうなのかもな…………」

 

「…………」

 

 

 

 

椅子に座っていたアリサが立ち上がり、ベッドに座るイチカの横に座った。

 

 

 

「それにしても……」

 

「ん?」

 

「話は変わるんだけどさ……どうして、イチカの目の色が変わっちゃったのかな?」

 

「あぁ……あの時、戦場の真っ只中にいたから……それによる精神的なものじゃないかって、お医者さんは言ってたけど……」

 

 

 

 

イチカの瞳を真っ直ぐに見つめるアリサ。

そう、士官学校に入った時から、あまり生活などに変わりはなかったのだが、唯一変わった事があったといえば、イチカの目の色だった。

昔は、日本人特有の黒目に茶色っぽい色の光彩をした瞳だったのだが、ある時アリサが、その色が違うことに気づいたのだ。

茶色混じりの黒目が、いきなり色素が抜け落ちたのか、あるいは薄くなったのかわからないが、鮮やかな蒼色になっている。

本来ありえない現象のはずなのだが、原因は医者にもわからないらしい……。

 

 

 

「でも、俺はこのままでいいと思ってるよ……」

 

「どうして?」

 

「だってこの目の色……アリサの目と同じ色だし……なんだが、本当の家族みたいで良いじゃんか」

 

「あ……」

 

 

 

アリサの目の色も、イチカと同じ蒼色だ。

髪の色は銀髪と黒髪で、違ってはいるが、目の色だけを見ると、本当の姉弟のように見える。

 

 

 

「もう……またそういうことを平気で言うんだから……」

 

「ちょっ……!?」

 

 

イチカにもたれかかるように体重をかけてくるアリサ。

しかし、勢いはそれだけにとどまらず、イチカをそのままベッドへと押し倒した。

 

 

 

「お、おい……アリサ……?」

 

「ぁ…………」

 

 

 

軍の制服の上着は着ていない。

中に来ている黒いシャツだけだ。

制服と同じ赤色のミニスカートと、黒いニーソックスとの間から垣間見る柔らかい太もも……体勢が体勢だけに、同年代の中でも大きい方である豊満な胸の谷間が、チラチラと見え隠れする。

うっとりとした蠱惑的な表情……頬を薄っすら赤く染めている。

その顔が、少しずつ近づいてきて、やがて、ピンク色の柔らかい唇が、イチカの唇と重なった。

 

 

 

「んっ……ちゅ……ぁあ……」

 

 

いやらしく唾液がぴちゃ、くちゃと音を立てる。

艶めかしく、煽情的に……互いの舌を求めて、絡み合う。

 

 

「んっ……んぁ……! ちょ……ここで?」

 

「ん……ダメ?」

 

「いや、「ダメ?」って聞かれても……っていうか、ここ艦の中だし……!」

 

「大丈夫よ……ここの部屋は、外には声は漏れないようになってるし……呼び出す時には、専用の機械があるし……」

 

「で、でも、俺たちは……!」

 

「姉弟?」

 

「っ…………」

 

「私、イチカの事、好きだよ……? だから、“初めて” を二つともあげたんのに……」

 

「んっ……」

 

 

 

 

覆いかぶさったまま、アリサはイチカの顔を見つめる。

イチカとアリサ……二人の目線の先には、互いの蒼い瞳が映る。

 

 

 

「イチカは、私がパパを失った悲しみで、ヤケになってあんなことをしたって思ってるんでしょう?

でも、それは違うよ……私ね、多分、ずっと前から、あなたのことが好きだった……!

まだ学生だった時の、みんなから茶化されてばっかりだったあの頃は、それはないって否定してたけど……でも、今ならはっきり言えるよ……?」

 

「ア、アリサ……」

 

 

 

 

上から垂れるように顔に触れるアリサの髪。

綺麗な銀色の髪は、ほんと、宝石のような輝きすら持っていると思った。

そして、アリサはイチカの右手を握ると、おもむろに自分のシャツの中に入れた。

 

 

 

「お、おい……っ!?」

 

「んっ……!」

 

 

 

イチカの手に触れた柔らかい何か……。

押せば凹むが、同時に押し返してくる。

人肌の温もりを、その手に直に感じる。

 

 

 

「お、お前っ、下着は……!?」

 

「うっふふ……着けてなーい♪」

 

「なっ!?」

 

 

 

手を離そうとするが、それも許さないつもりが、再びイチカの右手をアリサは掴む。

 

 

 

「ほら、いま私、すっごくドキドキしてるんだよ?」

 

「アリサ……!」

 

「イチカ……して……」

 

「んっ……!」

 

「んんっ……!? ぁあ……!」

 

 

 

 

右手に触れる感触を強める。

時折触れた小さな突起を、指でつまんだり、撫でたり、転がしたり…………。

そこに触れるたびに、アリサの表情が変わる。

触れられながら、アリサは再び唇を求める。

強引にイチカと唇を重ね、また求め合う。

 

 

 

 

「んあっ……ったく、生々し過ぎるぞ……」

 

「はぁ……はぁ…………あら、知らなかったの? 女ってね、生々しい生き物なんだよ?」

 

「っ…………!」

 

「んっ……! ふぁっ!? ん、あんっ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の事は、ほとんど夢だったのではないかと思った。

互いに肌を重ね、淫らに淫れまくった……。

それが、一体どれくらいの時間そうしていたのかはわからないが、時計を見たときには、すでに時刻は深夜になっていた。

同じベッドに横にならながら、イチカはふと目を覚まして、目の前で眠るアリサに視線を移した。

そっと左手を動かして、アリサの髪を撫でる。

その瞬間に、アリサが少し微笑んだような気がした。

 

 

 

(義父さん……義母さん……約束する……!アリサは、俺が絶対に守ってみせるっ…………!!!!!!!)

 

 

 

 

イチカは、そっとアリサを抱きしめて、再び、深い眠りに入ったのだった…………。

 

 

 

 

 

 






ええ、イチカのヒロインは義姉であるアリサということで、ちょっとイケナイ恋愛的な感じで進めたいと思います。

なんでこうしたかと言うと……前書きにも書きましたが、書きたかったから、デス!!


感想よろしくお願いします!!

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