機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜 作:剣舞士
ようやく更新できる……。
12月になり、仕事が忙しくなって更新が遅くなるかもしれません(><)
突如として現れた新しい機体。
赤と白を基調とした装甲に、両手に持つ対艦刀のダブルソード。
その機体の名は『インパルス』。
カオス、ガイア、アビスと同じセカンドシリーズのMSであり、ガンダムタイプの機体だ。
そのインパルスが、ガイアと交戦していたザクの前に降り立ち、ガイアに対して接近戦を挑む。
大きく振り上げた対艦刀《エクスカリバー》を、思いっきり振り下ろす。
ガイアに乗るステラは咄嗟に回避した……。《エクスカリバー》が振り下ろされた地面は、いとも簡単に抉られ、返す刃がガイアに迫る。
「なんだっ、これはっ……!!?」
「はあああっ!!!」
咄嗟に手に持っていたバックラーシールドで受けるも、ガイア自体が、パワータイプの機体ではないため、インパルスの攻撃を真正面から受けきれるわけがなく、ガイアはそのまま上方へと弾き飛ばされた。
接近戦は危険だと思い、ステラはガイアの頭部バルカンで牽制し、距離を取ろうとするのだが、インパルスは、ステラたちが乗るガンダムタイプと同じく、《ヴァリアブルフェイズシフト装甲》を持つ機体だ。
故に、実体剣や実弾系統の攻撃は対して効かない。
逆にインパルスがビームライフルを取り出し、ガイアを射撃。
ガイアはスラスターを噴かせてなんとか避けていくが、射撃もそれなりに正確なため、容易に近づくことができない。
「ちっ、なんなんだアレはっ……!」
別方向から、カオスで援護射撃をしていたスティング。
しかし、当のインパルスにはカスリもせず、逆にお返しと言わんばかりにビームライフルを撃たれる。
「くそっ、あれも新型かっ……!? ガンダム……? どうなってるんだ、そんな情報はどこにもっ……アウルッ!」
予想だにしていなかった事に、焦るスティング。
その間にも、ステラはなんとかインパルスを落とそうとする。
MA形態に変化して、背中の《グリフォンブレード》で斬り裂こうとしている。
だが、インパルスは躱すどころか、連結していた対艦刀を分離し、再び二刀流モードに切り替えて接近してきた。
「なにっ!?」
「せやああぁぁっ!!!」
上段から双剣を振り下ろす。
ガイアは持ち前の機動性を生かし、跳んで躱す。
そして体勢を立て直してから、即座に背部のビーム突撃砲を発射。
しかしインパルスもただではやられない。
体を左に旋回し、左腕に装備している盾でビームを受けると、そのまま右手に持っていた対艦刀を、ガイアに向けて投擲した。
躱す余地がないガイアは、再びシールドで受けるが、衝撃を完全に相殺はできなかった。
「こいつっ……!!!」
一撃で仕留められなかったステラは、インパルスへの警戒を強めた。
そしてシンもまた、強奪したばかりでここまで動ける敵の技量に、驚愕していた。
『シンッ! 命令は捕獲だぞっ!』
「っ……!」
しかしそこに、ミネルバからの通信が入った。
相手は、ミネルバの副長である『アーサー・トライン』だった。
『わかっているんだろうなっ! アレは我が軍の…………!』
「わかってますよっ! でも出来るかどうかはわかりませんよっ! 大体っ、なんでこんな事になったんですっ!?」
アーサーからの指示には従いたいが、それも相手の出方次第による。
今もなおビームサーベルで斬りつけてくるガイアの攻撃を躱し、お返しとばかりに対艦刀を振るう。
互いに互いの盾で剣を受け止めあい、鍔迫り合いの状態となる。
「どうしてこんな簡単にっ、敵にっ!!」
戦闘を続けながらアーサーに問いただすシン。
しかし、ミネルバ艦長『タリア・グラディス』からの怒号が飛んだ。
「今はそんな会話をしている暇はないでしょう!! 演習でもないのよっ、気を引き締めなさいっ!」
艦長直々の叱咤に、アーサーとシンは黙ってしまった。
タリアは艦長席に座り、手元にあった通信用の受話器を取る。
「強奪部隊ということなら、外にはその母艦があるはずっ! そちらはどうなっているのっ!?」
一方、アーモリーワンのコロニーの港と、その外では、中の事態に際して、スクランブル警報が発動され、外にはナスカ級が二隻、そして港からも続々と戦艦の発進準備を整えていた。
しかし、そんな港へとゆっくりと近づいていく二つの機影。
全体を黒く塗装してあり、ステルス機能を有した機体。
熱源センサーに反応させないためか、ゆっくりと港の入り口に向かっていく。
「グラディスなどに言われんでもわかっているっ! 余計な口を出すなと伝えとけっ!」
そして、宇宙を航行するナスカ級二隻の内、一隻の背後にゆっくりと近づく物体が……。
その物体の正体は、地球軍所属の戦艦だった。
その戦艦の司令室には、謎の黒い仮面をつけた軍人が座っていた。
仮面の男は左手にしてある腕時計を見ると、作戦開始の合図を唱えた。
「よぉーし! 行こう! 慎ましく、な?」
「〈ゴットフリート〉1番、2番起動!……ミサイル発射管、1番から8番、全門〈コリントス〉装填!」
「イザワ機、ハラダ機、発進準備よし!」
「目標、右舷前方ナスカ級。〈ゴットフリート〉発射後、〈ミラージュ・コロイド〉を解除。同時に加速20パーセントに上昇! 機関最大! さぁて……これからもう少し面白くなるぞ、諸君」
仮面の男が次々と指示をしていき、その後は、となりに座る艦の艦長である『イアン・リー』少佐にタイミングを預けた。
「〈ゴットフリート〉照準っ! ってぇぇぇぇーーーー!!!!」
艦の主砲たる〈ゴットフリート〉二門から、高エネルギーのビーム砲が放たれた。
当然、敵艦を感知してていなかったナスカ級は、背後からの一撃をまともにくらってしまい、そのまま爆散した。
その様子を、少し離れた場所で見ていたもう一隻のナスカ級……。
そして、〈ゴットフリート〉発射後、〈ミラージュ・コロイド〉を解除した戦艦《ガーディー・ルー》は追尾型ミサイルと〈ゴットフリート〉を撃ちながら、もう一方のナスカ級に攻撃を集中する。
その事態を、港にいるザフト軍の副長官たちは驚きながらも、対応を急いだ。
「『ハーシェル』被弾!」
「『フーリエ』にミサイル接近! 数18!」
「不明艦、数1! オレンジ25、マーク8ブラボー、距離2800!」
「そんな位置にっ……!?」
「〈ミラージュ・コロイド〉っ!?」
「地球軍なのかっ?!」
「熱門ライブラリー照合! 該当艦無し!」
「とにかく艦を出せっ! MSもだ!」
港内では、スクランブル状態となり、MSに登場するパイロットや、ローラシア級の戦艦を発進させようとしていた。
そんな最中でも、『ガーディー・ルー』の猛攻は続く。
「ナスカ級接近! 距離1900!」
「MS発進後、回頭20、主砲照準、インディゴ、ナスカ級! あちらの砲に当たるなよっ……!」
部隊の指揮官……仮面の男『ネオ・ロアノーク』は不敵な笑みを浮かべながら、もう一隻のナスカ級を沈めにかかる。
『ガーディー・ルー』でも、準備ができていたMSたちが発進していく。
地球軍の量産型MS《ダガーL》だ。
背部のバックパックとして、二門の大型キャノン砲を装備している。
至近距離からのMSからの攻撃を躱すすべを、戦艦はあまり持っていない。
そのため、ナスカ級からも、MSが発進する。
《ゲイツR》が二機と、《シグー》が一機だ。しかし、元々攻勢に出ている地球軍側に分があり、ゲイツRが一機落とされた。
そして、港方面では、新たに戦艦が出港しようとしていた。
だが、その港の入り口には、ステルス性能を持った《ダークダガー》が待ち受けており……。
「…………」
「っ……!」
機体の首を動かして合図を送る。
二機のダークダガーは、背部のスラスターを噴かせると、港内に侵入。
今まさに出港しようとしていたローラシア級の目の前へ。
「「「うおおおおっ!!!???ーーーーーーーーー」」」
敵機に驚き、一瞬止まった動き……。
その隙を逃すほど甘くはなかった。
ダークダガーは、手に持っていた肩掛け式の低反動砲を発射。
その砲弾は見事、ローラシア級のブリッジを直撃。
そのほかにも、後続のローラシア級やナスカ級のスラスターを撃ち、姿勢制御を崩す。
港内では、まるで高速道路の玉突き事故でも起こしたかのような惨状となった。
そして、その被害は管制室にも及び、横転したローラシア級の艦体が、管制室を直撃し、その場にいた副長官たちやオペレーターたちを巻き込み、爆散した。
その後、港内を低反動砲で攻撃……。港は完全に破壊され、ザフトの艦隊は消滅した。
その振動は、アーモリーワン内部にまで響き、待機中だったミネルバや、戦闘中あるシンたちにも届いた。
「おわっ……!? なんだ今のは、アスラン……!」
「外からの攻撃だろう……! ヘリオポリスの時と同じだ! ということは、港か……!?」
かつて、オーブ所有の資源コロニー《ヘリオポリス》の内部で開発されていた地球軍の新型MS五機を、アスランを含めたザフト兵部隊は、強奪した。
その時も、港を封鎖し、敵の新造艦であった《アークエンジェル》の格納庫を爆破し、慌てて出てきた地球軍の兵士たちを倒した。
そして強奪に成功し、五機あるMSの内の、四機を奪取した。
「スティングっ、今の!」
「わかっているっ…… “お迎え” の時間だろ?」
「遅れてる。バス行っちゃうぜ?」
「っ……わかってると言ったろうがっ!」
「だいたいアレなんだよ? 新型は三機はずだろっ?!」
「俺が知るかっ!」
「どうすんの……!? こんなの予定にないぜっ……! チィッ、ネオの奴っ……!」
アウルとスティングは、合図ともいえる港の爆破を感じ、その場を撤退しようとするが、依然、目の前にいる同じ新型機のインパルスを沈められないことに、若干焦り気味だ。
今も目の前で、ステラの乗るガイアと戦っているインパルス。
MA形態になって、背部のグリフォンブレードで切りつけてくるのだが、インパルスは盾を使って、なんとか凌いでいた。
ガイアが斬りつけ、通り過ぎた瞬間に、インパルスは右手にライフルと取り、ガイアに向けて発砲。
ガイアはMA形態からMS形態へと可変し、そのビームを盾で受けるが、体勢を崩された。
それを見て、スティング達も動き出す。
「でも放っておけないだろっ……! 追撃されても面倒だ!」
「首でも土産にしようっての?」
カオスの後に続いて、アビスも動き出す。
「カッコ悪いってんじゃねっ、そう言うのッ!!」
言葉とは裏腹に、アウルのその顔はとてもやる気に満ちていた。
カオスとアビスの二機は、今もなお交戦しているインパルスとガイアの元へ。
一方のインパルスとガイアの戦いは、インパルスが優勢のようだった。
対艦刀《エクスカリバー》を思いっきり振り下ろし、圧倒的なパワーでガイアを抑えるシン。
「はあああッ!!!」
「ぐうぅっ……!!!?」
『ステラッ!』
「っあ……!!」
スティングの声にステラは反応して、インパルスの対艦刀を弾いて後方に下がる。
「んっ……!?」
追撃をしようと思った時、インパルスからの警告音が鳴る。
後方から接近する機影を、レーダーが危険だと察知したのだ。
シンが後方に向き直ると、そこにはガイアと同じ強奪機のカオスが接近して来ていた。
だが、カオスは進路を変え、いきなり上に飛んでいく。
そしてそのさらに後方には、アビスがいた。
カオスが飛び立ってすぐに、胸部にある大出力ビーム砲《カリドゥス複相ビーム砲》を放つ。
インパルスはとっさに左に跳び、直撃を避けるが、今度は上から、先程飛んだカオスが、脚部のブレードを展開した状態で斬りつけに来る。
今度は後方に飛んで、そのブレードを躱すが、カオスのビームライフルが追撃してくる。
「ぐっ!」
流石に避けきれないと思ったシンは、そのビームを盾で受け止める。
だが、またしても警告音が鳴り響いた。
「なっ……!?」
「でえぇぇぇぇいッ!!!!!」
後ろから近づいてきていたガイア。
ビームサーベルを抜き、右から左へと一閃。
シンも、インパルスの上体を屈めることで躱すが、返す横薙ぎ一閃には対応が遅れ、盾で受けるしかなかった。
「うわああぁぁぁっーー!!?」
しかも、体勢が悪く、ガイアの斬撃を開けた瞬間、インパルスは体勢を崩し、そのまま尻餅をついた。
「っ!? アスランっ!」
「っ……! 捕まってろよっ!」
ザクに乗っていたカガリとアスラン。
目の前でピンチに陥ってるインパルスを見て、アスランは機体を動かした。
尻餅をついて倒れているインパルスの後方からは、再びアビスが。
手にしていた近接格闘装備《ビームランス》を振りかぶる。
「もらったッ!!」
「はっーーーーー!!!?」
背後から死が迫る。
身動きが取れない上に、背後からの攻撃だ……どうあがいても避けられない。
やられると思ったその時、インパルスの横を、緑色のザクが通り過ぎて行った。
「うおおおおッ!!!!!」
アスランの叫びと共に、ザクは右肩からアビスにタックルを仕掛けた。
一瞬の隙を突かれたアビスは、このタックルを真正面から受け、そのまま後ろに倒れる。
さらに、ザクは手に持っていたトマホークをガイアに対して投げつけ、インパルスに攻撃しようとしていたガイアの動きを止める。
ガイアは盾でトマホークを受けるしかなく、動きが止まった瞬間に、インパルスは立ち上がり、戦闘態勢も整えた。
「こんのぉっーー!!!」
アウルは怒りに任せてカリドゥス砲を放った。
アスランは咄嗟にザクの体を反転させ、盾で受けたのだが、至近距離であり、体勢も悪かったため、盾はビーム砲に耐えられずに爆散。
ザクはハンガーの外壁に叩きつけられた。
「ぐうっ……!!!?」
「ううっ……!」
「はっ……! カガリっ!?」
アスランの太ももに倒れこむカガリ。
アスランが慌てて抱きかかえる。
「カガリっ、しっかりしーーーーはっ……!」
カガリを抱きかかえた瞬間、左手に生暖かいものが流れてきた。
そしてそれを見た瞬間、アスランは焦った。
何故ならその流れ出た物は、カガリが頭部から流していた血だったからだ。
急いで治療をしなければと思い、アスランはすぐに操縦桿を握る。
ちょうどその時、アビスが再びカリドゥス砲を放とうとしていた。
アスランはザクのスラスターを全開に噴かせて、上空へと退避し、そのまま安全な場所へと向かって撤退して行った。
「くそっ! あいつ……っ!」
アスランの乗るザクを仕留めきれなかった事に苛立つアウル。
しかし、追撃する前に、ほかのザフトのMSからの攻撃を受ける。
《ディン》に《シグー》といった、量産型の機体が、まだ残っていたのだ。
アウルは即座に攻撃を躱し、アビスの両肩シールド内部に装備してある三連装ビーム砲を放ち、次々に落としていく。
「ちっ、キリがないっ……!」
「くそっ! そんな好き勝手っーーーー」
自軍の味方機を落としていくアビスに、シンはインパルスを走らせながら、対艦刀を振りかぶる。
横薙ぎ一閃に振り抜くが、アビスはこれを躱し、今度はインパルスに向けて、ガイアが切りつけてくる。
「はあああああっーーーーッ!!!!!」
「ーーーーさせるもんかぁぁぁぁっ!!!!!!」
インパルスとガイアの激しい攻防に、衝撃波が走り、凄まじい閃光が弾けた。
一方、別のハンガー区画では、自機への乗り込みを試みている者たちがいた。
「早く! 入れるだけ開けばいい!」
「急がないとっ! ここも巻き込まれるわ!」
ルナマリアとアリサの声がその場に響いた。
カオス、ガイア、アビスの襲撃によって、自分たちが乗る機体は、崩れたハンガーの瓦礫によって生まれていた。
大した量ではなかったのだが、コックピットの部分に乗っかっているので、ハッチを開ける事が出来ないでいた。
その場に倒れていたのは、四機のザク。
ルナマリアの乗る赤いザクウォーリア。
レイの乗る白いザクファントム。
イチカの乗る灰色のザクファントム。
アリサの乗る赤紫のザクウォーリア。
その四機が、それぞれ仰向けに倒れていて、その上には、瓦礫が乗っているのだ。
ルナマリアとアリサが自分たち機体のコックピット部分に登り、イチカとレイは下で整備班のメンバーたちが瓦礫を退かしてくれるのを待っている。
「レイっ!」
「っ……!」
ようやくレイのザクのコックピット部分の瓦礫が撤去され、コックピットのハッチが開いた。
レイは機体に飛び乗り、コックピットの中へと入る。
「内部の損傷は分からんっ! いつも通りに動けるとは思うな! やばいと思ったら、すぐに引け!」
メインシステムを起動させているレイは、整備班のメンバーの言葉に頷く。
ハッチを閉め、システムを戦闘ステイタスで起動させ、レイのザクは立ち上がった。
『どけ、ルナマリア』
「っ!」
レイはザクを動かし、隣で倒れているルナマリアのザクの上に乗る瓦礫を撤去する。
「よしっ……!」
ルナマリアも自機に乗り込み、システムを起動させる。
レイの乗るザクはそのままイチカの元へと歩いてくる。
『イチカ、すぐに準備しろ』
「あぁっ、頼む、レイ!」
レイはイチカ乗るザクの上にある瓦礫も取り除き、コックピット部分を露出させる。
「サンキュー、レイ! アリサの瓦礫は俺が退けるから、レイ達は先にシンの援護に向かってくれ!」
『わかった。お前も急いで来いよ』
「あぁっ、わかってる!!!」
『行くぞっ、ルナマリア!』
『はいはい! わかってるわよー!!』
ルナマリアも無事に機体を起動させて、レイのザクと共にシンを追ってスラスターを噴かせて飛んで行った。
「イチカっ、お前も乗れ! 幸い、ひどい損傷はしていない!」
「はいっ!」
イチカも整備班のメンバーに促されて、コックピットの中へと入る。
メインシステムを起動させ、各部に異常がないかをチェックする。
「システム起動、駆動系システムに異常なしっ、全兵装アクティブ、オールウェポンズフリー」
キーボードパネルを取り出して、ザクのOSを入力し、戦闘ステイタスで起動させる。
「よしっ、いけるっ!」
イチカの乗るザクのモノアイが光る。
ゆっくりとした速度で、ザクは立ち上がっていく。
レイの乗るザク同様、本来左肩に一枚しかない対ビーム盾が、両肩に付いている。
ザクウォーリアの上位機にあたるザクファントムだ。
しかし、レイの機体に比べて、イチカの機体はある特徴を有していた。
それは、腰の左右にマウントされている二本の片刃直剣型の対艦刀《オーバーエッジ》だ。
長さはシンの乗るインパルスの《エクスカリバー》よりも短い……むしろ、ジンやシグーが持っている重斬刀と同じくらいの長さだろうか。
これがイチカのザクだけが持つ特殊武装であり、イチカのザクが、近接格闘型にカスタムされた姿とも言える。
灰色のザクはモノアイを右に移動させると、眼下の人物を捉える。
『アリサ、瓦礫を退かす……そこを離れて』
イチカの言葉に、アリサはすぐにその場を離れる。
そして、レイがやったように、MSの腕を使って、瓦礫を撤去した。
「ぁあ……! ありがとうっ、イチカ!」
『アリサも早く』
「了解!」
アリサも自機に乗り込み、システムを起動させる。
「よし……! いけるわね……!」
最後の一機、赤紫のザクウォーリアが立ち上がり、これで全機起動完了だ。
「アリサ、機体は大丈夫か? 損傷してるなら、無理して付いて来なくていいからな?」
『大丈夫よっ……! 私だって赤を着てるんだから、それなりにやれるんだからねっ!』
「そういう事じゃなくて……まぁ、いいや。それなら、俺たちもいくぞ!」
『了解!』
二機のスラスターが駆動する。
先にイチカが飛び立ち、その後をアリサが追いかけようとするが……。
ーーーーボンッ!!!
「へぇ?」
「え……?」
突如、アリサのザクのスラスターから小規模な爆発が起きる。
まさに飛び立とうとしていた矢先にこれだ。
「うわっととっ……!!?」
「アリサっ! 大丈夫なのかっ!?」
「だ、大丈夫……! あ、あっぶなぁ〜……!」
「やっぱりスラスターをやっちまってたか……!」
「ううっ……もう、最悪……!」
これでは、アリサの機体は戦闘には参加させられない。
ある意味、アリサの戦闘スタイルが、必要な場面でもあったのだが……。
「アリサ……その機体の状況じゃ、戦闘は難しいだろうから、先にミネルバに行っておいてくれ!」
「っ……でもまぁ、仕方ないよね……わかった、じゃあ先に行ってるね……。
イチカ、気をつけてね?」
「あぁ、わかってるよ……っ!」
イチカはそう言い残し、先に向かって行ったレイとルナマリアの後を追うのだった。
そして、まさに今向かおうとしている激戦地では、四機のガンダムによる戦闘が、なおも繰り広げられていた。
「ちっ、なんで落ちないんだよっ、この新型っ!」
「てぇええええいッ!」
高機動型の機体であるカオスが、空中戦においては有利なのだが、シンの駆るインパルスはライフルで牽制したり、《フラッシュエッジビームブーメラン》を取り出し、ガイアに向けて投げたり。
同じセカンドシリーズの新型機三機を相手に、互角の戦いを繰り広げていた。
「ええいっ、このっ!」
ビームブーメランを盾で受けて後退したガイアと、攻撃を仕掛けてきたインパルスとの間にアウルの乗るアビスが割り込み、インパルスに向けて、両肩のシールド内に仕込んである三連装ビーム砲を放つ。
六つの緑色の閃光が空を切り、そのうちの一つがインパルスを捉える。
しかし、インパルスもとっさに反応して、左腕にマウントしてある盾を取り出し、ビーム砲を受け切った。
しかし、放たれたビームは、全部で六つ。
一つはインパルスが受けたが、それ以外のビームは、地上から支援をしようとしていた複数のザフト軍MSの、機体を貫く。
貫かれたMS軍……シグー、ジン、ガズウートなどが次々に爆散していく。
「っ……! くそっ……!!!」
「ハッ……! もう一丁ーーーーー」
今ので仕留められなかったため、アウルはもう一度インパルスに対して砲撃を放とうとするのだが、その行為は、アビスに対して迫り来るビーム砲によって阻止された。
「くぅっーー!?」
「アウルっ?! くそっ……!」
スティングが向けた視線の先には、二機のMSが飛んでいていた。
白色と、赤色のザクだった。
対ビーム加工されたシールドが両肩に装備された白いザク……レイ・ザ・バレルの乗るザクファントムだ。
そして、その後ろからくるのが、赤色に塗装されたザク……ルナマリア・ホークの乗るザクウォーリア。
二機は手に持っていたビーム突撃砲を、三機のガンダムに向ける。
「こんのぉ〜っ! よくもナメた真似をーーーー!!!」
ルナマリアはそう叫ぶと、続けてアビスにビーム砲を撃ち続ける。
アビスは盾で受けつつ、後ろに後退し、直撃を避ける。
「スティングっ、キリがない!! コイツだって、パワーが……っ!」
先程からずっと破壊工作を行っているため、三機のガンダムのエネルギーは危険域にさしかかろうとしている。
それはリーダーであるスティングも確認しているが、スティングの乗るカオスの方にも、レイの乗る白いザクファントムが攻撃を仕掛けてくる。
「ちっ……! 離脱するぞ! ステラっ、そいつを振り切れるかっ!?」
「すぐに沈めるっ!」
一方、インパルスを執拗に狙うガイア。
背部のビーム突撃砲で牽制しつつ、手に持っているビームサーベルで斬りつける。
だが、インパルスは盾を傾けてインパクトを外し、ガイアの攻撃をうまい具合に受け流す。
「チィッ! こいつっ、何故墜ちないっ!?」
カオスは背部の機動兵装ポッドを起動させ、レイのザクやシンのインパルスを牽制するようにポッド内に内蔵されていたビーム突撃砲を放つ。
「ステラっ! 離脱するぞ!」
「っ!! こんなっ……こんな奴にっ、私はっーー!!!」
「ステラっ、やめろっ! もう終わりだっ!」
「こんなっ……! こんなっ……!!」
「ステラッ!」
「私がこんなぁーーーーッ!!!!」
スティングの言葉に耳を傾けず、ステラは執拗にシンを狙う。
そんなステラに苛立ちを覚えたのか、連装砲でルナマリアのザクを砲撃していたアウルが、決して口にしてはならない言葉を吐いてしまった。
「そうかよ……っ! ならお前はここで “死ね” よっ!」
「は……ッ!!!!!!!????」
「アウルッ!!!」
「ネオには僕が言っといてやる……“さよなら” ってなッ!」
「っ〜〜〜〜!!!!!!????」
突如、ステラの動きが明らかにおかしくなった。
動きが固まり、その場で棒立ちになったのだ。
シンはこの機会を逃さないと、ビームブーメランを取り出し、それをガイアに向けて投げつける。
しかし、そのブーメランをカオスが間に入って、シールドで弾いて、ライフルを撃つ。
『アウルっ、お前なんて事をっ!』
『だってしょうがないじゃん、止まんないんだしさぁ〜』
「死ぬ……? 私が……?!」
『黙れっ、この馬鹿っ! 余計なこと言いやがってッ!』
「さよなら……?」
コックピットの中で、自身の体を抱きしめるステラ。
その目には涙が溢れてきて、やがて、その内から湧き上がる感情が、一気に爆発した。
「いやあああああああッ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
真っ先にコロニーの外壁部へと飛び立つガイア。
「ちっ!」
「ハン……結果オーライだろう?」
ガイアを追いかけて、カオスがその後を追い、アビスは連装砲を放ちながら、後退を始めた。
「「っ!?」」
「逃すかッ!」
その場を離脱しようとする三機を追い、シン達も後に続いて追いかけるが……。
ボンッーーーーッ!
「えっ……!!!?」
突然の爆発音。
その音を鳴らしたのは、ルナマリアの乗る赤いザクのスラスターだった。
煙を上げで、どんどん降下していくルナマリアのザク。
しかし、シンとレイはその事に構っていられなかったために、そのまま上昇していく。
「くっ! こんな時にっ……!」
『ルナっ?! どこかやられたのかっ!?』
「っ!? この声……イチカっ!?」
突然コックピット内に聞こえた通信越しの声。
後方から接近する機影を、ルナマリアも捉えていた。
背後からやってくる機影……レイと同じ、ザクウォーリアの上位機体であるザクファントム。
色は灰色であり、イチカの要望と才能を取り入れたか、近接格闘に向いたカスタムがされた機体が、ルナマリアの後方から近づいてくる。
「大丈夫! スラスターがちょっとイカれてたみたいっ……!」
「なら、そのままルナもミネルバに戻れ! 先にアリサも行ってる!」
「りょーかい! あとは頼んだわよっ、イチカ!」
「ああ、任せとけっ!」
イチカはスラスターを全開に噴かせて、シン達の後を追うのだった……。
次回は、いつ更新できるかわからないんですが、できればデブリ戦までいけたらいいなぁと思っています(^^)
感想よろしくお願いします!