機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜 作:剣舞士
ようやく次話投稿できた……( ̄▽ ̄)
そしてごめんなさい! やはりデブリ戦まで行けなかった(T ^ T)
「さぁて、その機体もいただこうかッ!!!」
単機となったインパルスに対して、ガンバレル四基全てを射出し、多方向からのオールレンジ攻撃を仕掛けるエグザス。
インパルスもその機動性を生かして、なんとか防いで行くものの、完全に取り囲まれている。
「っ……くそっ……!」
攻撃しようにも、ガンバレルはMSよりも小さい受けに、宇宙空間での動きは速い。
必然的に、インパルスは防御に徹するしかなくなる。
「シンっ!」
「なんだアレっ……!? あれで本当にMAなのか?」
「詮索は後だ! シンを援護するぞ!」
「了解だ!」
その後方から、レイの乗る白いザクと、イチカの乗る灰色のザクがやってくる。
「先行する! イチカはシンのフォローをしてやれ!」
「ああっ、だが油断するなよ……あのMA、ただ者じゃない!」
「わかっているっ……!」
先に先行するレイ。
その気配を、今度はネオが感じ取った。
ッーーーーーー!!!!!!
「っ……!?」
まるで脳内に電流が流れたかのような感覚……何かが来る……そう確信した。
インパルスに向けて放ったガンバレルのビームを、目の前に現れた白いザクがシールドで防ぐ。
「レイ!」
「何をぼうっとしている! 止まっていてはただの的だ!」
ーーーーこの敵は、普通とは違うッ!!
(っ……!? なんだ、これは……っ!)
頭の中で、声が聞こえたような……そんな感覚だった。
だが何があろうと、目の前にいるのは敵で、撃たなければならない相手であることには変わりない。
ネオはガンバレルを動かし、レイのザクを追い詰める。
その先に、本機である自分が、インパルスの背後から攻める。
「っ……しまったっ!?」
「悪いなっ、もらったぞっ!!」
エグザスの機体下部に取り付けてあるレール砲。
二門あるその砲身から、緑色のビームが放たれ、そのビームは、まっすぐインパルスの背後に迫る。
が…………。
「させるかよっ!」
「なにっ!?」
再び現れたザク。
しかし、カラーリングの違いから、別の機体である事がわかった。
そう、イチカの乗るザクだった。
レイ同様に、シールドでビームを防ぎ、逆にこちらへと射撃を行ってくる。
「チィっ、もう一機いたとは……!」
「イチカっ……!」
「背中ガラ空きだぜ? 気を付けねぇと、足元掬われるぞ」
「悪いっ……助かった……!」
「油断大敵だ……慎重に行くぞ!」
「ああっ!」
今ガンバレルはレイのザクを包囲しているため、インパルスはなんとか抜けられたが、隙あらばこちらも狙ってくる敵の技量に、シンやレイもそうだが、イチカも驚いていた。
(ガンバレル……あれを扱うには、相当な空間把握能力が必要なはず……あのMAのパイロット、いったい何者だ……?)
軍に入る前は、学校で機械工学の勉強をしていて、ゆくゆくは、モルゲンレーテ社に入り、MSなどを扱う仕事を目指していた。
そのため、それに関連した物の事はある程度把握できるイチカ……。
エグザスのパイロット……ネオ・ロアノークの技量の高さに、もはや疑う余地はなかった。
「シンっ! お前は下がれ!」
「はぁっ!? なんでっ……!」
「なんでもなにも、インパルスのエネルギー、もう尽きかけてるじゃないのかっ!?」
「あ……!」
「奴の狙いは、おそらくお前だ……! 新型であるインパルスまで失うわけにはいかないだろ……!」
右手にオーバーエッジを抜き、エグザスに接近する灰ザク。
だがネオもそれに気づき、今度はガンバレルをイチカの方へと向けてくる。
「くっ! 速いっ……!?」
「向こうの白いのとは、装備が違うようだな……なら、手加減するわけにもいかんかね?」
エグザス本体のレール砲にガンバレル四基が一斉に襲いかかる。
イチカはなんとかスラスターを吹かせて、紙一重で躱し、シールドで防御する。
だが、その背後からネオが迫る。
「いい動きだな……だがっ、背中がガラ空きになってるぞっ!」
いつのまにか背後に回っていたエグザス本体。
そして、レール砲の引き金を迷いなく引くネオ。
緑色の閃光が、まっすぐイチカに迫る。
「くっ!」
「イチカ!」
レイとシンが向かうが、間に合わない。
しかし、背中を撃たれると思った瞬間……灰ザクはスラスターを噴かせて、体を回転させた。
「おおおっ!!」
「っ!?」
右手に持っていたオーバーエッジを横薙ぎに振り切った。
そして、放たれた二門のレール砲のビームを、断ち切ったのだ。
「ビームを斬っただとっ……!?」
エグザスは灰ザクの脇を通り過ぎて行く。
イチカの大胆な行動は、ネオを心底驚かせた。
「あいにく、接近戦しか能がないと思われてると、こういう事を仕掛ける奴はたくさん居たんでねっ……!」
左手に握るビーム突撃砲を放ち、エグザス本体を狙うが、エグザスもブースターを使って急な方向転換を行い、ビームを紙一重で躱して行く。
「ちっ、予想よりもやるなっ、こいつら……っ!」
再び迫り来る白いザク。
ならばと、エグザスはもう一度ガンバレルで包囲して行く。
しかし、そう何度も同じ攻撃を見せられると、レイの方も対応できるようになり、止まる事なく、錐揉み状に飛翔すると、背後から狙い撃とうとするガンバレルを、ビーム砲で撃ち抜いた。
「ちっ!」
残るガンバレルは三基。
さらにイチカの灰ザクと、シンのインパルスがいる。
「レイっ!」
インパルスがビームサーベルを抜き、包囲されているレイの救援に向かう。
しかし、今度はインパルスに向けてガンバレルのビームが降り注ぐ。
インパルスは咄嗟にシールドを前に出して、ビームを防ぐが、左足の装甲にビームが掠る。
いくらインパルスがVPS装甲を使用していても、ビーム兵器までは防ぎきれない。
ましてやエネルギーの消費が一番多い現状のインパルスでは、回避するだけでも精一杯のはずだ。
「ちっ……!」
「シンっ、無茶するなって!」
「わかってるけど!」
イチカがシンの盾になるようにして前に出る。
その後も、度々インパルスに向けて攻撃が放たれるが、イチカがそれを防いで行く。
そして、アーモリーワンから発進したミネルバの方は…………。
「気密正常! FCSコンタクト! ミネルバ全ステーション異常なし!」
「索敵急いで! インパルス、ザクの位置は?」
「インディゴ53 マーク22 ブラボーに、不明艦1。距離150です!」
「それが母艦か?」
「対象をデータベースに登録! 以降、対象を『ボギー1』と呼称する」
「同157 マーク80にインパルとザク……交戦中の模様!」
「呼び出せる?」
「ダメです! 通信障害激しく、呼び出しに応答しません!」
「敵の数はっ?!」
「一機ですっ……! でも、これは……モビルアーマーです!!」
「っ…………ボギー1を討つ! ブリッジ遮蔽! 進路、インディゴデルタ、加速20パーセント! 信号弾、およびアンチビーム爆雷発射用意!」
「ぁ…………」
「アーサーっ! 何やってるのっ!」
「っ……ぁあっ、はい!」
タリアの言葉に、ようやく正気に戻ったアーサー。
ブリッジがロウダウンしていき、CICと一体化する……つまり、戦闘態勢へと入ったのだ。
そしてアーサーも、ミネルバのCIC席へと移動する。
「《ランチャーエイト》っ、1番から4番、『ナイトハルト』装填! 《トリスタン》っ、1番、2番《イゾルデ》起動! 目標、ボギー1っ!」
こちらも敵艦の姿を映像で確認し、敵艦のある方へと進路を進める。
各部のミサイル発射管、各迎撃用装備に、副砲を起動させる。
しかし、近くでミネルバ所属のMSが戦っている時に、母艦へと照準を合わせることに、議長は疑問を抱いた。
「彼らを助ける方が先なのではないか? 艦長……」
「ええ、そうですよ……だから母艦を撃つんです。さきに敵機を引き離した方がいいですから……過去の場合は……!」
指揮官講習を受けてきたタリアだからこそ分かる行動。
タリアの指示により、ミネルバは急速でガーディー・ルーへと舵を取った。
また、敵艦であるガーディー・ルーも、ミネルバの姿を捉えた。
「戦艦と思しき熱源接近! 類別不明……レッド53 マーク80 デルタ!」
「例の新型艦か……面舵15 加速30パーセント! 《イーゲルシュテルン》起動! エグザスはーーーー」
メインモニターに表示されたミネルバの船体。
艦内にはコンディションレッドを発令する警報が鳴り、ガーディー・ルーでも迎撃態勢が敷かれた。
そして、肝心の部隊長であるネオの乗ったエグザスはというと……
「んっ……船……?」
ガーディー・ルーの管制官からの通信を受け、ミネルバが発進したことを知る。
今もなお、レイ相手にガンバレルで包囲しているが、当のレイのザクは、軽快な動きでビーム砲を躱して行く。
そして、ある程度パターン化されているガンバレルの動きを読み、背後から狙ってくるガンバレル一基を、見事に撃ち抜いた。
「ちっ……欲張り過ぎは、元も子もなくすか……」
残りガンバレル二基に対して、レイ、シン、イチカの乗るMS三機に加え、後方から新型艦が接近してくるとなれば、ここは退かざるを得ないだろう。
エグザスはそのまま高速機動で母艦であるガーディー・ルーの方へと向かった。
敵が撤退したと知り、シン達も安堵した。
そして、彼らのいる後方からミネルバがやってきて、緑、青、赤の信号弾を撃ってきた。
「ミネルバ……!」
「帰艦信号っ!? なんでっ……!!?」
「なんでじゃないだろう? インパルスじゃあ、これ以上の戦闘は難しいし……」
「命令だ。行くぞシン、イチカ」
「くっ……」
「了解」
エグザスがガーディー・ルーへと戻っていったのと同じように、インパルス、ザク二機も、ミネルバへと帰艦する。
そしてミネルバは、ガーディー・ルーを逃すまいと、攻撃を仕掛ける。
「『ナイトハルト』っ、撃てえぇぇっ!!!!!!」
アーサーの言葉によって、ミネルバの左舷から宇宙用ミサイル『ナイトハルト』が四発発射される。
「回避ぃぃぃっ!!!!」
対してガーディー・ルーも、艦底部に装備してある迎撃用のマシンガンである《イーゲルシュテルン》を放ち、ミサイルと撃ち落とす。
「エンジンを狙ってっ! 足を止めるのよっ!!」
タリアの言葉に、今度は三連装砲《イゾルデ》を発射。
ドンッ! という重い響きのある音を鳴らして、三発の砲弾がガーディー・ルーへと向かって飛んで行く。
だが、残念ながら砲弾は外れて、ガーディー・ルーの横を通り過ぎたり、近くで爆発するだけだった。
その間に、エグザスがガーディー・ルーのカタパルトへと滑り込んだ。
『エグザス着艦!』
「離脱するぞっ! リーっ!」
帰艦したネオの指示により、ガーディー・ルーは推力最大でスラスターを噴かせ、その場から急いで撤退する。
しかし、そんなことさせまいと、ミネルバの方でも動いている。
「ボギー1離脱していきます! イエロー72 アルファ」
「インパルスとザクはっ?!」
「帰投、収容中です!」
「急がせて! このままボギー1を撃つ! 進路っ、イエローアルファ!」
ミネルバに帰艦しようとしているインパルスとザク二機の収容を急がせる。
カタパルトデッキを開き、ようやく三機が収容できたところで、ミネルバは《トリスタン》と《イゾルデ》を使い、ボギー1を攻める。
「すまない……少し、遊び過ぎたか……」
一方で、ガーディー・ルーのブリッジへと戻ってきたネオ。
艦長のイアンの横へとやってきて、状況を確認する。
だが、状況は悪い一方だ。
「ミサイルっ、来ます!」
「取舵! 躱せぇっ!」
ミネルバの『ナイトハルト』を《イーゲルシュテルン》で撃墜しながら、ガーディー・ルーはそのまま左に舵をとる。
派手な爆発を起こし、その衝撃が艦にも伝わってくる。
「両舷の推進材予備弾頭っ、分離後爆破っ! アームごとでいいっ! 鼻っ面に食らわせてやれ!
同時に、下げ舵35 面舵10! 機関最大っ!」
ネオの淀みない指示に、イアンは圧倒される。
そして、ネオの指示によりガーディー・ルーは両舷にあったパーツを分離した。
そして、軽くなった船体と、機関推進を一気に噴かせて、その場を離れようとする。
その頃、ミネルバの格納庫では、ようやく戻ってこれたシン達が安堵の表情でMSのコックピットから降りる。
「ふっ……」
レイは特に疲れた様子は見せず、そのままブリッジの方へと向かう。
一方シンは、初の実戦で、かなりの戦闘を行って来たため、一番疲れていた。
「っ……」
「シン!」
「おいおい、大丈夫か……?」
インパルスのコックピットから降りてくるなり、整備班だったヴィーノとヨウランに声をかけられるが、それに反応せず、パイロットスーツを着替えるために、格納庫を横切る。
その瞬間、自身の左側に、損傷した緑色のザクの姿を目にした。
「っ……このザクは……」
間違いない。
あの時、アビスの攻撃から自分を守ってくれたザクだ。
そのザクが、いったい何故ここにあるのか……?
そんな疑問が頭に浮かんだ。
そして、もう一人、戦闘から帰ってきた者のところへ、やってくる赤服の少女。
「ふぅ〜……初っ端からキツかったぁ〜……」
「イチカっ……!」
「ん……」
コックピットを開け、中から顔を出す。
すると、艦内へと通じる通路のドアから、アリサがこちらに向かって来ていた。
「アリサっ、無事にミネルバに入ったんだな」
「当たり前よ……っ、それより、あなたは大丈夫? どこか怪我は……!」
「大丈夫……どこも怪我してないし、機体だって大した損傷は全くないよ」
「そう……よかったぁ……あのままコロニーから出て行ったって聞いた時には、もう本当に心配したんだからね……っ!」
「っ……ごめんな……」
イチカを見つけるなり、思いっきり抱きつくアリサ。
イチカはそんな彼女を優しく受け止め、その場落ち着かせた。
本気で心配してくれていた彼女を宥めようと、イチカはアリサの頭を撫でてやる。
「ん……」
「はは……」
昔からこれをやると、アリサはなぜか大人しくなった。
そんな様子を見ていると、なんだかペットの子犬と戯れているようにも見える。
そうやって、つかの間の安堵の時間を過ごしていたが、突如、ミネルバ全体に大きな衝撃が襲った。
「きゃあっ!?」
「おわっ?!」
アリサとイチカは、その衝撃にバランスを崩し、二人してザクのコックピットの中に押しやられた。
そして格納庫だけではなく、機関室や医務室などにもその衝撃が伝わる。
「ブリッジ、どうしたっ!? ええいっ!」
「くっそぉー!!!!」
レイは近くにあった艦内通信用の受話器をとり、連絡を取ってみるがつながらず、そのままブリッジの方へと向かった。
シンはシンで、再び発進が必要になるかもしれないと思い、インパルスの方へと戻っていった。
いったい何が起こったのか……?
その頃のブリッジでは……。
「ボギー1 船体の一部を分離!」
《トリスタン》によるビーム砲撃を行っていたのだが、ガーディー・ルーが両舷にあるパーツを分離したのを確認する。
だが、その分離したパーツに違和感を覚えたのは、議長のギルバートと、艦長のタリアだった。
「んっ……!?」
「っ……! 撃方待て! 面舵10! 機関最大!」
船体の一部を分離するのはいいが、それをこちらに向けて飛ばしてくることに疑問を持ったのだ。
タリアはその危機に気づいて、パージされたパーツを躱そうとするが、時すでに遅し。
分離したパーツは、ミネルバの両舷から広がっていた羽根の根元へとぶつかり、大爆発を起こした。
「きゃあぁぁあああっ〜〜〜〜!!!!!??」
「んっ……!!!!」
「ぐっ…………!!!!」
管制官のメイリンの悲鳴。
ギルバートも、タリアも、苦悶の表情を浮かべる。
爆煙に包まれたミネルバ。
さらなる敵艦の攻撃に見舞われるかも知れないと、タリアとアーサーは急いで迎撃態勢をとる。
「各ステーション、状況報告!」
「バート、敵艦の位置は?!」
「待ってください、まだっ……!」
「CIWS起動! アンチビーム爆雷発射! 次は撃ってくるわよっ……!」
「見つけました! レッド88 マーク6 チャーリー! 距離500」
「逃げたのかっ……!?」
メインモニターからも、ガーディー・ルーが高速で離れていくのが見て取れた。
ブリッジが慌ただしくなっている中、後部にあるブリッジへの入り口のドアが開いた。
そこから現れたのは、レイだった。
そして、レイは目の前の座席に座る人物を見て驚愕する。
「ふっ……」
「議長……っ!」
まさかこんなところにいるなんて……。
そう言いたそうな表情だった。
「やってくれるわ……こんな手で逃げようだなんて……!」
そして、タリアは敵艦の取った行動に、少々不快感を覚えていた。
「だいぶ手強い部隊のようだな……」
「ええ……。ならばなおのこと、このまま逃すわけには行きませんわ。
あの三機があのままあの部隊に渡ってしまったら……」
「ふむ……」
「ここまで来てしまっては、もう議長に下船いただくこともできませんが、私は、更なる追撃を行うべきだと考えていますが、議長の判断はどうでしょうか?」
タリアはギルバートに面と向かって尋ねた。
だが、ギルバートは優しく微笑んで、タリアに返答した。
「私のことは気にしないでくれ、艦長……。私だってこの火種……どれほどの大火となって帰ってくるか……それを考えるのは、とても怖い。
アレの奪還、もしくは破壊……それは今の最重要課題だろう……!」
「…………わかりました。これより本艦は、更なるボギー1の追撃を行う!」
艦長の宣言に、ブリッジ内にいた隊員たちも緊張の面持ちで頷いた。
その後、副長であるアーサーから、艦内に通信が入った。
ミネルバはこれより、更なるボギー1追撃の任務に就くこと。
突然の実戦へと身を投じてしまったが、ミネルバクルーとしての誇りを見せてくれ……と。
まさかの実戦開始に、パイロット達も、整備班のメンバー達も、それぞれ驚いた表情だった。
「ブリッジ遮蔽解除。コンディションをレッドからイエローに移行。
以降は、対象の索敵を重視して」
「「「はい!!!」」」
ブリッジがどんどん上がって行き、暗かった視界が一気に明るくなる。
「議長は、艦長室でお休みください。レイ、ご案内して」
「ハっ!」
「すまないね、艦長……」
「いえ、これくらいの事は……」
ギルバートが席を立ち、艦長もその場から立ち上がろうとした時、突然通信が入った。
『艦長! 通信から失礼します』
「ん? どうしたの、ルナマリア?」
通信機器に映っていたのは、赤毛を短く切り揃えた快活そうな美少女、ミネルバ配属のMSパイロットであるルナマリア・ホークだった。
『戦闘中という事もあり、報告するのが遅くなってしまったのですが、本艦発進時に、我が軍のMSに搭乗していた民間人二名を発見、拘束したところ、その二名は、オーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ氏とその随員と名乗り、傷の手当てと、デュランダル議長への面会を希望されています』
「っ?!」
「えっ!?」
ルナマリアの報告に驚くギルバートとタリア。
それもそのはずだ、本来ならばとうにシェルターに避難しているものだと思っていたのだが……。
『僭越ながら、独断で傷の手当てを行い、今は仕官室でお休みいただいておりますが……』
「ぁ……」
「なぜ彼女がこの船に……?」
タリアもギルバートも、どうしたものかと、困惑していた…………。
その後、ギルバートとタリアの二人は、カガリ達が待つ部屋へと赴き、ことの詳細と、今回の騒ぎに対する謝罪を述べた。
そしてその頃、MS格納庫では、整備班達による急ピッチのメンテナンスが行われていた。
「いつまで時間かけてるんだっ! ザクのパーツ交換なんて、シミュレーションで何度もやったろっ!? それと同じ事をすればいいんだよ!」
「は、はい!」
整備班の新人が、班長に怒られたいた。
突然始まった実戦。
そしてミネルバも、明日の進水式を控えていながら、突然の出撃。
パイロットや他のクルー達もそうだが、整備班の面々も慌ただしい。
そんな中で、MSのスラスターチェックをしていたイチカ。その隣で、アリサも作業を手伝っている。
アリサのザクは、スラスターの故障によって、早々にミネルバに入っていた。
そのスラスターチェックと、イチカ自身の機体も、少し被弾した跡があったため、それの修復作業を行なっていた。
しかし、アリサからの言葉を聞き、イチカも驚きを隠せないでいた。
「はぁっ?! 『アスハ』って、あのオーブのアスハ代表かっ?!」
「そうなのよ……ミネルバが発進する直前にさ、ザクに乗ってきちゃったのよ……」
「まさか……代表って、確かナチュラルじゃなかったけ? コーディネーター用に組んであるOSのザクに乗ってきたってのか?」
「代表自身は操縦してないわ……随員として来ていた、青髪の人が操縦してたみたいよ」
「へぇ〜……もしかして、あの左腕を損傷している機体か?」
イチカが指差すその先には、緑色のザクのところで、ヴィーノとヨウランがパーツ交換を行なっていた。
「そうそう、アレに乗って来て、ルナと私で拘束しようとしたらさ……」
「…………アリサ」
途端に暗い顔をするアリサ。
懐かしい名前を聞いたからだろう。
『オーブ』……そして、『アスハ』という名前。
かつては自分たちも暮らしていた国……あのオーブ解放戦線の折に、二人はプラントへとやってきた。
もう戻ることもないだろうと思うし、あの時の事を思い出すこともないだろうと思っていたのだが……。
「まさか……こんな形でその名前を聞くことになるとはな……」
「っ…………私は、オーブが嫌い……!」
「……アリサ……それは言わない約束だろ? あの戦争は、どうしても避けられなかった……オーブの理念と、連合側の思惑……双方がかみ合わなかったんだから、どちらかと言えば、連合の方に非があるよ……」
「それでもっ……! あの国は、私たちを守ってはくれなかった……っ! そのせいで、パパはっ……!!」
「…………俺たちは、まだマシな方だろうさ……義母さんもいて、俺もアリサも無事……。
シンの様に、家族全員を奪われたわけじゃない……」
「それはそうだけどっーーーー」
「最前線で戦っていたオーブ軍の人たちだって、必死に戦ってたろ? 今こうやって、俺たちはMSのパイロットとして、ザフト軍にいる……。
実際に戦場に出て、敵を撃つ恐ろしさを感じているだろう……さらにそこに、守りたいものまであったのなら、それは…………」
「…………」
アリサの気持ちもわかる。
だが、ザフト軍に志願し、今こうしてミネルバの所属として、MSパイロットをしている。
ついさっきも自分の機体に乗り、実戦を経験してきたところだ。
そうした経験は、今後もあるかもしれないため、慣れるに越したことはないのだが、その慣れを覚え始めてしまったら、どこか自分の何かが変わっていくようで、とても怖いと感じてしまう事があるのだ。
「だからなぜそれが必要なのだ!!」
「「っ!?」」
暗い雰囲気に包まれていた二人の間を引き裂く用に、若い女性のもの声が、格納庫内に響いた。
作業を行なっていた整備班のメンバーや、その場にいたパイロットたち、イチカ、アリサを含めた全員が、その声の主のいる方へと視線を向けた。
「っ……!」
「ぁ……本当に、アスハ代表……っ!」
そこにいたのは、議長であるギルバートと、アリサから報告のあった人物……オーブ首長国連合代表、カガリ・ユラ・アスハの姿があった。
「我々は誓ったはずだ! もうあんな戦争を繰り返さないと!」
「ええ……ですから、そのための力が必要なのですよ」
「だから、何故そんなものが必要になるっ!? その力だって、現に地球軍側に強奪され、このような事態に陥ったのだろう?!」
二人は激しく口論をしていた。
おそらく、今回起こった事件について、代表の方が議長に対して追求をしているのだろう。
しかし、何もこんな場所で討論しなくとも良いのでは……?
そう思っていた時、隣にいるアリサの表情が変わっているのに気づいた。
「っ……!」
「おいっ、アリサ……! バカな事を考えるなよ……!?」
「何よっ……イチカはあの人にムカつかないのっ!?」
「ムカつかないと言えば、嘘にはなる……だが、あの人は一国の国家元首だ……っ! 俺たちが議長にケンカ吹っかけるようなもんだぞっ?!」
「っ…………くっ!」
アリサの握りしめた握りこぶしを、イチカは両手で優しく包み込む。
アリサもどうにかして冷静になったのか、力一杯握っていた拳を解いた。
どうにか一安心……そう思った矢先だった……。
「さすが綺麗事はっ、アスハのお家芸だなっ!!!」
「「っ!!!?」」
その場に響いた罵声。
一方的にカガリに対して放った言葉を発したのは、同僚であり、同じMSパイロットである赤服のザフト兵士……シンだった。
「シンっ!? あのバカーーーー」
「シンっ!」
イチカが頭を抱え、議長の隣にいたレイは、シンを糾弾するような目つきで、シンのいる元へと降りていった。
しかしシンは、特に謝るようなそぶりも見せないまま、格納庫を後にした。
「議長っ、申し訳ありません! この処置については、後で必ず!」
レイは議長に敬礼をし、シンの後を追いかけていった。
その場には、なんとも気まずい空気が流れたが、整備班長であるマッドの指示により、整備班も作業を再開した。
そして、初対面の人間にあんな事を言われ、さらには何やら憎しみめいた感情を含んだ睨みを効かされたカガリは、ただ呆然としているだけだった。
「申し訳ありません、代表……。彼は、オーブからの移住者なんですが、まさかあんな事を言うとは……」
「え……オーブからの……?」
「はい。先のオーブ解放戦線の折、プラントに移住して来まして、ザフト軍に入った者なのです。
彼以外にも、オーブから移住してきたMSパイロットがいまして……あぁ、あそこの赤紫色の機体で、整備を行なっている姉弟がそうですね」
「…………」
ギルバートが指差す先には、黒髪の少年と、長い銀髪の少女がいた。
二人で端末を覗き込み、なんらかの作業をしているのだろう。
そして、ようやくそれが終わったのか、少年の方が端末を閉じて、整備班の人に端末を渡した。
すると、銀髪の少女の方が、こちらの視線に気づいたようだ。
「ッーーーー!!!」
「っえ…………?!!」
彼女からも、睨みつけるような視線を受けてしまった。
さっきの少年といい、視線の先にいる少女といい……どうすればそんな眼ができるのかと言いたいくらいに、強く、そして暗く怖い視線を向けて来る。
「ふんっ……!」
「ぁ……」
「お、おい! アリサっ!」
不機嫌さをモロに出して、少女はその場を離れる。
そして、慌てた様子で、こちらを見る黒髪の少年。
その少年はこちらに頭を下げると、急いで少女の後を追っていった。
「っ! ボギー1 捕捉しました! オレンジ55 マーク90 アルファ!」
「っ…………!」
一方、ブリッジでは索敵していたボギー1 を、ようやく捕捉する事に成功していた。
そして、それはボギー1 ……いや、ガーディー・ルーも同じだった。
「イエロー50 マーク80 チャーリーに大型の熱紋確認! 距離8000ッ!」
向こうもこちらも、即座に臨戦態勢へと入った。
ミネルバの方では、オペレーターであるメイリンの声が、ミネルバ全艦にまで響き渡る。
『ボギー1 捕捉ッ! コンディションレッド発令! パイロットは搭乗機にて待機せよッ!』
メイリンの呼びかけにより、整備班もパイロット達も、急いで準備にかかる。
そして、ガーディー・ルーもまた、同じように戦闘準備を行っていた。
「やはり来ましたか……」
「あぁ……ザフトも、そう寝ぼけてはいないという事だな……よし、ここでケリをつけるぞ!」
「ハッ!」
「本艦も戦闘態勢! パイロット達はブリーフィングルームに集合させろ!」
ガーディー・ルーは、そのままデブリ帯に向かって針路を取る。
それを追随するミネルバでも、着々と準備を進めていく。
「よもやデブリ帯の中に入るとは思えないけど、危険な宙域での戦闘になるわっ……操艦、気をつけてね」
「はい!」
「シンとルナマリア、イチカで先制します! 準備は終わってるわね?」
「はい!」
操舵士とメイリンに確認を取るタリア。
そして、艦の観測システムにより、ボギー1 の正確な位置が特定できた。
「目標まで、距離6500!」
「っ…………!」
いよいよ再戦が始まる……そう思った時、後方にあるブリッジの入り口が開いた。
「っ……議長!?」
「いいかな? 艦長」
この艦に乗船していたギルバートと、その後ろには、オーブのアスハ代表と随員のアレックスが一緒だった。
そんな彼女たち二人を連れて、なぜここに来たのか……。
「私はこのオーブのお二方にも、ブリッジに入ってもらおうと思っているのだが……」
「それは……えっと、その……しかし……」
本来ならば、民間人が戦闘艦のブリッジに入ることは許されない。
たとえ一国の代表であろうとだ。
「君も知っての通り、代表は先の大戦で艦の指揮を執り、多くの戦闘を経験されて来た方だ……。
そういった視点から、彼女にもこの艦の戦闘を見てもらおうと思ってね」
「…………わかりました、議長がそう、お望みならば」
「ありがとう、タリア」
そう言うと、カガリとアレックスは後方に設けられていた席に座った。
「目標まで、距離6000!」
「ブリッジ遮蔽! 対艦、対MS戦闘用意!」
「「っ!?」」
ブリッジが可動し、どんどん下へと沈んでいく。
そして、CICと一体化したブリッジは、どの艦にもないミネルバ独自のシステムだ。
その新システムには、カガリとアレックスも驚いた。
一方、ガーディー・ルーでも戦闘準備か着々と整って来ていた。
強奪したばかりの三機……カオス、ガイア、アビスの三機を発進させ、ガーディー・ルーは何やら策略を考えていた。
「アンカー射出! 機関停止とともに、デコイ発射! タイミング見誤るなよ……っ!」
不敵な笑みを浮かべるネオ。
ガーディー・ルーは上部にある小惑星にアンカーを打ち込むと、スラスターの機関を全部止める。
そして、まるで振り子のような原理で、ガーディー・ルーは進路を変えた。
その頃、ミネルバでは、MSの発進シークエンスが開始されていた。
『ルナマリア・ホーク、ザクウォーリア……イチカ・ラインハルト、ザクファントム、発進シークエンスを開始します!』
二機は左右のカタパルトデッキにそれぞれ移動して、射出システムの台座に固定される。
それと同時に、インパルスの発進シークエンスもスタートさせていた。
『インパルス、発進スタンバイ! モジュールはブラストを選択。シルエットハンガー3号を解放! プラットホームへと移動完了、気密シャッターを閉鎖します!
中央カタパルト、オンライン! コアスプレンダー、全システムオールクリア! 発進シークエンスを開始します!』
コアスプレンダーが中央カタパルトの射出口にセットされ、カタパルトのシステムがエンゲージになっていく。
さらに、両舷のカタパルトデッキの射出口も開き、そこにルナマリアのザクウォーリアと、イチカのザクファントムが発進準備を終えた。
『ガナーザクウォーリア、カタパルトエンゲージ』
「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよっ!」
高速で滑る射出台。
高エネルギー長射程ビーム砲《オルトロス》を背中に装備した赤いザクが、宙域へと飛び立つ。
『続いてスラッシュザクファントム、発進どうぞ!』
「イチカ・ラインハルト、ザクファントム、行きます!!」
ルナマリアが射出されたカタパルトとは逆のカタパルトから、灰色のザクが出撃する。
背部に装備された二門のガトリングビーム砲《ハイドラ》が特徴的な、近接戦闘に役立つ武装を携えたイチカの機体。
それには本来、ビームアックスもつけられるのだが、イチカのザクファントムは、すでにカスタム仕様されているため、アックスの取り付けはしなかった。
『続いてコアスプレンダー、発進、どうぞ!』
「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!!」
小さな戦闘機が、中央カタパルトから発進する。
そして、その後を追うように、チェストフライヤー、レッグフライヤー、シルエットフライヤーが射出される。
やがてコアスプレンダーがその形状を変え、レッグフライヤー、チェストフライヤーと合体。
最後にブラストシルエットをレーザーサイトによる牽引でインパルスの背部に装備させる。
黒と青、白のトリコロールカラーに染まるインパルス。
背部にある二門の高エネルギー長射程ビーム砲《ケルベロス》を装備した、砲撃戦仕様の機体だ。
「ボギー1 ……か……本当の名前は、なんと言うのかな?」
「ん?」
「名はその存在を示すものだ……もしその名前が偽りならーーーー」
出撃したインパルスとザク二機の後ろ姿を見ながら、ギルバートは口を開いた。
その問いかけに、アレックスは答えない。
「ーーーーもしも偽りなら、その存在自体も偽り……と言うことになるのかな? アレックス・ディノ……いや、アスラン・ザラ君?」
「っーーーー!!!!?」
次こそは確実にデブリ戦はやれますので( ̄▽ ̄)
次回をお楽しみにしておいてください。
では、感想よろしくお願いします!