機動戦士ガンダムSEED DESTINY〜インフィニティー・セイバーズ〜 作:剣舞士
ようやくデブリ戦が終わったぁぁ〜〜( ̄▽ ̄)
「もしも偽りならば、その存在自体も偽り……と言うことになるのかな……アレックス・ディノ……いや、アスラン・ザラ君?」
「っーーーー!!!??」
「議長っ、それはーーーー」
どうしてバレたのか……いや、アスランのことを考えれば、知られているのは当然かもしれない。
前プラント最高評議会議長 パトリック・ザラの息子であり、ザフトレッドクルーゼ隊の隊員であり、後に特務隊『フェイス』にまで所属した、実質的にエースパイロットと呼ばれていたほどの人物なのだ。
ならば、現議長であるギルバートが知らない事もないはずだ。
しかし、それを知らないかった者たちからすれば、それほどの有名人が、何故オーブにいるのか……それも、代表の護衛という仕事をしているのだろうか……?
「なに、心配には及びませんよ……アスハ代表」
「え?」
「私はなにも、彼を咎めようと言うのではありません……。彼が今もこうしていることは、私も承知済みです。
叶わば前議長の計らい……私は無駄にはしたくありませんから……」
「…………」
「しかし、どうせ話すのならば、本当の君と話してみたいのだよ、アスラン君……それだけの事だ」
「っ…………」
現議長、ギルバートが聡明な人物である事は知っているが、こう言う話題を切り出されると正直どう言う顔をすればいいのかわからなくなる……。
しかし、ここは戦場……。
そんな事に捉われている暇などなかった。
デブリ帯の中に入ったインパルスとザク二機……そして、その後方からついてくるゲイツR二機の計五機が、ボギー1 を追っていた。
「っ……」
「はぁ〜……あんまり成績良くないのよねぇ〜、デブリ戦……」
「向こうもこっちを捉えている筈だ……油断するな」
「わかってるわよ……レイみたいな口聞かないでよねぇ、調子狂うわ」
「ルナ……お前何気にひどいこと言うな……」
シンからの忠告に、ルナが素っ気なく返す。
ルナ自体も、悪気があってそう言うことを言うようなタイプではないのだが……。イチカも時々こんな事を言われていた事を思い出した。
まぁ、普段からシンがそんな事を言うこと自体無いので、イチカも少しだけ意外に思ったりもして……。
「しかし、俺たちがここまで接近してるのに、なんで何もしてこないんだ……?」
「そういえばそうね……?」
「っ……マズイッ! すぐに散開するんだ!」
「「えっ!?」」
何かに気づいたイチカ。
しかし、シン達は、すでに敵の術中に嵌っていたのだ。
そしてそれは、後方にいるミネルバも同じだった。
「《ランチャー6》から《ランチャー10》、ミサイル発射管に装填! 《CIWS》、《トリスタン》起動!」
アーサーの指示により、ミネルバも戦闘態勢に入る。
「ボギー1 なおも進行そのまま! インパルスとの距離、1400のままです!」
「これだけ近づいても、まだ何もしてしてこないなんて……っ! 何かの作戦なのか……?」
「っ……! いけないっーーーー」
「デコイだっ!!!!」
アーサーの言葉に、トラップであると気づいたタリア。
しかし、それよりも先に、後方にいたアスランが叫んだ。
そして、デブリ帯に入ったシン達に、スティングたちが襲いかかる。
「よぉしっ! 行くぞっ!!!!!」
「っーーーー!!!!」
「待ってましたッ!」
スティング、ステラ、アウルの士気が上がる。
デブリの陰に隠れていたカオス、ガイア、アビスの三機。
いきなり飛び出てきたと思いきや、カオスは機動兵装ポッドを射出。
そしてその後方から、アビスによる砲撃。
胸部の《カリドュス》と背部の《バラエーナ改》二門を放つ。
アビスの砲撃はなんとか躱したものの、その後追撃してきたカオスの機動兵装ポッドのビーム砲によって、ゲイツR一機が撃ち落とされた。
「ショーンっ!!」
「っ、くそっ……!」
「散開して各個に応戦ッ!」
搭乗していたパイロットの名を叫ぶルナマリア。
イチカ、シンともにその場を離れ、各機それぞれバラバラに散る。
その戦闘の最中、シンはレーダーで捉えていたボギー1 の情報を見ていた。
しかし、そのレーダーから送られてきたボギー1 がいるであろうと示していた光の点が、いきなり消失した。
「っ〜〜!! ボギー1 がっ……!?」
「あれはデコイだっ、くそっ、嵌められたっ!」
驚くシンと、歯を噛みしめるイチカ。
その後、デブリからガイアも現れ、完全にしてやられた事を悟る。
そして、ボギー1 消失の事に関しては、ミネルバでも驚いていた。
「ボギー1 っ、ロスト!」
「なにっ!?」
「ショーン機も、シグナルロストです! イエロー62 ベータに熱紋3! これは……っ、カオス、ガイア、アビスです!」
「っ! 索敵急いで! ボギー1 を早く!!」
完全に相手の術中に嵌ってしまったシンたちとミネルバ。
そして、それを見逃すほど、ネオ・ロアノークという男は甘くはなかった。
「ふっ……!」
不敵な笑みを浮かべ、左手を軽くあげる。
その合図と共に、艦長であるイアンの指示が飛ぶ。
「ダガー隊発進! 機関始動! ミサイル発射管、5番から8番発射、主砲照準! 敵戦艦ッ!」
ガーティー・ルーの両舷カタパルトデッキが開き、そこから二機のダガーLが発進する。
背部には、二門な連装砲を搭載した武装をつけており、ガーティー・ルー共々ミネルバの背後から奇襲をかけてきた。
「ブルー18 マーク6 チャーリーに熱紋! これは……っ、ボギー1 です!! 距離500っ!!」
「えぇっ!!?」
「さらにMS2っ!」
「っ……!! 後ろから……っ?!」
「足跡レーサー掃射っ、艦あり!!」
慌てふためくミネルバ。
そんなミネルバを、後方から狙い撃つガーティー・ルー。
主砲である《ゴッドフリート》二門が火を噴き、宇宙用ミサイル《コリントス》も余す事なく発射する。
「アンチビーム爆雷発射! 取舵30、《トリスタン》照準!」
「ダメですっ、オレンジ22 デルタにっ、MSっ!!」
「くっ……! 機関最大! 右舷の小惑星を盾に回り込んでっ!」
「ぐううっ!!!」
後方から一方的な攻撃。
そしてMSまでいては、完全にこちらが不利だ。
ミネルバは、ガーティー・ルーの攻撃から避けるために、小惑星の周りを周回し始めた。
迎撃用のCIWSによるミサイル撃墜のほかに、小惑星にミサイルが着弾、爆発する。
直接的なダメージは負ってはいないものの、その衝撃自体を受けないわけではない。
「メイリンっ、シンたちを戻して! 残りの機体も発進準備っ!」
「はい!」
「マルクっ、小惑星の隆起をうまく使って回避! 直撃を避けて!」
「は、はいぃっ!」
「アーサーっ、迎撃っ!」
「《ランチャー5》《ランチャー10》ディスパール、撃てぇぇぇっ!!!!」
ミネルバも負けじと反撃に出るが、なにぶん後ろを取られている状態では、火器の半分も使えない。
「っ……後ろを取られたままじゃどうにもできないわ! 回り込めないのっ!?」
「無理ですよっ! 今は回避だけで手一杯です!」
「艦長っ、レイとアリサのザクを出しては……?」
「これじゃ発進進路も取れないわよっ……!!」
「ぁ……」
周りは小惑星に加え、浮遊する岩塊が多くあり、MSを発進させるには危険すぎる。
しかし、これでますますミネルバに打つ手がなくなってきた。
相手側はすでにMSを二機発進させている。
迎撃用のミサイルを放つも、こちらも浮遊している岩塊が邪魔で、直撃を避けられる。
そして、頼みの綱になっているシンたちは、カオス、ガイア、アビスの三機に包囲されていた。
「ちっ……!」
「くうっ……!」
「まずいぞっ、どんどん追い込まれてるっ!」
シンのブラストインパルス、ルナマリアのガナーザクウォーリアは、砲撃戦仕様の機体。
イチカのスラッシュザクファントムは近接戦に特化した機体だ。
しかし、こちらもこちらで、大きなデブリの密集地での戦闘のため、機能性やその性能差で圧倒する新型機三機に翻弄されている。
カオスの機動ポッドがシンたちを撹乱し、アビスは目標に狙いを定める。
「もらいっ!」
胸部の《カリドゥス》と、両肩のシールド内に内装してある《三連ビーム砲》を同時に放つ。
その狙いは、シンでも、ルナマリアでも、イチカでもない。
その先にあったデブリの陰に隠れているもう一機のゲイツRだった。
ビーム砲はデブリを撃ち抜いて、そこにいたデイルの乗るゲイツRを撃ち落とした。
「デイルっ!」
「っ〜〜〜〜!!」
「くそっ、デイルまでやられたのかっ……!」
「あっという間に二機も……っ!?」
これで三対三……数的にはイーブンだろうが、状況は最悪だ。
そして、苦戦を強いられているこちらにも、ミネルバからの救援指令が届いた。
「っ……なにっ、ミネルバがっ?!」
「向こうにはボギー1 が来ているのかっ!?」
「私たち、まんまと嵌っちゃったってわけっ?!」
「っ……どうやら、そうみたいだね……でも、戻れったってっ……!」
「この包囲網を崩すのは容易じゃないっ……! ちっ、敵の指揮官も、なかなかやるなっ……!」
「仕方ないっ、各個に応戦しながら、急いでミネルバに戻ろう!」
「ええっ!」
「ああっ!」
シンの言葉に同意したルナマリアとイチカ。
向かってくるカオス、ガイア、アビスの三機に対して、三人はそれぞれ一機ずつ迎撃に向かう。
「おおっ? 向こうもやる気になったみたいだぜ?」
「何だろうが……落とす……っ!」
「ヘェ〜? じゃあ、僕はアノ剣野郎をもらおうかなぁっ……!」
こちらも受けて立つようだ。
スティングはシンの方へ、ステラはルナマリアに、そしてアウルはイチカに向かって攻撃を開始する。
「おらっ、今日こそ落ちろっ! 新型ぁぁっ!!」
「ちっ……!」
カオスは機動ポッドを展開して、インパルスに対してオールレンジ攻撃を仕掛ける。
インパルスもただで食うかと、錐揉み状に飛ぶことで回避し、ビームライフルで反撃する。
「くっ……! だあぁっ!」
一方、ガイアに追いかけ回されている形になるルナマリアのガナーザク。ガイアはMA形態となり、廃棄コロニーの太陽光パネルの上を走る。
そしてルナマリアは、特徴的な武装……高エネルギー長射程砲《オルトロス》を構えて、ガイアに照準合わせる。
「ッーーーー!!!」
引き金を引いた瞬間、長大な砲身の銃口から高エネルギーのビームが放たれた。
その砲弾はデブリに直撃し、デブリを貫通して、大爆破を起こすほどの威力があった。
しかし、ガイアはその刹那、上方に飛び跳ねて回避していた。
その姿は、獲物を狙い澄ましている野獣のようだ……。
「なんなのよ、あんた達はっ……! この泥棒がぁぁッ!!!!」
再び《オルトロス》の引き金を引いた。
しかし今度は、背部にある《グリフォンブレード》のスラスターを吹かせて、下方へと回避する。
そしてそのまま、ルナマリアに向かって突進する。
「落とすーーーーッ!!!!!!」
「くっーーーーッ!!!!!」
右肩にマウントしているビームライフルと、背部のビーム突撃砲を連射し、ルナマリアを仕留めにかかる。
ルナマリアは急いでスラスターを吹かせて、その場を離れる。
しかし、逃がさないとばかりに、ステラはルナマリアのザクを追いかける。
コロニーの外壁をMA形態のまま駆け抜ける。
そして、その地点では、もう一組の対戦が行われていた。
「このっ!!」
「ハッ! そんなもんっ?!」
左手に握るビーム突撃砲を放つイチカのザク。
しかし、アビスの肩のシールドに阻まれる。
「どうしたんだよっ、この前みたいに、攻めて来いよっ!」
お返しとばかりに、シールド内の《三連ビーム砲》を放つ。
イチカは受けきれないと悟り、デブリ帯の中を縦横無尽に飛び回る。
ビームはデブリを貫通するが、イチカのザクに直撃することはなかった。
貫かれた廃棄コロニーが爆散し、大量の煙を吹き上げる。
「ふふん……♪」
ほとんど一方的な攻勢に、アウルも気分がいいようだ。
しかし次の瞬間、爆煙の中から高速で近づく機体に気づいた。
「ちっ……! まぁ、そう簡単に落ちるわけないよねぇっ!」
「おおおおっ!!!」
爆煙の中から現れた機影。
両手に対艦刀《オーバーエッジ》を抜いたイチカのザクファントムだった。
ならばこちらも受けて立つと言わんばかりに、アビスも攻勢に出る。
ビームランス振り回して、ザクに向かってスラスター全開で肉薄する。
「そぉらあっ!!!!」
「はあああっ!!!!」
上段からビームランスを振り下ろすアビス。
そして、双剣をXの字に交差してそれを受け止めるザク。
両者の力が拮抗しているのか、激しい鍔迫り合いが起き、凄まじい閃光がほとばしる。
「ちっ……!」
「おらおらっ、どうしたっ?! 逃げてるだけかよっ!」
一方で、カオスの執拗なまでの追撃を躱し続けていたインパルス。
デブリの中にあるコロニーの施設内へと逃げ込む。カオスもそれを見越して、次の迎撃場所へと移った。
そして、施設内に入ってしまったインパルスには、カオスを特定することができない。
「くそっ、これじゃ位置がーーーーっ」
『シンッ!』
「っ!?」
突然通信で入ってきたルナマリアの声。
すると目の前に、外の窓ガラスを割って入ってくるルナマリアのザクを発見した。
その外には、ガイアの姿も……。
シンはライフルを後ろ腰部分に取り付け、背部の重砲撃型武装である高エネルギー長射程砲《ケルベロス》の砲口をガイアに向け、これを発射。
超強力なビーム砲が放たれ、追撃しようとしていたガイアの動きを止める。
「なんなのよっ……! あんたはまたっ!!」
『ステラっ、躱せっ!!』
「はっ!?」
インパルスを激しく睨みつけるステラに対して、アウルからの通信が入った。
それと同時に、ガイアからの警報が鳴る。
そしてそのすぐ後……ビーム弾の雨が、ガイアに向かって降り注ぐ。
「うぅッ!!?」
ステラは急いでスラスターを吹かせて、後ろに飛び退いた。
そしてそのビーム弾が降り止んだ後、灰色のザクが、ガイアの側を通りすぎる。
「あの距離で避けるのかよっ……!?」
「こんのぉっ……! お前ぇぇぇっ!!!」
灰色のザクファントム……。
その背部に取り付けられたビームガトリングガンの弾丸だったのだ。
今度は、ガイアの標的が、ルナマリアからイチカに変わる。
ガイアとアビス……二機のガンダムから、追いかけられる形となった……。
そして一方、徐々に追い詰められて行っているミネルバは…………。
「《ナイトハルト》っ、撃てぇぇぇっ!!!!」
背後からはガーティー・ルーの主砲とミサイル。
左舷前方の上方からは、MSによる砲撃が行われていた。
高速艦として、足自慢であるミネルバは、なんとか小惑星の隆起を利用して、敵攻撃の直撃を躱すが、相手の攻撃が当たらないだけでなく、こちらの攻撃も、相手に当たらないという、なんとも歯痒い状況に陥っていた。
「っ……!! これではっ、こちらの火器の半分もっ……!」
「浮遊している岩のせいで、こちらの砲も届きませんっ!」
迎撃ミサイルを敵MSに対して放つが、周りを浮遊している岩塊に阻まれ、二機のMSすらも撃ち落せない。
なんとか粘り続けるミネルバに、ついにネオが動いた……。
「ふむ……中々粘りますな……」
「だが、船は足を止められたら終わりさ……」
ネオは立ち上がり、CIC担当に指示を飛ばした。
「奴がへばりついている小惑星に、ミサイルをありったけぶち込めっ! 砕いた岩のシャワーを、たっぷり浴びさせてやるんだっ!
船体が埋まるほどにな……っ!」
「ハッ!」
「出て仕上げてくる……あとは任せたぞ」
「ハッ」
艦長のイアンにそう伝えて、ネオは格納庫に向かってブリッジを出て行った。
そして、ネオの言う通りに、ガーティー・ルーのミサイルがミネルバに向かって発射される。
だが、その軌道が船体に向けて放たれているものではないと、ただ一人の青年だけが気づいた。
「んっ?」
後ろで、カガリとギルバートと共に座って戦況を確認していた、アスランだった。
「ミサイルっ、来ますっ!」
「迎撃っ!!」
「いえ、しかしっ……これはっ……?!」
「何っ?! どうしたのっ?」
(直撃コースじゃない……っ?)
今の今まで、ずっと狙いを定め撃っててきていた敵が、今更になって標的を変えるなんてことはあり得ないと思い、アスランはモニター越しに映るミネルバの右舷と小惑星を見た。
その瞬間、相手の本当の狙いを察知した。
「っ〜〜!! マズイッ! 船を小惑星から離したくださいッ!!!」
「え……っ?」
アスランの言うことに、タリアは疑問を覚えた。
が、アスランの悟った危機は、すぐに訪れることとなる。
ガーティー・ルーから放たれたミサイルは、ミネルバ本体ではなく、小惑星に次々と当たっていく。
直撃はしてないものの、砕かれた岩塊が、ミネルバの右舷を直撃……その物量の多さに、ミネルバ右舷の損害が激しくなってきた。
「右舷がっ……!? 艦長!!」
「離脱するっ! 上げ舵15っ!」
「さらに第二波っ、来ますっ!」
「減速20っ!!」
ミネルバの進路先にもミサイルが撃ち込まれる。
逃げ切れないミネルバには、更なる岩塊のシャワーがあり注ぐ。
外装に岩塊がぶつかり、さらに損傷していく。
そして最悪な事に、ミネルバのスラスターにも岩塊がぶつかり、スラスターが破損してしまった。
さらに、ガーティー・ルーのカタパルトデッキからは、紫色のMAが発進した……言うまでもなく、ネオの搭乗機である《エグザス》だった。
「さて……進水式もまだだと言うのに、お気の毒だがな……」
ミネルバ後方から、エグザスと、ダガーL二機が迫り来る。
「仕留めさせてもらうっーー!!!」
背後から敵が迫り来る中、ミネルバの進路上には、大きな岩塊が落ちてくる。
「進路っ、塞がれました!」
「4番、6番スラスター破損っ、艦長、これでは身動きがっ……!」
「さらに後方よりっ、MA、MS接近っ!」
「っ……!!」
タリアは艦長席に備え付けてある受話器を取ると、格納庫にいる整備班に通信する。
「エイヴィスっ、レイとアリサを出してっ!」
『はいっ、しかし、カタパルトが……』
「歩いてでもなんでもいいからっ、やらせてっ!! メイリンっ、シン達はっ?!」
「依然、カオス、ガイア、アビスと交戦中です!」
「くっ……!!」
急な混乱のために、本来の搭載可能な機体数を乗せていなかったミネルバ。
さらにショーンとデイルの乗っていたゲイツRは二機とも撃破され、シンのインパルス、イチカとルナマリアのザクはデブリ帯でカオス、ガイア、アビスの三機に包囲されている。
「この艦にはもう、MSは無いのかっ!?」
「っ……パイロットがいませんっ!」
「なっ……!!?」
ギルバートの言葉に、タリアも感情を露わにして返答する。
そして、この危機的状況に、アスランもどうしようか迷っていた。
「艦長、《タンホイザー》で前方の岩塊を……」
「吹き飛ばしても、それで岩肌を縫って、同じ量の岩塊を撒き散らすだけよっ!」
「ぁ、あぁ……」
万事休す……。
そんな言葉が思い浮かんだ。
しかし、ようやくミネルバの左舷カタパルトデッキが開いた。
そこから、白いザクファントムと、赤紫色のザクウォーリアが出てくる。
背中には、イチカ、ルナマリアが搭載しているものと同じ『ウィザードシステム』の武装が取り付けられており、二人が取り付けているのは、多数のスラスターを搭載した機動戦型の装備『ブレイズウィザード』だ。
(ミネルバには、ギルが乗っているんだっ……! 絶対にやらせるものかっーーー!!!)
一人、内側から闘志を燃やすレイ。
浮遊する岩の合間を縫って、接近するMAとMSの方へと向かう。
「アリサっ、お前はその位置から、ミネルバを護衛しろ! 俺が先行して敵を引きつけるっ!」
「ちょっ?! レイッ!?」
アリサの返事を待たずに、レイは先に行く。
「全くっ……まぁ、別にいいけど……。私にしてみれば、これこそが私の本領発揮の距離だしね……!」
アリサのザクには、イチカ同様にカスタム化されたある武装が取り付けられているのだ。
ザクウォーリアの左肩には、対ビーム塗装のされたシールドが存在し、右肩は一体型スパイクを有した曲面アーマーをつけているのだが、アリサのザクに至っては、それが取り外され、『ガナーウィザード』で見受けられた《オルトロス》と似た機銃が取り付けられていた。
銃身は伸縮式になっているため、見た目では普通のビームライフルのように見えるが、これこそが、アリサ専用にカスタムされた武装……白銀の塗装がされたビームスナイパーライフル《ファルコン》だ。
大きさは『ガナーウィザード』の《オルトロス》より二回りほど小さい銃身。
ただ、無骨な鉄塊の威圧感と、高速でビーム砲を射出する銃口の輝きは、見た者を確実に仕留めると言わんばかりのオーラを纏っていた。
「さてと、狙い撃ちますかーーーーっ!!!!!」
右手に持っていたビーム突撃砲を腰部に取り付け、右肩のライフルを手にする。
伸縮式の銃身が伸び、あっという間にスナイパーライフルへと早変わりした。
そして、レイが向かった先には、当然ネオの乗るエグザスが待ち構えていた。
ーーーーーッ!!!!!!
「んっ……!」
またあの時の感覚だ。
何故かわからないが、頭の中に電流のようなものが流れる感覚……。
しかし、それが白いザクが接近している事だと、ネオにはすぐにわかった。
そして、そこからの行動もまた早かった。
四基のガンバレルを射出して、レイの乗るザクに対してオールレンジ攻撃を仕掛ける。
ーーーーーッ!!!!!!
「っ……!!!」
そして、レイもまた同じ感覚を察知した。
すると、機体の前後、左右からガンバレルによるビーム攻撃が放たれた。
レイは機体を動かし、わずかな角度調整でビーム砲を躱していく。
「くっ……! 一体なんだ君はっ、白い坊主くん!」
「ちっ……!」
妙な感覚でつながっているように感じる二人。
ガンバレルでとことん背後からの射撃を行うネオ。
しかし、そのすべてを、レイも躱していく。
すると、ガーティー・ルーから発進したMSの一機であるダガーLが、背中の連装砲と右手のビームカービンでレイを狙ってくる。
「チィッ! 邪魔だっ!」
レイも応戦しようとした、その時だった………。
『レイッ!』
「っ!?」
通信とともに、ミネルバのいる方角から、高速でやってくる緑色の閃光。
その閃光は、一片の狂いもなくダガーLのコックピットブロックを撃ち抜き、爆散させたのだ。
『ジョーンッ!』
「なんだとっ……!!?」
ビームが飛んできた方向に目を向ける。
機体の望遠システムを使い、映像を拡大した……。
すると、そこに写っていたのは、赤紫色の塗装がされ、スナイパーライフルを装備しているザクウォーリアの姿があった。
「まさかっ、あの位置から正確な射撃をやってのけたと言うのかっ……!!?」
「アリサ……!?」
『私の得意分野……何だか思い出した?』
「ふっ……あぁ、お前のキリングレンジだったな……っ!」
アリサの通信にそう返答すると、レイはそのままエグザスへと攻め入る。
「大佐っ、どうすれば!?」
「退がれミラーっ! こいつらは手強いっ……お前は船を! あのスナイパーに狙撃されないよう、岩塊の合間を縫って行けっ!」
「ハッ!」
残っていたダガーLは、ネオの指示通りに岩塊の中を縦横無尽に飛び回りながら、少しずつミネルバに近づいていく。
「ちっ! 姑息なっーーーー」
「おっとっ! 君は行かせないよっ!」
レイの進路を邪魔するかのように、ネオのエグザスが前方に現れる。
ガンバレルと本体の連装ビーム砲が火を噴き、レイをその場に足止めさせる。
「アリサっ! そっちに行ったぞ!」
『わかってるっ、こっちでも捉えた!』
たしかに、岩塊の多いこの宙域での狙撃は至難の技だ。
動き続ける敵、障害物が多いこの状況では、アリサの能力は発揮しにくい……しかし……。
「そのための『ブレイズウィザード』なんですけどねっ!!!」
両側のスラスターブロックの先端部分が稼働し、その中に小さな誘導ミサイルが多数現れる。
片側で19発のミサイルを保有し、両側合わせて38発のミサイルを、アリサは全部撃ち放った。
ミサイルはダガーLめがけて飛んでいくが、障害物として存在する岩塊にあたり、岩塊をことごとく粉々にしていく。
「ふんっ、そんなもの、当たるかーーッ!!」
ダガーLを操縦するミラーは、余裕の表情でミネルバに接近していた。
しかし、それこそがアリサの思惑だと知らずに、自ら死地へと足を踏み入れている事になる。
「バーカ……これだけ障害物がなきゃーーーー」
「しまっーーーー」
「こっちから狙い撃てるのよッ!!!!」
「うわあぁあああっーーーー!!!」
ミサイルはあくまで、射線上の障害物を除去する上で必要だっただけ……。
障害物の少なくなった今、アリサの狙撃可能距離内にいるミラーは、格好の獲物だ。
引き金が引かれ、緑色の閃光が再び閃く。
またしてもコックピットブロックを1発で撃ち抜き、ダガーLは爆散してしまった。
「よしっ!」
敵機の撃破を確認したアリサはコックピット内でガッツポーズをとる。
「ん…………」
そして、味方を二人も失ったネオはレイからの射撃を躱して、一旦距離を取る。
今度はこちらが攻勢に入ったが、後ろからやってくるガーティー・ルーの存在があるため、迂闊には動けない。
そんな時、ミネルバでは…………。
「右舷のスラスターはっ、いくつ生きているんですっ?!」
「え……?」
タリアに問いただしたのは、アスランだった。
横に座るカガリが、心配そうな表情で見ている中、アスランの問いに、タリアはギルバートの顔を見る。
議長の指示を仰ごうとしているのだ。
そして、ギルバートは無言のまま首を縦に振る。
どうやら、答えてくれと言っているみたいだ……。
「6基よっ! でもそんなので、のこのこ出て行ったらいい的にされるだけだだわっ!」
「同時にっ、右舷側の砲を一斉に撃つんですよ! 小惑星に向けてっ」
「っ……!!」
「ええっ?!」
アスランの言葉に耳を疑ったような表情をするタリアとアーサー。
しかし、アスランはなおも続ける。
「爆発の衝撃を利用して、一気に船体を押し出すんですよ! 周りの岩も一緒にね……!」
「…………っ!!!」
「馬鹿を言うなっ! そんなことをすれば、ミネルバの船体だってーーーー」
「今は状況回避が先です! このままこうしていても、的になるだけだっ……!」
「くっ……」
「…………」
アーサーがアスランの事を強く睨んだ……。
アスランはアスランで、今の自分の立場での物言いに、少し後ろめたさを感じているのか、アーサーから視線を外す。
「タリア……」
「っ……確かにね。いいでしょうっ、やってみましょう!」
「艦長っ?!」
ギルバートの言葉に、タリアも仕方ないと思ったのか、アスランの案を取り入れた。
しかし、これで納得しないのが、アーサーだった。
「この件は後で話しましょ、アーサー」
「っ……!」
「右舷全砲塔っ、小惑星に向けて一斉射! 同時に右舷スラスターを全開!」
「右舷全砲塔、一斉射用意っ! 同時に右舷スラスター全開!」
「メイリンっ、アリサに離れるように言って! 爆発に巻き込みかねないわ」
「は、はい!」
タリアの指示で、メイリンからアリサに対して緊急回避の通信が入る。
そして、そんな事を考えているとは知らないガーティー・ルーが、徐々にミネルバに接近してきていた。
「さて、とどめを刺すか……」
「浮遊した岩が邪魔で、直撃は期待できませんが……?」
「なに、追撃不能にまで追い込めばいい……。大佐は面白くないだろうが……そろそろこちらのMS部隊も、エネルギーが辛い頃だろうからな……!」
「ハッ!」
ネオは追撃が出来ないように、この場で仕留めておこうと考えているが、イアンは現状の戦力を分析して、それが妥当だと判断した。
今もなお、白いザクと交戦中のネオ。
その横を通り、ガーティー・ルーはミネルバを撃つためににか付いてくる。
しかし、その行動がのちに反撃を食らう事になるのを、イアンはまだ知らなかった。
「みんなっ、いいわね? タリア・グラディスより、ミネルバ全艦にいる乗組員に通達! 全員、衝撃に備えよ! 行くわよっーー!!!」
タリアの言葉に、全員の体が強張る。
そして、運命の時……。
「右舷スラスターっ、全開っ!!!」
ミネルバの右舷スラスターが稼働し、船体が僅かばかり動く。
そしてその瞬間を狙って、副長アーサーの声が響いた。
「右舷全砲塔っ、撃てぇぇぇっ!!!!!!」
その瞬間、ミサイル発射管、連装砲《イゾルデ》、艦主砲《トリスタン》が一斉に放たれた。
着弾と同時に、小惑星は大爆発を起こし、その衝撃はミネルバの船体を思いっきり外側に押し出し、ミネルバの周りに張り付いていた岩塊や、浮遊していた岩全てを吹き飛ばした。
「「「「っ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」」」」
艦内にいる乗組員たちも、その衝撃に壁に激突したり、必死に何かを掴んで離さなかったりしていた。
そして、アスランの目論見通り、ミネルバは周りの岩塊を吹き飛ばしながら、その船体を一気に小惑星から引き離し、こちらに向かってくるガーティー・ルーの方向へと出た。
「っ……ミネルバっ?!」
「ちょっ、無茶するわねっ?!」
衝撃によって吹き飛ばされた岩塊は、その宙域にいたレイ、アリサ、そしてネオの下まで飛んでくる。
あらかじめその場を離れていたアリサも、ミネルバのその行動に、驚きを隠せなかった。
「左30度回頭っ! 《タンホイザー》起動っ!!」
「《タンホイザー》起動! 目標っ、ボギー1ッ!!!!」
ミネルバの艦の先頭部分のハッチが開き、そこから一つの砲塔が姿を現した。
ミネルバ最強の武装である陽電子破砕砲《タンホイザー》。
その砲塔が起動して、射線軸にガーティー・ルーを捉えた。
そして、ガーティー・ルーもまた、敵艦の砲塔がこちらに向けられているのを察知する。
「回避いぃぃぃっ!!! 取舵いぃぃぃぃッ!!!!!!」
「撃てぇぇぇッ!!!!!!!」
エネルギーが収束して行き、艦首から放たれた陽電子砲は、凄まじい勢いでガーティー・ルーに迫る。
ガーティー・ルーも右舷スラスターを使い、急な軌道を変更を行うも、陽電子砲のエネルギーを完全に躱す事は出来なかった。
右舷側の船体に陽電子砲が掠り、右舷側が小破……。
煙を上げ、船体が衝撃によって振動を起こした。
「「「っ〜〜〜〜!!!」」」
互いに右舷側を損傷した戦艦。
まさかの展開に、エグザスに乗るネオは、自らミネルバの元へと向かう。
「ええいっ! よもやあの状態から生き返るとはっ……!?」
エグザスがミネルバに急速に接近する。
だが、その進路を防ぐかのように、真横から白いザクが現れた。
「チッ!」
「行かせるかっ!」
エグザスに対して、ビーム突撃砲を放つレイ。
そして、ネオはそれを躱し、急いでガーティー・ルーの元へと帰艦する。
その道中に、三つの信号弾を放って、イアンに合図を送った。
「艦長っ、エグザスからの信号です!」
「っ……MS隊に帰艦信号!」
イアンの指示通り、ガーティー・ルーはカオス、ガイア、アビスの三機に向けて、帰艦信号を放った。
それを目撃したスティング達は、シン達を攻め切れなかった事に落胆するが、急いで戻っていく。
「ちっ、2点勝ちで終了かぁ」
「仕方がない。ステラ、ネオが呼んでるぜ? 帰って来いってさ」
「うん……!」
三機はデブリ帯を抜け、そのままガーティー・ルーの元へと戻った。
そして、ミネルバの方から戻ってくるエグザス。
そのコックピット内から、ネオは白いザクとミネルバを見ていた。
「またいつの日か、会えることを祈っているよ……白い坊主くん、そしてザフトの諸君っ……!」
エグザスはそのままガーティー・ルーへと帰艦し、ミネルバも、帰艦信号を放ち、シン達に帰投命令を出した。
こうして、いきなり始まったデブリ帯における宙域戦は、両者に多少の損害をもたらした状態で、幕引きとなったのだった……。
急ピッチで進めたので、ちゃんと書けていたかが心配ではありましたが、なんとかデブリ戦を書き終えました。
次はいよいよユニウス・セブンでの戦闘になります。
登場する人物も多くなっていくので、それぞれのキャラの絡みが複雑になっていくと思いますが、なんとか書き進んで行こうかと思います( ̄▽ ̄)
感想、よろしくお願いします。