【改稿版】ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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人間への対処マニュアル

 「あの二人は今頃外部活動かぁ……そろそろ着いたころかな?」

 

 ナザリック地下大墳墓近郊、ナザリック(偽)建設予定地にて、そう独り言ちるのは、現在ナザリックに存在する至高の御方の一人であり唯一の女性である、ぶくぶく茶釜。

 

 マーレによるナザリック地下大墳墓に土を盛り上げ被せ、上空から幻惑の魔法を施すことでの隠蔽工作が終了し、現在はナザリックのダミーを建造するべく活動中である。

 

 因みに原作と比べるとかなり急ピッチ、いや、効率的かつ高速でそれらは行われており、彼女の指示によるものと、原作では一度モモンガに確認を取ってから、(その後アルベドに意見と指示を促し)良いと判断されたら作業に入るという工程が彼女による確認で終わるため、とてもスムーズに作業が進んでいる。

 

 とはいえ、彼女が居ることで、カルネ村近郊にあるトブの大森林に建設されるナザリック(偽)以外に、4つ、5つとかなり広範囲に渡り、そして様々な特色を持つダミーの建設を予定しており、その数もまだ増える予定であるため、早く始まり作業が早いからと言って、速く終わるとは限らない。

 

 むしろ作業量的には増えている。

 

 増えた理由は、純粋に、実験の用途別に使用する施設を変えたかったのと、以降国レベルの相手を敵に回す際、中継地点、拠点となる場所などを作っておいた方が何かと好都合であると考えたためである。

 

 その拠点も、わざと冒険者たちなどにバレやすく、しかし自然な位置で建設するものや、ここであればバレないだろうという場所に建設する予定の物もある。

 

 そのほとんどが実験用だが、一つだけ考慮しなければならないのは、『絶対的な難攻不落の状態にしてはならない』という物がある。

 

 どういうことかというと、それは『ユグドラシル時代では拠点生成時に、入口から拠点の心臓部まで、一本は道が繋がっていなければならない』という、アリアドネというシステムが存在したためだ。

 

 もしそれに抵触した場合(拠点を丸ごと地面に埋めて侵入不可能の存在にしてしまうなど)拠点の財産が目減りしていくというペナルティを受けることとなるのだ。

 

 そのシステムがこの世界でも生きているのであれば、如何にナザリックであろうとも、絶対不落の城は作れない。

 

 ナザリックではその代わり、5、6階層でそれらの問題を解決したり、各階層に階層守護者を設置し、これでもかとトラップを張り、複雑化しているという徹底ぶりであり、そもそも、この異世界の住人では攻略はほぼ不可能だろうという状態なのだが。

 

 

 と、まぁ拠点関係の事に関してはこれくらいにして、彼女の話に戻ろう。

 

 

 ここまで話しただけで、彼女の彼女によるナザリックでの活動はかなり広範囲に渡り、三名の中でも最もブレーン(頭脳)に近い存在であると言えるだろう。

 

 

 だが、基本彼女の仕事は上から下僕たちに向かって「こういうことをして、もしこうだったらこうして分かんなかったらアウラかマーレか私に聞くように」と指示を飛ばし、書類が来たら目を通し、OKだったら「いいよ~」と書類を通す。

 

 仕事と言えばこれくらいのものだ。

 

 あとは……。

 

 

 「(ぐへへ、働くアウラとマーレぎゃわいいよぉ……)」

 

 

 遠隔視の鏡や魔法、それらを駆使して愛しい我が子の活躍をその目……目?……に焼き付けておくくらいのことしか無い。

 もし「暇だから作業手伝っていい?」なんて言おうものなら「いえいえいえいえ私たちがやりますので」となる、あるいは「私たちの作業が到らないばっかりに御身の手を煩わせてしまった!これはもう死ぬしかねえ!!」となるので、結局作業に参加するなんてことはできない。

 

 要は彼女は恐らく人生でもそうそう無かったであろう暇な時間を謳歌しているのであった。

 

 

 「愚弟とモモンガさん大丈夫かなぁ~……?」

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 一方、エ・ランテル城塞都市の、とある小さな宿屋。

 昼間から呑んだくれる冒険者や、今日は休みにするかといいつつ、昨日も、なんなら明日も、その次も恐らく休みであろう冒険者なんかがその宿屋で駄弁っていた。

 

 そこに、突如扉を開き、中に足を踏み入れたのは、如何にも高そうな真っ黒なプレートメイルを着込み、真っ赤なマントを翻し、背中に二本の、常人なら一本を持ち上げるだけでも一苦労しそうな大剣を背負う大男。

 

 そして、その傍らには、きめ細かな、シミ一つ無い色白の肌に、夜の闇をそのまま落としたかのような、切れ長の黒い瞳と、同じく漆黒のポニーテールを揺らす、外見こそお淑やかそうな絶世の美女。

 

 

 「宿を借りたいのだが。二人部屋で、飯は要らない」

 

 「……二人部屋なら一日七銅貨だ」

 

 「うむ」

 

 

 周囲の冒険者はそんな様子を見ながら「カッパーのくせに」、「どこのボンボンだよ」「隣の女、なかなかいい女じゃねえか」「俺はもうちょっと胸があった方が……」などと好き放題に陰口を叩く。

 

 そして、それだけに留まらない者も居るわけで……。

 

 「(はぁ……面倒な……)」

 

 見れば、ニヤニヤと顔を歪ませながら、モモンガの進行方向に足を突き出している男の姿。純粋に邪魔をしたいだけというわけではないだろう。恐らくはわざとぶつけ、「おいおいいてーじゃねーかどうしてくれんだよ」というお決まりのパターンである。

 

 まぁ、ここは乗ってやろう、と、モモンガの足の先の部分が男の足にトン、と触れる。

 

 

 「オイオイ痛てーじゃねかどうしてくれんだよ?あ?」

 

 

 そして案の定、思っていた通りのセリフが男の口から飛び出た。思った通りの雑魚のお決まりのセリフに、モモンガは思わず、嘲笑と笑い声を堪えきれなかった。

 

 

 「フフッ……いやすまない、あまりに雑魚にお似合いのセリフだと思ってな、笑いを堪えきれなかった」

 

 「あぁ!?」

 

 「モモンg……様、こんなの((ノミ以下のクズ))放っておいて行きましょう」

 

 

 そこでモモンガ……冒険者の姿ではモモンと名乗っている……は胸ぐらでも掴んで力に物を言わせて放り投げてでもやろうかと思っていたが、意外にも、後ろから「放っておけ」とナーベラルに諭され、考えを改める。

 

 

 「そうだな。こんな雑魚、わざわざ相手にしてやることも無いか」

 

 「ん、だ、とコラァーッ!!」

 

 

 しかし、それは相手にとってただただ煽られただけに過ぎない。

 顔を真っ赤にして怒る冒険者はその男に殴りかかろうとして、そして……次の瞬間、耳をつんざくような、バチンッという音が右頬から脳にまで響き渡り、頭から店のテーブルに突っ込んでいた。

 

 

 「結局お手を煩わせる事になってしまい、すみません(失敗した……やはり人間はゴミでしかない……)」

 

 「気にするなナーベ、さあ、行」

 

 「ほぎゃあああーーーーーッ!!?」

 

 

 「行こうか」と言い終わる前に、店の中で女性の絶叫が響き渡る。そして、その女性に目を向けると、こちらをキッと睨みつけ、そのままズンズンとこちらに詰め寄り……。

 

 「アンタのせいで私のポーションが割れちゃったじゃない!!!弁償しなさいよ!!!」

 

 「ポーション……?」

 

 そんなもんで何をそんなに怒るんだと内心首を傾げるモモンだったが、その女曰く、そのポーションは、女が食事を制限し酒を絶ちやっとの思いで貯めた金で今日買ったばかりの物だったという。

 

 この世界のポーションとはそこまで希少なものなのだろうかと思いつつ、ならばと件の冒険者の仲間を指差す。

 

 

 「こいつらに支払いを要求したらどうだ」

 

 

 まぁ、喧嘩を売ってきたのはそちら側であるのだから、結果的に自分のせいとは言え、喧嘩を生んだ原因である者が払うのが筋である。が、「いつもここで呑んだくれてんだもん、払えるはずが無いわよね」とのこと。

 

 

 「あんたさぁ、ご立派な鎧着てるくらいなんだしポーションの一つや二つ、持ってんでしょ? 現物でも構わないからさ」

 

 

 まぁ、持ってはいるし、逆に考えなくてもあげちゃってもいいさと思えるのだが……と思ったところで、ナーベの方向から殺気を感じ、このままでは死人が出ると慌てて自分のポーションを女に手渡した。

 

 

 「(赤……?)」

 

 

 この世界では存在自体が伝説とされる、真っ赤なポーションを。

 

 

―――――――――

 

 

 そういった出来事の後、二人は部屋で色々と反省や今後の活動について話し合った後、「モモン様ではなく、モモン、と呼べ」や「一応先輩なのだから先輩の顔は立ててやるべきだ」など、先程の女や今後の行動方針について話し合う。

 

 そして、ナーベはそれらが終わった後、懐からひとつのメモ帳を取り出し、その内容を食い入るように読み始めた。

 

 

 『人間とは、プレイヤーであるとか、類稀な才能の持ち主であるといった例外を除き、基本弱く、そして愚かです。そこをどうにかするには大変な労力が必要なので、普通に君命に従うだけである場合、まずは「嫌い」ではなく、「どうでもよい」という存在に脳内で切り替えましょう。

 

 どうしても切り替えられないというあなたには、この言葉を送ります。“どうしてクズだゴミだという割にそこまで腹を立てるのか?”と。こうした心構えを持つことで、基本は心を落ち着かせての活動が可能です』

 

 

 

 これを読みナーベラルは「どうして私はこうも人間に対し嫌悪感を抱いているのか?と……クズだゴミだと思っているような存在にそこまで腹を立てるのは矛盾しているのではないか」と考えるようになった。そして、極力は無関心を徹底するようにしてみよう、と。

 

 まずクズだゴミだと思っていること自体に問題があるような気がするが……それを表に出さない努力をしているだけマシと言えるだろう。先ほどは殺気まで隠せなかったようだが。

 

 

 『次に、もしも人間が敵対行動を取ってきたり、あろうことか至高の御方に楯突くような愚かな行動に出た場合、容赦無く一瞬で仕留めたいところですが、ここはグッとこらえて、半殺し程度でナザリックに送りましょう。その方が、有効活用できるうえ、死ぬよりも苦しい地獄を見せることが可能だからです』

 

 

 

 これを読みナーベはなるほどと目から鱗が落ちる想いだった。敵対したから殺す、という行為はあまりに浅はかな行為であると知る。

 

 ただ殺すのでは御身に歯向かうという重罪を罰したとは言い切れないという事実に気付かず、敵はただ殺せばいいという考えを改め、むしろ成るべく死なないように、生き地獄を見せることでようやく罰として適当な物となるのだと。

 

 ……もっとも、これを書いたエレティカの思慮はまた別であるのだが。

 結果的に目的が達成されるのであれば過程はある程度目を瞑ろう。

 

 

 『そして、敵対より厄介なのは、「人間と友好関係を結べ」と言われた場合です。この場合殺すなどもってのほかであるのは言うまでもなく、暴言を吐くこと、悪態をつくこと、暴力を振るうこと、人間にとって害になることの全てがNGです』

 

 『重要なのは、そういう感情を隠すことです。そのために、第一に笑顔、第二に暴力を振るおうとしない、第三に暴言を吐かないこと、これさえできていれば、こちらから敵対関係になってしまう、ということは無いでしょう』

 

 『心に余裕ができたなら、別ページ記載の『人間が喜ぶさしすせそ』を実践してみると更にグッドです!』

 

 

 

 「(これは思ったより難しい任務になるかもしれないわね……)」

 

 もしここまで読んだのがナーベラルでなくモモンガであったならば、「いやあまりにタイミング良すぎだろ」とか「この人間が喜ぶさしすせそって、男が喜ぶさしすせそのことじゃないか!?」とツッコミを入れていたかもしれないが、ナーベラルはそんなことは露知らず、至って真剣にそれを読んでいた。

 

 

 

 

 まさか、内容が『嫌いな上司との上手な付き合い方』の“嫌いな上司”を“人間”に差し替え、細部の文面も細かくナザリック用に、というかナーベの為にアレンジしたものであるとは考えもしないだろう。

 

 

 ちなみに、内容はこれに加え、「人間にプライベートの予定に誘われた時の上手い断り方」や、「人間の男を簡単に誘惑する方法」、「人間のダメージを与えると一番痛い場所」など……最後のはそれどうなんだろうか……まぁ色々と書かれているようだ。

 

 

 全て、エレティカが一晩で書き写した物である。

 

 

 そして、そんなメモ用紙の束を読み進めているナーベラルの様子を見ていたモモンガが、不意にナーベラルに声をかけた。

 

 

 「…………ところで、ひょっとして先ほどの冒険者への対応だが、あれは人間嫌いを克服しようとしていたのか?」

 

 「その通りです……ですが結果は御身の手を」

 

 「それはもう良い。それより……そういった自身の欠点や弱点を克服しようとするのは大変良いことだ。褒めてやろう、ナーベ、いやナーベラルよ。これからも励むがよい」

 

 「は、はいっ!!(本当に実践したらベタ褒めされた!?)」

 

 

 

 と、急に褒められてしっぽが有ればそのしっぽで竜巻を起こせそうなほど嬉しそうにしているナーベラルだが、もちろんこれには訳がある。

 

 モモンガは事前にエレティカにより、ナーベラルが極度の人間嫌いであること、そして、「こういった指示をしておいたので、もしそういった、改善しようとする努力が見られた場合、精一杯褒めてあげてほしい」と言われている。

 

 これに関してモモンガはナーベラルのそういった面を知らなかった、知らせてもらえて良かったという点でもそうだし、そうした時にちゃんと褒めてやれという件については是非とも実践していきたい所存である。良き上司に、いや、良き支配者となるためにも。

 

 

 ……だが、まさか夜なべしてナーベ用の人間との接し方マニュアル(人間との上手い付き合い方と題してはいる)を作っていたとは思わなかったが。

 

 

 もちろん、「自身の欠点や弱点を克服しようとするのは大変良いことだ」という先の言葉に嘘はない。

 自身の欠点や弱点を克服しようと努力するのは決して悪いことではなく、褒めるべきことだ。ゾンビが火炎と神聖属性を無効にしたいと思うなどといった、余程無謀なことでない限り。

 

 

 「では、一夜明けたら冒険者ギルドへ赴き、何らかの依頼を受けるが……その際、分かっているな?」

 

 「はい、モモンさ……ん、無闇に人間と敵対したり、暴言や悪態をついたりしないこと、ですよね?」

 

 

 

 若干呼び方がまだ慣れていないところは否めないが、まあ、初日だし、及第点としよう。

 少しずつ頑張っていけば良いことだ。そして、そんなナーベラル(とエレティカの一晩を費やした)の努力の効果は、直ぐに表れ始めた。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 「(笑顔、笑顔、笑顔……)」

 

 「(……大分硬いけど、本人的には頑張って笑顔を徹底している、つもりなんだろうな……これも後で褒めておくか、いや、褒め過ぎもなんだしな……少し様子を見ておくか)」

 

 

 

 冒険者組合ロビーにて、やや硬い笑顔を浮かべる(周囲からはギリギリ微笑ととれる)ナーベと、それを見つつ、読めない依頼掲示板を睨みつけ、さてどうするかと内心頭を抱えているモモン。

 

 それを下卑た目でニヤニヤと後ろ指を指し、好き勝手に言いたい放題の周囲の冒険者たちが居たが、二人はそれを意にも介さない。

 

 本来であればナーベは内心で「(後ろで喋ってるアメンボ後で殺す)」くらいのことを考えていたのだが……マニュアル、“人間と上手くやる方法~これさえできれば至高の御方からベタ褒め間違いなし!~”を実践しようとし、笑顔を維持するのに必死であるため、あまり外部からの反応を気にしなくなっていた。気にするほどの余裕が無いとも言う。

 

 やがて、熟考したモモンは一枚の依頼書を手に取り、受付の娘に見せる。

 

 

 「この依頼を受けたいのですが」

 

 「……申し訳ございませんが、この依頼は鉄級(アイアン)から上の人へ向けての依頼となりますので、銅級(カッパー)の人はお受けできません」

 

 「彼女は第三位階までの魔法を使用でき、私自身もそれに匹敵するだけの実力があると自負しているのですが……」

 

 

 それを盗み聞きしていた……モモンが敢えて聞こえるように話したのもあるが……周囲の冒険者たちは一気にどよめいた。

 この世界における第三位階のマジックキャスターは、それ即ち一人前のマジックキャスター以上の存在であると認識されている。

 

 そしてナーベの若さ。その若さで、一人前のマジックキャスターであるというのはなかなか信じられない事実であった。

 

 

 「……すみませんが規則ですので」

 

 「そうですか……無理を言ったようですみません。では銅級(カッパー)の中でも、報酬の高い物を見繕ってくれませんか?」

 

 「かしこまりました」

 

 

 微妙な差異だが……モモンは熟考した末、せっかくナーベの人間への態度が軟化しつつあるのだから、自分もなるべく柔らかい態度で接するべきなのでは?と考えた。

 それによりモモンは自ら騒ぎを呼ぶような真似はするまい、と文字が読めないことを誤魔化すのにそこまで時間をかけなかった。

 

 

 「それなら、私たちの仕事を手伝いませんか?」

 

 「ん?」

 

 

 そうして、依頼を受けようとしていたモモンのもとに、4人の冒険者グループが声をかけた。

 

 

 

 

 その四人の冒険者グループの手伝ってほしい仕事というのは、簡潔に言うと「モンスターを退治して報奨金を組合から手に入れよう」という、とてもシンプルなもの。依頼こそされていないものの、周囲の人はモンスターが少なくなって道を安全に通ることができるし、自分達は報奨金が受け取れるという誰も損をしないお仕事である、とのこと。

 

 そして、これはなるべくは人数が多い方がやりやすい仕事でもある。その分取り分が少なくなりそうなものだが、大量に狩ることができれば、分け合っても十分な報奨金が取れるので、結果として、モンスターの狩りに行く際に限って、人数は四人以上居た方が安定して大量のモンスターを狩れるため、極端に人数を多くしてモンスターも狩れなかった、ということがない限りは狩りは成功したと言えるだろう。

 

 そして、今回その仕事をモモンとナーベに持ちかけた冒険者グループ……漆黒の剣のメンバーは、戦士、レンジャー、魔法詠唱者(マジックキャスター)森祭司(ドルイド)の四人というバランス良く構成されたパーティーで、今回は普段組んでいる冒険者パーティーのメンバーが別の依頼で捕まらず、人手も集まらず困っていたところ、モモンとナーベが受付をどよめかせていたところに通りがかり、声をかけてみた、ということであった。

 

 ちなみに、銅級(カッパー)の依頼で受けられる依頼でもらえる報酬よりもこの仕事の方が圧倒的に報酬が高く、もっと言えば、漆黒の剣のメンバーには自分の戦闘力にものを言わせ、宣伝役として買って出てもらおうという算段である。まさに、モモンの目的である「名声を高める」という目的を達成するためにはうってつけの、望んでも無い好機であった。

 

 

 「どうですか?引き受けてもらえますか?」

 

 「いいでしょう」

 

 

 二つ返事でモモンはその誘いに乗り、漆黒の剣と手を結んだ。


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