【改稿版】ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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久しぶりの更新なのに完全新規じゃないのほんますまん

モモンさんサイドの話を一つにまとめて一話にした為、
読んだことのあるであろう文章が続いてしまいます。
なので、テストではありますがジャンプ(リンク?)を付けて置きました。


新規の話は ここ からです。


もし飛べなかったらすみません……。
プレビューで確認した時は飛べたんです。






表側の出会い。

「僕はンフィーレア・バレアレ。この街で薬師をしています。今回、薬草採集のためにカルネ村近くの森まで行くつもりです。そこで、あなた方にはその警護と、薬草採集の手伝いを依頼したいのです」

 

「警護ですか」

 

 モモンはそう口にしつつ、内心で「面倒だ」と愚痴を零す。

 

 もしここにぶくぶく茶釜さんのようなガード役で、仲間を守護するようなスキルを持つ者が居たならば簡単だが、モモンもナーベも警護任務に向いたスキルを所持していない。薬草採集についても同様である。

 

 そこで、モモンは相談の結果漆黒の剣の面々に協力を要請し、共にこの依頼に当たる事にした。

 

 レンジャーであるルクルットの目と耳があれば、敵の襲来を事前に察知する事が可能であり、ドルイドであるダインの力があれば薬草採集の助力になるだろうし、そして人数が多ければそれだけ成功確率が高くなるという事に繋がる為だ。

 

「うむ、モモン氏の慧眼、お見事である」

 

「こっちは全然構わないぜ」

 

「こちらこそ是非お願いします!」

 

 漆黒の剣はそれを快諾。

 

 元々過剰戦力といっていいレベルだが、より確実に依頼を達成する為だ。

 

 もっと言うと、モモンとナーベという英雄の誕生を目撃する人物は多いほうが良い、という思惑もある。

 

「では打ち合わせの前に、一つお聞きしても?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「何故私なのでしょうか?……私たちは昨日エ・ランテルに着いたばかりで友人はおろか私の存在を知る者は殆どいない。にも関わらず、何故?」

 

「ああ、それは……宿屋の一件を聞いたんですよ。黒い全身鎧に身を包んだ男が、冒険者の男を片腕で投げ飛ばした、と、店に来ていた冒険者の方が噂をしていたんですよ。そして、今まで護衛に頼んでいた方が今回何故か()()()()()()()()()という連絡が入ったそうで……そこでその噂を思い出し、受付の方に聞いたところ、モモンさんの名前が挙がったという事です。あ、あと、(カッパー)の方なら、お安いかと思いまして」

 

「なるほど(話の筋は通っている、のか?あまりにも出来すぎていると言えなくもないが……まるで小説の主人公か何かみたいだ)」

 

 

 内心首を傾げつつも「とりあえず警戒だけはしておくか」と結論づけ、モモンとナーベはそのままさっそくカルネ村へと出発した。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 出発から暫く。トブの大森林が遠くに見え始めた頃。

 

 

「モモンさん、この辺りからちょっと危険地帯になってきます。気を付けておいてください」

 

「了解しました」

 

 カルネ村に続く森沿いの街道、住んだ川の河原で馬を休ませ、休憩をとっていた一行。 

 

 モモンは返事をしながらこれからの事について思考を巡らせていた。 

 

 モモンは現在魔法詠唱者としての装備を殆ど着用しておらず、着ているのは魔法で作り出した鎧と、対となった大きな大剣のみ。つまり、魔法が使えない状態である。

 

 そんな状態でどれだけ自分がこの世界で通じるか、という実験を兼ねての物であるが、この恐ろしく脆弱な人間達の世界で下手に魔法を使い、そこからボロが出てしまうよりかはいいだろうという保険の為でもある。

 

 尤も、本気でマズイと感じたら即座に本気を出す準備はしてあるし、そもそもこの世界の一般的なレベルのモンスターでは傷一つ負う事が無い。そのうえ、ナーベも居る為、もしもの時は彼女に情報を持ち帰ってもらう事も出来るだろう。

 

 問題は……。

 

 「だぁ~いじょうぶだってナーベちゃん!俺の耳と目があれば、問題ナッシング!」

 

 「期待していますよゴミ虫」

 

 「えっ、今なんて?」 

 

 「いえ、ゴミがついていますよ、と」

 

 

 ナーベ、そろそろ限界なのでは……?いくらナーベが(かろうじて)平静を装っているとはいえ、ストレスで胃に穴が開きそうな程イライラしているのはルクルット以外の全員が理解していた。そしてその度にダインやペテルが窘めているのだが、ルクルットがそれで止まるかどうかと言えば、御覧の有様である。

 

 「……ゴホンッ、ナーベ、今一度連携の確認をしたい、こっちへ」

 

 「はい、モモンさーーー……ん」

 

 「ほら、ルクルットはこっち」

 

 「え~?」

 

 

 モモンの意を汲んでくれたのだろう。ペテルがルクルットの腕を掴んで引きずりながら離れていく。

 

 

 「……その、大丈夫か?」

 

 「問題ありません」

 

 「(即答。でも問題無いようには見えないんだよなあ~……)うむ、そうか……ナーベ、いや、ナーベラル・ガンマよ、お前はよくやれているぞ(……こんな感じでいいのかな?)」

 

 「も、勿体ないお言葉……!」

 

 「待て待て、膝を突こうとするな、怪しまれるだろう」

 

 「す、すみません」

 

 「うむ、今一度言うが、お前はよくやれている。この調子で頑張ってくれ。ただし無理はするなよ」

 

 モモンはナーベの肩を軽く叩き、労いの言葉を述べた。

 それに対してのナーベはと言えば、今までのストレスはどこへやら。

 

 私、がんばります!というオーラで満ち溢れていた。

 

 

 かたや漆黒の剣はと言うと、いい加減ナーベの苛立ちに気付き始め(まぁゴミ虫とか言っているのが明確に耳に入れば誰だってそう思う)、ルクルットの説得に入っている。

 

 仲間のナンパ、いや、恋路を邪魔しようという程ではないにしろ、あれは誰がどう見たって脈無しであるのは一目瞭然であった。

 

 「お前、もういい加減ナーベさんにちょっかいをかけるのやめろよな」

 

 「え~、いいじゃねーか」

 

 「良くない、全然良くない。ナーベさん滅茶苦茶我慢してると思うぞアレ」

 

 「え、マジ?んな事ねーだろ」

 

 「お前……ほら、見てみろ、彼女、本当にうれしい時はああいう顔をするんだよ、多分」

 

 

 ああいう、とペテルが顎をしゃくった先に居たのは、先程とは違い、やる気に満ち満ちた彼女の姿。モモンさんに肩に手を置かれたりなんかして、しかもそれに対してまんざらでもないどころか頬を染めてかなり嬉しそうだ。

 

 「あ~…………やっぱり付き合ってんのかな?」

 

 「さぁ、それは知らないけど……浅くない関係である事は確かだろうな」

 

 「というかルクルット、あなたさっきモモンさんのあの素顔を見たでしょう?アレに勝てる自信があるんですか?」

 

 「うっ……それは……いやっ!俺は諦めないね!男は顔じゃねえ!まだ付き合ってるって決まった訳じゃないし!……でもあとで聞いてみる!」

 

 ……この男、際限というものはないのだろうか。

 漆黒の剣の面々はもう好きにすればいいとため息をもらした。

 

 

 「……確か、この辺りは森の賢王のテリトリーなんですよね」

 

 モモンとナーベの話がついたらしい、と確認した辺りで、わざと話題を変える為にニニャがそう口を開く。モモンとナーベの二人にも聞こえる声で。

 

 森の賢王。

 

 曰く、数百年の時を生きている強大な魔獣であり、蛇のような尻尾を持つ、白銀の四足獣であると伝えられており、所謂森の主、ユグドラシルで言う所のエリアボスモンスターのようなものであるらしいと考えた。

 

 モンスターにしては珍しく、人の言葉を理解し、魔法も使えるらしい。

 

 ユグドラシルでは珍しくもなんともなかったが。

 

 モモンは話を聞きながら、いい話が聞けたと、存在しない口元をゆっくりとつり上げ、「それは、一度会ってみたいものですね」と言った。

 

 存在も確かなものではないが、もし居るなら、そしてそれを倒せたなら、名声の上昇にも役立つだろう、と。

 

 

 

 ……そういえば、森にダミーのナザリック建設の為の場所探し及び森の探索の為、アウラやマーレ、ぶくぶく茶釜さんも今頃この辺りの探索に来ている筈では無いだろうか?

 

 鉢合わせたりしないようにはなっている筈だが、後で連絡だけでも入れておいた方が良いかもしれないなとモモンは思う。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 モモン達は、しばらく歩いた後、日が暮れて来たので今日はここまでとなった。

 カルネ村まではまだ数日かかる。

 

 モモンは漆黒の剣の面々と共に、夕食の鍋を囲んでいた。

 

 本来と違う大きな点は、モモンもそのヘルムを外し、食事に加わっているという事だ。

 

 メニューは少量の干し肉とジャガイモに似た穀物を切った物、緑色の豆、それらを煮て塩等で味を調えただけという簡素なスープと、同じくドレッシングも何もなく、塩が軽く振られた簡素なサラダ。だが、あの世界では……まだ母が生きていた頃に食べた食事を除けば、パサパサして味気無く、栄養補給と言う意味でしか食事をしたことが無い、自信をもって「まともな物」と言える食事を口にした事など人生において片手で数える程しかないモモンガにとって、この食事は……。

 

 

 「(はぁ…………美味い。まともな食事というのはこんなに美味いのか)」

 

 

 スープ。茹でられ、ほくほくになった穀物のほのかな甘みと香り、そして確かな歯ごたえがありながら口の中でほろほろと崩れ野性的な旨味を口の中いっぱいに広げる干し肉、ぷちり、ぷちりと心地良い食感の豆、そしてそれらから溶けだしたたっぷりの栄養源が含まれたスープの温かさがじんと喉から胸に、そして腹に染みわたる。

 サラダ。噛むたびにザクリと小気味の良い音が鳴り、そして葉野菜独特の青っぽくて若い匂い、それを感じる度に口に広がる甘さ。

 

 

 人前という事もあって流石に涙を流したりすることなど無かったが、思わず目を閉じてじっくりとそれらを味わう姿に、どこか神聖さすら感じている漆黒の剣に気付けない程、モモンガにとっての食事は素晴らしい物だった。

 

 とはいえ、ナザリックで作られた最高品質の食材による食事だったならまだしも、彼らのような駆け出しの者達が旅先で簡単に腹を満たせるようにと作ったスープにすらここまで感動出来るのは、訳がある様にモモンガには思えた。

 

 

 「(聞いた話によると日本人は本来食にうるさくて、他国の食文化を取り入れて自分達の舌に合うように改善を加えて独自の料理を創り出してしまう程の食通だった、なんて話を聞いたことがある。俺の中にもその日本人の血が流れているって事かもしれないな……)」

 

 

 このアイテムを貸してくれたぶくぶく茶釜さんには感謝しなければ。

 食事ができる、というメリットだけで能力値15%減少等、些細な事だ。

 

 

 「……えっと……モモンさん、お代わり要りますか?」

 

 「いいんですか?申し訳ないです」

 

 

 すっと恥ずかし気に差し出された、少しだけスープが残った木の器に、ペテルはまたスープを注いでいく。

 

 暖かい湯気をあげながらいっぱいに注がれたそれをモモンに手渡しながら、ペテルはモモンがあまりにも美味しそうに、自分達の中では不味いとまでは言わずとも間違っても美味しいとは言えないそれを嬉しそうに食べる彼を見ながら、どうしてもペテルはこう考えてしまう。

 

 モモンさんは一体ここに来るまで一体何を口にしてきていたのだろうか。

 神に、食物に感謝を捧げながらというよりは、まるで、今までロクな物を口にしたことが無かったかのような反応だ、と。

 

 こんな物でも感動して目を細めてしまう位に貧しい国の出だったのだろうか。あるいは、本気で食物に感謝を捧げている、立派な神の信徒なのだろうか。

 

 無論、後者であればともかくとして前者は質問の内容としてあまりに失礼だ。

 その上、冒険者の暗黙の了解として、「お互いの身の内の詮索はしない」というのがある。

 

 だから聞くわけには行かない。

 

 だが、だからこそ気になる!モモン程の戦士が、ナーベ程の魔法詠唱者が、一体どこから、どうしてやってきたのか、と。

 

 そんな事を考えていると、食べ終わったらしい、フゥと満足気に息をついたモモンが不意に口を開いた。

 

 「皆さんは何故冒険者を?」

 

 

 それはむしろ俺達が貴方達に聞きたい。

 そう思ってしまう漆黒の剣の面々だったが流石にそれを口に出す事は無かった。

 モモンからしてみれば他愛の無い雑談をしているに過ぎないだろう。

 

 「ええと、私達のチームの名前の由来でもあるんですが、十三英雄の一人、黒騎士が持っていたとされる4本の魔剣、これを見つけるのが私達の第一の目標なんです。だから、漆黒の剣、と」

 

 「(成程、チーム名がそのままチームの目的になってるわけだ……それ、手に入れた後はどうするんだ?……っていうかまた新しいワードが出たな……十三英雄ってなんだよ。ここは分かった振りをしたほうがいいのか……?)」

 

 「……十三英雄って何ですか?」

 

 

 ナイスだナーベ。と心の中でサムズアップするモモン。

 ナーベからすれば、未知のワード、そして自分達は異邦人であるという事から考えて当然の質問をしているだけだったが。

 

 

 「そうか、モモンさん達は知らないんですよね……ええと、二百年程前に、この地で世界を滅ぼしかけた悪魔と、その配下の魔神達との闘いで活躍された英雄達、という御伽噺で……黒騎士というのはその中の一人です」

 

 「(成程……この世界にもそういう御伽噺とかあるんだな……そういえば、御伽噺もそうだけど、神話とか言い伝えみたいなものを俺は何も知らないな)」

 

 もしこの十三英雄というのがプレイヤーだったとすると、転移してきたプレイヤーはナザリックと同時期に転移したのではなく、時を越え、200年前に転移した……俺達が200年遅いだけかもしれないが……ということになる。

 

 つまり、この世界に俺達と同じプレイヤーが居るとしても、それが今も存在しているかは分からないし、人間だったら特殊な魔法でも使わない限りは寿命で死んでしまうだろう。

 

 「(ますますこの世界でプレイヤーと会う可能性が分からなくなってきた)」

 

 「それを見つけるまでは、これが俺達の仲間の証なんです」

 

 思考に耽って黙っているのを続きを促しているととったのか、そう言ってペテル、そして他三人が懐から取り出したのは黒い刀身の短剣。

 

 何の効果も無く、ただ刀身が黒いだけ。柄に宝石が四つ埋め込まれた、ただそれだけの短剣だ。

 

 だが、今はそれで充分だ。

 

 

 「(……良いチームだな。昔は俺もこうだった……皆で協力し、素材を集め、そしてナザリックを創り上げた……)」

 

 

 「冒険者のチームって、皆こんな風に仲が良いんですか?」

 

 「命を預けますからね」

 

 「うちは男だけだしなあ。女が居ると揉めたりするって言うぜ」

 

 「それに、まぁ、一応チームとしての目標……もちゃんと定まってますしね」

 

 「皆の意思が一つの方向に向いていると、全然違いますよね」

 

 「モモンさんもチームを?」

 

 

 チーム。仲間。そうだ……俺には最高の仲間が居た。

 

 

 ……いや、違う。

 

 

 確かにたった三人だけになってしまったけれど、でも……。

 

 

 

 「冒険者、では無いんですが……今も、同じ目的の為、別々に行動しているんです」

 

 「どんな人なのか聞いても!?」

 

 「……そう、ですね……一人は……そう、純白の聖騎士でした。彼は私が弱かった頃……」

 

 

 

 

 こうして鍋を囲みながら、夜が更けていく。

 

 

 

 

 

 ちなみにこれは余談だが、殆ど喋っていないナーベはあまり情報を出し過ぎる訳には行かない為すべてではないものの、至高の御方のお話を聞けるという棚ぼたなご褒美に震え、心の中で静かに目の前の人間に、ほんの少し、雀の涙ほどだけ、こっそりと感謝した。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 「モモンさん、あそこに見えるアゼルリシア山脈の北方には、フロストドラゴンが多数生息していると言われています。でも、エ・ランテル近郊にもその昔、天変地異を操るドラゴンが棲んでいたという伝承があるんですよ」

 

 「ほう、それは凄い……その天変地異を操るというドラゴン……なんて名前のドラゴンなんですか?」

 

 「えーと……すみません、帰ったら調べてみます!」

 

 「よろしくお願いします、ニニャさん」

 

 「はいっ」

 

 

 数日後、英雄譚や神話といった類の事が好きなニニャと、そこにプレイヤーの痕跡があるかもしれない、と色々聞きたがったモモンは意気投合した。

 

 まぁ、この雑談、というか、ニニャの雑学とも呼べる話からもたらされる情報からプレイヤーの明確な影を感じる事はあまりなかったが。

 

 しかし現地の人間とここまで仲良く……好意的な関係を結ぶ事に成功した、というのはかなりの進展だろう。

 

 仲間内以外でこういった話をすることはあまり無いのだろうか。ニニャは今まで自分が知って来た伝承や神話、御伽噺なんかを、思いつく限りモモンに話して、それを漆黒の剣の面々は微笑ましい物を見るように見ていた。

 

 ナーベはというと、モモンの後ろをついて歩いている。それだけである。ニニャの話等右から左へ、いや、そもそも届いてすらいない。女性だし、そういった事にはあまり興味が無いんだろうなと思ったニニャは、特に気を悪くすることは無かった。

 

 「カルネ村までは、もう少しです!」

 

 そんなこんなで、一行は朗らかな雰囲気でカルネ村へと向かう。

 

 

 「……あれ?変だな」

 

 

 そして、ンフィーレアが異変を感じたのは、そろそろカルネ村が見えて来始めた、という時だった。

 

 「どうしました?」

 

 「あんな頑丈そうな柵、前は無かったんですが……」

 

 見れば、そこにはンフィーレアが前回訪れた時には無かった、太い木で村全体をぐるりと囲うように作られた、頑丈そうな柵。何かあったのだろうか、と一行に緊張が走る。

 

 警戒しながら村の入り口まで辿り着くと、ルクルットが足を止めた。

 

 

 「ありゃ、ゴブリンじゃねえか……」

 

 見れば、入り口からわらわらと、子供より少し大きい程度の大きさの、いかつい顔をしたゴブリン達がそこに待ち構え、弓に矢をかけていた。

 

 「お前さんたち、何者だ!?」

 

 「!?」

 

 そうゴブリンが言い放った瞬間、周囲の草むらからもゴブリンが飛び出し、武器を突きつける。

 

 「囲まれた……!」

 

 「武装を解除してもらいましょうかね。出来れば戦闘は避けたいんですよ、特にそこのフルプレートの兄さん、アンタからはヤベぇ雰囲気ってのをバリバリ感じるぜ」

 

 そう言われながら、モモンは「おや?」と内心で首を傾げていた。

 彼らに心当たりがあったからだ。

 

 

 「ゴブリンさん、どうしたの?」

 

 「おお、エンリの姐さん!」

 

 「あっ!?……エンリ!」

 

 「え?……ンフィーレア!」

 

 「あ!あの子!」

 

 

 入口の向こうから呼び出されてきた少女。

 それを見た漆黒の剣は彼女の姿に心当たりがある。

 

 この数日、道の途中や休憩中等でンフィーレアから聞き出した彼の想い人、その特徴に酷似していたのだ。

 

 そしてモモンはモモンで、アインズとして救った一番初めの少女の姿を数日で忘れる筈もなく……脳裏では、「彼女の言っていた”村に時々来る薬師の知り会い”、というのは、ンフィーレア君の事だったのか」と納得していたのだった。

 

 

 

 

 ひとまず、お互い害は無いと理解した為、戦闘は起きずに済んだ。

 

 その後、あの頑丈そうな木の柵とエンリとカルネ村を守っているらしいゴブリンたちに、一体何があったのか、あらかたの事情を聞いた。

 

 突然騎士達に襲われ、両親を失ってしまった事。

 そこを、旅の、ちょっとお面が怖いけど優しい魔法詠唱者の人、ドレスを身に纏った、貴族よりももっと高貴な雰囲気を醸し出しているお嬢様、そして真っ黒な鎧に身を包んだちょっと怖い女性の()()に、命を救われた事。

 

 「私はよく覚えていないんだけど……真っ赤なポーションで、傷で瀕死だった私を嘘みたいに治してくれたってネムから聞いたわ。背中に剣で二回も切り付けられたのに、傷跡も残ってないのよ」

 

 「(赤いポーション……!?)」

 

 

 そして、伝説のポーションの存在。

 

 モモンさんはそのアインズという人やそのお嬢様?と何か関係があるのだろうか……?黒い女騎士の方は”アルベド”という名前だったらしいが……。

 

 「(うーん、やっぱり()()()()()()())」

 

 「また会えないかなあ」

 

 「あ、会って!……会ってどうするつもりだい?」

 

 「ちゃんと言えなかったから、お礼を言いたいなって」

 

 「あ、そ、そう……そうだね、お礼を言うのは大事だね(……うーん、赤いポーションについては分からず仕舞いか……モモンさんにアルベドという人を知ってるか聞いてみようかな……)」

 

 

 


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