【改稿版】ユグドラシルのNPCに転生しました。   作:政田正彦

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階層守護者の話し合い

 至高の御方々と呼ばれる3名が転移で立ち去ってから何秒そうしていただろうか。 

 ようやく重圧から解放され、ホッと一息ついた面々が立ち上がる。

 

「モ、モモンガ様、すごく怖かったね、お姉ちゃん」

「ホント、押しつぶされるかと思った」

 

 実際、スキルでオーラまで出して大物っぽさを演出して、スキルの効果でかなりの圧をかけていたのだから、当然といえば当然であるが、彼らにとってしてみれば、そもそも彼らにそれ程の圧力を感じさせる事が出来る存在が至高の存在以外にそうは居ない為、この反応も当然のことと言えた。

 

「マサカ、コレホドマデトハ……」

 フシュー、と大気すら凍るような冷気を吐き出しながらそう言う、守護者の一人。

 

 

 第五階層守護者、コキュートス。

 

 

 凍河の支配者の異名を持ち、カマキリとアリを融合させたような直立歩行するライトブルーの2.5mの巨大な蟲で、背中には氷柱のような鋭いスパイクが無数に飛び出しており、常に冷気を漂わせている。

 守護者の中では、装備した武器を扱った攻撃力はナザリックで随一と言う強さを誇る、武人である。

 

「あれが、支配者としての器をお見せになったモモンガ様なのね……」

 

 そう言いながら、手を祈るような形で組んで、恍惚な表情でモモンガが居た場所をほうっと眺めている一人の女性。

 

 

 守護者統括アルベド。

 

 

 慈悲深き純白の悪魔という異名を持つ小悪魔サキュバスであり、ナザリック全NPCの頂点に立つ存在である。

 外見は、純白のドレスと、それとは対照的な黒い羽、頭から突き出した山羊のような角と言った特徴があり、羽根と角が無ければ、人間の麗しい美女と変わらない。

 だが実力はその見た目に似合わず、守護者の中でも序列4位、防御最強の名を持つ圧倒的な防御力があり、数ある魔法の中でも最高峰の、超位魔法を三回耐えられるという、王の盾に相応しい実力を持っている。

 

 また、元々は「ちなみにビッチである」という設定だったが、モモンガとペロロンチーノ、そしてぶくぶく茶釜等の「最後だし良いよね」と茶目っ気が、彼女の設定を「モモンガを愛している」に書き換えてしまったが、本人がそれに気づいているのかどうかは明らかではない。

 

 

「ペロロンチーノ様……」

「ぶくぶく茶釜様……」

 

「うああああ~~~ん!!! もう、もう会えないがどおぼっで……ぐすっ」

「うう、まさかまたこうして会えるなんて……」

 

 シャルティアと、マーレ、アウラが、この地に戻って来た自分の創造者の存在を思い出したのか、スイッチが切り替わったかのように涙を流し始める。

 

 

 シャルティア・ブラッドフォールン。

 

 

 第一〜第三階層の守護者であり、鮮血の戦乙女という異名を持つトゥルーヴァンパイアの少女。

 長い銀色の髪を片方に集め、白蠟地味た白さを持つ肌、真紅の血液のような色の瞳で、服装は漆黒のボールガウンで、スカート部分は大きく膨らんでかなりのボリューム感がある。

 守護者の中でも序列1位という実力者で、総合力最強という、他の守護者から見ても頭一つ分他の守護者よりもステータスの高い存在となっている。

 と、性能だけ見れば非常に優秀な守護者であるのだが、まず性癖が「死体愛好家」、「サド」「マゾ」「ロリビッチ」と、エロゲにありがちな性癖をこれでもかと詰め込まれており、しかも「両刀持ち(男女どっちでもイケる)」という、いわゆるトラブルメーカー(問題児)だ。

 ”まだ”これといった問題は起こしていないが。

 

 

 アウラ・ベラ・フィオーラ。

 

 

 負けん気あふれる名調教師という異名を持つ第六階層の守護者であり、薄黒い肌を持つダークエルフであり、耳は長く尖ってやや上向きで、瞳は緑と青のオッドアイだ。

 装備は、上下に革鎧を装備し、さらに赤黒い竜王鱗を使ったぴっちりした軽装鎧をまとい、その上から白地に金糸の入ったベストと長ズボンと言った、男装姿をしたダークエルフの少女(76歳)。

 強さは、ビーストテイマーとレンジャーのクラスを収めており、彼女自身の戦闘能力は低いが、使役する、最高レベル80、支援スキルにより実質90レベルの魔獣100体以上による数の暴力により、約1名除き、他の守護者を圧倒出来る他、バフやデバフの効果を持つ吐息、それを射撃のスキルと組み合わせる事で遠くの敵を狙ったデバフ攻撃をする事も出来る。

 100体以上の魔獣を従え、自分は相手を弱らせることも出来るという凶悪な構成だが、上記シャルティアやアルベド等、色物だらけのナザリックNPCの中で数える程しかいない常識人の一人でもある。

 

 

 そして、アウラの双子の弟であるマーレ・ベロ・フィオーレ。

 

 

 頼りない大自然の使者という異名を持ち、姉と同様、第六階層の守護者。

 彼もまた、種族はダークエルフであり、肌は薄黒い。

 金髪のおかっぱ頭で、耳は長く尖ってやや下向き、瞳は緑と青のオッドアイでアウラとは逆となっている。

 藍色の竜王鱗を使った肌に密着した胴鎧と、その上から白地に金糸の入ったベストとスカート。

 更に、白色のストッキングを履いているという典型的な男の”娘”である。

 一見弱そうに見られがちな彼であるが、その強さはというと、ドルイドのクラスを修めており、支援魔法や広範囲殲滅魔法等に長けていたり、実はかなりの豪腕の持ち主で、身の丈以上もある杖、「シャドウ・オブ・ユグドラシル」を使って相手を撲殺したりと、階層守護者の序列3位という実力者である。

 

 

 ちなみに、今回ナザリックに帰還した至高の御方の一人であるぶくぶく茶釜は、この双子の製作者、つまり、生みの親である。

 

 

「ですね……」

 

 

 そして、それを知っており、自分も同じ状況になったら涙を禁じ得ないだろうと思い、今はそっとしておこうと決めた、赤いスーツ姿の悪魔。

 

 

 第七階層守護者、デミウルゴス。

 

 

 炎獄の造物主という異名を持つ、第七階層の守護者であり、髪型は黒髪のオールバックで、肌は日焼けしたような色をしており、丸い眼鏡をかけ、ストライプが入った赤色のスーツを着用し、銀のプレートで包まれた尻尾が無ければ、敏腕ビジネスマンか、弁護士を彷彿とさせる格好の悪魔である。

 防衛時におけるNPC指揮官という設定を与えられたNPCであり、インテリめいた見た目に相応しく、ナザリックの中でも最高峰の頭脳と叡智を誇る存在である。

 

 

 デミウルゴスを含め、今回自分の創造主が帰還されなかった者達も、シャルティア、アウラ、マーレが守護者としてあるまじき姿を晒して泣いているが、それを止めようとは思わない。

 自分が同じ立場であれば、と考えると人のことは言えない。

 そう思い、今はそっとしておこうと考えたのである。

 

 決してこれらの収拾をつけるのが面倒だったとか、そういうことではない。

 

「……では私、先に戻ります。ペロロンチーノ様とぶくぶく茶釜様のご予定は伺っておりますから問題無いとして……モモンガ様はどこに行かれたのか不明、しかしお傍に仕えるべきでしょうし」

 

 私がシャルティアの背中を撫でながら、双子の涙を拭き取ったりしてようやく落ち着いてきた時に、頃合を見てそう一人の執事が言った。

 

 

 守護者と同等の立場を持つ、戦闘メイドプレアデスのリーダー、セバス・チャン。

 

 一般的な執事服を身に纏い、綺麗に整えられた白髪、白髭のナイスミドル。

 顔は彫りが深く、白人のような顔つきで、目つきは肉食の猛禽類を思わせる鋭さを持つ。

 一目では人間とそう大差無いが、種族はれっきとした竜人であり、竜人としての真の姿を発揮すると、ある一部のNPCを除き、肉弾戦では随一の強さを持つ。

 性格はというと、カルマ値が全体的に極悪に偏っているナザリック勢の中でも、珍しく善寄りで、かつて彼を作ったたっち・みーによる「困っている人が居たら助けるのは当たり前」を初めとした考え方に深く共感しているといった特徴がある。

 

 

「そうね……セバス、何かあった場合はすぐに私に報告を。特にモモンガ様が私をお呼びという場合、即座に駆けつけます! 他の何を放っても!! ……ただ寝室にお呼びという場合は、それとなくモモンガ様に時間が掛かると伝えなさい? 湯浴み等の準備が……もちろんそのままでいいというなら」

 

「了解しました、では、守護者の皆様も、これで」

 

 主人の元へ行く事を優先したのか、あるいはこれ以上長く続く話を律儀に聞く必要は無いと思ったのか、セバスは早々に切り上げると、礼をして一人この場を後にした。

 アルベドは若干不満そうであったが、セバスであれば問題無いだろうと思っているのか、別段何を言うわけでもない。

 

 さて、では話し合いを……と周囲に目を向けたデミウルゴスとコキュートスが、シャルティアが未だに頭を垂れて忠誠の儀を行った体制のままでいることに気付く。

 

「ドウシタ、シャルティア」

「うん? エレティカ、シャルティアはどうかしたのかね?」

 

 今まで涼しい顔だったエレティカの笑みが引き攣る。

 

 

 しまった、忘れてた。

 

 

「あ~~~……え~っと……気にしないで、これは……」

「あの、凄まじい気配を受けた時……非常にゾクゾクしてしまって……下着がすこうし”マズイ事”になってありんすの……」

 

 エレティカが咄嗟にフォローしようとしたが間に合わず……デミウルゴスは聞いた事を大いに後悔した。

 

「この、ビッチ!!」

「……っはぁ~!? モモンガ様からあれ程の力の波動……ご褒美…を頂いたのよ!? それで濡りんせん方が頭がおかしいわ大口ゴリラ!!」

 

 あの、それだと私も頭がおかしいってことになっちゃうんですがそれは……とエレティカは思ったがそうは口に出さず、やれやれと呆れた表情でそれを見守る。

 

「ヤツメウナギ!!」

「私のお姿は至高の御方……ペロロンチーノ様に作って頂けた姿でありんすえ!!」

「それはこっちも同じことだと思うけどお!!?」

 

 闘技場が、二人の異常な程の闘気で満たされていく。

 もし、仮に、だが……ここにレベル10に満たない一般人を放り込んだら。

 多分失禁とか気絶では済まないだろう。

 永遠に廃人になるのも覚悟しなければならない。

 

 その間に入って彼女らの仲裁をするとなると、守護者の面々でもなかなか難しい。

 ……というか、正直面倒である。

 

「……あ~……アウラ、女性同士のことは、同じ女性に任せるよ」

「ちょっデミウルゴス!! 私に押し付ける気ぃ!?」

「全ク、喧嘩スル程ノ事ナノカ……」

「コキュートスまで!!」

 

 急に振られた面倒な役に辟易するアウラ。

 ……が、その場にもう一人残った女性に目をつけて、アウラの目が妖しく光る。

 

「エ、エレティカ~! お願~い! 手伝って!」

 

 エレティカがアウラの方向に目を向ければ、可愛らしく、「お願いお願い」と手を組んで愛らしいポーズのアウラ。

 シャルティアと違い両刀持ちでもなければ、かと言ってアウラに特別な感情を覚えるわけでもないエレティカであったが、それを見てしまうとなんだか断るのもなんだなぁと思ってしまう。

 

 

 「(パパァ~これ買って? とか女子高生にねだられるオジサンって、こういう気分なのかも)……仕方ないわね……シャルティア!! アルベド!! じゃれつくのもその辺にしておきなさい!」

 

 

 エレティカ・ブラッドフォールン。

 

 

 拠点NPCではなく、ペロロンチーノが設定を変更できないので、形式上という形ではあるが、第一~第三階層の守護者であり、シャルティアの姉……という設定を持たされ、かつての大侵攻の後に、その戦績から、屍山血河の戦乙女という異名がついたトゥルーヴァンパイアの娘。

 出会った初期と違い、シャルティアと似せたデザインのポールガウンで、スカートの部分も同じく大きく膨らみ、ボリューム感がある。

 彼女との違いは、髪が上下に銀色と赤色で分かれたプリンカラーであるという事と、目が黄金色のトパーズを思わせる形で、目つきも若干鋭く、シャルティアのつけているヘッドドレスはつけておらず、リボンで髪を結うだけに留めているという違いがある。

 

 守護者の中で、序列二位にある、「殲滅戦において最強」を誇る存在である。

 

 

 実はその正体は過去、あるいは全く別の世界からの転生者だとは、本人以外の誰も知り得ない。

 

 

 「「……じゃ、じゃれつく??」」

 

 

 突如として横槍を入れてきたエレティカの一言で、二人はキョトンとした顔になり、一気に怒気が霧散する。

 その隙に、エレティカが「そこに正座!」とでも言いそうな、怒涛の勢いで鎮めに掛かる。

 

 「……シャルティア!! 一体何故そうまで堂々と「下着を濡らしてしまいました」なんて言えるの!? 品が無いとは思わないの!?」

 「はっ、はい、申し訳無いでありんす、姉上……」

 

 ぽかんと口を開けて呆気に取られているアウラの目に、怒気を孕んだ姉の叱責に、シャルティアがシュンと小さくなる幻視が見える。

 逆にシャルティアは、自分の姉が巨大化しているかのような幻視に陥っていた。

 無論これはスキルによるものではなく、単純にシャルティアが精神的に萎縮しているに他ならない。

 

 「アルベドも!! 仲が良いのは分かるけど、この非常事態にいちいちシャルティアにちょっかいを出さない!! ……そんな姿をモモンガ様に見られたら、「余裕がない女」だと思われるわよ!」

 「ッ!!? よ、余裕がない女……!!」

 

 ぐうの音も出ないとはこの事である。

 アルベドはしばらく「余裕がない女……余裕がない……」とブツブツ言い始めたかと思うと、羽根をブルブルと震わせ始めた。

 

 思い当たる節があったのだろう。

 

 

 「分かったら、ほら、アルベドは私達に指示を出さないと。話が進まないでしょう?」

 「そ、そうね、そうだったわ」

 

 

 言外に、「ちゃんとしろ」と言われたような気がして、アルベドは無意識に姿勢を正し、一つ咳払いをする。

 見ればシャルティアも立ち直って冷や汗を流しつつも凛とした表情である。

 こうして、問題児二人を難なくいなして喧嘩を止めてしまったエレティカ。

 そんな様子を、アウラが目を丸くしながら見ていた。 

 

 「凄い、一瞬であの問題児二人を沈静化させちゃったよ」

 

 あまり期待していなかった分驚きも一層大きい。

 同じく、遠くに避難していた男性陣も、この光景を見て少し目を見開いていた。

 

 実を言うと、彼らはエレティカ=ブラッドフォールンがどう言う人物なのか、全く知らなかったのである。

 

 アルベドが、宝物殿の守護者であるパンドラズ・アクターを名前と財政面の責任者である事、そしてモモンガが創造した者であると言う事以外何も知らなかったのと同様。

 

 エレティカの事は、拠点を守る者では無く、ペロロンチーノ様の傭兵としてナザリックに所属し、経験を積んだ後、今では妹であるシャルティアと同様の、第一、第二、第三階層守護者を担っている、と言う事。

 それだけの情報しか知りえなかったのだ。

 

 何せエレティカは設定上は記憶を失って彷徨っていただけのヴァンパイアに過ぎないのだから。

 

 そんな彼女にNPCとの接点を持たせる事の方が困難である。

 

 せいぜい、シャルティアの設定に「姉妹間の仲は悪くない」と一文書く程度が精一杯であった。

 

 

 以上の事から、各守護者はエレティカという人物を測りかねていたが、第一印象はかなり良い方に捉えれたようだ。

 

 

 「(……これからあの二人が喧嘩を始めたらエレティカに任せるとしますか)」

 「や、やっぱり、エレティカはすごいなぁ……さっきも、ぺ、ペロロンチーノ様と……抱き、抱き合ってたし……ぼ、僕もああいう風にしっかりしないと……」

 

 「抱き合ってた」という言葉に、敏感に反応したデミウルゴスが、彼の本来のスピードをはるかに超える勢いで、ギュルッ!とマーレの方へ顔を向け、その両肩を勢いよく掴んだ。

 

 「そ、それは本当かいマーレ!?」

 「ひゃひぃっ!? え、ええと、はい、ここでエレティカとペロロンチーノ様が、再会した時に、だだだ、抱き合っていました!! なんというか、感動の再会、みたいな感じでっ!! こう、ぎゅっと!」

 

 マーレは突然驚愕の表情で自分に詰め寄ってくるデミウルゴスに驚きつつ、先ほど見た、感動の再会を果たすエレティカとペロロンチーノの一幕を身振り手振りを加えて懸命に伝える。

 

 ちなみにマーレはマーレでぶくぶく茶釜と抱擁(?)していたのをデミウルゴスは知らない。

 

 「(これは良い事を聞いた!)至高の御方のご子息様の誕生する日も近いかもしれませんね……!」

 

 デミウルゴスは、これ以上ない程、上機嫌に口角を釣り上げ、至高の御方の一人であるペロロンチーノと、その配下であるエレティカ=ブラッドフォールンとの御子に思いを馳せた。

 またいつ『りある』という場所に旅立ってしまうかもわからない至高の御方には、戦力の増強という意味でも、旅立ってしまった後も自分達が忠義を捧げるべき後継者、子孫の存在を求めていたのである。

 

 それをとなりで聞いていたコキュートスは既に「オオ、オオオオオ!!ソレハ、素晴ラシイナ!アアア……爺ト呼ンデ下サルカ……!!デハコノ爺ガ、肩車ナゾヲ……!!」とトリップしており、誰かが声をかけなければ永遠にその世界から帰ってきそうにない。

 

 

 「デミウルゴス? マーレ? いつまで話しているの? これからの計画について話すわよ?」

 「おっと、すまないアルベド、今行くよ……マーレ、この件は後日じっくりと話そう」

 「え、は、はい」

 「……それと……コキュートス! 素晴らしい光景を見ているところすまないが戻ってきてくれたまえ!」

 「オオ……アレハ良イ光景ダッタ……素晴ラシイ光景ダ」

 

 女性陣は、若干様子がおかしい男性陣に首をかしげるものの、真意に気付いたものは居らず、「まぁそれよりも今は計画について話さないと」と意識を切り替えていた。

 

 

 「では、これからの計画を……まず、アウラとマーレは先程の命令に従い、直ぐにでも件の作業に取り掛かりなさい」

 「は、はい、分かりました」

 「了解~」

 

 こうして迅速に、次々と指示が下されていく。

 が、今は一応現状の確認をするまでは警戒レベルを最大まで引き上げるのと、それに加えて、モモンガ様からマーレへ下されたナザリックの隠蔽工作と、至高の御方であるペロロンチーノとぶくぶく茶釜様からのご命令。

 

 この二点について再確認を行うという形である。

 

 「シャルティアとエレティカはペロロンチーノ様のお部屋へ」

 「分かったわ」

 「承知したでありんす」

 

 意外にも、ここに嫉妬とか怒りという感情は入っていなかった。

 どうやら本当に『モモンガを愛している』、いや、モモンガだけ…を愛しているのだろう。

 エレティカは人知れず、『ギルメンを愛している』とか書かれていなかった事に深い安堵を覚えていた。

 

 「デミウルゴスとコキュートスは自分が担当する階層で、警戒レベルを最大まで引き上げての警戒態勢に入りなさい、そして、これは全員に言える事だけど、何か異常事態が発生した場合は即座に報告すること。いいわね?」

 

 「(……ほんと、モモンガ様さえ絡まなければ有能なんだけどなぁ……)」

 

 「了解シタ」

 「承りました」

 

 

 「では各員、行動に移りましょう」

 

 こうして話し合いは手短に済まされ、それぞれがそれぞれの命令に従って動き始めた。 

 

 


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